No.458185

魔法幽霊ソウルフル田中 ~魔法少年? 初めから死んでます。~ 瞬間移動『逆』かめはめ波な17話

メリーさん編クライマックス。
彼女の八つ当たり劇、堂々の完結!

あ、ソウルフル田中は終わりませんよ?

2012-07-23 20:41:23 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1131   閲覧ユーザー数:1083

「さてと、誰にしようかしらね……」

 

都市伝説、『メリーさん』は標的となる人間を探していた。

 

 

 

途中、親友である『トイレの花子さん』やその弟子に止められはしたが、それでも彼女は人を襲う考えを捨ててはいない。

 

先程から5分単位で転移を繰り返して見つからないようにして、襲う相手を見定めていた。

 

 

「絶対、私の恐ろしさを思い知らせてやるんだから……!」

 

必死になるメリーさん、彼女がここまで焦るのには理由がある。

 

都市伝説や学校の怪談とって、自分の怪談話は生命線と呼べるものだ。

 

 

幽霊は都市伝説や学校の怪談として、多くの人々から恐れられることによって力を増していく。

 

 

有名になればなる程強大な霊になれるからといえば、納得するだろう、しかし『それだけではなかった』。

 

 

有名になることには、『メリット』だけがあるわけではない。

 

 

足売りばあさんやトイレの花子さんのように、特定の場所やシチュエーションじゃないと力を発揮できないのもあるが、もっと恐ろしい『デメリット』がある。

 

 

それは『怪談話に変なものを付け加えられてしまう』ことだ。

 

 

例えば仮に、足売りばあさんの話を例にしてみよう。

 

 

足売りばあさんは「足はいらんかねぇ」と迫り、「いらない」と言えば足をもぎ取り、「いる」と言えば余計に付け足す怪談だ。

 

 

対処する方法は「○○さんの所へ行って下さい」と頼むしかない。

 

 

しかしである。

 

 

例えば、たまたま足売りばあさんに遭ってしまった人物が武術の達人で、問答無用で足売りばあさんを殴り倒してしまったとしよう。

 

 

そしてこの話がみるみるうちに広まってしまうと、今度は『都市伝説の内容そのものが変わってしまう』のだ。

 

 

この場合だと『足売りばあさんに遭ってしまった時、問答無用で殴り倒すと助かる』的な内容が付け加えられる。

 

 

こうなるともう悲惨だ。

 

 

足売りばあさんは人に会う度に「足はいらんかぐばっ!?」と殴られ続ける事になる。

しかも都市伝説は『怪談に縛られる』ゆえにどう足掻いても殴り倒されてしまう。

 

 

 

 

おわかりいただけただろうか、これが都市伝説が恐怖する『デメリット』である。

そして現在、メリーさんもまたピンチに陥りかけているという訳だ。

このところの彼女の失敗は都市伝説の沽券に関わるレベルであり非常にまずい。

 

(あたしはイヤよ! 『壁に背を向けたら埋まる』なんて付け加えられるのはっ!)

 

とにかくまあ、彼女も苦労しているのだった。

 

 

「……! いた、あの子とかいいわね」

 

 

ついにめぼしい相手を見つけた、見たところ小学3年生ぐらいの女の子。

こういった幼い子供ほどより自分に恐怖するだろう、メリーさんはその時を想像しほくそ笑む。

 

 

「ふふふ……みてなさい。あたしだって『新しい手口』を考えてあるんだから……!」

 

 

場所は変わり、翠屋。

休日の昼時になり、人気の喫茶店であるここはお客で賑わっていた。

 

 

その中に、人外が『半分ずつ』入店していることに誰も気付くこともなく。

 

 

「うん、まーーい! やっぱりココのシュークリーム最高っ!」

 

「……! ……!(タベタイ! チョウダイ!)」

 

 

大量のシュークリームをがっついているのは『テケテケ』と『トコトコ』の二人(?)だった。

怪談の話によって『20代の女性』の姿になった二人は、合体することにより人間と区別がつかなくなっていた。

 

ただ、上半身と下半身の主導権は別々にあるらしく、シュークリームを食べれて満足感溢れる笑みを浮かべた上半身(テケテケ)と、自分も早く食べたいと足をばたつかせる下半身(トコトコ)の動きがミスマッチではあるが。

 

 

自分の相棒の不満に気づいたテケテケは「ごめんごめん!」となだめる。

 

 

「そうだよね、わたしばっかり美味しい思いじゃ不公平だったよね! ……えいっ」

ズズズ……

ポイッ、ポイッ。

 

「……!(アマァーイ!)」

 

 

「ブフゥゥッッ!!?」

 

「どうした美由紀、お客さんの前だぞ」

 

 

 

トコトコにシュークリームを食べさせるため、テケテケは自分の体を『後ろにずらす』。

出てきた真っ黒な切断面にシュークリームを落とすと、シュークリームはあっという間に黒い切断面に飲み込まれてゆく。

 

世にも珍しい、トコトコの食事である。

トコトコは満足気に足をピーンと伸ばしていた。

 

 

 

「きょ、きょきょ恭ちゃん……! いっ、いまあの人っ、体が……!?」

 

ガシャコンッ!

 

「ん? あの人?」

 

 

「いやー! うまいうまい!」パクパク

 

 

「……別に普通じゃないか」

 

「ええぇー……?」

 

外野が少し騒がしいが、テケテケ達は十分に休日を満喫していた。

「都市伝説になって本当に良かったー。実体があるからおいしいもの食べれるしねー」なんてのほほんと過ごしてる時だ。

 

 

 

『テケテケ、ちょっと手伝って欲しいんだよ』

 

「あり? 花子ちゃん?」

 

 

耳元で小さなラップ音が聞こえた。

可愛らしい先輩である花子のものだ、しかし彼女は知り合いを呼びにいくと言った気がする。

 

ジュエルシードが発動するのは明日だし何を手伝えと……。

そう思った時、テケテケは突如として理解することに成功した!

 

 

 

 

『花子ちゃん! デートじゃまず手を繋ぐ所から始めるんだよ!』

 

『……! ………!(セッキョクテキニ! サイシュウテキニハオシタオセ!)』

 

 

『バッ! バカいってんじゃないよでででデートていうか押したお△×◎●……!!!』

 

『花子さんどうしたんですか!? ってうわ顔が真っ赤ですよまさか熱があるんじゃゴバハァァァッ!!?』

 

『い ま 顔 を 近 づ け る な! ケダモノ!!!』

 

『なぜゆえ!?』

 

 

田中の声が聞こえたために「やっぱりデートしてるじゃん」とテケテケは思うのだったが……。

 

 

『ふっ、ふざけてる場合じゃないんだよ! アンタもメリーを止めるの手伝ってくれ!』

 

『へ? メリーちゃん来てたの?』

 

 

 

 

 

『なるほどー、メリーちゃんも苦労してるんだねー』

 

『同情してる場合じゃないんですってば!』

 

田中が声を荒げて突っ込む、相当焦っているらしく声に余裕がなかった。

 

事情をあらかた聞いたテケテケ達はようやく『海鳴市民を襲うメリーを止めてほしい』という要件を理解することが出来た。

 

デートだったら思いっきりからかってやるのに、と内心がっかりしているのはナイショ。

 

 

 

『でもメリーちゃんが相手かぁ……。難しいとおもうよ? だってあの子神出鬼没だし』

 

『そこなんだよねぇ……、アタイも分かってたけど』

 

 

そう、手伝うのは良いとして問題はそこだった。

メリーさんは瞬間移動が出来る幽霊だ、つまりどんな距離でも一瞬で移動できるからすぐに逃げられる上にどんな相手でも襲い掛かることが出来てしまう。

 

広い海鳴市の中で、メリーさんのたった一人の犠牲者を探し当てるのは至難の業であった。

 

 

『『『う~ん……』』』『……(ウーン……)』

 

良い対策案が浮かばずに考え込む4人(?)。

 

 

 

 

 

「だから! 絶対に何かがいるのよこの街はっ!」

 

「分かったから落ち着いてアリサちゃん! あっ美由希さん! なのはちゃんここにいませんか?」

 

「すずかちゃんにアリサちゃん! いらっしゃい、なのはに用事? 恭ちゃ~ん、なのはどこにいたっけ?」

 

「なのは? う~ん……出かけてるみたいだが……。父さん! なのはがどこにいるか知らないか!」

 

「おや? すずかちゃんにアリサちゃんいらっしゃい。なのはなら確か公園に行くって言ってたぞ? なあお母さん」

 

「そうそう、ユーノくんと一緒に」

 

「そうですか……残念です。ユーノくんを見せてもらおうと思ったんですけど……」

 

「仕方ないわよすずか、近くに来たからって連絡もなしじゃ「~♪」あら? 電話?」

 

 

 

ピッ

 

 

 

『もしもし? あたし、メリーさん。いまゴミ捨て場にいるの』

 

 

「「「「「「……………………………」」」」」」

 

 

 

 

『……花子ちゃん、太郎ちゃん。大丈夫、多分場所分かった』

 

『『本当ですか(かい)!?』』

 

テケテケ達は席を立ちあがり「いやああぁあぁぁああぁぁああっ!!?」とムンクの叫びみたいな感じで悲鳴をあげているアリサの方へ向かっていくことにした。

 

 

「めっ、めめめめ『メリーさん』から!!? いい嫌っ! いやよ私まだ死にたくないうええぇぇぇぇぇえん!!!」

 

「アリサちゃん気をしっかり!?」

 

 

あまりの恐怖で自分に泣きすがっているアリサをすずかが支える。

 

普段は勝ち気な彼女が、いくら怖いものが苦手だと知っているとしてもまさかここまで怖がるとは、とすずかはメリーさんよりアリサの怯えように驚愕していた。

 

 

 

「うぐっひぐっ……。やだよぉ……怖い怖い怖いぃぃ……!」

 

「よ、よしよし。大丈夫だから、きっとイタズラ電話だよ」(あれ? アリサちゃんかわいい……?)

 

大粒の涙をポロポロ零すアリサに、「なにこのかわいい親友」と普段のアリサと今のアリサのギャップにすずかはナゾのトキメキを覚えざるを得なかった。

 

 

頭をよしよしと撫でても怒るどころか無抵抗にされるがままな変わりようも、激しいギャップ萌えを加速させる原因だろう。

 

 

「しかし『メリーさん』か……ずいぶんと悪質な電話だな。父さん、通報したほうがいいかもしれない」

 

 

「そうだな、お母さんは警察に通報を。アリサちゃんはちょっと店の奧に来てくれるかな? 私と恭也で守ろう。まあ『メリーさん』なんて都市伝説だし幽霊なんているわけが…………。すまない、なのはを思い出して不安になった。十分に気をつける」

 

一方大人組は冷静に対処していた、士郎の最後の一言で一気に一同の気が引き締まる。

 

 

「あはは……。確かにウチのなのはも『憑いてる』気がするよね……?」

 

美由紀も力なく笑う、どうやら田中が憑いていることを高町家では何となく感じとる機会はあったらしい。

 

 

 

何はともあれ、対策は決まった。

 

桃子も警察に連絡し、翠屋は美由紀と二人で担当してもらう。

士郎と恭也は店内奧でアリサの警護に当たることにした。

 

 

 

「ぐすっ、お願いだからすずかも一緒に来て……?」

 

「心配しないで、わたしもアリサちゃんの側を離れないから」(何でだろ……? アリサちゃん見てるとドキドキする……)

 

一名ほど新たな境地へ目覚めつつあるが、4人は翠屋の奧へ移動しようとして。

 

 

 

 

「ああダメダメ! 場所を変えただけじゃ『メリーさん』は諦めないよ!」

 

「「「「えっ?」」」」」

 

 

やけに陽気な女性に呼び止められた。

その場の全員が固まっていると、20代ぐらいでスーツを着た彼女は、間髪を入れずに喋り続けた。

 

 

「『メリーさん』は瞬間移動できるから、何処に行こうと同じ。アリサちゃんだっけ? ちょっとおねーさんとこ来てー」

 

 

「えっ? はい……?」

 

 

アリサは言われるがままに女性の方へ歩いていくと「はい、カベに背をむけてー、きをつけっ!」と翠屋の壁に直立させらる。

 

「これで後ろは大丈夫! あとは、士郎(マスター)さんは右を、息子さんは左を警戒して、わたしが前にいるから四方はカンペキ!」

 

 

「あの、お客様?」「え、ええと……?」

 

 

迷いなくテキパキと指示を出していく女性に、つい従いつつも疑問の声をあげる士郎と恭也。

 

((((誰だこの人……?))))

 

 

「通りすがりの『都市伝S……ゲフンゲフン。『霊媒師』、御手洗 アユミ(偽名)です、ここのシュークリームのお礼をしたくて」キリッ

 

 

 

『……(レイバイシハナイ)』

 

『もーっ! しょうがないじゃんとっさに出ちゃったんだからー!』

 

 

お分かりだろうがこの二人(?)はテケテケ達である。

ドヤ顔で霊媒師だと言ってしまったが内心はヒヤヒヤしていた。

流石にこの言い訳は苦しいか……?

 

 

 

 

「霊媒師だって!?」

 

「なる程、道理で詳しい訳だ。ありがとうございます、ウチの娘の親友を助けて頂いて」

 

 

(あれ、チョロい!?)

 

驚くほどアッサリ信用されていた。

お人好しすぎるんじゃないか高町家。

 

とにかく、信用も得たのでやりやすくはなった。

テケテケ達はどんどん指示を出していく。

 

 

「よし、あとは上から来ると恐いからハイコレ、わたしのカバン。盾にしてね」

 

「はいアユミさん……って重っ!? 何が入ってるんですか!?」

 

「お、お札が沢山はいってるんだよ! (刃物が沢山入ってるとは言えない)持てなかったらすずかちゃんと一緒に持ってね。百合ってくれるとわたしもたぎるし!」

 

「アリサちゃん、わたしも頑張るよ」

 

「すずか……///」

 

 

「父さん、いざとなったら神速を……」

 

「ああ……、全力でいくぞ」

 

 

こうして『アリサ・バニングス防衛隊』が結成されたのだった。

 

 

 

((((士郎さんたち、何をしてるんだ……?))))

 

あと、さっきからお客達が不審な目を向けていることに終ぞ気づくことはなかった。

 

 

 

これで準備は万全、後は待つのみとなった。

 

 

 

 

 

「~♪」

 

「ひっ! 嫌……!」

 

 

来た、電話だ。

アリサは小さく悲鳴をあげる。

 

 

 

ピッ

 

 

『あたし、メリーさん。今駅にいるの』

 

プツンと電話は切れる。

 

 

 

 

「まだ大丈夫。あと3回は電話だけ、4回目で来るよ」

 

「わっ、分かりました……」

 

やはり怖いのかすずかも震える声で返事をする。

ちなみに回数は、メリーさんと長い付き合いからテケテケ達が『何回目で襲いかかるか』知っていた。

 

 

 

「~♪」

 

ピッ

 

 

『あたし、メリーさん。今サッカーグラウンドにいるの』

 

 

「あと2回」

 

「だんだん近づいてるな……」

 

小太刀を握る手に力を込める恭也。

 

 

 

「~♪」

 

ピッ

 

 

『あたし、メリーさん。今商店街の入り口にいるの』

 

 

「あと1回」

 

「みんな、気を引き締めろよ……!」

 

士郎もいつでも戦えるよう、体中に闘気を纏う。

 

 

 

「~♪」

 

ピッ

 

 

『あたし、メリーさん。今翠屋の前にいるの』

 

「き、来たぁっ……!」

 

「絶対わたしが守るから」

 

「次、くるよ!」

 

 

その場の全員に緊張が走る。

士郎と恭也は神速を使う準備を。

すずかは『夜の一族』の身体能力を全て使い。

テケテケ達はいざとなったら分離して戦う覚悟を。

 

 

 

 

そして――――――

 

 

 

「~♪」

 

「「「「「!!?」」」」」

 

『着信音』が鳴り響いた。

確実に来ると、そう思っていたために動揺が走る。

 

 

「まだだ! みんな気を抜くんじゃない!」

 

「!」

 

士郎の一喝で再び持ち直す。

 

 

ピッ

 

 

『あたし、メリーさん。今商店街の出口にいるの』

 

 

プツッ

 

 

「と……『遠ざかった』?」

 

アリサは目に涙を浮かべ、震える声で言う。

 

 

「そんな……メリーちゃんが目標から遠ざかるなんて」

 

ありえない、とテケテケは驚愕する。

長い間同じ都市伝説として、後輩として付き合いがあったからこそ彼女が獲物から『逃げる』なんて考えられなかったのだ。

 

 

「~♪」

 

「また電話……」

 

 

ピッ

 

『あたし、メリーさん。今海辺にいるの』

 

「ほら! やっぱり遠くなってる! 助かったんだわ!」

 

ますます遠ざかっていくメリーさんに、アリサの表情は明るくなっていく。

士郎と恭也も先ほどよりかは幾分か肩の力を抜いていた。

 

 

「一気に距離を詰めてくるとおもったが、ただのいたずら電話なのかもしれないな……」

 

「一応、注意はするんだぞ恭也」

 

 

 

「…………」

 

しかし、すずかだけは考えていた。

一体メリーさんは何がしたかったのだろうか、と。

 

(ホントにイタズラ電話なのかな……? それになんで『まだ電話がかかってくるんだろう』、諦めたのならもうかかってこないんじゃ……?)

 

 

「~♪」

 

ピッ

 

『あたし、メリーさん。いま崖の下にいるの』

 

 

(ほら、また……。えっ、『崖の下』?)

 

なにか、嫌な予感がした。

『海辺』から『崖の下』というとつまり、いまメリーさんは海鳴の海の上で崖を見上げているのだろうか、そう思った瞬間――――――

 

 

 

――――――『海が見える崖』?

 

(!?)

 

 

痛烈な危機感。

自分は知っている、この海鳴で『海がよく見える名所』を、そして今そこには確か――――

 

 

 

――――『なのはなら確か公園に行くって言ってたぞ?』

 

 

「アリサちゃんじゃないっ!!!」

 

 

 

「「「!?」」」

 

「どっ、どうしたのすずか!?」

 

突然大声で叫ぶすずかに驚く一同。

周りの目も気にせず、すずかは普段は出さないような声量で続ける。

 

「メリーさんはアリサちゃんを狙ってたんじゃない! まだメリーさんは『近づいてる』――――

 

 

「~♪」

 

ピッ

 

 

 

 

 

『もしもし? あたし、メリーさん。今『海鳴臨海公園』の前にいるの』

 

「なのはちゃんが、危ない!!!」

 

 

「ふふふ……今更気付いても遅いわ……」

 

「あらかじめ『二人』目標を見定めて、一人目に電話をかける」

 

「まず一人目にギリギリまで近づいて恐怖させる。そしてあたかも逃げたかのように見せかけてから……」

 

「実は二人目に襲いかかっていることを理解させる!」

 

「そのことに気付いた一人目が恐怖し絶望しているところにこう言ってやるの……!」

 

「『次はあなたよ』ってね。正に完璧……! 複数の人間を恐怖に陥れる最高の手段だわ……!」

 

「変な結界が張ってあるけど、あたしには瞬間移動がある。メリーさんからは逃げられないわよ!」

 

 

 

 

 

――――――海鳴臨海公園。

ユーノの魔法によって結界が張られた中、高町なのはは飛行魔法の訓練に取り掛かっていた。

 

 

 

白いバリアジャケットに身を包み、結界の中を飛び回る。

まだおぼつかない所もあるが、今日初めて飛んだばかりとは思えない程である。

 

「どうユーノくん! だいぶ飛べるようになったよ!」

 

肩に乗せているユーノに笑顔で呼びかけた。

ユーノもなのはの予想外の上達ぶりに舌を巻く。

 

 

「すごいよなのは! 普通ならもっと躓いたりするのにもう飛行魔法をものにしてる!」

 

 

今日は、今朝からずっと魔法の訓練に時間を費やしてきた。

初めの方は簡単な防御魔法や単純なバインドなど基礎的なものを教えていたのだが、今回ユーノがなのはに重点に覚えて貰いたかったのがこの飛行魔法。

 

これまでの暴走体との戦いで感じた『移動速度』の無さを解消するためだ。

 

そのため今日の訓練比率も基礎魔法と飛行魔法で3:7で力を入れていた。

 

勿論そのお陰もあるのだが、それを差し引いてもなのはの成長ぶりは相当なものである。

 

 

 

(初歩的な魔法といっても初歩の最後の方なのに、やっぱりなのはには才能がある!)

 

とは言え、始めたばかりは少し手間取ったのだが。

 

 

 

『じゃあ、基本的な魔法は一通り教えたから、今からは飛行魔法を練習しよう!』

 

『だ、大丈夫かな……? 私、空を飛んだこと無いんだけど……』

 

〈安心してください、私も補助しますから〉

 

『ありがとうレイジングハート! じゃあいくよ……!』フワッ

 

『!? な、なのは! ちょっとストップ!』

 

『ふぇっ!? どうしたのユーノくん?』

 

『いっいや! 僕も肩に乗るよ! そっちの方がアドバイスもしやすいし!』(言えない……! スカートの中が見えそうなんて……!)

 

 

 

 

「………………」

 

「どうしたのユーノくん? ボーっとしてるよ?」

 

 

突然沈黙したユーノをなのはが心配して覗きこんでいた。

悪いことはしてないはずなのにユーノは慌てる。

 

 

「ハッ! なっなななんでもないよ!? 別にやましい気持ちはないからね!?」

 

 

「?」

 

何も知らないなのはは、可愛らしく小首を傾げている。

 

ユーノは思う、『なのはって無自覚に小悪魔だよね……』と。

ファイトだユーノ、紳士にならねば淫獸まっしぐらだぞ!

 

 

 

 

〈ところでマスター、対幽霊魔法の訓練もしませんか?〉

 

しばらく飛び回っていると、なのはの手にあるレイジングハートがそんなことを提案してきた。

そういえば家をでる前にそんなことを言ってたなと二人は思い出した。

なのははそれを聞いて顔を輝かす。

 

 

「やろうやろう! 絶対今後も必要になるよ! 主に日常生活で!」

 

「ははは……、ちなみに対幽霊魔法ってどんな魔法なの?」

 

気になったのでユーノは聞いてみることにする。

 

 

 

 

〈基本は砲撃魔法をベースに、爆発等から幽霊の位置を逆算、『見えなくても確実にいる』という確固たるイメージのもとに膨大な魔力を叩きつけます〉

 

「よーし砲撃魔法はよく知らないけど、マスターしてジャンジャン使うの!」

 

「お願いだからやめて!? 砲撃魔法は日常生活で使うものじゃなーいっ!!!」

 

 

なのはが砲撃魔法を使えるのも驚きだが、そんなものを普段から撃ちまくればジュエルシードがなくとも軽く海鳴が滅ぶので全力で説得するユーノだった。

 

 

ちなみにこの対幽霊魔法、ホントに通用する。

幽霊を認識さえすれば生者でもイメージは叩き込めるからだ。

 

 

 

とりあえず、いざという時しか使わないと、残念がるなのはに約束させて練習することにした。

地上で撃つと被害が出そうなので、空中へ飛びたつ。

 

 

「結界の強度を上げたから、思いっきり撃っても多分大丈夫だよ」

 

 

〈実戦に近くなるよう、イメージトレーニングも混ぜ合わせましょう〉

 

 

「うん、わかった。ありがとう二人とも」

 

準備は整った、なのははレイジングハートに言われた通り『幽霊と戦う場面』を想像する。

 

 

(ええと……お化けってどんなことしてくるのかな……? 人魂とかポルターガイストとか、『驚かそうとしてくる』わけだから……)

 

 

 

なのはは考える、もし自分が人を驚かすならどんな手段をつかうのかを。

 

 

(やっぱり『後ろ』からびっくりさせるかな? よーし……!)

 

 

 

「レイジングハート! いくよ!」

 

〈シューティングモード〉

 

変形したレイジングハートを構え、意識を集中させる。

魔力がレイジングハートに収束されていき、次にイメージするのは『後ろから自分を驚かそうとする幽霊』!

なのはは後ろを振り向いて――――

 

 

 

 

 

「ディバイン・『ゴースト』・バスターッ!!!」

 

「あたし、メリーさ――――――えっ?」

 

凄まじい桜色の光の奔流が、視界を埋め尽くした。

 

 

 

「ハッ!? メリーさんの霊圧が……消えた……!?」

 

 

「いきなり何を言ってるんだい!? 早くメリーを探すんだよ!」

 

 

 

 

 

「嘘よ! なんでなのはが!」

 

「なのはあぁぁぁっ!!!」

 

「くそっ! 間に合えぇぇぇっ!」

 

「もっと私が早く気づいてたら……!」

 

「後悔はまだ早いよっ!」(分離しても間に合うか……!?)

 

 

 

『あたし、メリーさ――――――えっ?』

 

ズドオオオオンッ!!!

 

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

 

 

――――この日を境に、『メリーさん』の怪談は聞くことがなくなったという……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超オマケ

 

 

「な……なんなのよあの子……なんとか逃げたけど………直撃しちゃって……あうっ」

 

 

ヨロヨロ……バタッ

 

 

(あ……ああ……あたし死ぬんだ………。ここで捨てられた人形として……果てるんだわ……ガクッ)

 

 

「あれ? 人形が捨てられてる、ボロボロやな……」

 

 

「おや、はやてさんその人形は……?」

 

 

「なんか家の前に落ちとったんよ。このままやと可哀想やし拾って直そうかなって」

 

 

「ふぇっふぇっふぇっ、足パーツの取り替えなら任せときなぁ!」

 


 
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