No.199739

真恋姫無双 おせっかいが行く 第二十二話

びっくりさん

お久しぶりです。

おせっかい・・・ようやく更新です。
お待たせしました。

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2011-02-04 22:35:54 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:17348   閲覧ユーザー数:12714

 

 

「蹴、紫苑。君達の部隊に休暇の連絡をしておいてくれ」

「どういうことだ?」

「今日まで出撃、出撃の連続だったろ?だから、しばらく休みを与えるってこと」

「ですが、方針では州を攻略することになってましたわ。まだ、全て制圧していませんのに休暇など・・・」

「だからこそだ。確かにまだ目的を達していないけど、それよりも兵や将の疲れをとることが大切だよ。疲労が溜まっていると普段しないような失態もしてしまうことがあるしね。もう決定事項だからね。ちゃんと休むように!」

「はい・・・わかりました」

「了解だ」

 

許昌を制圧した後、一刀は執務室に蹴と紫苑、両将軍を呼び出して休暇の命令を下す。現状、目的を達していないのに休暇の命令が出されたことに納得がいかなかったようだが、最後には押し切られた形となった。それでも、久々の休暇ということで頭を切り替えて退出する二人。二人を見送った一刀はやれやれと背中を背もたれに預けるのであった。

 

「なんだか、納得してなさそうでしたね」

「二人とも真面目だからな~」

「一刀様の場合はどうなさるんですか?」

「もちろん。喜んで休暇を受け取るね(キリッ」

「堂々と言うとこではありませんがね」

「あははは・・・」

 

今まで黙っていた符儒と仙花が話かけてくる。武官である蹴と紫苑には休暇を出したが、文官である仙花と符儒は書類仕事があった。

 

「蹴達が休んでいる間、街の警備はどうなってる?」

「寿春など今まで制圧してきたところで兵も増えましたし、警備をするくらいの兵数はありますよ」

「そっか。最初と比べると大分増えたよな」

「そうですね。何しろ最初は家一つでしたもんね」

 

今の町並みを見ながら、この世界にきてすぐのころを思い出す一刀。目に見えて人が増え、建物が建ち、店が並んでいる。ただの学生だった自分が何の因果か領主をやっているとはおかしく思える一刀なのだ。

 

これはそんな観照に浸るおせっかいの物語である。

 

 

 

 

 

 

「・・・大きな扉の前で消え行く火、今その火を消さぬよう新たな薪がくべられる。さすれば火再び灯り、やがて大きな炎とならん」

「久しぶりに出たね。仙花の予言」

「ええ、北方に報せありと出ましたので、おそらく洛陽方面かと思います」

「ってことは、反董卓連合軍と董卓軍が戦ってるところだね。危ないな・・・」

「そうですね・・・私のとこに入ってきた情報によりますと、汜水関は攻略し、現在は虎牢関の攻略に向かっているそうですよ」

「・・・ずいぶん早いな。まだ、会戦して7日も経っていないのに」

 

執務室で政務を行っていた仙花に久しぶりに予言が舞い降りた。どうやら洛陽方面を示しているようだが、現在洛陽は反董卓連合軍と董卓軍による戦の真っ最中の場所である。かなり危険を伴う場所である為、いくら今まで予言に助けられてきたからといって迂闊に出撃出来ない状況であった。そこで符儒が今持っている情報によると汜水関を攻略し、虎牢関の攻略に入っているとのこと。難関の汜水関を短期間で攻略した連合軍の強さは相当なものだと感じた。実際は挑発に乗って出撃したところを返り討ちにされ、留守になった関に乗り込まれただけなのだが、現場を見ていない一刀達は知る由もないのであった。

 

「どうしよう・・・予言も気になるしな~。汜水関までは行ってみる?」

「しかし、まだどこかの勢力が残っているかもしれませんよ?」

「だよな・・・。よし。慎重に近づいていって出来るとこまで接近してみるってことで」

「本当なら危険なので止めに入るところですが、私も仙花さんの予言が気になりますし・・・わかりました。蹴は休暇中ですがどうしますか?」

「今回は俺「私も行きます」の二人と数人の兵を連れていくよ。あまり多いとかえって気付かれるからね」

「わかりました。なるべく腕の立つ者を選定しましょう」

「頼む・・・」

 

とりあえず、攻略された汜水関までは行ってみようということになった。本来なら兵は連れて行きたくないが、事情を考えるとそんなことはとても言えないので数人だけ連れて行く。

 

「では、すぐに選定に入りますね」

「ああ、俺も出る準備をしてくる。一刻後に出る」

「御意」

 

そういうと一刀は執務室から退出し、街へと出かけるのであった。

 

 

 

 

「おっちゃ~ん」

 

街に出た一刀は目的の店まで真っ直ぐ向かう。途中に璃々とお出かけをしている紫苑の姿を見て、二人が笑顔でいたところが嬉しくてつい笑顔になるということがあったが、二人には声をかけなかった。今の自分が行うことを知られてはせっかくの親子の時間を台無しにしてしまうと考えて。

一刀が訪れたのは一軒の鍛冶屋であった。それは、前に武器を頼んでいた店で、今回向かうことになった汜水関に帯剣していく予定なのである。

 

「お!長じゃねぇか。アレを取りにきたのか?」

「うん。出来てるかい?」

「もちろんでさぁ。長が取りに来るのを今か今かと待っていたんだよ」

「それは悪いことをしたね。早速見せてもらえるかな?」

「おうさ。ちょっと待っててくだせぇ」

 

威勢の良い声をあげ、店の奥へと入っていく店主。一刀は言われた通りに素直に待つ、店に飾られている数十種類の刃物を眺めながら。

 

「お待たせしました。こちらです」

 

奥から一刀の武器を持ってきた店主。早速見せてもらったが、ぱっと見ただけで良い出来だということがわかるくらい素晴らしい出来だった。

 

「文句の付け所がないね。ありがとう・・・これが御代だ」

「いえいえ、では確かに。またご利用下さい」

「ああ、今度もよろしく頼むよ」

 

武器を受け取った一刀はそういって店を後にした。

 

 

 

 

「きたのです!」

 

虎牢関の上から見下ろしていた音々の目に連合軍の大軍が映る。一番先頭に見えるのは金色の鎧を纏うやたら目立つ兵士、恐らく袁家の兵なのだろうが、それを見やり音々の隣にいた恋と張遼が口を開く。

 

「・・・出る」

「そうやな。さっきのお返ししとこか」

 

両将軍が気合い十分に言葉を放つ。汜水関では出撃して短期で落とされたのに、ここでも出撃とは猪と変わらないと思うかもしれないが、これも前もって考えた策であった。

 

「まずは袁家に襲撃して出鼻を挫く」

「・・・その後、篭る」

 

汜水関を短期決着で落とした連合軍の士気はあがり、簡単にはとめられないくらい勢いに乗っている。その状態では篭城したところでその勢いに押されて突破されるだろう。そうなる前に天下無双の将軍による襲撃によりダメージを与えて士気を殺ぐというのが目的だ。

 

「では、合図があり次第突撃するのですぞ!」

「おう!いってくるで!」

「・・・行く」

「無事に帰ってきて下され!」

 

出撃する両将軍は虎牢関の扉の前で出撃の合図を待つ為、移動していった。残った音々はそのまま連合軍の動きに目を移す。出撃するタイミングを計る為に。そして、そのときはきた。

 

「今です!」

 

ジャーン!ジャーン!ジャーン!

 

音々の合図で銅鑼が鳴り響き、虎牢関が開放される。そこから現れたのは、天下無双の武人、飛将軍、呂奉先。そして、神速の張遼である。両軍は飛び出すや、信じられない速度で連合軍の先頭に向かって駆けてきた。

董卓軍のこの行動に連合軍は焦った。何故、正面からつっこんでくるのか?普通なら篭城だろうと。数に差があり不利な状況で出撃するなんて自殺行為だと。そんな彼らの考えは実際に両軍が激突した時に、木っ端微塵に砕かれるのであった。

 

「う、う・・・うわあああああああああああああ」

 

「うるさい・・・邪魔」

 

「どけどけぇ!邪魔やでぇ!!」

 

「があああああああああああああ」

 

呂布にあたった兵士は彼女の一振りで数十人が一編になぎ払われ、一瞬で絶命にさせられ張遼にあたった兵士はその神速の移動から繰り出される斬激に首を跳ね飛ばされ、馬に蹴られとまるで、紙くずのように斬られていった。

 

「構え!ここは関の上なので敵の攻撃も来にくいとこですぞ。よ~く狙うのです!」

 

虎牢関で留守を預かる音々もただ黙って見ているわけではない。弓兵に指示を出し、遠距離攻撃の出来ない兵には矢の補給を命じ、戦況を確認し策を考え、懸命に戦っていた。

 

「放つのです!」

 

音々の指揮で確実に敵兵を減らしている。しかし、相手は恋や張遼が取りこぼした兵達なので、敵軍に与える損害は微々たるものであったが。

 

「・・・見つけた」

 

そんな中、快進撃を続けてきた恋の目に入ったのは金色の豪華な鎧を身に纏い、怒っている様子の袁紹の姿だった。

 

「きぃいいい!何をやっているんですの!!誇り高き袁家の兵ともあろう者が、あんな元が田舎太守の配下如きに遅れを取っているだなんて!!」

 

攻める前の余裕はどこへやら。恋と張遼による突撃で大損害を出している現状では、余裕などあるわけもなく、ヒステリーを起こしたかの如く喚き始めるのであった。

 

「仕方ないですよ。麗羽様。実際にあいつら強いんすから」

「そうですよ。相手はあの3万の兵を一人で退けたって言われる程の猛将なんですよ」

 

配下である顔良と文醜が宥めているが、果たして効果があるのかどうか。そんな彼女達の目の前についにたどり着く。

 

「がああああああああああ!」

 

最後の兵を切り払った恋は袁紹達の前に踊り出た。

 

 

 

 

 

「お前は・・・呂布!!」

「麗羽様、下がってください!!」

「こ、ここまで来れたことは褒めて差し上げますわ。でも、私の軍の誇る2将を相手にあなたは生き残れるかしら?お~っほっほっほ!」

「高笑いしてないで、下がってください。後、後ろに後退命令をお願いします」

「だね。あんま余裕ないんで言う通りにしてください」

「わ、わかりましたわ。ここは頼みましたわよ」

 

袁紹の言葉に、なんの反応も示さない恋。対して、顔良と文醜の二人の顔色は青い。対峙して初めて感じる恋の圧力に、武人としての感覚が訴えるのだ。こいつには勝てない。早く逃げろと。それでも、守るべき君主のいる二人にはそれは出来ないこと。なので、二人は死を覚悟し君主の逃げる時間を稼ぐべくその場から動くことはしなかった。

その覚悟が生んだ力強い言葉に、袁紹は素直に頷き後退の命令を出すべく後方へと下がったのであった。

 

「お前ら、邪魔」

「ここは通さないぞ!通りたければあたい達を倒してきな!」

「お前たち、弱い・・・どかないと殺す」

「あなたに敵わないことはわかってる。でも、主を逃がすくらいの時間なら稼げます!!」

 

呂布の圧力に足が震えるも、二人は己が武器を構える。

 

「たぁあああああああ!」

 

まず仕掛けたのは文醜である。自分の背丈程もある大剣を両手で力強く振り切る。一般兵なら軽々と薙ぎ払うことが出来る一撃だった。が、恋はいとも簡単にそれを避けてのけた。

 

「遅い・・・・次は!?」

「やあああああああああ!」

 

文醜の斬撃を避けた恋は、その攻撃によって隙だらけの彼女に反撃しようとした。そこに横から大きな金槌で攻撃を仕掛けてきた顔良に気付き、反撃を諦めて後方へと回避する。

 

「大丈夫?文ちゃん」

「ああ、助かったよ。斗詩。お~し!仕切りなおしだ!!」

「むっ!」

 

ガキィ!!

 

「おらぁ!!」

「はああああ!!」

「・・・面倒」

 

再び、攻撃を仕掛ける文醜。今度は避けずに受け止めた恋は力で強引に文醜を後ろへ押し飛ばし、彼女へ追撃を試みるも、顔良がそれをとめるように横から出てくる。これを予想していた恋は、次のターゲットを顔良に変え、矛を振るうも。文醜が顔良を助けるように出てくるという、お互いを支えあうような戦いをしてきた。

さすがの恋もこれには少々戦いにくそうである。

 

「どうでぇい!あたい達の実力は!!」

「ハァ・・・ハァ・・・でも、二人がかりでもやっと互角だよ」

 

互いが互いを補うことで、実力以上に戦っていた二人。恋と互角の戦いを演じていた。しかし、徐々に動きに精彩さを欠いていく。体力が切れつつあったのだ。対して恋のほうはというと。

 

「・・・次は恋の番」

「「え?」」

 

「ふっ!」

 

今までの苦戦が芝居のよう・・・実際はそれに近かったのだが、二人の目にはまるで閃光のような矛の一撃が繰り出された。

 

「がはっ!」

「文ちゃん!?」

 

恋の一撃によって鎧の上から脇腹を強打された文醜は後ろに飛ばされた。彼女がやられたことで顔良の動きがとまり隙が出来る。そこを恋は見逃さない。

 

「ん!」

「きゃああああああ!!」

 

文醜に気を取られ、目線を外していた彼女に横から矛を振るう。前に吹き飛んだ文醜同様、顔良も飛ばされてしまった。その頃、ようやく起き上がろうとしている文醜。強打のおかげで呼吸が苦しくなり、むせていた。

 

「げほっ!げほっ!・・・くそ。さっきまで互角だったのに!!」

 

咳をしながら毒づく文醜。さきほどまで互角だと思われていた戦いだったのに、今では赤子の手を捻るように軽々と吹き飛ばされた現実に納得がいかなかったのだ。そんな彼女の呟きに静かに答える。

 

「見切った・・・」

 

恋は互いを補助しあって戦う相手とは初めて戦った。今までは農民が反旗を翻して戦法も何もない人達との戦いや、実力者には一対一の戦いと、個人対個人又は個人対大勢との戦いなどは経験したが、連携も何もない実力至上の戦いだらけであった。文醜と顔良のように連携を使う者などいなかった。その初めて見る戦法に戸惑った恋だったが、しばらく打ち合うことで彼女達の戦い方を覚えたのである。

 

「袁紹・・・殺す」

「ま、待て!」

「まだ、私達は戦える!」

 

二人を蹴散らした恋はそのまま袁紹を追おうとする。それをとめたい二人だが、恋の攻撃により体が言うことを聞いてくれない。無駄とわかりつつも懸命に体に力を入れ、声を張り上げるも、恋はとまろうとしないし、体の自由も戻ってこないのであった。

 

「待って!お願い待って!!」

「くそっ!動けよ。あたいの体!動けぇえええ!!」

 

 

 

 

このまま恋が袁紹を追えば、確実に殺されてしまう。文醜、顔良の二人に絶望の二文字が見えたとき、救いの手が現れた。

 

「待て!!ここから先はいかせん!」

「今度は鈴々達が相手するのだ!」

「あんなのでも、総大将だからな。悪いがとめさせてもらうぞ」

 

劉備軍が誇る二武将、関羽と張飛、涼州の馬超が現れた。彼女達が後方で待機しているとき、前衛で異変に気付き、助太刀に駆けつけたのである。それは、遡ること数分前。後曲の為戦いもなく戦場とは思えない程平和に過ごしていた劉備軍。

 

「戦場とは思えないくらいに何もないね」

「桃香様、それでは何かあってほしいかのようですよ。こうしている間にも連合軍の兵士は一生懸命戦っているというのに些か不謹慎では?」

「私はそんなつもりじゃ・・・でも、確かに星ちゃんの言うとおりだったね」

「そうですよ。桃香様。それに我々もただ待機しているだけではありません。連合軍に数で劣る董卓軍ですので、正面からぶつかることはまずないと考えます。なんらかの策を用いるか、背後からの不意をついた奇襲も考えられるのです」

「な、なので、私達はその奇襲に備えて、いつもで対応できるように布陣していましゅ!」

 

桃香が趙雲と愛紗に発言を諌められていたとき、魔女っ娘のようなとんがり帽子を被ったツインテールの女の子が慌てた様子で本陣に戻ってきた。

 

「あわわわわわわ!!!!!た、たたたた大変でしゅ!!」

「どうしたの!?雛里ちゃん!!」

「そ、総大将の袁紹様の軍が・・・壊滅寸前でしゅ!!」

「「「「なんだと(ですって)」」」」

 

雛里と呼ばれた少女、彼女こそが劉備軍の二大軍師の片方を担う、鳳雛と称される鳳統である。彼女がもたらした報告は劉備軍の将に大きな衝撃を与えたのであった。

 

「どういうことだ!?」

「それはあたしから話すよ」

 

彼女達の当然の返事に割り込んできたポニーテールの少し眉が太い少女。その少女に劉備達は見覚えがある。連合軍の軍議の場で。

 

「あなたは・・・馬超殿でしたな。どういうことですかな?」

「ああ、あたし達の軍は袁紹の後ろにいたから前の様子がわかったんだ。その袁紹なんだが・・・呂布軍の圧倒的な強さに大打撃を受けてるんだよ」

「呂布!!」

「ああ、相当強いみたいだな。本来ならあたしの軍だけで向かうはずだったんだけど。たんぽ・・・あたしの従姉妹の馬岱に念には念をってことで、ここに援軍を頼みにきたんだ」

 

馬超の説明に納得した劉備達。その後、二大軍師の伏龍こと諸葛亮は顎に手を当て思考に入る。彼女の頭では、この状況にどう動けばいいか、その結果もたらされるのは、メリット、デメリットなど様々なものが入り乱れているに違いない。やがて、考えが纏まったのか顔を上げた彼女は桃香に進言する。

 

「桃香様。ここは援軍に向かいましょう。総大将が殺されてしまえば連合軍全体の指揮に影響します。それと、ここにも武将を待機させておく必要があります。まだ、奇襲が起こらないと決まったわけではないので・・・」

「そうだね。わかったよ。じゃ、援軍に行こう!」

「はい。援軍は愛紗さんと鈴々ちゃんにお願いします」

「「応!(なのだ)」」

「星さんはここで待機してもらいます」

「少し残念だが、了解だ」

 

少し不満顔ながらも承諾した趙雲。彼女もここを守備する大事さは知っているからだ。実のところ、諸葛亮の考えでは、奇襲を受けた場合に、一番臨機応変に動き対応出来るのは三人の武将では趙雲が一番である為、彼女が待機となったのは秘密である。愛紗は武力は高いが、考え方が硬いところもあり、臨機応変というわけには行かないだろうし、鈴々にいたっては考えること自体難しい為だ。

話も決まったところで、愛紗と張飛、それと馬超はすぐに行動に移すのであった。そして現在に至る。

 

 

 

 

「さあ、まずは私から相手しよう」

「・・・面倒。三人いっぺんでいい」

「なんだと!」

「鈴々達はそんな弱くないのだ!!」

「・・・弱い。恋のほうが強い」

「そうかよ・・・じゃ、その実力を見せてもらう!しゃっ、おらああああああ!」

 

恋の言動に怒る三人。先に仕掛けたのは馬超だ。武人として一対一で戦おうとしていた三人に弱いからいっぺんに来いと言った恋。己の武力を舐められたと思った三人が怒っても仕方がないかもしれない。しかし、彼女達も察するべきだった。恋の実力を。強い奴と戦いたいと思う武人の性がそれを邪魔したのかもしれないが。

 

「・・・やっぱり弱い」

 

轟!!

 

「うわあああ!!?」

 

先に仕掛けたはずの馬超の一撃を後出しした恋の矛が弾き飛ばした。速さは馬超かもしれないが、重さは恋のほうが数段上だった。

 

「今度はこっちなのだ!!」

 

轟!!

 

「遅い・・・」

 

疾!!

 

「にゃにゃにゃ~!?」

 

鈴々の蛇矛による強烈な一撃が恋に届く前に、方天画戟が鈴々の頬を掠める。いや、咄嗟に勘が避けろと鈴々の首を動かしたのだ。でなければ、今頃は彼女の首から上と胴体は別れを告げていたに違いない。ようやく、恋の実力を感じ取れた鈴々は後方へと距離を取った。

 

「馬超!鈴々!!貴様ぁああああああああ!」

 

爛!!

 

馬超、鈴々と返り討ちに合うのを目の当たりにした愛紗の怒りに火がついた。愛紗は渾身の一撃ではなく、7割の力に抑えた攻撃を連続で繰り出す。それも、それぞれが別の場所を狙うという防ぐのが難しい攻撃だ。7割に抑えたといっても、あの関羽の攻撃だ。一撃一撃が必殺の攻撃なのは間違いない。

 

「・・・無駄」

 

憐!?

 

「なんだと!?」

 

愛紗は驚きの声をもらす。恋が自分の攻撃を表情一つ変えずに全て同じ力、同じ速度で打ち落としたのだから。つまり、それだけ余裕を持って防がれたのである。

 

「だからいった・・・・まとめてこいって。でも、もう終わり」

 

恋が武器を構えなおした瞬間、愛紗だけでなくその場にいた馬超、鈴々も今まで感じたことがないほどの威圧感と殺気を感じたのである。知らずの内に武器を握る手に力が篭る。これが、飛将軍と言われる呂奉先の実力かと。

 

「だが・・・」

「あたし達も簡単には引き下がれないぞ」

「なのだ!」

 

実力を感じたから、はいそうですかと通すはずもない。むしろ、武人の性が強い奴と戦わせろと騒ぎ出すくらいである。三人は恋の言うとおり一斉に斬りかかるつもりである。ここまできては、卑怯などと言っていられない。もう、己の闘争本能の命令に逆らえない。

 

「行くぞ!はぁあああああああああああ!」

「うりゃりゃりゃりゃあああああああああ!」

「しゃおらああああああああああ!」

 

「・・・さっきよりも大分マシ」

 

そして、彼女らの戦いが始まったのである。

 

 

 

 

「白士様、そろそろ汜水関になります」

「わかった。ここからは慎重に行こう。周りを警戒するように!」

「「「「「はっ!」」」」」

 

仙花の予言に従い、汜水関までやってきた一刀。本来なら生で見る汜水関の壮大さに感嘆の息を吐くはずが、彼が吐いたのは恐怖のため息であった。

 

「これは・・・」

「戦場の痕・・・」

 

大きな関所の汜水関、その前に転がる無数の死体と血に染まった武器、防具の数々。死体も白く綺麗な形で残っているはずもなく、体を武器で貫かれた者、体の一部が無くなっている者、恐怖に彩られた顔、壮絶な顔で目を開けたのまま息絶えている者など様々であった。今までの豫州制圧戦や野党討伐戦で幾度か戦場に出たことのある一刀や、管理者として様々な外史で戦場を見てきた仙花は、口に手を当てて気が狂いそうになる景色を堪え、進む。一緒についてきた兵達も平気な顔をしているものはおらず、大半が一刀達と同じ顔をしている。

 

「みんな耐えられなくなったらすぐいってくれ。そこで引き返そう」

 

顔色はよろしくない者もいた為、そう声をかけたが首を縦に振ったもののついぞ、誰も耐えられないと言う者はいなかったのである。

 

「白士様!あそこに!!」

「!?」

「動いてる?生きているのか!?」

「いきましょう!!」

「ああ!」

 

しばらく周りを警戒しながら歩いていると、兵の一人が前を指差す。そこには死体に囲まれ、自身は大量の血を流しているにも関らず、動こうとしている女性の姿が。最初は生きている者はいないと思っていた戦場跡に、生存者がいたのだ。驚いたものの、すぐに正気に戻って駆け寄る一刀達。

 

「おい!意識はあるか!?」

「う・・・董・・・た・・・・」

「よし!まだ生きてるな。無理して話さないで!仙花、まずは止血しよう!」

「はい!!」

 

一刀は体を極力揺らさないように気をつけながら、女性を抱き起こし意識確認をする。女性はかろうじてまだ生きていた。一刀は気になっていた傷の止血をしようと仙花に呼びかける。仙花は急いで持参していた荷物から布と水を取り出すのであった。

 

「一刀様、手持ちの物では応急処置しか出来ません、急いで近くの街で医者に見てもらうのが最善かと」

「ああ。とりあえず、布できつく縛って止血しよう。このままでは失血死になってもおかしくない」

 

手持ちの道具も、医療の知識もない二人にはこの場で出来ることといったら、止血を行うしかない。女性が痛みで暴れないように兵に頼み体を抑えてもらいながら、水で汚れを流した後、布できつく縛ろうとした時だ。

 

 

 

 

・ ・・・・ぉぉぉ・・・・・・ぉぉ・・・

 

 

遠くのほうで風の音にしては低い音が聞こえてきた。応急処置に必至な一刀達は気にするような余裕はないが、見張りを行っていた兵に緊張が走る。

 

 

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

 

 

やがて、その音・・・いや、その声が大きくなってきて、こちらに接近してきていることがわかり兵達は戦闘態勢に入るのだが。声の主の姿を見た途端に、彼らの戦意はどこかへ旅立ってしまいそうになったのである。正確には、その主の後ろにいた者だったが。

 

 

「患者はどこだああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

先ほどから絶叫している人物。正体を華佗、字を元化という。彼は日々、全ての病魔との闘いを繰り広げる医者王である。彼の辞書には不治の病という言葉は存在せず、彼が治療した者達は必ず、完治かゴッドヴェイドーの二つだったという。そして、彼は今回も新たな戦いに赴こうとしていた。今回の彼の相手は斬り傷という強敵だ。だが、彼はめげることなく戦うだろう。それが己の信念だから。

 

「な、なんだ!?」

「なんですか?この叫び声は?」

 

その大きな叫び声に応急処置に集中していた一刀達も気付くようになった。一刀達が顔を上げた先には、赤い髪の男が猛然とこちらに向けて全力疾走してくる姿があったのだ。だが、一刀の目が注目したのはそこではない。その後ろから迫り来る恐怖の存在だった。

 

 

 

 

 

「ぐぉおおおおおお主人様あああああああああああああああああああああ!!!!会いたかったわああああああああああああああああああああああああ!!」

 

ヒモパン一丁の筋骨隆々男の姿である。自称、踊り子の貂蝉だ。

 

「ちょ、貂蝉!?」

「そうよん♪あなたの貂蝉よおおおおおおおおおおおおおん!!」

「誤解を招くことを言うな!!」

「そうです!一刀様は貂蝉のではありません!!」

「あら?管輅ちゃん・・・そう、ご主人様はちゃんと私との約束を果たしてくれてるのね。前よりもずっと生き生きしてるわ」

 

今までヒートアップしていたテンションが仙花の様子を見た途端に落ち着きを見せた。一刀が自分との約束を果たしてくれたことがわかったからだ。貂蝉の心は一刀への感謝でいっぱいになるのであった。

 

「ありがとうね。ご主人様」

「俺も助けたいと思ったからね。でも、特別何もしてないんだ。ただ一緒にいただけだし」

「相変わらずね。ごしゅ「話の途中悪いが、そこの患者を見せてもらいたい」そうだったわね。早く助けないと」

 

この世界に来ることになった出来事を思い出し、懐かしさを感じていた二人の話に割り込んだのは赤い髪の男――華佗。そこでようやく重傷の女性を思い出した。

 

「あなたは医者なのですか?」

「ああ、俺の名は華佗。字を元化という。大陸を回って病にかかった人達を治しているんだ」

「華佗だって!?仙花。早速この人に診てもらおう!!」

「一刀様はこの人を知っているんですか?」

「ほう、俺も有名になったものだ」

「ああ、有名なのは有名だよ。でも・・・「管輅ちゃん、ご主人様はなんだったかしら?」そういうこと」

 

貂蝉の言葉に仙花は納得する。対して、華佗には全くわからない言葉だったのだが、彼は女性を診ることに集中する為、聞いていなかったので反応はなかった。

 

 

 

 

 

「ふむ・・・むっ!これはまずいな・・・貂蝉、すまないが火を起こしてくれないか?」

「わかったわん」

「そこの女性は彼女の体を冷やさないようにしてくれ!」

「はい!」

「俺は?」

「すまんが、君には振る役割はないんだ・・・」

「いや、気にしないでくれ。じゃ、俺は周囲の警戒をしておくよ」

「頼む」

 

一刀は兵達と一緒に警戒に当たる為、その場を離れる。仙花は指示された通りに体を冷やさない為、布で女性を包み、優しくさするのであった。

 

「それでは・・・治療を始める!ぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

開始と同時に華佗は気合いと共に氣を溜め始める。すると、彼が持つ針が光り輝きを放ちはじめた。最初は小さく光っていたが、徐々に大きくなっていき・・・ついには目を開けているのがつらくなるまでになる。

 

「いくぞおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

叫び一閃!華佗は針を女性の傷傍に等間隔に刺していく。すると、女性の出血が収まる。次にその針に己の光輝く氣を流し込んでいった。

 

「元っ!!気にっ!!なぁあああああああああああああれぇええええええええええ!!!!」

 

「きゃあああ!!」

 

華佗が渾身の力を込めて氣を放つと、輝きは最高潮へと達し、あたり一面が光に包まれた。思わず悲鳴を上げてしまう仙花だったが、光が収まるとそこには幾分か顔色が良くなって眠っている女性がいたのであった。

 

 

 

 

「ワンワン!!」

「どうしたの?せきと?」

 

一軒の家で犬の鳴き声が響く。その犬は恋の相棒、セキトであった。その鳴き声にいつもと違うことを感じたのか、璃々と同じくらいの少女が疑問を口にした。そんな少女の問いに構わずセキトは鳴き続ける。

 

「ワンワン!!」

 

「・・・ワン!」

「にゃあああご!」

「キャンキャン!」

「チュー!!」

 

そんなセキトに触発されたのか、恋が大切にしている家族達が次々と鳴き声を上げる。その大きさは少女が耳を押さえておかなければならないくらいであった。

 

「どうしたの?」

 

そこへ、耳を押さえている少女よりは年上だろう少女が部屋へと入ってくる。鳴き声

を上げているセキト達を心配して見に来たのだ。

 

「あっ、おねえちゃん!セキトたちがきゅうになきだして・・・」

「どうしちゃったの?セキト!!」

 

どうやら、彼女達は姉妹のようだ。姉のほうがセキトに向かって叫ぶが、周りの鳴き声にかき消されてしまいセキトに届かない。やがて、少女達の声が届いたのか鳴き声は次第に収まってくる。

 

「「セキト~」」

 

少女達は泣きそうであった。原因がわからず、動物達が鳴き叫んでいた光景が怖かったらしい。ようやく、収まってほっとしたのだろうが、安心するのはまだ早かった。

 

ガン!ガン!ガシャン!!

 

「「ふぇ?」」

 

恋の家族の中で大型に入る動物達が家の裏戸をこじ開けたのである。こじ開けた動物はセキトにまるで「開けたよ」と言うように吼える。

 

「ワォオオオオオオオオン!!」

「「「「「ウォオオオオオオオオオオオオオオオン!!」」」」」

 

それを受け取ったセキトの号令!他の動物も呼応し、大きな咆哮となり、響き渡る。そして、セキトを先頭に外へ飛び出すのであった。

 

「ま、まって!セキト~!!」

「わぁああ!?みんなおちついて~!?」

 

ドドドドドドドドド・・・・

 

「「きゅぅ・・・」」

 

哀れ、動物達に巻き込まれた少女達は可愛く気を失ってしまうのであった。が、そんな少女達の体は動物達に挟まれて地面に触れることなく、セキト達と大移動を始めてしまっていた。彼女達とセキト達の行く先に何があるのか?幸せな未来であることを願いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

お久しぶりです。

 

 

ええ、別にサボっていたわけではないのです。毎日チョコチョコ書いてましたよ。

でもですね・・・

 

別のネタの話がどんどん浮かんでくるのに、こちらのネタというか、話の構成ですね。

が全く浮かんでこないんです。

話を纏めるのが大変なこと・・・。集中力が足りないですね。頑張ります。

 

 

さて、無事医者王とヒモパン一丁を登場させましたが、もう一人もちゃんと登場させますので。ご安心下さい。ちょっと、今回は出す展開には出来ませんでしたが、次回にちゃんと出る予定です。

 

そして、最後に出てきた姉妹の少女。

 

ご想像つく人もいらっしゃるでしょう。

まぁオリキャラなんですが、誰かはわかると思います。

 

 

 

それにしても、前回の母親無双の予想以上の好評ぶりに長編にしたろか!?と思ったりもしなかったのですが・・・。話的にネタが浮かばないのと、元から長編にする気もなかったもので。

とりあえず、仲間になったのがどのような経緯だったかという話がみたいとの意見もあったので。

ちょっと考えてみようかな?と。

 

ちょっとした案みたいなものはあるのですが、話として纏められる程長くないのがネックになったのと、私自身の知識の足りなさが原因でいまだに書くまでに至っておりません。

 

なんか、もっと事件について詳しくのってるものでもあればエピソードを膨らませることは出来ると思うんですけどね。

そんなわけで、母親無双は短編ということで!(結局それかい!?

 

 

後考えてるのは、ポケモンの話。

前にいっていたファイアレッドの話が浮かんでいるということですが。

あらすじが出来ました。第一話と第二話の話もまとまりつつあります。

 

 

ほら・・・浮気しそうでしょ?

まいりました・・・。

 

 

そんなわけで、おせっかい更新です!

これが完結するまで長編はやりませんので!このスタイルは変えないつもりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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