No.447461

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史編ノ十九

 
 お待たせいたしました。

 今回より反董卓連合編に入ります。

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2012-07-06 20:40:37 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:10076   閲覧ユーザー数:7448

 黄巾の乱の終結後、一時は平穏を取り戻したものの、漢王朝の腐敗

 

 ぶりはもはや止めようも無い程になっていた。霊帝の死に始まり、

 

 遂に大将軍である何進が暗殺され、しかもそれを命じた黒幕である

 

 十常侍までもが何進の元部下に皆殺しになるまでの事態へと発展

 

 していったのであった。

 

 その中で唯一軍事力を保持した状態で残っていた董卓が事態の収拾

 

 にあたった結果、宮中の混乱は一時的ではあるが収まりをみせた。

 

 そしてその功により、董卓は「相国」の位を授かり政を担う事に

 

 なったのだが、それは新たなる動乱の幕開けでもあったのである。

 

 

 

 

 

 

 ~南皮にて~

 

「斗詩さん、猪々子さん、準備の方は進んでいますかしら?」

 

「はい、麗羽様。言われた通りに董卓打倒の檄文を大陸中の各諸侯へ

 

 送っておきました」

 

「後は姫が集まった諸侯に号令をかけるだけっすね!」

 

「お~~~~~ほっほっほっほっほっほ!!猪々子さん、まだ私が

 

 総大将になるって決まったわけではありませんことよ。まあ、しかし

 

 勢力といい、血筋といい、諸侯に号令をかけられるほどの力を持って

 

 いるのは大陸中探してもこの袁本初しかいませんでしょうけどね。

 

 ああ、生まれつき身についていたとはいえ、私のこの身より滲み出る

 

 他の者より抜きんでた威厳が憎い…」

 

「いよっ!総大将!!」

 

「お~~~ほっほっほっほっほっほ!お~~~~~~~ほっほっほっほっ

 

 ほっほ!!」

 

「はあ~っ、本当に大丈夫なのかなぁ~…」

 

 ちなみにわかっている事とは思うが、意味も無く高笑いをあげているの

 

 が袁紹であり、これまた意味も無く袁紹をもちあげているのが文醜、

 

 最後にため息をついているのが顔良である。

 

 袁紹が何故董卓打倒の檄を発したかというと、一言で言ってしまえば

 

 ただの嫉妬でしかない。実は何進の元部下をたきつけて十常侍を排除

 

 させたのは他ならぬ彼女であり、本当なら混乱した洛陽へ自ら乗り込み

 

 権力の座に就こうと画策したのであるが、董卓に素早く収拾されて出番

 

 が無くなったばかりか、董卓が相国の地位に就いてしまったのだから

 

 袁紹にしてみればたまったものじゃない。

 

 ならば、今度は董卓を悪役に仕立て上げて自分が諸侯を率いてこれを

 

 討ち、今度こそ自分が権力を握らんと企んだのである。

 

 …正直どっちが悪役なのか疑問に思うところもあるのだが。

 

 

 

「私が常に正しいのに決まってますわ!!」

 

「どうしたんすか、いきなり叫んだりして?」

 

「何故かはわかりませんが言わなければいけないような気がしたのですわ。

 

 それより斗詩さん、檄文を送った方々の名簿はあるかしら?」

 

 袁紹に聞かれた顔良は文醜に尋ねた。

 

「檄文を送った諸侯の名簿は文ちゃんが持っていたよね?」

 

「ああ、そうだった。ほい、斗詩」

 

 文醜より名簿を受け取って点検した顔良が怪訝そうな顔をする。

 

「どうした?何か変か」

 

「これって最後に点検したのって文ちゃん?」

 

「いや、あたいは姫から預かったのをそのまま部下に渡しただけだけど?」

 

 文醜はあっけらかんとそう答える。…正直それはどうかと思うのだが。

 

「では姫が点検を?」

 

「私は猪々子さんが点検するものだと思ってましたから何もしてませんわ」

 

 袁紹は、これまたあっけらかんと答える。

 

「はあ~~~~~~っ………」

 

 二人の反応に顔良は盛大にため息をついていた。

 

「そんなにため息ばかりついていると幸せが逃げますわよ」

 

「そうだぞ、でも斗詩の事はあたいが幸せにするから問題ないけどな!」

 

「……………」

 

 二人の的外れな言葉に顔良はため息すらも出て来なくなった。

 

「ところで斗詩、その名簿何かおかしいのか?」

 

「…荊州南郷郡の太守の北郷さんの名前が無いんだけど、文ちゃん送った?」

 

「北郷?…さあ?あたいはその名簿に載っている諸侯に檄文を送っとけって

 

 指示しただけだし」

 

「そもそも北郷さんって誰ですの?斗詩さんのお知り合い?」

 

「南郷郡の太守で黄巾の乱の時に数倍の敵を何度も打ち破った噂は南皮にも

 

 聞こえてたじゃないですか。それに張勲さんが…」

 

「思い出しましたわ!美羽さんの所の腹黒女がけちょんけちょんにされて南陽

 

 にすごすごと帰っていったというのがそこの人でしたわね」

 

「おお~っ、そういえばそんな話もあったっすね~」

 

 袁術の所とは元々仲が悪いとはいえ、袁紹達はそういう事だけしっかり覚えて

 

 いたようだ。

 

「それで?そこに檄文が届いてなかったら問題でもあるのですか?」

 

「もし北郷さんが董卓側に付いたらどうするのですか!?」

 

「あたいが全てぶっ飛ばす!!その南郷郡の西郷だか東郷だか知らないけど、

 

 あたいと斗詩にかかればイチコロだぜ!!」

 

「さすがは猪々子さんですわ!」

 

「はっは~っ!任せておいてくださいよ、麗羽様!!」

 

「お~ほっほっほっほっほっほ!お~~~ほっほっほっほっほっほ!!」

 

「……仕方ない、私から改めて北郷さんに檄文を送っておこう」

 

 完全お気楽思考の二人には何を言っても通じないと改めて感じた顔良は、諦め顔

 

 でそう呟いた。

 

 

 

 ~平原にて~

 

「愛紗ちゃん、鈴々ちゃん、星ちゃん、姜維ちゃん、袁紹さんからこんな檄文が

 

 届いたんだけど…」

 

 劉備から檄文を受け取った趙雲が中身を確認する。ちなみに趙雲は劉備がこの

 

 平原の相に任じられて程無く幕下に加わっている。

 

「何々、『董卓が洛陽にて暴虐の限りを尽くした政を行っているので皆で討伐しよう』

 

 ですか。確かにそのような噂は耳にしてますが…」

 

「その噂はもはや大陸中に広まっている。洛陽の民はそれによって苦しんでいるそう

 

 ではないか!」

 

「そんな悪い奴らはみんな鈴々がぶっ飛ばしてやるのだ~~!」

 

 関羽と張飛はすぐに賛同しようとするが…。

 

「待て愛紗よ。本当にこれが真実なのか?」

 

 趙雲は疑問を呈する。

 

「星とて噂を聞いたと言っていたではないか!」

 

「私が聞いたのは噂であって真実では無い。この檄文をそのまま信じてしまって、

 

 もし違っていたらどうするのだ?」

 

「ぐっ…」

 

 趙雲に言った事に対して関羽は何も言い返せない。

 

「姜維ちゃんはどう思う?」

 

 劉備に聞かれて姜維は口を開く。

 

「私としては真実よりも今我々がどう行動するかを考えるべきだろうと思う」

 

「どういう意味だ、姜維。もしこの檄文が真実で無くても参加した方が良いとでも

 

 言うのか?」

 

「確かに真実は重要だ。しかし時にはそれに背を向けて進まなくてはならない時も

 

 あるという事だ」

 

「だからそれが連合に参加するべきという事なのかと聞いている!!」

 

 姜維の意見に対して関羽は苛立ち混ぎれに聞き返す。

 

 …実を言えば、黄巾の乱の後、この二人が話をするといつもこのような調子で

 

 先に進まない事が多い。それは二人がお互いを信用してないからに他ならないの

 

 だが、劉備と張飛にはそれを止める術も修復する術も無く、趙雲はそれに関して

 

 は一歩引いた所で見ている感があり、全く進展が無いまま今日まで至っている。

 

 とはいえ、ここでそのような事をしていても仕方がないと判断したのか…。

 

「桃香様、ここは主君であるあなたがどうするかを決めるべきでしょう」

 

 趙雲は劉備が判断すべきと進言する。

 

「うっ…そうだよね。……では私達は連合に参加する事にします」

 

「「「「はっ(応っ、なのだ)!!」」」」

 

(でも本当にこれで良かったのかな?…北郷さん、あなたならどういう選択をする

 

 のですか?)

 

 

 

 

 ~陳留にて~

 

「以上が袁紹よりの檄文です」

 

 荀彧が檄文を読み上げ終えると玉座の間には静寂が訪れる。

 

「どうせあの麗羽の事だからある事ない事書いているんでしょうけど、よくそこまで

 

 人の悪口ばかり書けるものね」

 

 曹操はげんなりした顔でそう呟く。

 

「しかし華琳様、袁紹の呼びかけを無視するわけにもいきません」

 

「そうね…桂花はどう思う?」

 

「はい、私としては連合に参加すべきと思いますが…」

 

 荀彧は珍しく言いよどむ。

 

「どうしたの?何か問題でも?」

 

「問題というほどのものでもないのですが、南郷郡の北郷がどう動くのかが…」

 

 荀彧の口から思いもよらない名前が出て来たので、曹操は驚きを隠せない。

 

「えっ!?…まさか桂花の口からその名が出て来るとはね。男が治めている所など

 

 問題ないんじゃなかったの?」

 

「男だ女だと言ってたら真実は見えないと華琳様に言われて、少し冷静に分析して

 

 みた結果です。あそこの兵は練度、速度共に他の諸侯よりずば抜けて高い上に

 

 南郷郡の位置からなら連合の背後を衝く事も董卓側に援軍として行く事も容易に

 

 出来ます。それに数倍の敵を幾度も打ち破ったという事実が敵に回った人間の

 

 心を圧迫していく可能性が高いです。しかも北郷は董卓とも繋がりがあり、檄文

 

 が嘘である事がわかるはずです。以上の事から北郷の動向が懸念されます」

 

 荀彧がそう述べると、曹操は我が意を得たりとばかりに微笑む。

 

「確かに桂花の言う通りね。北郷がどちら側につくか、それによってこの戦いは

 

 大きく変わるでしょう…だけど、私は連合に参加しようと思っているわ」

 

 曹操の言葉に、珍しく許楮が意見を述べる。

 

「どうしてですか?その北郷っていう人に確認してからの方がいいんじゃないの

 

 ですか?」

 

「季衣の言ってる通りにできたらいいのだけど、そんな猶予は無いわ。おそらく

 

 麗羽の事だから、連合に参加しなかったり、迷ってたりする所は容赦無く叩き

 

 潰していくでしょうしね。残念だけど、まだ麗羽とやり合う時期でもないわ。

 

 もし北郷が味方になれば良し、よしんば敵となっても良い好敵手ができると思

 

 えばいいのよ」

 

「さすがは華琳様、素晴らしいお言葉です。この夏侯元譲、どのような敵が現れ

 

 ようとも全て叩き潰してみせましょう!!」

 

 夏侯惇のその言葉を最後に議論は連合に参加という事で決した。

 

 

「う~~~~~ん」

 

「どうした、季衣。先程の事なら華琳様のお決めになった事だ。もはや覆す事は

 

 出来ぬぞ?」

 

 何やら唸り声をあげていた許楮に夏侯惇がそう声をかける。

 

「あ、春蘭様。その事じゃないんです。僕の手紙はもう村に着いているはずなのに、

 

 全然流琉が来ないんでどうしたのかなぁと…」

 

「ん?それは誰なのだ?」

 

「季衣が呼びたいって言っていた友達の事ね?確か典韋といったかしら?」

 

 そこへ通りがかった曹操が話に入る。

 

「はい、そうなんですけど…おかしいなぁ。ちゃんと手紙着いてないのかなぁ?」

 

「おそらく彼女の方に何か都合があって遅れているのでしょう。もし私達が留守の

 

 間に訪ねて来たら連絡が来るようにしておくわ」

 

「ありがとうございます、華琳様!」

 

 許楮はそう言って喜んでいたが…その典韋が既に一刀の将となっている事も、思い

 

 もよらない再会が待っている事も、まだこの場にいる誰も知らなかったのであった。

 

 

 

 

 ~南陽にて~

 

「ねえ、袁術ちゃん。こんなのが私の所に来たんだけど?」

 

 孫策は袁紹から来た檄文を袁術に見せた。

 

「これは麗羽姉様からの檄文…孫策の所にも来てたのかや?」

 

「わざわざ孫策さんの所に送らなくても私達から指示しますのに」

 

 張勲のその言葉に孫策はキレそうになるのを必死に抑える。

 

「…で、どうするの?参加するの?」

 

「妾は麗羽の言いなりになるなんて嫌なのじゃが、七乃が参加した方がいいと

 

 言うので参加する事にしたのじゃ!」

 

「まあ、そんなわけなんで孫策さんも準備の方をお願いしますね~」

 

「了解。ところで袁術ちゃんは全軍で行くつもりなの?」

 

「当然、全軍で行くのじゃ。麗羽に負けるわけにはいかぬからの」

 

「ほぼ全ての諸侯が参加する以上、攻められる心配は無いですからね~」

 

「そっ、わかったわ」

 

 ・・・・・・・・・・

 

「ふう、ただいま」

 

「どうだった、雪蓮?袁術の様子は」

 

 館へ帰って来た孫策を周瑜が出迎える。

 

「冥琳の言った通り、袁術の頭の中は袁紹に対抗する事で一杯のようね」

 

「そうか、ならばこちらも計画を進められるな」

 

「あっちからの返事は?」

 

「今、明命に聞きに行かせている。今までのやり取りから考えれば九分通り

 

 こっちの思惑通りに行くはずだ」

 

 周瑜はそう言ってほくそ笑む。

 

「そう、なら良かった。でも私達とあそこだけでいけるの?」

 

「それについては向こうに考えがあるらしい」

 

「ふふふ、楽しくなってきたわね」

 

「雪蓮、これからが正念場だぞ」

 

「わかっているわよ」

 

(これでやっと悲願が達成できるわね。後はあっちがうまく進めてくれれば…)

 

 

 

 

 ~涼州・武威にて~

 

 太守である馬騰がある人物と面会していた。

 

「久しぶりだね、輝里」

 

「はい、葵(あおい・馬騰の真名)様もお元気そうで」

 

 何とそれは輝里だった。

 

「こちとらいつも五胡の連中とやりあわなくちゃならないんでね。病気になってる

 

 暇は無いんだよ。ところで、こうやって来てくれたって事はやっと私に仕えて

 

 くれる気になったという事かい?」

 

「申し訳ありません。葵様にはここに滞在中いろいろとお世話になっていて、その恩

 

 も返せてはないのですが、私は既にお仕えしている主君がおりまして…」

 

「南郷郡太守の北郷とかいったかしらね。その者が何度も数倍の敵を打ち破ったという

 

 噂はここにも聞こえているよ。確かにあんた程の知恵者がついていればそれも容易い

 

 だろうね」

 

「残念ながら、その策を献じたのは私ではありません」

 

「それじゃ噂の諸葛亮って軍師は実在するんだね」

 

「はい、彼女の知恵はまさに神がかり的なものがあります。それに比べたら私の知恵

 

 なんか所詮は人の知恵でしかありません」

 

 輝里のその言葉に馬騰は驚く。

 

「輝里にそう言わせる程の知恵者とはね…でもそんな軍師がいるなら輝里の出番は無い

 

 んじゃないのか?うちに来てくれればいつでも正軍師として迎えるぞ?」

 

 馬騰のあからさまな誘いに苦笑しながら輝里は答える。

 

「そのお申し出はうれしいですが、私は北郷様の為のみにこの智を捧げると決めてます

 

 もので、お断りさせていただきます」

 

「あんたにそこまで言わせるとはね…まあ、いいわ。それじゃ本題に入りましょうか」

 

 馬騰はそう言うと居住まいを正す。それに合わせて輝里も神妙な面持ちで言葉を発する。

 

「それでは、我が主、北郷一刀よりの依頼を伝えます…」

 

 

 

 

                             続く(既定路線)

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回よりしばらく反董卓連合編です。

 

 今回はその序章という事で駄名族の高笑いの巻です。

 

 一刀と朱里、そしてもう一方の当事者である月さん達の出番は

 

 次回という事で、もう少々お待ちください。

 

 それでは次回、外史編ノ二十でお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 

 

 追伸 今回、麗羽さんにあそこまで高笑いさせるつもりは無かった

 

    のですが、気がつくと高笑いの連発でした…。

 

    ちょっとうるさかったかな…?

 


 
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