No.444303

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史編ノ十八


 今回はまた他の勢力の方々との接触です。

 遂にあの人材マニアが一刀達の前に姿を現します。

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2012-07-01 19:54:46 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:10043   閲覧ユーザー数:7423

 

 黄巾の乱の終結から数ヶ月が経ち、天和達の拠点にする為に造った

 

 芸人達が芸を披露する為の施設には大陸中から旅芸人達が集い始め、

 

 それを目当てにやって来る人で日々賑わっていた。というのも、

 

 俺が朱里と考えた現代の警察制度を元にした警備体制が整い、今や

 

 南郷郡は大陸で最も安全な街と言われるまでになったからだ。 

 

 だが、芸人の芸を見る為のみで来る人ばかりではないのは、当然の

 

 事なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~陳留にて、玉座の間~

 

「本当に華琳様自ら行かれるおつもりなのですか?」

 

「そうよ。南郷郡でどれだけの政が行われているのか、間者からの報告

 

 だけではわからない部分が多いわ。やはりこの目で確かめないとね」

 

「しかし道中で何かあっては…」

 

「あら、桂花はこの私が賊ごときに遅れをとると思ってるのかしら?」

 

「そんな事はありません!しかし…」

 

 曹操は自らの目で噂に聞く南郷郡の賑わいを見ようと決めたが、軍師

 

 である荀彧はわざわざ危険を冒してまで曹操自らが行く必要は無いと

 

 主張しているようだ。

 

「はっはっは!!心配する事は無い!華琳様に危害を加えようとする輩

 

 どもは全てこの夏侯元譲が成敗してくれるからな!!」

 

 その二人の会話に夏侯惇が割って入る。その瞬間、荀彧は明らかに嫌

 

 そうな顔をしていた。

 

「そういう事を言ってるんじゃないの!!私が言いたいのは…」

 

「男が治める所になんか行く必要は無いとでも言いたいのか?」

 

 荀彧の話に割って入ったのは、夏侯惇の妹である夏侯淵だった。

 

「ぐっ…」

 

 夏侯淵の指摘に荀彧は言葉を詰まらせる。どうやら図星だったようだ。

 

「桂花、あなたが男嫌いなのは知っているけれど、それじゃ真実は何も

 

 見えないわよ。それに実際あそこを切り盛りしている軍師は女の子だ

 

 という話だしね」

 

「…わかりました。しかし、必ず護衛はつけてください。もしもの事も

 

 ありますので」

 

「はっはっは!私と秋蘭がついているのだ!!そんな心配など無用だ!!」

 

 

 

 

 夏侯惇は自分と妹が一緒に行くのが当然のように言うが…。

 

「春蘭様と秋蘭様だけなんてずるい!僕だって行きたいのに」

 

「ウチも連れていってほしいなぁ~」

 

「沙和も行きたいのぉ~!」

 

 許楮・李典・于禁の三人が自分も行きたいと主張していた。

 

「何を言うか!華琳様の御身をお守りするのは昔から私と秋蘭の役目と決ま

 

 っているのだ!」

 

「それを言うなら、僕だって親衛隊の隊長なんだから華琳様の護衛をする役目

 

 がありますよ~!」

 

「ウチらかて華琳様をお守りする事くらい出来るで!」

 

「そうなの!そのくらい出来るの~!」

 

 そのままでは決着がつかないと判断したのか、曹操が裁断を下す。

 

「それじゃ仕方ないからくじ引きで決めましょう。春蘭・秋蘭の組か季衣・

 

 真桜・沙和の組のどちらか当たりをひいた方を連れて行くわ」

 

 そしてくじ引きの結果…。

 

「はっはっは!私と秋蘭の勝ちだな!!」

 

 こうして曹操のお供に夏侯姉妹が行く事になった。…もし許楮達が行く事に

 

 なっていたら南郷郡で運命的な再会があったのであろうが、運命はまだ彼女

 

 らを引き合わせないようである。

 

 

 

 

 そして曹操一行は南郷郡へ到着した。

 

「ここが…この賑わいは報告以上ね」

 

「はい、しかも治安は陳留や洛陽よりも遥かに良いようです。大陸で一番安全な

 

 街という噂もあながち間違っていないようです」

 

 曹操達は驚きを隠せないようである。そのくらいこの街は賑わっていた。

 

「華琳様、あれは何ですか?あの店、店員がいないようですが…」

 

 夏侯惇が指差したのは、籠の中に野菜が置かれていてそれが幾つか並んでいる店

 

 であった。『野菜直売所』という看板が横に立っているだけで売り子の姿が何処

 

 にも見えない。それは現代人にはお馴染みの無人販売所なのだが、この時代の感覚

 

 ではありえない物ではある。それを実現できるようになったのは一刀と朱里の努力

 

 と超人的な能力の賜物なのであるが、その内容はここでは割愛させていただく。

 

 ただ、こういう物が置けるまでにこの街の治安と街に住む人間の良識は安定して

 

 いるとだけ付け加えるものである。

 

「横に置いてある箱に『支払いはこの箱の中へ』って書いてあるけど…まさかこれ

 

 で商売が成り立つのかしら?」

 

 曹操が訝しげに見ている横を一人の婦人がやってきて、野菜を二つ三つ選んで箱

 

 の中にお金を支払って帰っていった。

 

「どうやらこの街では本当にこれが通用しているようですね…」

 

「ここまでの物が実現できるなんて、例の太守と軍師の手腕は予想以上のようね。

 

 楽しみになってきたわ」

 

 ぐぅ~~~~~~~~。

 

 その時、夏侯惇の腹が盛大に音を立てる。

 

「姉者…まだ昼まで大分あるだろう」

 

「い、いや、これは別にここにある野菜が美味しそうだなとかそう思ってたらお腹が

 

 すいてきたとかそういう事ではなくてだな…」

 

「春蘭、言い訳はいいの。…仕方ない、ちょっと早いけれど昼食にしましょうか」

 

 そして三人は食堂街へと向かった。

 

「これは…随分とたくさんの店がありますね。陳留の倍…いや、五倍位は」

 

「どこが一番なのかしらね?…春蘭は何か食べたい物はある?」

 

「華琳様が食べたい物なら何でもご一緒させていただきます!」

 

「はぁ~っ、仕方ないわね。その辺りの人に聞いてみようかしら。そこの者、ちょっと

 

 いいかしら?」

 

 

 

「そこの者、ちょっといいかしら?」

 

 午前の見回りも終わり、少し早いが昼食にしようと食堂街に行くと後ろより俺に声を

 

 かけてくる人がいた。

 

「はい、どうかしましたか…」

 

 答えるべく後ろを振り向くと、そこにいたのは…。

 

「どうかしたのかしら?私の顔に何かついているとでも?」

 

 こちらでは少々露出の多い服を着ているが、その体型といい、金髪のクルクルといい、

 

 何よりその身より発せられる覇気は前の外史と変わりが無い。…華琳だ。そして後ろに

 

 控える二人に至ってはまったく変わりが無い。…春蘭と秋蘭だな。まさかこんな所で

 

 ここの世界の曹操ご一行に会うとは…しかし、なぜここに?

 

「話は聞こえているかしら?」

 

「ああ、申し訳ない曹操殿…」

 

 その瞬間、曹操の顔色が一変する。

 

「何故、私の事を知っている!」

 

「さては他国の間者か!華琳様、お下がりください!こやつめは私が!」

 

 そう言うやいなや夏侯惇は剣を振り下ろす。…くっ、ここでもこいつはこんなのか!

 

 俺はその一撃を何とか刀を抜いて受け止める。

 

「ほう、私の一撃を受け止めるとはなかなかやるな!だが、これはどうだ!!」

 

 夏侯惇は矢継ぎ早に攻撃を叩き込んでくる。

 

 俺は何とかそれを避けたが…次にあれが来たら正直やばいな。

 

「もらったぁぁぁぁぁぁ!」

 

 勢いに乗った夏侯惇が剣を振り下ろした瞬間。

 

「させるかぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 間一髪駆けつけた霞がその一撃を受け止める。

 

「くっ、新手か」

 

 

 

「お前ら何しとんねん!こいつが南郷郡太守代理の北郷一刀と知っての狼藉か!!」

 

 霞が怒りをあらわにして叫ぶ。…『こいつ』というのが少々気になるが。

 

 その瞬間、三人の顔色が変わる。

 

「えっ、そいつが太守…」

 

「…華琳様、周りの様子が」

 

「…これはやばいわね」

 

 気がつけば曹操達の周りを兵が取り囲んでいた。

 

「ほう、こいつが太守とは知らなかったようやな。でも、いきなり剣で斬りかかる

 

 のが陳留の流儀なんか?曹操はん」

 

「私の事は既にばれているようね」

 

「ああ、あんたらがこの街に入った辺りからな」

 

 …俺は初耳だったのだが。

 

「それを一刀に知らせるように朱里に言われて向かってた時に一刀が絡まれてるって

 

 知らせてくれる人がいてな。…しかし危ない所やったな」

 

「霞が来てくれなかったらちょっとやばかったかもね」

 

「わ、私が悪いのではないぞ、その男がいきなり華琳様の名前を呼ぶから…」

 

「おい、夏侯惇。真名を呼ばれたわけちゃうんやろ?なら、あんたの反応が過剰

 

 すぎるだけや。曹操はんは結構有名人なんやから名前位呼ばれる事もあるん

 

 ちゃうの」

 

「ぐっ…」

 

 霞にそうツッコまれると夏侯惇は口を噤む。

 

「ふう、確かに部下の行動を止めなかった私にも責任はあるわね。申し訳ない、

 

 北郷殿」

 

 曹操はそう言って俺に頭を下げる。

 

「こうして皆無事なわけだし、もう気にしてないから。頭を上げてください、

 

 曹操殿」

 

 

 

 そしてそのまま俺達は曹操達と一緒に昼食をとる事になった。

 

「ところで何故曹操殿自らここまで来られたのですか?」

 

「噂に聞く南郷郡の賑わいと治安の良さの確認の為よ」

 

 俺の疑問に曹操は即座にそう答えた。

 

「それだけの為に?」

 

「ええ、報告や噂だけではわからない事は多いものだからね。本当はこうやって身元を

 

 明かすつもりは無かったのだけど、さすがと言うべきね」

 

 おそらく『さすが』というのは俺が曹操の名前を言った事より、街に入った所で既に

 

 マークされていた事についてだろう。

 

「治安を保つ為には、何より情報が重要だからね」

 

 などと偉そうに言ってはみたものの、情報関係の部署はまだ未完成部分が多い。一応

 

 朱里と輝里が中心になってやってはくれているが。

 

「ご主人様、お待たせいたしました」

 

 そこへ朱里がやって来た。

 

「あら?その娘は…?」

 

「この娘が俺の軍師を務めてくれている諸葛亮です。朱里、曹操殿へご挨拶を」

 

「初めまして、諸葛亮と申します」

 

 朱里が名乗ると曹操達は一斉に息をのむ。

 

「あなたが…あの諸葛亮?」

 

「はあ、…『あの』がどのような物かは知りませんが、諸葛亮です」

 

「本当であれば城にお招きする所ではあるのですが、曹操殿もお忍びで来られている

 

 事ですし、ここでお話をと思いましてね。大した話も出来ませんが」

 

 そして昼食がてらいろいろと話をしていた。特に朱里と曹操は二人とも頭の回転が

 

 早い事もあって話がはずんでいた。ちなみにその他はというと…。

 

「秋蘭…華琳様とあのちびっ子軍師は何を話しているんだ?」

 

「私もある程度はわかるが…あの会話についていけるのは桂花位だろう」

 

「一刀はあの二人の話の内容がわかるか?ウチはさっぱりや」

 

「俺もあれにはついていけない…」

 

 早々に会話に加わる事をあきらめて食事に没頭していた。

 

 

 

「今日は有意義な一日だったわ」

 

 気付けば夕刻頃になっており、曹操達は帰ると言うので門まで見送りに来ていた。

 

 俺は一晩泊まって明日の朝帰る方が安全だと言ったのだが、あまり長居は出来ない

 

 のでこのまま帰るとの事だ。まあ、この三人なら少々の危険も問題なさそうだが。

 

「北郷、この街の賑わいと治安の良さは噂以上だったわ。私も負けてはいられない

 

 わね」

 

「曹操殿が本気であたれば、すぐにでも追い抜かれそうだけどね」

 

「あら、お上手。お世辞はありがたく受け取っておくわ。…それはそうと」

 

 曹操殿は急に改まって話をし始める。

 

「貴方達、私に仕える気はないかしら?」

 

 突然の話だ。曹操の事だ、おそらく本気で聞いているのだろう。

 

「だが、曹操殿。俺は一応漢王朝に仕える身だけど?」

 

「それはわかっているわ。でも、私はこのまま漢王朝の一太守として終わるつもりは

 

 ないわ。そもそも漢王朝自体がもう意味を成していないわ。だから私は…」

 

「乱世の奸雄になるとでも?」

 

「…!何故それを!?…ふふふ、わかっているのなら結構。その時に貴方達の力を私の

 

 為に役立てる気はないかという事よ」

 

 曹操は乱世を利用して自らの力でのし上がろうとするつもりらしい。そしてその覇業

 

 に力を貸せという事か。

 

「悪いが、今それを返答する事は出来ない。そもそも俺達の力があなたの覇業の役に立つ

 

 かもわからないのでね」

 

「あら、そんな事は無いわよ?この街で行っている事を何十倍何百倍の規模でやってもら

 

 うだけの事よ。そしてそれは私に望外の利をもたらす事になるわ」

 

「例えそうだとしても、俺は今は漢王朝よりこの南郷郡を任されている身だ。そして貴方

 

 に力を貸す事がこの大陸の未来の為になるかどうかわからない以上、今返答する事は

 

 出来ない」

 

 

 

 

 俺がそう言うと、曹操はため息をついてから言い放つ。

 

「ふう、わかったわ。ならば、今は保留という事で聞いておきましょう。でも、そんなに

 

 迷っている時間は無いわよ」

 

「…? それはどういう事だ?」

 

「貴方達だってわかっているはずよ。もうすぐ大きな戦乱が再び起きるわ。そして、この

 

 大陸は乱世の時代に突入していく。そうなった時にどうするのか、今の内にちゃんと

 

 考えておかないと貴方は何も守れないという事よ」

 

 曹操の言う通りだ。…そして俺と朱里はそれを一度経験している。

 

「確かに貴女の言う通りだろうね。でも、貴女に力を貸すとは限らないけどね」

 

「何だと!華琳様がここまで仰っておられるのに、その態度は何だ!!華琳様、こやつは

 

 ここで成敗するべきです!」

 

「落ち着きなさい、春蘭。今ここでそのような行動に出たって成功なんかしないわよ」

 

「姉者、今この周りにも多くの兵が伏せられているのはわかるだろう。北郷達に危害を

 

 加えようとすれば、その瞬間に我々は針鼠にされるぞ」

 

「ぐっ…」

 

 曹操達に指摘されて夏侯惇は言葉を詰まらせる…何かこの人こんなのばっかだな。

 

「話を戻すけど、私はあきらめたわけではないからね。私は欲しいと思ったものは全て手に

 

 入れてきたの。だから必ず貴方達を私の膝下にひれ伏せさせてみせるわ」

 

 そして曹操達は帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 俺と朱里は乱世となるこの外史を救うべくやって来た。果たしてどの道を行けば外史を

 

 救う道へとたどり着けるのだろうか?その決断の時はもう近くまで迫っていた。

 

「ご主人様…」

 

「大丈夫だ。元々こうなるのはわかっていた事だ。朱里こそ無茶しないようにね」

 

「私はご主人様の行く先へついていくだけですから」

 

「でも頼りにしているからね」

 

「はい!」

 

 

 

         

 

 

 

                                続く(つもり)

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は華琳様との出会いをお送りしました。

 

 しかし我ながら今回の話はちょっと無理やりだったかな…。

 

 一応次回から反董卓連合編に入る予定です。

 

 

 それでは次回外史編ノ十九でお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 追伸 私の事をお気に入りにしてくれている人が200人を超えて

 

    いました。

 

    応援してくれている皆様、ありがとうございます。

 

 


 
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