No.452754

相良良晴の帰還10話

D5ローさん

織田信奈の野望の二次創作です。素人サラリーマンが書いた拙作ですがよろしければお読み下さい。注意;この作品は原作主人公ハーレムものです。又、ご都合主義、ちょっぴりエッチな表現を含みます。
そのような作品を好まれない読者様にはおすすめ出来ません。
追記:仕事の合間の執筆のため遅筆はお許し下さい。

2012-07-14 16:54:08 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:18497   閲覧ユーザー数:16251

二日後…

 

『迎え入れる用意が出来た。』という返答をもらった浅野の爺が、ねねと共に案内された先は、先日貸したうこぎ小屋ではなかった。

 

先導をする犬千代が導いた先にあったのは、先代が存命の頃、謀反の罪で取り潰しになった一門の屋敷であった。

 

不思議に思い、門を見ると、そこには、『相良』の文字が書かれている。

 

「おお!ねねの旦那様は働きものじゃあ!結納前にこんな屋敷を用意して下さるとは!凄いなあ。爺様」

 

「そうじゃのう。」

 

ねねの無邪気な言葉に相づちを返すも、浅野の爺の頭の中は疑問符で一杯だった。

 

とりあえず、儂のカンは正しかったようじゃが・・・どうやら問い質す事が増えたらしい。頼りになりすぎる婿殿の手腕に、翁は頭を抱えながら門をくぐった。

 

薄々気づいていたが、当然、屋内の様子も一変していた。

 

埃ひとつない部屋の壁には掛け軸がかけられ、茶の間には太刀と脇差しが刀掛けに掛けられており、襖や障子も全て張り替えられた屋敷は一般的な武家の基準から見て、控えめに言っても豪邸という他無い。

 

翁が唖然とする中、良晴はねねの前にスッと桐の箱を差し出した。

 

「好みに合うか分からないが、受け取ってくれるか?」

 

ねねが目を輝かせながら開いた中から出てきたのは、見事に染め上げられた小袖だった。

 

「あ、ありがとうですぞ!良晴様!」

 

「そんなかたっくるしい呼び名で無くて良いよ。奥さんになる人からそういう呼び方とか、余り好きじゃないんだ。」

 

「では兄様で!」

 

「いや・・・まあいいか。」

 

それも夫を呼ぶ名称としては変ではないかと良晴は思ったが、そこまで拘ることでもあるまいと思い直した。

 

続けて顔を翁の方に向ける。

 

額から流れる冷や汗と表情を見る限り、簡単に事情を説明する必要はありそうだ。

 

ねねを小姓(お手伝いのようなの者)に奥の部屋まで送らせながら、翁に声をかける。

 

「本日はねねを迎え入れる事が一番の用件ですが・・・何か伺いたいことなどございますか?」

 

顎を親指と人差し指で挟みながら唸っていた翁は、良晴からの問いかけに目を輝かせた。

 

流石に一、二回しか会っていない相手に対して、此方から根掘り葉掘り聞くのはどうだろうかと悩んでいた翁にとって、願ってもいない提案だ。

 

「では御言葉に甘えさせて頂くわい。まずは、この家はどうしたのですかな?」

 

「織田信奈殿と取引を行い、買い上げ申した。」

 

翁の問いかけに即答で答えを返した良晴は、さらにこう続けた。

 

「より正確に言うならば、私が各地の商人から取り寄せた火縄銃200丁と『交換』した。信奈殿にとって、空き家よりも銃の方が良いらしい。」

 

最後の方は苦笑を混ぜながら何でもない事のように話す良晴に対し、翁は唖然とするしかなかった。

 

一昔前よりは流通量が多くなったとはいえ、まだまだ高級品である銃を短期間で揃えたこともそうだが、まさかその銃を取引材料として土地を手に入れてしまうとは。翁には到底思い付かぬ奇策であった。

 

「そ、その取引で信奈殿は納得されましたかな。」

 

「ああ、まあ普通なら通らなかったがね。この取引に関しては、俺と信奈殿の利害が一致したのさ。」

 

恐る恐る確認した翁の言葉に気分を害することもなく、良晴は言葉を続けた。

 

「俺のような余所者が屋敷を手に入れることで、確かにそれを与えた信奈殿に敵意を向ける有象無象達はいるだろう。それこそが信奈殿の狙いだと知らず。」

 

まるでいたずらが成功した子供のような笑みで言葉を続ける。

 

「この国が世継ぎ二人の仲違いのせいで割れていることなんぞ赤子でも知っているような公然の秘密さ。そしてその事情はこの尾張にとって致命的だ。戦国時代に『仲間割れ』してる国なんぞ他の国にとっちゃ良いカモでしかない。」

 

「そして『戦国武将』としての才覚はどちらが上なのか本当は気づいているのにも関わらず、斬新な意見や奇異な服装だけでそれを否定している。それがこの国の上役どもの現状さ。」

 

仮にも仕えている国の上層部を無能と断じながら、その口調にいささかの乱れもない良晴の口調に逆に翁が震え始めた。

 

この男は、一体何が見えている。

 

そもそも其れを儂が密告するとは考えんのか?

 

疑問を解消するためにしたはずの問いかけで、新たな疑問を生んでしまった翁であった。

 

…実のところ、良晴は五右衛門に依頼して調査は終えているからこそ、このようにペラペラ話しているのだが、良晴はその事をおくびにも出すつもりはなかった。

 

無条件で信頼してもらっていると誤解してもらった方が、後々良好な信頼関係が気づけると良晴は経験から学んでいた。

 

世の中、知る必要の無い真実もある。知らなくても不利益の無い真実は特に。そう心中で呟きながら、話を続けた。

 

「信奈殿の褒美に不服があるもの達は、今回も今までと同様に信勝殿を旗頭にして謀反を企むだろう。」

 

「…今回も許される(・・・・・・・)保証なんて、何処にも無いことも忘れて。」

 

最後の一言に込められている感情を察して、翁の背筋に悪寒が走った。脅しではない、良晴殿は本気で、信勝殿を取り巻きごと潰すつもりだ。

 

「お、お待ちを!信勝殿は織田家の本流、信奈殿の弟君で…。」

 

「翁殿、この戦国時代において敗れた国の者がどんな扱いを受けるのか、御存知のはずだ。どんな国に取られてもろくな目にあわない。」

 

思い留まらせようと必死に言葉を紡ぐ翁の頭を冷やすかのような言葉が良晴から浴びせられる。

 

その通りだ。農地運営のために必要な農民はともかく、弱兵で知られている尾張武士が負けた後、まともに扱われない事など分かりきっているではないか。

 

「翁殿、私は、不必要に伝統や人命を破壊するつもりは無い。しかし、この窮地で未だ目が覚めない者達に容赦もする気は無いのだ。『家族』という守るものがあるからな。」

 

結局、その言葉を締めとして、翁はいつの間にか控えていた小姓に門まで送られ、帰された。

 

行く時には二人で歩いた道を一人で歩きながら、最後に良晴が呟くように口にした言葉を頭の中で反芻(はんすう)していた。

 

『三日だ』

 

おそらくこれは、彼が粛清をギリギリ待てる期限。これを過ぎれば、彼は躊躇わず実行するだろう。たとえ、どれほどの血が流れても。

 

夜の帳が降り始めた街中を、翁は、ゆっくりと丹羽長秀の所まで歩を進めた。

 

よそ者であったはずの良晴のほうがこの国のことを真剣に考えていた事に苦笑しながら、今更でも、この国に悲劇を起こさぬために、老兵は再び、舞台に上がった。

 

(第十話 了)


 
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