No.401324

特捜戦隊デカレンジャー & 魔法少女まどか☆マギカ フルミラクル・アクション

鈴神さん

見滝原市にて、謎のエネルギー反応が続発する。一連の現象について調査をすべく、見滝原市へ急行するデカレンジャー。そこで出会ったのは、この世に災いをまき散らす魔女と呼ばれる存在と戦う、魔法少女と呼ばれた少女達。本来交わる事の無い物語が交差する時、その結末には何が待っているのか・・・
この小説は、特捜戦隊デカレンジャーと魔法少女まどか☆マギカのクロスオーバーです。

2012-04-01 20:59:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2279   閲覧ユーザー数:2247

Episode.02 ホワイト・コントラクター

 

見滝原市で幻想空間を抜け出したバンは、地球署のデカレンジャー達と合流し、その後市内で検出されたエネルギー反応の調査を終え、デカベースへと戻っていた。

 

「・・・・・これが、一連のエネルギー反応の正体・・・なのか?」

 

デカベースのオフィスに浮かぶスクリーン・・・そこには、デカレッドことバンが昼間巻き込まれた幻想空間での戦いの模様が映し出されていた。バンのSPライセンスに残された映像記録をスクリーンで再生しているのである。

 

「しかし、なんだってこんな空間が現れたのかしらね?」

 

「It’s mystery・・・この毛玉達の正体も、全く分からないな。」

 

デカレンジャー一同、スクリーン上に映し出される想像を逸脱した光景に、半信半疑な感想を口にする。無理もない。エネルギー調査のために見滝原市を捜索した結果、出くわしたのは謎の幻想空間である。未だに信じられないが、SPライセンスに映像が残っている以上は、間違いなく現実のものなのだろう。

 

「しかし先輩、よく戻って来れましたね。こんな空間に閉じ込められたら、簡単には出られないと思いますが。」

 

空間操作の能力、その恐ろしさを誰よりもよく知るテツがそんな事を口にする。かつて同様の能力をもつアリエナイザーに家族を殺された経歴を持つテツにとっては、バンが無事に帰ってきた事が奇跡の様に思えるのだった。

対するバンも、尤もだと言う風に頷きながら答える。

 

「最初は閉じ込められたんだ。でも、何故かいきなり空間が消えてさ・・・気付いたら、もとの倉庫の中だったんだ。」

 

「やっぱり、反応が『逃げた』ってことなのかな~?」

 

ウメコの言葉に、一同は難しい顔をする。エネルギー源が逃げ出すと言う事は、エネルギーを放つ何らかの正体は生物、またはロボットである事は間違いない。スクリーンに映し出される映像からして、どちらかと言うと前者の可能性が高いとデカレンジャー一同は考える。

 

「もしかして、エネルギー反応の正体は宇宙生物!?」

 

「可能性はあるな。だが、地球外から侵入したのならば、S.P.D.の監視網に引っかかる筈だ。」

 

「と言う事は、やっぱりコイツを持ちこんだ黒幕が居るわけね。」

 

「間違いないだろうね。十中八九、アリエナイザー絡みの事件だよ。」

 

ホージーの言葉に対し、黒幕はアリエナイザーであると断言するセン。他のメンバーもセンに同意する。

 

「だけど、どうやって犯人を捕まえるんだよ。今日みたいにエネルギー反応を追っているだけじゃ、絶対に捕まえられないぜ。」

 

「そうよね・・・どうにかして先回りできる方法は無いかしら?」

 

「餌を吊るしておびき寄せるとか?」

 

「ナンセンス・・・ウメコ先輩、敵の狙いはいまだ不明です。そんな存在を相手に、何を餌におびき寄せるんですか?」

 

「そうだな・・・やっぱり新しい情報が入るまで、地道に反応を追うしかないのかもしれないな。幸い、バンのSPライセンスに入っているメモリーに幻想空間のデータがある。その内、先手を打てるようになる筈だ。」

 

結局、明日以降も見滝原市を巡回してエネルギー反応を追うしかないと言う結論に達した。一日目にして収穫が得られたと思っていたバンは、捜査が進行しない事に不満そうだった。勿論、他のメンバーも同様の表情である。かくして、この日の捜査は幕を下ろした。

 

 

 

バン達がデカベースで会議を開いていたその頃、まどかとさやかは、デパートの資材置き場での出来事をきっかけに知り合った、巴マミという少女の自宅へ招かれていた。

 

「マミさん、すっごく美味しいです。」

 

「ん~、めっちゃ美味っすよ!!」

 

「ありがとう。」

 

マミから振る舞われた紅茶とケーキを味わいながら、幸せそうに感想を述べるまどかとさやか。マミはそんな二人の様子に微笑みながら礼を言う。

 

「キュゥべえに選ばれた以上、あなた達にとっても他人事じゃないものね。ある程度の説明は必要かと思って。」

 

「うんうん、何でも聞いてくれたまえ。」

 

「はは・・・さやかちゃん、それ逆。」

 

「うふふ・・・」

 

そんな二人のやり取りの可笑しさに微笑しながら、マミは左手の上に金色の卵の様な形をした物を出す。

 

「わあ~、綺麗。」

 

「これがソウルジェム。キュゥべえに選ばれた女の子が、契約によって生み出す宝石よ。

魔力の源であり、魔法少女である事の証でもあるの。」

 

「契約って?」

 

資材置き場の一件から気になっていた単語、『契約』の意味について質問するさやか。それに答えたのは、キュゥべえだった。

 

「僕は、君達の願い事を何でも一つ叶えてあげる。」

 

「えっ!?本当!?」

 

「願い事って・・・」

 

「何だって構わない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ。」

 

そんな夢物語の様な話にまどかは戸惑い、さやかは妄想を膨らませていく。

 

「う~む・・・金銀財宝とか、不老不死とか、満漢全席とか・・・」

 

「いや、最後のはちょっと・・・」

 

願いのベクトルがおかしな方向へ向かっている事にツッコミを入れるまどか。だが、そこでキュゥべえが願いの代償を話す。

 

「でも、それと引き換えに出来上がるのがソウルジェム。この石を手にした者は、魔女と戦う使命を課されるんだ。」

 

「魔女?」

 

今まで出てきた事のない単語に、まどかが疑問符を浮かべて呟く。

 

「魔女って何なの?魔法少女とは違うの?」

 

「願いから生まれるのが魔法少女だとすれば、魔女は呪いから生まれた存在なんだ。魔法少女は希望を振りまく様に、魔女は絶望を撒き散らす。しかもその姿は普通の人間には見えないから性質が悪い。」

 

さっきまでの愉快な雰囲気から一変、二人の表情が固くなる。キュゥべえの話が物騒になってくるにつれて、不安と恐怖が心の中に芽生え始める。

 

「不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ、そういう災いの種を世界に齎しているんだ。」

 

「理由がはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ。

形の無い悪意となって、人間を内側から蝕んでいくの。」

 

「そんなヤバい奴等が居るのに、どうして誰も気付かないの?」

 

「魔女は常に結界の奥に隠れ潜んでいる。決して人前には姿を現さないからね。さっき君たちが迷い込んだ、迷路のような場所がそうだよ。」

 

「結構、危ないところだったのよ。あれに呑みこまれた人間は、普通は生きて帰れないから。」

 

絶句するまどかとさやか。あの空間に居た時、不安や恐怖を感じなかったわけではないが、それでも自分達がもう少しで死ぬところだったのだと思うと、冷や汗が流れる。

 

「マミさんは、そんな恐いものと戦っているんですか?」

 

「そう、命がけよ。だからあなた達も、慎重に選んだ方が良い。

キュウべえに選ばれたあなた達には、どんな願いでも叶えられるチャンスがある。でもそれは、死と隣り合わせなの。」

 

脅しにも近いマミの警告に、この契約の危険性を認識させられる二人。

 

「う~ん・・・悩むなぁ・・・」

 

「・・・・・」

 

「そこで提案なんだけど、二人ともしばらく、私の魔女退治に付き合ってみない?」

 

「「え!?」」

 

「魔女との戦いがどういうものか、その目で確かめてみれば良いわ。

その上で、危険を冒してでも叶えたい願いがあるのかどうか、じっくり考えてみるべきだと思うの。」

 

その日の話し合いは、それで終了した。結局、まどかとさやかはマミの提案に乗り、魔女退治に付き合う事にするのだった。

 

 

 

翌日。見滝原市内の交通機関が混み合う、言わば通勤ラッシュの時間帯から、デカレンジャー達は出動していた。パトロールメンバーと使用するデカビークルの構成は、バンがファイヤースクワッドに入る前と同じく、マシンドーベルマンにバンとジャスミンが、マシンブルにセンとウメコが、マシンハスキーにホージーが、マシンボクサーにテツが乗って行われる事となった。

 

「この時間帯、街は人で混み合っている。例の空間が街中に現れたら大惨事になる。バンとジャスミン、センとウメコは大通りを中心に巡回だ。」

 

メンバーに指示を出しているのは、シンボルナンバー2のホージーである。ホージーは、バンが地球署に来る以前からデカレンジャーのリーダーを務め、ドギーの不在時には署長代行も務める優秀な刑事である。それは、バンがファイヤースクワッドから戻ってきてからも変わらなかった。

 

「テツと俺はそれぞれ分かれて細道を中心に巡回する。エネルギー反応をキャッチしたら、すぐさま現場に急行する。以上だ。」

 

「「「「「ロジャー。」」」」」

 

ホージーの指示を受け、メンバーはそれぞれの担当区域へとデカビークルを走らせる。

 

「さて、私達は西側の大通りだったわね。」

 

「ああ、分かってるさ。」

 

助手席にてSPライセンス片手に巡回ルートをチェックしているジャスミンに、バンは脇見等せず運転しながら答える。と、そこへ・・・

 

「あ、あの子たちは・・・」

 

「ん?どうしたの、バン?」

 

通りの歩道を歩く三人の女子中学生の姿を見て、バンは車のスピードを落として道路脇に寄せて止め、車から降りる。

 

「まどかちゃん、さやかちゃん、仁美ちゃん!!」

 

「あ、バンさんだ!!」

 

バンが声をかけたのは、昨日出会った見滝原中学に通う三人の少女達。まどか、さやか、仁美だった。バンの呼びかけに対し、手を振りながら駆け寄る三人。そんなバンの様子を不思議に思いながらも、ジャスミンも車を降りる。

 

「おはようございます。」

 

「おはよう。今日も学校かい?」

 

「あはは・・・今日日の子供は忙しいんですよ。」

 

「しっかり勉強、頑張らないとね。ところで、ちょっと聞きたい事があるんだけど。」

 

「何ですか?」

 

「昨日、学校帰りに見滝原中学の近くにあるデパートに行かなかったかな?」

 

「「えっ?」」

 

バンの質問に思わずぎょっとなるまどかとさやか。一方、仁美は普通に受け答えしていた。

 

「はい。昨日、学校帰りに三人でデパートの喫茶店に行きました。ところで、何故その様な事をお聞きになられるのですか?」

 

「いや、ちょっとね。事件の捜査で、あのあたりの事を調べているんだ。何か、変わった事は無かったかな?」

 

「いえ・・・私は特に何も思い当たる事はありませんわ。そういえば、まどかさんとさやかさんは、あの後まだデパートの中に残っていらっしゃいましたよね?」

 

「あ、ああ・・・うん、そうだったね。」

 

「で、でも私達も何も変わったところ何て無かったと思いますが・・・」

 

頻りに目くばせして苦笑いするまどかとさやか。バンと仁美はそんな二人を訝しみながら見つめる。

 

「バン、この子たちは一体誰なの?」

 

「ああ、そうだそうだ。紹介がまだだったな。この子たちは、見滝原中学に通う、鹿目まどかちゃん、美樹さやかちゃん、志筑仁美ちゃんだ。昨日、登校途中に話を聞いたんだ。」

 

「ふ~ん、そう・・・そういえば、私も自己紹介がまだだったわね。私は礼紋茉莉花。皆からはジャスミンって呼ばれているわ。よろしくね。」

 

「あ、こちらこそ、よろしくお願いします。」

 

「そういえば、あなた達これから学校に行くのよね?時間、大丈夫?」

 

「あ!!いけない、急がなきゃ!」

 

「バンさん、ジャスミンさん、それじゃあこれで失礼しまーす!!」

 

「ああ、待ってください!!」

 

遅刻しそうになり、急ぎ学校へ走る三人。その後ろ姿を、バンとジャスミンは見送っていた。

 

「良い子たちね。」

 

「だろ?」

 

「でも・・・何か変だったわね。」

 

「どういう事だよ?」

 

ジャスミンの言葉に眉を顰めるバン。何の変哲もないごくごく普通の少女達が、どうしたら怪しく思えるのだろうか?

 

「あの子たち・・・まどかちゃんとさやかちゃんだたわね。何かを隠しているわよ。」

 

「何かって・・・まさか、事件に関わっているとでも?」

 

「そうかもしれないわね・・・少なくとも、デパートの一件に関しては何か知っているかもしれないわ。」

 

「・・・考え過ぎじゃないのか?能力は使っていないんだろう?」

 

ジャスミンはエスパーである。サイコメトリーと呼ばれるこの能力は、他者やその所持品に触れる事で、相手の意思を読みとることが出来る。だが、先の会話において彼女はその能力を使ってはいない。

 

「相手に触れなくても、なんとなく分かるものなのよ。素直な子なら尚更ね。」

 

それだけ言うと、ジャスミンは車内の助手席へ戻った。バンはジャスミンの言葉に納得できない様子だったが、渋々運転席へ戻り、巡回を開始した。

 

 

 

そして時刻は放課後。喫茶店に集合したマミ、まどか、さやかの三人は、魔法少女体験コース第一弾と称した魔女探索に向かっていた。

 

「ねえマミさん、魔女の居そうな場所・・・せめて目星くらいは付けられないの?」

 

「魔女の呪いの影響で割と多いのは、交通事故や傷害事件なのよね。だから大きな道路や喧嘩が起きそうな歓楽街は、優先的にチェックしないと。」

 

これから探索する場所や、魔女についての情報を話すマミ。まどかとさやかは真剣な面持ちで聞いている。

 

「あとは、自殺に向いてそうな人気の無い場所と・・・それから、病院とかにとり憑かれると最悪よ。ただでさえ弱っている人達が、生命力を吸い上げられるから、目も当てられない事になる。」

 

病院、という言葉に不安がよぎるさやか。まどかはそんな友人の様子を心配する。そうして話をしながら歩いていると、ふとマミのソウルジェムが明滅し始めた。

 

「かなり強い魔力の波動だわ。」

 

その言葉に、まどかとさやかに緊張が走る。遂に、魔女の領域に踏み込む時が来たのかと、表情を強張らせる。

 

「近いかも・・・行ってみましょう!」

 

魔力の波動を感知する方向へと走り出すマミ。まどかとさやかも後を追う。

そんな三人の様子を見ている者が居た。

 

「・・・何だ?」

 

巡回捜査のために乗っていた白バイ――マシンハスキーを止め、目の前を走っていった少女達の後ろ姿を見つめるホージー。

 

(女の子がバットなんて持って・・・)

 

「まさか喧嘩か?」などと考えたが、あとの二人の少女はそんな様子はなく、バットを持っていた少女にしても物騒な事を考える様には見えなかったので、ホージーは考えを撤回する。

 

「・・・護身用の武器か?」

 

町中で少女がバットを持つ理由はそれしか思い浮かばなかった。この事件が終わったら、年頃の少女が物騒な物を持ち歩かずとも安心して外出できるような治安維持を目指そうと、心に誓うホージーだった。

 

 

 

「間違いない。ここよ。」

 

マミ達が辿り着いたのは、町はずれにある廃屋。ふと、建物を見上げたさやかが屋上に見えるあるものに気付く。

 

「マミさん、あれ!!!」

 

さやかの声に、マミとまどかも上を見上げる。そこには、屋上から飛び降りようとしている女性の影があった。

 

「きゃっ!!」

 

その姿を見て、まどかは恐怖で動けなくなる。一方、マミは魔法少女へと変身すると、リボンを放って女性を受け止める。女性はコンクリートの地面に身体を叩きつけて絶命する事なく、ゆっくりと地面に下ろされた。そこで、マミは女性の首筋にある紋章を見つける。

 

「魔女の口づけ・・・やっぱりね。」

 

「この人は?」

 

「大丈夫、気を失っているだけ。行くわよ。」

 

廃屋の内部に魔女の存在を確信したマミは、まどかとさやかを連れて突入する。そして、階段の上に魔女の口づけと同様の紋章が浮かび上がる。結界への入り口である。

 

「今日こそは逃がさないわよ。」

 

結界へ突入する前に、マミはさやかの持っていたバットに触れる。すると、バットは光を放ちながら魔法による強化を得て変化する。

 

「わ・・・わわ・・・」

 

「凄い・・・」

 

感心する二人を余所に、マミは階段の上へと駆け上がる。

 

「気休めだけど、これで身を守る程度の役には立つわ。絶対に私の傍を離れないでね。」

 

「「はい。」」

 

そして、マミに続いて結界の扉へと駆けあがっていく二人。

 

「まどか、ちょっと良いかな?」

 

「え、何、キュゥべえ?」

 

「先に行ってて欲しいんだ。僕は少し調べたい事がある。すぐに合流するからさ。」

 

「ええと・・・うん、分かった。それじゃあ、先に行ってるね。」

 

キュゥべえのいきなりの言葉に戸惑うまどかだったが、言われた通り腕から下ろし、まどかは一人でマミとさやかに続く。そして、残されたキュゥべえは・・・

 

「そろそろ宇宙警察も気付く頃だし、念のために足止めをしておくか。」

 

そう言うと、キュゥべえの背中の丸い紋様が開く。そしてその穴から、二つの球体が飛び出した・・・

 

 

 

そしてその頃、デカレンジャー達はと言うと・・・

 

「エネルギー反応をキャッチした、これより全員現場に急行だ!!」

 

『ロジャー!!』

 

見滝原市の一角にある廃屋にてエネルギー反応をキャッチしていた。現場近くを巡回していたホージーは、一番に到着する事が出来た。

 

「ここか・・・む、あれは!!」

 

廃屋のある敷地内へと足を踏み入れたところで、ホージーは廃屋の前で倒れている女性を発見する。すぐさま駆け寄り、抱き起こす。

 

「大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」

 

女性を揺すって意識を確かめようとするが、一向に目を覚まさない。不審に思ったホージーだが、女性の首筋に付いている奇妙な紋章を発見する。

 

「何だこれは?」

 

刺青の様だが、どこか違う。女性は見た目からしてOLであり、首筋に刺青を入れるなどある筈が無い。この紋章の正体は何なのかと疑問に思ったその時だった。

 

『ウィーン!ウィーン!』

 

「お前達は!!」

 

独特の機械音と共にホージーを取り囲むように現れる謎の一団。黒ずくめのタイツに、頭には穴の空いた小惑星を彷彿させるマスクを被っている。

 

「何故ドロイドがこんな所に!?」

 

目の前に現れた存在は、ホージーには見覚えのあるものだった。かつて、地球において様々なアリエナイザーに犯罪を斡旋してきた宇宙の武器商人、エージェント・アブレラが売り出していたドロイドと呼ばれるメカ人間である。目の前に立ちふさがっているのは、量産型のアーナロイドと呼ばれる機種だった。

 

『ウィーン!』

 

「くっ!!」

 

アーナロイド達はナイフ片手にかつての事件において現れた時同様の動きでホージーに襲い掛かってきた。ホージーは女性を守るべく応戦するが、圧倒的な数に苦戦を強いられていた。このままでは危険だ。そう思ったホージーは、SPライセンスを取り出して構えをとる。

 

「エマージェンシー・デカレンジャー!!」

 

SPライセンスの上部スイッチを押しコールする事で、デカベース内に保管されている形状記憶金属デカメタルがホージーの身体に定着し、デカスーツとなるのだ。

 

「フェイス・オン!!」

 

その掛け声と共に、ホージーの変身は完了した。そして現れたのは、青い戦闘スーツに身を包んだ捜査官の姿――デカブルーだった。

 

「ディーロッド!!」

 

警棒を象ったディーアームズ、ディーロッドを抜き、アーナロイドに対抗するデカブルー。一撃で厚さ30mのコンクリートの壁をも打ち砕く電磁警棒の威力により、アーナロイドは次々倒されていく。デカブルーは向かってくる敵を粗方倒すと、倒れていた女性を抱えて安全地帯への脱出を試みる。

 

「ディースナイパー!!」

 

先程まで使用していたディーロッドを、もう一つのディーアームズであるディーナックルと合体させ、スナイパーライフルにする。単発で発射される3点バーストのパルスビームで立ちふさがる敵を蹴散らし、廃屋の敷地外へと向かって行く。すると、

 

「相棒!!」

 

「バン!!ジャスミン!!」

 

マシンドーベルマンに乗ったバンとジャスミンの姿があった。二人とも既にデカスーツを身に纏い、デカレッド、デカイエローとなっていた。

 

「ジャスミン、この女性を安全な場所へ!!」

 

「分かったわ。」

 

「バン、奴等を一掃する。援護を頼む。」

 

「任せろ、相棒!!」

 

ジャスミンことデカイエローは。デカブルーから女性を任され、マシンドーベルマンに乗せて安全地帯へと避難する。バンことデカレッドは、ディーマグナムを両手に構えてデカブルーの援護に回る。

 

「行くぞ!!」

 

「おう!!」

 

ディースナイパーから再びディーロッドに持ち替えたデカブルーが、白兵戦でアーナロイド達を叩き伏せて行く。デカレッドは、デカブルーの死角から襲いかかろうとしているアーナロイド達を二丁拳銃で撃ち抜いていった。

四十対近く居た敵が十数体程に減った時、新たな敵が現れた。

 

『ウィィィーン!!』

 

「こいつもいたのか!!」

 

二人の前に現れたのは、惑星を彷彿させる形の頭部をした青いドロイド、バーツロイドだった。X型の剣を構え、デカブルーへ向かってくる。

 

「バン、残りの奴を頼む!!俺はこいつを倒す!!」

 

「任せとけ!!」

 

そう言うと、デカブルーはディーロッドを構えてバーツロイドに向かって行く。武装同士がぶつかり合い、火花が散る。中級ドロイドに分類されるバーツロイドの個人での戦闘能力は、アーナロイドを超えている。だが、刑事としていくつもの戦場を潜りぬけてきたホージーにとっては、脅威になりえない。

 

「フッ!ハァッ!!」

 

『ウィィィイン!!』

 

ディーロッドの打撃のみでなく、蹴り等の体術も交えての攻撃に徐々に押されていくバーツロイド。そして、遂に止めの一撃が炸裂する。

 

「ブルーフィニッシュ!!」

 

ディーロッドに閃光が走ると共に、強力な斬撃が放たれる。それは、バーツロイドのボディーを容易く切り裂いた。

 

『ウィィィイ・・ガガッ!!』

 

デカブルーの一撃に、バーツロイドは爆発して炎上。アーナロイドの方も、デカレッドの手によって全滅させられていた。

 

「やったな、相棒!!」

 

「ああ!!だが、何故今になってドロイドが現れたんだろうな・・・」

 

「それが謎だよな・・・そういえば、エネルギー反応はどうなった?」

 

ドロイド達との戦闘に気を取られて頭から離れていた事柄に、デカブルーはSPライセンスを取り出して反応を確かめようとする。ところが・・・

 

「・・・やられた!反応は既にロストしている!!」

 

「やっぱり、あのドロイド達は足止めが狙いだったか・・・いよいよ、きな臭くなってきな。」

 

「ああ・・・」

 

足止め用のドロイドが放たれたと言う事は、足止めをした人間が居ると言う事である。それは、エネルギー反応が人為的に引き起こされたものである事の証明でもあり、黒幕の蠢動が露になりはじめている予兆でもあった・・・

 


 
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