No.452625

相良良晴の帰還9話

D5ローさん

織田信奈の野望の二次創作です。素人サラリーマンが書いた拙作ですがよろしければお読み下さい。注意;この作品は原作主人公ハーレムものです。又、ご都合主義、ちょっぴりエッチな表現を含みます。
そのような作品を好まれない読者様にはおすすめ出来ません。
追記:仕事の合間の執筆のため遅筆はお許し下さい。

2012-07-14 11:29:56 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:19496   閲覧ユーザー数:16302

「…これは…ひどくね?」

 

翌日、尾張でも有数の商家の中で行われた良晴の取引に、クロの額からはとめどなく汗が流れた。

 

彼が行っているのは、そう難しい取引ではない。簡潔に言えば、日常的に使用する発熱や腹痛に良く効く薬を山から採ってきた薬草等を用いて調合し、売り払っているだけなのだが、売り方がすごい。

 

自分で作った入れ物を利用して、値段を上げているのである。

 

やったことといえば、町で無地の木箱を買ってきて、毛筆を用いて効能等を書いているだけなのだが、書き方が効能を示す箇所が中国語で書かれていたり、箱の四隅に紋様が流麗に描かれていたりしているおかげで、いかにも高級そうな風体に仕上げている。

 

加えて箱の上蓋には五右衛門に調べてもらった御家断絶している漢方の名門の流派名と、花押(現代でいう判子)が本物と極めて似通った体裁でついているお陰で、相手の商人から見た良晴は身元不明の武士から一転、滅んだ漢方調合の名家の生き残りという上客に早変わりしている。

 

いくら良晴の調合レシピがこの時代の50年後の水準にあるといっても、これは詐偽(サギ)では・・・。

 

(…そうか)

 

ここまで考えが至ってようやく、クロは良晴の考えを理解した。

 

良晴の技能の()について。彼は確かにこの時代の50年後の知識は持っている。だが、それを信用させるまっとうな術が無いのだ。

 

それが自分に直接害をもたらさないものなら、一部の物好き等は面白半分で信じてくれるかもしれないが、今回のように金が絡む商売の話となれば、話は別である。

 

商売の基本は『安く買い、高く売る。』

 

たとえ、いくら優れた製品であろうとも、そのような怪しい理由で、値段をあげる者のは皆無であろう。

 

その問題を解決するためにとったのが、この木箱の細工である。

 

良晴自身が作成したこの箱は、それだけならば、ほとんど効力を持たない。

 

だが、その中身(・・・・)を合わせると、この時代に限り、効力を持つのだ。

 

まず第一に、豪商や大名でもない限り知らない筈の、中国の大国明の文体で書かれた文面と、毛筆で見事に描かれた紋様。

 

第二に、(一応)存在する名家という背景。

 

最後に、中身の優秀さ。

 

この3つを合わせる事で、未来の知識で作った薬を高値で売るために必要な『ブランド』を生み出したのである。

 

当然、バレれば只ではすまないが、この時代の戸籍などザル同然な上に、一族を殺された生き残りが名前を変えることがざらにあるため、話の辻褄があい、尚且つ腕がある相手を偽物と断定することなんて不可能に近い。

 

そこまで読みきって、良晴は堂々とこの売り方を選んだのである。

 

そう思いふけっているうちに話が着いたようで、良晴は行きの数倍に膨れ上がった銭袋を持って黒猫が待つ入り口に戻って来た。

 

「さあ、帰ろうか。」

 

早足で良晴が家に戻ると、音を聞きつけたのか、紙に何か書き連ねていた犬千代と五右衛門が顔を上げた。

 

「お帰りなさい(でござる)どうだった(でごさるか)?」

 

その問いに満杯の銭袋を掲げて答えると、逆に二人に問いかける。

 

「そっちの方はどう?出来れば二つか三つくらいの町の相場はあると嬉しいんだが。」

 

「五里以内の大きな町を十二調べ申した。」

 

「流石、で、さっき話した相場の方は?」

 

「良晴の言った通り、ビックリするくらい値段に差がある。」

 

犬千代の答えに笑顔でうなずき返すと、良晴は先ほど稼いだ金を銭袋ごと五右衛門に渡した。

 

「五右衛門、頼めるか。」

 

「当然でござる。『近辺の里の相場を調べ、相場の安い町で品物を買い、相場の高い町で売る。』良晴殿の策は単純であるが故に実行も容易いでごじゃる。・・・こほん、忍びとしての技を使えば関所代も掛からぬ上に、船を使えば時間もさほどかからぬ。良い主に巡り合えて嬉しいでごじゃる。」

 

「ありがとう…頼んだ。」

 

この戦国の世で、町から町に移動することはそう容易いことではない。野生の獣や、盗賊、敵国の武士など様々な障害が待ち受けている。

 

それでも文句も言わず主命に従う五右衛門を良晴はただ、抱きしめた。

 

「うにゅ!よ、良晴殿・・・にゃ、にゃにを。」

 

「約束してくれ。無理は決してしないと。君が死んだりするのは、嫌なんだ。」

 

「し、承知したでござる。だから良晴殿。放すでござる。せっしゃ、実はおとこがにがてでして!」

 

「ああ、でも戦いのときは平気そうだが…なんで?」

 

良晴は五右衛門を放すと、そう、疑問を口にした。

 

「そういうときは『獲物』として見ているから平気なのでござる。良晴殿のように…」

 

部下の自分に仲間だからと言って名前で呼ばせたり、下心無しで『女』として心配されると、嬉しいやら恥ずかしいやらで、よく分からなくなるのでごじゃる!

 

答えの後半は恥ずかしくて口に出来なかった五右衛門は、心の中にその続きを閉じ込めて素早くその場を去った。

 

後に残されたのは、頭に疑問符を浮かべた良晴と、心なし不機嫌そうな犬千代。

 

「・・・良晴」

 

「ん?」

 

「犬千代頑張った。御褒美。」

 

「いいよ、何が良い。」

 

そう答える良晴に、犬千代は畳んである布団を指すことで答えを示した。

 

「犬千代・・・分かった。」

 

ここで断るのは野暮というものだろう。

 

良晴は、犬千代の唇に、自分のそれを重ね合わせた。

 

(第九話 了)

 

 


 
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