No.401327

特捜戦隊デカレンジャー & 魔法少女まどか☆マギカ フルミラクル・アクション

鈴神さん

見滝原市にて、謎のエネルギー反応が続発する。一連の現象について調査をすべく、見滝原市へ急行するデカレンジャー。そこで出会ったのは、この世に災いをまき散らす魔女と呼ばれる存在と戦う、魔法少女と呼ばれた少女達。本来交わる事の無い物語が交差する時、その結末には何が待っているのか・・・
この小説は、特捜戦隊デカレンジャーと魔法少女まどか☆マギカのクロスオーバーです。

2012-04-01 21:05:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2110   閲覧ユーザー数:2057

Episode.03 エンカウント・マジカルガール

 

東京都紫蘇町に、カレーが評判の喫茶店がある。名前を『恐竜や』といい、店主が恐竜好きだった事から、恐竜の化石を模した特徴的な内装をしていた。

そんな恐竜やのカウンター席に、三人の男女が座っていた。目の前には、それぞれカレーが置いてある。

 

「ドギーはん。頼まれていたもん、調べておいたで。」

 

「ありがとうございます、おぼろさん。」

 

犬の様な容貌をした男性は、S.P.D.地球署の署長、ドギー・クルーガーだった。隣に座る女性――おぼろに感謝を述べながら、以前に頼んでおいた調べものの資料が入ったファイルを受け取る。

 

「ええって。ウチのもんはこう言う調べもんは得意中の得意なんやから・・・」

 

「・・・しかし、内容を聞いた時には耳を疑いましたよ。まさか、こんなものが実在するなんて・・・」

 

「それはウチらかて同じや。せやけど、あの子等が悪戯でこんなもん送ってくる訳が無いわ。なあ、父ちゃん。」

 

「うむ・・・ワシも半信半疑だったが、間違いないだろう。『彼女達』は実在する。」

 

ドギーとおぼろと並んで座っていた男性――おぼろの父親、無限斎が難しい顔で頷く。

そんな二人の表情を横目に、ドギーは渡されたファイルの内容に目を通す。そこに載っている内容は、事前に連絡を受けた通り、絵空事にしか思えないような単語で占められた内容だった。

 

「せやけど、これが本当やったら、ドギーはんが今関わってるヤマはかなり危険やで。あの子達も、命からがら情報拾ってきたって言ってたさかい、大丈夫なんか?」

 

「・・・我々の仕事はいつも危険なものばかりです。それに、そんな危険が市民に及ばない様務めるのが我々の使命です。」

 

「そか・・・そんなら、私等はもう何も言わへん。精々、気ぃ付けや。」

 

「御忠告、感謝します。」

 

ドギーはそれから、カレーを食べ終わると会計を済ませにレジへ行く。レジに来たのは、行きつけになる頃からの馴染みの人物。

 

「ドギちゃん、また来てね。」

 

「杉さん、今度はスワンや深雪も一緒に来ますよ。」

 

恐竜やは、とある一年の間に都心の超高層ビルに本社を構える程に成長した、外食産業のナンバー1である。だが、会社はとある人外に乗っ取られ、本来社長となる筈だった杉下竜之介は、紫蘇町にある一号店のマスターを続けていた。

 

「あのワニが何かやらかしたら、すぐに言ってください。あの手の輩を相手するのには慣れていますから。」

 

「ははは、心強いねえ。それじゃ、お仕事がんばってね。」

 

会計を済ませると、ドギーは恐竜やを出てデカベースへと戻るべく、車に乗る。

 

(魔法が絡んでいるとなれば、やはり専門家を呼ぶのが得策か・・・)

 

恐竜やにて知り合った女性の事を思い浮かべつつ、捜査協力を依頼する事を考えながら、車を走らせるドギーだった。

 

 

 

「ティロフィナーレ!!」

 

その掛け声と共に、マミの持っていた大砲と見紛う様な巨大な銃から、弾丸が発射される。弾丸は目の前の黒猫に似た異形に命中し、大爆発を起こす。異形の消滅と共に、周囲の空間は、夜の公園へと戻っていく。

 

「いや~、やっぱマミさんってカッコいいねえ!」

 

「もう・・・見世物じゃないのよ。危ない事してるって意識は、忘れないでおいて欲しいわ。」

 

「イエース!!」

 

魔法少女の変身を解きつつ、陽気な調子のさやかの言動に対して、マミは若干呆れを含んだ言葉をもって注意する。

 

「グリーフシード落とさなかったね。」

 

「今のは、魔女から分裂した使い魔でしかないからね。グリーフシードは持ってないよ。」

 

「魔女じゃなかったんだ。」

 

「なんか、ここんとこずっと外れだよね。」

 

グリーフシードとは、魔女が孕んでいる黒い宝石状の物質であり、魔法少女は自分のソウルジェムに溜まった穢れをこれに移しかえる事で、再び魔法が使えるようになるのである。これが手に入らなければ、ソウルジェムの穢れを取り除く事が出来ないので、魔法少女にとっては死活問題になりかねないのだが、

 

「使い魔だって放っておけないのよ。成長すれば、分裂元と同じ魔女になるから。さあ、行きましょう。」

 

人の命を優先させて行動するのがマミのスタンスだった。そんな彼女の志に対し、まどかとさやかは尊敬の眼差しを向けていた。使い魔を倒し終えた三人は、そのまま公園を後にして家路に着くのだった。

 

 

 

まどか達が帰ってからしばらくしたのち、デカレンジャー達が現場に到着していた。現場にて発生したエネルギー反応を探知して急行したのである。

 

「結局、また収穫は無しか・・・」

 

「ドンマイ。それにしても、一体この事件の黒幕の正体は何なのかしら?」

 

現場に急行したが、すでにエネルギー反応が消失した後だった事にがっくりとうなだれるバン。そんなバンを励ますウメコだった。

数日前に起こった廃屋での戦闘の後、センとウメコ、テツの三人も合流した。その後、鑑識を戦闘現場であり、エネルギー発生源となっていた廃屋に呼び出し、現場検証を行った。だが、成果は上がらず、破壊したドロイドの破片を分析しても手掛かりは掴めなかったのだ。

 

「そういえば、この前の戦闘で、一人の女性が巻き込まれたそうですね。あの後、どうなったんですか?」

 

「ジャスミンに頼んで病院に運んでもらったんだが、その日の夜に目を覚ましたらしい。身体に異常もなく、翌日退院したそうだ。」

 

テツの質問に答えたのは、現場にて女性を保護したホージーだった。ホージーは、廃屋の前で倒れていた女性が目を覚ましたと聞き、取り調べに病院に行ったのだが、本人には廃屋での記憶は一切無いらしい。そして不思議な事に、女性の首筋に着いた紋章も消えていたのだった。

 

「ま、仕方ないさ。エネルギー反応の後を追うしか手が無い以上、こうして敵の痕跡を追うしか無いんだから。」

 

「それもそうだけど・・・」

 

センの言葉は納得できるものの、ジャスミンは不満なのか、何か言いたげだった。皆同じ気持である。ここ数日、エネルギー反応相手の追いかけっこを繰り返していたにも関わらず、何も収穫が無いのだ。現状を打開するための策がそろそろ欲しいと思っていた。

と、そんな時だった。

 

「ん?ボスからの連絡だ。」

 

SPライセンスに通話着信を知らせる音が鳴り、ホージーが通信モードをオンにする。

 

『皆、すぐにデカベースへ戻ってくれ。新しい情報が入った。』

 

その言葉に、デカレンジャー一同は喜色を浮かべた。この出口の見えない捜査に突破口が見えた、そう思えたのだった。

 

 

 

ドギーからの指示により、現場検証を鑑識に任せたままデカベースに戻った一同。だが、彼等を待っていたのは、信じられないような情報だった。

 

「魔法少女・・・ですか・・・」

 

「うむ。」

 

真顔で答えるドギーに対し、資料を渡されたホージーは戸惑う。それは他のメンバーも同じだった。皆、渡された資料を見て唖然としている。

 

「魔法少女・・・絶望や呪いから生まれた存在にして、禍の種を世界にばら撒く魔女と戦う者達。」

 

ドギーから渡された資料に書いてあったのは、『魔法少女』と呼ばれる、人知れず世界を守っている存在についての詳細だった。要約すれば、魔法少女と呼ばれる少女達は、魔法を駆使して魔女と戦い、世界を禍から救っているという内容だった。

 

「本当に、存在するんでしょうか?」

 

「『欲望のメダル』とか、『風都の半分こ怪人』とか、『通りすがりの世界の破壊者』の話なら聞いたことありますが、こんな都市伝説、聞いた事ないですよ。」

 

にわかには信じられないと言う様子で、ドギーに本当かと聞き返すセンとウメコ。ドギーが捜査関連でふざけた冗談をかますような人物ではない事は承知している。それに、資料に載っている魔女の使う『結界』や『魔女の口づけ』などの話を考慮すれば、全て辻褄が合う。だが、都市伝説かどうかも怪しい話なだけに、皆半信半疑だった。だが、

 

「いや、俺は信じるぞ!!」

 

半信半疑な一同の中で、バンだけはそんな事を言い出していた。ホージー、セン、ウメコ、テツはそんなバンを驚いたように見ていた。

 

「そうね・・・今まで思いつかなかったけど、『魔法』が絡んでいるっていう可能性はあるわね。」

 

バンに続き、ジャスミンも同様の意見を述べる。突拍子もない情報にも関わらず、信じ来ている様子の二人に、残りの四人は混乱する。

 

「皆、忘れたのか?エージェント・Xの事件を。」

 

バンの言葉に、今まで半信半疑だった四人は一転、「そうか!!」と納得した様な表情になる。

 

バンの言うエージェント・Xとは、以前デカレンジャーが戦っていたアリエナイザー達に犯罪を斡旋し、地球署の乗っ取りまでやってのけた凶悪犯罪者、エージェント・アブレラの後継者である。アブレラがデカレンジャーに倒された後も、その遺産たる販売網を利用して、数々の宇宙犯罪を斡旋し続けてきたアリエナイザーである。当時、ファイヤースクワッドも追っていた凶悪犯だったが、出身惑星、本名等一切の情報不明の、不可思議すぎる不可思議犯罪の黒幕とされていた。

その正体が判ったのは、後に『天空の花事件』と呼ばれるようになった事件での事である。『天空の花』とは、エージェント・Xが新たな破壊活動のために手に入れようとした石である。その正体は魔法の国、マジトピアに伝わる秘宝だった。そして、エージェント・Xの正体は、地上世界に仇なす地底冥府インフェルシア出身の冥獣人デーモン・アボロスだったのだ。

『魔法』という全く専門外の分野の敵を相手するためにデカレンジャーが共闘したのは、天空の花の持ち主として事件に巻き込まれた天空聖者の後継者達だった。デカレンジャーは、彼等の協力を得て、ついにエージェント・Xを倒し、天空の花を取り戻したというのが事件の顛末だった。

 

「I see・・・小津家のような魔法使いが居るなら、魔法少女がいてもおかしくないな。」

 

「そう言う事だ。そこで今回、事件捜査のために魔法の専門家を呼ぶ事にした。」

 

「もしかしてその人って!」

 

バンの言葉に、ドギーは無言で頷き、話を続ける。

 

「資料によれば、魔女は結界と呼ばれる異世界を縄張りに潜んでおり、普通の人間には見えないらしい。魔女と戦うため、俺が呼んだ魔法の専門家にSPライセンスに対魔法仕様の力を組み込んでもらう事にした。エネルギー探知機についても、魔力探知機能を付けてもらう事になる。これにより、魔女を相手に先回りが出来るようになる筈だ。」

 

ドギーの言葉に、希望を見出すデカレンジャー一同。これで魔女の足取りを掴み、魔法少女とコンタクトをとる事が出来れば、捜査は確実に進展を見せる。

その後、SPライセンスをデカベースのメカニック、白鳥スワンに預けてその日は解散となった。

 

 

 

まどか達と別れたマミは、一人夜の公園を歩いていた。幾つも立てられた、街頭の灯りの中、ソウルジェムを片手に歩き続ける。

 

「・・・・・」

 

周囲をざっと見回すと、マミはソウルジェムを指輪へと戻す。そして次の瞬間、後ろに人の気配が現れる。

 

「分かっているの?あなたは無関係な一般人を危険に巻き込んでいる。」

 

それに対し、マミは振り返りながら言いかえす。

 

「彼女達はキュゥべえに選ばれたのよ。もう無関係じゃないわ。」

 

だが、マミを見る少女――暁美ほむらの目は、どこまでも冷たかった。

 

「あなたは二人を魔法少女に誘導している。」

 

「それが面白くないわけ?」

 

「ええ、迷惑よ。特に鹿目まどか・・・」

 

「ふぅん・・・そう、あなたも気付いてたのね。あの子の素質に。」

 

「彼女だけは、契約させるわけにはいかない。」

 

「自分より強い相手は邪魔者ってわけ?苛められっ子の発想ね。」

 

その言葉に、ほむらの視線が絶対零度にまで下がった。

 

「宇宙警察も動き出している。私達魔法少女や魔女の存在もいつまでも隠し通せる物じゃない。今の内にあの二人には縁を切らせるべきよ。」

 

「キュゥべえの話では、宇宙警察は100%信用できるものじゃないそうよ。私達の力を狙って接触してくるかもしれないし、事情を知っているあの子達を放り出す事こそ危険よ。」

 

ほむらの口から出た、『宇宙警察』と言う単語。数日前の廃屋の戦いで結界から脱出したところ、いつの間にか廃屋は宇宙警察の人間達に囲まれていたのだ。当然、マミやほむらは捕まる事なく逃げ遂せたが、宇宙警察が魔女の存在を認知し始めているのは確かである。

それについてほむらはマミに警告を発するが、マミは宇宙警察に対して懐疑的な態度でほむらとの対立の意思を明確にした。

 

「あなたとは戦いたくないのだけれど・・・」

 

「なら、二度と会う事の無いよう努力して。話し合いだけで事が済むのは、きっと今夜で最後だろうから。」

 

それだけ言うと、マミは踵を返してほむらの前から立ち去っていく。ほむらはその後ろ姿を、怒りだけでなく、憐れみを含んだ目で見送っていた。

 

 

 

そして翌日。デカレンジャー達は、今日もいつも通りの手順で捜査を開始していた。

 

「これで、魔女の魔力を探知する事ができれば・・・」

 

他のメンバーと別れ、SPライセンスを見ながら呟くホージー。見た目はいつもと変わらないライセンスだが、その内部には、昨晩の内にドギーが呼びこんだ知り合いの魔法専門家と、メカニック担当のスワンが協力して作り上げた魔力探査装置が組み込まれていた。

 

「なんとしても、今日こそは手掛かりを掴んで見せる!」

 

そう意気込んで、魔女の探索のために愛車――マシン・ハスキーを走らせるのだった。

二、三時間ほど巡回をしていた頃だった。ふと、視界に病院らしき建物が入った。

 

(病院か・・・)

 

ホージーは、昨日ドギーから渡された資料を読み、魔女が人々の生命エネルギーを吸い取る事を知っていた。故に、病院のような弱った人々が集中している場所に魔女が現れれば、大惨事になる事も。

 

(念のため、寄っておくか。)

 

病院を調べる予定は無かったが、最悪のケースを予測して念のために調査をする事を決めるホージーだった。

 

 

 

そしてその頃、病院の敷地内では・・・

 

「グリーフシードだ!!孵化しかかってる!!」

 

病院を訪れていたまどかとさやかは、見舞い相手が都合が悪いと言う事で会えないために帰ろうとしていた所、壁にめり込んだグリーフシードを発見していた。

 

「嘘!何でこんな所に!?」

 

「まずいよ・・・早く逃げないと!もうすぐ結界が出来上がる!!」

 

「またあの迷路が・・・」

 

さやかの頭に浮かぶのは、入院している幼馴染。もし、ここで魔女が孵化などすれば・・・

 

「まどか、マミさんの携帯聞いてる!?」

 

「えっ・・・ううん。」

 

「マズったな・・・まどか、先行って、マミさんを呼んできて。あたしはこいつを見張ってる。」

 

「そんな・・・!!」

 

「無茶だよ!中の魔女が出てくるまでにもまだ時間があるけど、結界が閉じたら、君は外に出られなくなる!マミの助けが間に合うかどうか・・・」

 

「あの迷路が出来上がったら、コイツの居所も分からなくなっちゃうんでしょ?」

 

この病院に居る人間が、魔女の餌食になる・・・考えただけでも、ゾッとする。そしてそれは、さやかにとって大切な人を失う事になるかもしれないのだ。

 

「放っておけないよ、こんな場所で・・・」

 

「まどか、先に行ってくれ。さやかには僕が付いている。マミならここまでくれば、テレパシーで僕の位置が分かる。ここでさやかと一緒にグリーフシードを見張っていれば、最短距離で結界を抜けられるよう、マミを誘導できるから。」

 

「ありがとう、キュゥべえ。」

 

「私、すぐにマミさんを連れてくるから!」

 

まどかはそう言うと、バッグを地面に置いて病院の外へと走り出す。そして、まどかが居なくなってからさほど間を置かず、グリーフシードから光が溢れだした。後には、バッグが二つ、地面に残されているだけだった。

 

 

 

「魔力反応!?まさかこんなところで!?」

 

魔女の結界が出来上がる少し前、病院をパトロールで訪れていたホージーのSPライセンスは魔力反応をキャッチしていた。

 

「くっ!!」

 

病院内で走る事は原則禁止だが、今はそんな事を言ってはいられない。早くしなければ、魔女が現れるかもしれないのだ。ライセンスが示す魔力反応の場所を目指して走り、ホージーはとある無人の病室に辿り着く。病室の向こう、窓の外に駐輪場が見える場所の柱に、黒い歪みが発生していた。そして次の瞬間、病室が歪みから発生した光で溢れ返る。

 

「エマージェンシー・デカレンジャー!!」

 

ホージーはそれを見るなり、ライセンスを構えて変身する。

 

「フェイス・オン!!」

 

デカスーツを身に纏ったホージーは、迷うことなく光の中へ飛び込んで行った。

 

「ここが・・・結界。」

 

光が収まると、そこにはバンのライセンスに残っていたメモリー映像と同様、様々な物が支離滅裂に存在する光景が広がっていた。ホージーはディースナイパーを構えて結界の奥へと進む。

 

「こちらホージー。聞こえるか?」

 

歩を進めながら、ライセンスを取り出して外に居る仲間たちへ連絡を試みるホージー。スワンの話では、対魔法仕様となったライセンスならば、隔離された結界の様な空間からでも外部へ連絡が取れると言う事だった。

 

『こちらバン!相棒、無事か!?』

 

「ああ。俺の方は大丈夫だ。現在、魔女の結界の中に居る。これより先行し、魔女を探し出して倒す。俺一人で手に余るようなら、そちらが到着するまで足止めに徹する。」

 

『了解。相棒、気を付けろよな。』

 

「ああ、分かった。」

 

通信を終えると、ホージーはライセンスを腰の位置に戻す。魔女の戦闘能力が未知数である以上、慎重に行動する事が求められる。ディースナイパーを構えつつ、結界の中に存在する扉を開いて進んで行く。

 

(・・・もうかなり進んだな。まだ、魔女の元へは辿り着かないのか?)

 

そう思い、新たな扉を開く。そこには、おとぎ話に出てくるような、一面お菓子で覆われた光景が広がっている。

 

「ウメコが見たら喜びそうだな。」

 

そんな事を考えつつも、スポンジケーキでできた足場を歩いて行く。と、その時だった。

 

「囲まれたか。」

 

周囲を見回すと、自分の足元やケーキの丘の上にいくつもの異形が現れる。縞模様のボールの様な眼をした、小さな体の異形達――恐らく、資料にあった魔女の配下の使い魔だろう――は、ホージーを包囲すると共に一斉に飛びかかっていった。

 

「ハッ!!タァッ!!」

 

それに対し、ホージーは眼前へディースナイパーを連射して、正面突破を図る。結果、前方以外から飛びかかった使い魔達は互いに衝突してしまった。ホージーはその隙を逃さず、地面に倒れ伏している使い魔達へ向かってディースナイパーを再び連射し、一掃する。だが、使い魔は未だホージーの周囲に大量に居る。

 

「流石にこれじゃあキリが無いな・・・」

 

ディースナイパーだけでは対抗できるか怪しいと判断したホージー。SPライセンスを取り出し、頭上に掲げる様に構える。

 

「スワットモード・オン!!!」

 

スワットモードとは、Special Weapons And Tactics、即ち特殊火器戦術部隊の略であり、デカレンジャーの強化武装である。コールを受けたデカベースから放射された、スワットアーマーとディーリボルバーを装備し、デカレンジャーはスワットモードとなるのだ。

 

「ディーリボルバー!!」

 

ディーリボルバーは、スワットモード装着時に使用できる強化型ビームマシンガンである。上下2つの銃口から交互に光弾を高速連射し、厚さ50cmの鉄板も撃ち抜く威力を誇る。ディースナイパー以上の弾速・火力を誇る武装に、使い魔達は為す術なく倒されていく。立ち塞がる敵全てを倒しながら、デカブルーは結界を突き進む。

 

「透視システム・オン!!」

 

スワットモードにおいては、複数の補助システムを複合した感知システムが頭部右側に増設される。これを用いれば、障害物の影に隠れた敵を認識する事が出来るのだ。

 

「そこか!!」

 

目の前の障害物に隠れて奇襲を仕掛けようとする使い魔を、障害物ごと撃ち抜いていく。

結界内を突き進んで行く内に、大部分の敵が殲滅されていく。そうして、結界の最深部へと辿り着いたホージーの前に、新たな扉が現れる。

 

「魔力反応が強くなっている・・・ここに魔女が居るのか。」

 

ディーリボルバーを構え直し、意を決して扉を開く。そこにあるのは、ケーキをはじめとしたお菓子の山、山、山。そしてその空間の中央に位置するテーブルの上に、莫大な魔力反応が存在している。

 

「あそこか・・・」

 

魔女の所在を確認し、近づいて行くホージー。その時だった。

 

「だ、誰!?」

 

「!?」

 

突然、ホージーに対して声がかけられる。それも人間のものである。ホージーが思わず銃口を向けたその先に居たのは、見滝原中学の制服を着た青い髪の少女だった。

 

「き、君は!?」

 

動揺するホージー。慌てているのは少女も同様である。ここに至るまで、人間に出くわす事など無かった。ならば、この少女は何者なのか・・・

 

「落ち着いてくれ。俺は宇宙警察のスペシャルポリスだ。君は、魔法少女なのか?」

 

「え?」

 

銃を下ろし、少女に質問するデカブルー。対する少女は、驚いた様子である。

 

「ええと・・・私は、違います。」

 

「そうか・・・なら、君は魔法少女の知り合いなのか?」

 

「え、ええと・・・」

 

返答に窮する少女の反応からして、間違いないだろうとデカブルーは思う。恐らく、魔法少女の存在を知らせたくはないのだろう。とにかく今は、目の前の少女を安全な場所へ避難させる事が優先であると考える。だが、次の瞬間

 

「何っ!!!」

 

「!!!」

 

中央のテーブルにおいて増大化する魔力。生クリームの帳と共に現れたのは、ファンシーなぬいぐるみの姿をした『魔女』だった。

 

「君はここでじっとしてるんだ!!」

 

「え、あ、あの!!」

 

少女が何か言おうとしているが、デカブルーは目もくれずに魔女の元へ走っていく。

 

「ハッ!!」

 

魔女の座っている椅子の足に向けてディーリボルバーを放つ。足を破壊された事でバランスを失った椅子が倒れ、魔女が落ちてくる。

 

「オリャァッ!!」

 

ホージーは魔女の着地地点に先回りし、落下と同時に蹴りを食らわせる。サッカーボールのように吹き飛んだ魔女は、遠くにある壁にめり込む。

 

「SPライセンス・セット!!」

 

その隙に、ホージーは胸部からSPライセンスを抜き取り、ディーリボルバーにセットする。ディーリボルバーは、SPライセンスをセットする事すると、デカベースからパトエネルギーが供給され、単体でアリエナイザーをデリート出来る威力を発揮するのだ。

 

「ターゲットロック!!ディーリボルバー・ストライクアウト!!!」

 

ディーリボルバーの銃口から、先程までとは比べ物にならないほど強力な光弾が発射される。その光は寸分違わず壁にめり込んでいる魔女に向かい、命中して大爆発を引き起こす。

 

「凄い・・・マミさんみたいだ・・・」

 

その様子を、さやかは驚いた表情で見ていた。魔法少女ではない、宇宙警察と名乗った男性が、魔女を打ち倒したのだ。目の前の現実は、さやかに大きな衝撃を齎していた。

 

「Perfect」

 

そう言うと、ディーリボルバーを下ろして少女の元へ向かおうとするデカブルー。だが、その瞬間!

 

「シャァァアアアア!!」

 

「「!!!」」

 

爆発した壁から、黒く長い何かが飛び出してくる。恐るべき速さでデカブルーに迫ったそれは、ピエロの顔を持った異形――魔女の本体だった。そしてそれは、禍々しい牙が並んだ口を大きく開き、ホージーに襲い掛ろうとしていた。

 

「くっ!!」

 

咄嗟に避けようとしたデカブルーだったが、既に時遅し。魔女の口はデカブルーを捕らえていた。

 

「ぐぁぁああああ!!!」

 

胸部を噛みつかれ、そこから下が魔女の口の中に入っている状態。スワットモードの強化プロテクター・スワットベストがあるとはいえ、魔女の顎の力は凄まじい。そうでなくても、このまま首の部分まで牙が迫れば命は無い。抵抗しようにも、食いつかれた際にディーリボルバーを落としてしまっている。

 

(殺される!!)

 

デカブルーは直感的にそう思い、抵抗を始めた。だが、両手が空いているとはいえ、武器が無ければその状況を脱する事などできない。それどころか、抵抗するデカブルーに対し、魔女は噛む力をさらに強める。

 

「がぁぁあ・・・ああ・・!!」

 

胸を押しつぶされる様な圧力に、抵抗する力が失われ、意識が遠のいていく。そのままでは、魔女の餌食になろうと言う、その時だった。

 

「ティロフィナーレ!!!」

 

その掛け声と共に、魔女の胴体に向かって一発の巨大な弾丸が放たれる。その衝撃により、魔女は口を開き、デカブルーの身体が投げ出される。

 

「ぐ・・・あ、あれは・・・」

 

だんだんと意識が遠のくデカブルーの目に微かに移ったのは、マスケット銃を構えた一人の少女の姿―――

 

「彼女が・・・魔法、少・・・女・・」

 

それを最後に、デカブルーは気を失い、変身も解ける。

 

 

 

硝煙の臭いが立ち込める中、二人の少女が肩で息をしていた。そして、結界の一角にあるテーブルの上にはグリーフシードが落ちている。

 

「まさか、あなたの助けを借りる事になるとは思わなかったわ。」

 

「・・・・・」

 

マミの言葉に、ほむらは何も答えない。病院に現れた魔女は、まどかに呼ばれて遅れて到着したマミとほむらの手により、無事に退治された。だが、その傍らでは・・・

 

「しっかりしてください!!」

 

「大丈夫ですか!!」

 

まどかとさやかが必死に何かを叫んでいた。見れば、二人が膝を吐いている地面には、倒れている男性の姿がある。マミとほむらはグリーフシードを回収すると、二人の元へ駆け寄る。

 

「その人、宇宙警察の人だっけ?」

 

「あ、はい!!マミさん、どうしましょう!!この人大怪我してます!!」

 

「落ち着きなさい。まだ息はあるわ。私が魔法で治療するから、グリーフシードは貰うわよ。良いわね?」

 

「・・・分かったわ。あなたの助けなしには、私も危なかったしね。」

 

ほむらが治療すると言う提案を承認するマミ。回復系統の魔法はほむらの方が上な様だ。さやかは不満そうな顔をしていたが、マミの説得によって結局納得し、まどかは目の前の男性を助けて欲しいと懇願していた。

 

「幸いにもここは病院よ。ここで出血を抑えて、結界が解けてから搬送すれば、十分間に合うわ。あなた達は、病院から人を呼んできて。」

 

「分かったわ。」

 

やがて結界が晴れると同時に、周囲の光景はお菓子で色取られたそれから、もとの病院の駐輪場へと戻った。そして、まどか、さやか、マミの三人は病院へと駆けだす。残されたほむらは一人、倒れている男性――ホージーの傷口の出血を抑えつつも、考えに耽っていた。

 

「私達魔法少女の世界に、宇宙警察が関わってくるなんて事、今までは無かった・・・この時間なら、まどかを助けられるの?」

 

ほむらは一人、そう呟いた。こうして、本来ならば交わる事無かった二つの物語は、交叉した。魔法少女と宇宙警察・・・この出会いが、どのような運命を辿るかは、未だ誰も知らない・・・・・

 


 
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