No.452757

相良良晴の帰還11話

D5ローさん

織田信奈の野望の二次創作です。素人サラリーマンが書いた拙作ですがよろしければお読み下さい。注意;この作品は原作主人公ハーレムものです。又、ご都合主義、ちょっぴりエッチな表現を含みます。
そのような作品を好まれない読者様にはおすすめ出来ません。
追記:仕事の合間の執筆のため遅筆はお許し下さい。

2012-07-14 17:02:03 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:19404   閲覧ユーザー数:17217

翁が良晴から粛清の報を受けとる二時間ほど前、丹羽長秀の下へ信奈から届けられた文面は、彼女を戦慄させた。

 

そこに書かれていた内容は、現在尾張という国が置かれた状況がいかに不安定か、そうした状態が尾張の民の信用をどれほど失わせているかを淡々と書き連ねた後、この国の未来にとって不要な者達が列挙され、『このまま座して滅亡を待つのなら、魔王のそしりを受けても武力をもって国の意志を一つにする。』という締めでくくられていた。

 

無論彼女とて、国を憂慮する気持ちは同様であり、口だけの若侍が威張り散らしている事を良いことだと思った事はなかった。

 

だが、先祖代々忠義を尽くした武家の一角として、同様に奉公していた他家をぞんざいに扱うのを良しとすることは、武士の仁義に背くとして耐えていたのである。そして、信奈様も無用な国内の流血を嫌い今の今まで耐えていたのだ。

 

それなのに、こんな短い間で『粛清』を決めるとは。

 

やはり決め手は『相良良晴』殿か。

 

戦場で自己を売り込むことの出来る凄腕を持ち、信奈様に似た感性を持つ男は、やはり、自分の見立て通り只者では無かったらしい。子飼いの部下に探らせた所、ここ数日でまるで妖術のように莫大な金を稼ぎ、その金で買った火縄銃を信奈様と取引をして屋敷と交換した後も、次々と金銀財宝が彼の元に集まっているらしい。

 

又、一度どのような手段なのか探らせた乱波が死なぬ程度に痛めつけられ帰って来たことから、独自の武力も持っている事も分かっている。

 

だが、彼の身元を知るものは、周辺の国まで調べてもいない。誠に奇妙な男であった。

 

『自分の能力の高さに溺れているものなら扱いやすかったのだけど。』

 

一度茶の湯に誘った際も、作法は完璧な上に、此方の挑発にも少しも乗ろうとはしなかった。むしろ長秀の方が・・・

 

「『綺麗な御姉様に御茶に誘って貰うだけで感無量です。』だなんてあの男は・・・」

 

彼との会談を思い返し、そう悪態をつきながらも長秀の口元は緩んでいた。

 

同時に、さざ波のように揺れていた心が落ち着く。

 

そうよ、高い教養と経験を持つであろうあの人ならきっと慎重に事を進めるはず。

 

この手紙は私に危機感を持たせるために、さも、すぐにでも実行するように表現しているだけだわ。

 

今度、信奈様を交えて三人でじっくりと話し合えば、阻止できるはず。

 

そう結論付け、自らを納得させた。

 

しかし、その30分後、長秀は翁からの情報により自らの見通しの甘さを痛感させられることとなる。

 

血相を変えた翁からもたらされたその情報は、長秀を青ざめさせるどころの話では無かった。

 

彼の覚悟のほどを聞くに、冗談では無いだろう。そして、おそらく策も無く、無謀に仕掛けるつもりでも無い。それは即ち、実行しても反抗を封殺できる武力を揃えてしまったことに他ならなかった。

 

『少なくとも、屋敷の交換に多量の銃を使ったという事は、南蛮と直接交易できるだけの伝を持つ堺の商人と縁があるということかしら。それとも南蛮の者達へ珍しい交易品や航海に必要な物品を持ち込んで取引した・・・いや、南蛮の言語を使いこなせるならともかくそれは無いわね。』

 

実はその『南蛮の言語を用いて取引した』という予想が正しいのだが、彼女にそれは知るよしもない。そして、その『何も分からない』事が、新たな疑念を生んでゆく。

 

『まずいわ。ここで信勝様と取り巻きの阿呆達が馬鹿をすれば、信奈様が強権を発動して、たとえ町中でも皆殺し戦略をとってもおかしく無い。何故なら、今まで無かった強力な後ろ楯、良晴さんという武力があるから。』

 

この時代に多額の金を持つというのは、多数の私兵を雇えるのと同義である。勿論、古参兵よりは実力は劣るが、それを補う力がこの時代には生み出されていた。

 

『たとえ、信勝様が最強の手駒である六(りく)(柴田勝家の幼名)を出しても、信奈様に献上されている二百丁を良晴さんの兵隊に貸してしまえば。たとえ百戦錬磨の六であっても、一瞬で殺される。』

 

狙いをつける必要すらない。信勝が町で難癖をつけた直後に二十人ほどで一斉に銃を撃てば、遮蔽物の無い町中で信勝を庇わなければいけない六は、致命的な迄に銃弾を浴びてしまう。

 

彼女とて友人を大切に思う気持ちはある。それだけは阻止せねばならなかった。

 

けれど・・・私に説得は出来るの?

 

御家騒動を防ぐためとはいえ、幼馴染みだった自分は中立、六は弟君側に立った。

 

彼女の側に居られたのは、家柄が低い犬千代だけ。そしてそれは、必ずしも信奈様のためにはならなかった。

 

『犬千代は信奈様に尽くしてはくれるが、支えるには足りない。』

 

厳しい言い方だが、犬千代では信奈様の理想を理解は出来ない。彼女の持つ非凡な才を、尾張という片田舎で消費するだけにしておいたのは他ならぬ私達。そしてその才を生かせたのは・・・相良良晴殿だけだった。

 

けれども、諦めるわけにはいかない!

 

長秀の長い夜が始まった。

 

(第十一話 了)


 
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