No.204454

真恋姫無双 おせっかいが行く 第二十三話

びっくりさん

すいません。
私の仕事が忙しく、会社から帰ってくるとすぐ寝る時間という生活リズムになっていて、執筆時間が少なかったので遅くなってしまいました。

2011-03-02 00:44:53 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:17352   閲覧ユーザー数:12179

 

 

 

「はぁあああああああ!!」

「うりゃりゃりゃりゃ~~!!」

「しゃおらぁあああああ!!」

 

 

「うらああああああああああああ!」

「やぁああああああああああああ!」

 

 

劉備の誇る猛将、関羽、張飛。涼州の勇将、馬超。それと復活した袁紹の2枚看板文醜と顔良。この五人の将軍が一人の武将に一斉に攻撃を仕掛けている異様な光景。普通なら一瞬で片がつきそうな面子での攻勢であるはずが、この時ばかりは普通ではなかった。何故なら、相手が後に三国一の猛将と呼ばれる呂布だったからである。

 

「くっ・・・」

 

その呂布をもってしても五人相手はさすがにつらいものがあったらしい。先ほどから防戦一方になっていた。それでも、やはり三国一の猛将と呼ばれることになるのは納得であろう。防戦しているだけでもすごい面子なのだから。

 

「くっそ!当たりそうなんだけど・・・なっ!!」

 

ガキィ・・・

 

「まだまだ・・・ん!」

「そうはさせないのだ!うりゃぁああ!!」

 

轟!!

 

「!!」

「そこだ!!」

 

疾!!

 

ガキィン!

 

「おいおい・・・あれでもダメなのかよ!」

「この人、本当に強い!!」

 

馬超が仕掛け、呂布が反撃しようとしたところを狙って張飛が仕掛け、間髪いれずに関羽が仕掛ける。この三連続の攻撃を受け止め、避け、受け流すと見事に裁ききった呂布。この鮮やかな技に戦いの最中だというのに、感心してしまう二枚看板。

 

「だからいった。まとめてこいって・・・ん!!」

 

轟!!!

 

ガキャン!!

 

「きゃあああ!!」

「斗詩!!」

 

「ふっ!!」

「しまっ!?」

 

疾!!

 

ガキャン!!

 

「余所見してる余裕はないぞ!!」

「た、助かった」

 

連撃の一瞬の綻び、常人には決して見えないほんの僅かな綻びをくぐり、恋の放った一撃は顔良のガードを通過し、鎧を傷つける。幸い、鎧のおかげで怪我はなかったのだが、その顔良に気を取られた文醜にもすかさず攻撃を仕掛けた恋だった。が、咄嗟に愛紗が防いでくれたおかげで無傷で切り抜けることが出来たのであった。

 

「ふぅ・・・ふぅ・・・」

「くっそ~、5人がかりでも互角だって?あたし、自信なくしそうだぜ」

「同感・・・」

「む~!!!まだ、負けてないのだ!!」

「みんなで戦ってですよ?」

 

5対1でようやく互角の戦いが出来ているという事実に、自分の武にそれなりに自信を持っていた馬超達は驚愕を通り越して呆れ始めてしまう。が、さすがに呂布にも疲れが見て取れるくらいにはなったようで、呼吸が荒くなっていた。

 

「疲れた・・・そろそろ終わらせる」

「へっ!そう簡単にはいかねぇぞ!」

 

武器を構えなおし、再び両陣が激突するかと思われたが間に矢が打ち込まれ中断された。

 

「誰だ!邪魔する奴は!!」

「恋殿!!申し訳ございませぬ・・・虎牢関が落とされてしまいました!撤退しましょう!!」

「・・・うん。急いで帰る」

「はい!!お前達、矢で牽制するのです!放つのです!!」

 

ヒュヒュヒュヒュ!!!

 

「今回は見逃す・・・」

「あっ!待て!!」

 

音々隊からの援護攻撃によって、恋はその場を離れる。愛紗達はその矢によって撤退する恋を追うことが出来ないのであった。

 

「状況は?」

「張遼殿が・・・曹操に降伏しまして。そのまま虎牢関も攻略されてしまったのです。すぐに洛陽に進軍が開始されるでしょう」

「わかった。急いで戻る」

「はいっ!!」

 

これから戻る洛陽で恋は絶望を味わい、音々の苦難の日々が始まるとは今の彼女達には知る由もなかったのであった。

 

これは、そんな彼女達の知り合いであるおせっかいの物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「火をおこしたわよん」

「すまん、助かる」

 

貂蝉が起こした火、それはそれなりの大きさの石をこの字型に並べ、その中で火を起こすバーベキューで良くされる形式で火を起こされていた。華佗は自分の荷物から鍋と竹筒を取り出す。竹筒の中身は水でそれを鍋に入れ、火の上に設置。さらにそこに肉、野菜、卵などを入れていき、軽く味付けすると蓋を閉じる。

 

「造血作用がある食材での汁料理だ。体も温まるしいいだろう」

「確かに。助かりました」

「何、俺も君達と同じでそこの患者を助けたかったからな」

 

仙花の言葉に、火の番をしながら答える華佗。そこに見回りをしていた一刀達が戻ってくる。

 

「おっ!いい匂いがするな」

「あっ・・・一刀様」

「さっきの人は大丈夫なのか?」

「ああ、治療は終わった。後は、流れ出た血を取り戻すだけだな。今、造血作用のある料理を作っているところだ」

「そうか。ありがとう。君のおかげで助けることが出来た」

「何、さっきも同じことを言ったが、俺も患者を助けたかったからな。礼はいいぞ」

 

それから、料理が出来るまで華佗と貂蝉を交えて一刀達は談笑する。料理が煮立ちいい香りが漂い、一部で唾液を飲み込む音が聞こえ始めた頃、その香りにつられたのか治療された女性が目覚める。

 

「うぅ・・・」

「ん?起きたのか・・・華佗、診てくれ」

「おう!」

 

早速、荷物(診察道具)を持って女性に近づく華佗。華佗が近づいてきたことに気付いた女性は自分の武器を探しだす。傍らに落ちていた斧を見つけ、引っつかむと片腕の力だけでそれを振るった。まさか、攻撃してくると思っていなかった華佗だが、腕の力だけの攻撃であること、怪我が痛んだのかさほど速い攻撃ではなかったこと原因だろうが、華佗の実力も高いこともあり、その攻撃は簡単に避けることが出来たのであった。

 

「重傷なんだ。安静にしてくれないと治るものも治らんぞ?」

「黙れ・・・武人として敗北即ち死!余計なことをせず、このまま私を死なせろ!!」

「断る!俺は医者だ!医者の指名は病気、怪我を治し健康にさせることだ!死なせることは出来ん!!」

「ならば、このまま首を掻っ切るまでよ!!」

 

互いの信念のぶつかり合い。決して相容れぬ主張。女性はそれを断ち切る為、持っていた斧で自分の首を掻っ切る。

 

「やめろ!」

「もう、遅い!!」

 

いざ、腕に力を込めたのだが・・・何故か斧が動かない。己が渾身の力をこめているのにだ。込めすぎて傷が痛みだすもこれから死ぬのだから構わないと、後のことを考えず全力で力をこめているにも関らず、全く動く気配がない斧。

 

「何故だ!うぉおおおおおおおおおおお!!」

 

ついには両手を使って斧を自分の首目掛けて振ろうとするも、それでも動かない。

そこで漸く女性は武器に目をやった。

 

 

 

 

 

 

「ふんどし?」

 

彼女の目に飛び込んできたのは桃色のヒモパンだった。が、パンツという言葉がないのとヒモで結ぶタイプの下着であった為、それをふんどしと勘違いしてしまったのである。いや、重要なのはそこではない。そのヒモパンでわかるだろう。彼女の斧が動かなくなった理由、それは・・・。

 

「もう。いい加減にその物騒な物を離してくれないかしらん?」

 

そう、女性が持っている斧を親指と人差し指の二本で摘むようにして持っている筋骨隆々の漢女、貂蝉であった。

 

「うわああああああああああ!!」

「なんで、人のことを見て悲鳴を上げるのかしらぁあ?」

 

貂蝉を見て悲鳴を上げた女性に怒りを露わにするが、貂蝉以外の人は内心「いや、当然の反応だろ」とつっこんでいたのはここだけの秘密である。そのおかげで女性が斧から手を離したのだから良しとしよう。

 

「・・・よ、よし。診察をしよう。貂蝉、すまないが暴れないように抑えててくれるか?」

「ええ、わかったわん♪」

「や、やめろ!!くるな!!触るなぁあああ!!」

「もう、暴れないの!診察できないでしょ?大人しくしてなさい」

「やめろぉおおおおおお!!」

 

大声を出して暴れる女性、しかしそんな抵抗も貂蝉の前では赤子が泣き叫んでいるのと同じなようで。女性の動きを完全に封じ込めるのであった。それを全部見ていた仙花と一刀は目に涙を溜めて女性の武運を祈ることしか出来なかったそうな。

 

「・・・うむ。さきほど動いたせいだろうな。少し傷が開いていたが治療できる範囲だった。これでしばらく安静にしていれば大丈夫だ」

「そうか。よかった・・・」

「ですね」

 

華佗の診察結果を聞いて胸を撫で下ろす一刀と仙花。これに反論したのは診察を受けた女性であった。

 

「何が良かっただ!!武人としての死に場所を奪われ、私が恥を晒しながら生きることのどこが良かったというのだ!!」

「こ~ら、暴れないの」

「ぐっ・・・離せぇええ!」

「いやよん♪」

 

また暴れだそうとする女性を取り押さえる貂蝉。ガッチリと抑えられて、途端に身動きが出来なくなった。そんな女性に一刀が冷たい目を向けて言葉を放った。

 

「生き恥か・・・生きるのが恥ずかしいのか?戯言は寝て言え」

「戯言だと!!私を・・・武人の誇りを愚弄するか!」

「誇り?そんな家畜の餌にもならないものなんて捨てなよ。大体、一度負けたくらいで死のうとするな・・・確かに戦場での敗北は死だけど、お前は生きてる。それを自ら捨てようとしている方がよっぽど恥だと思うけど」

「私は武人だ!負けたなら潔く死をだな」

「武人なら、次にやったら勝つくらいの気概を持ったら?そのままじゃ、自分が弱いことを認めたことになるだろ・・・」

「なんだと?」

「負けたから死ぬ。つまり、相手のほうが強かった。自分では敵わないから逃げるってことだろ?」

「違う!誰が逃げるか!!次やったら私が勝つ!!」

「本当か?」

「当然だ!今度は負けん!!」

「信じられないよ。実際に見ないとさ」

「だったら、今度あったときに証明してみせる!」

「うん、わかった。じゃ、生きような」

「・・・・あっ」

 

 

 

 

というわけで、女性が自ら証明するといって死ねない理由を作った為、生きることになったのである。人、それを誘導尋問という。理由が理由の為、女性の身柄は当面、一刀達が預かることになる。それでも、女性が死なずに済んだのだから良かっただろう。だが、当の女性がそれに難色を示していた。それは当然のことだった。何故なら彼女は・・・。

 

「まずは自己紹介と行こうか。俺は白士。字は北郷。汝南で県令をやってるよ」

「私は管輅。政務のお手伝いをさせてもらってます」

 

「私は華雄。董卓軍に所属する将だ。これでも、私を受け入れられるのか?」

 

そう、今世間では暴政を敷いている董卓に仕えていた将軍だったのだから。そして、一刀の持っている現代の知識にも存在する有名な武将の名前だった。

 

「(確かに武に自信を持つだけあるな。有名な猛将じゃないか・・・)」

 

そんな華雄も一刀達の反応に、逆に驚いてしまうことになる。

 

「受け入れるよ?」

「わ、私は董卓軍に所属しているのだぞ?」

「今ここにいるのは華雄という一将軍ではなく一人の武人であり、女性だよ」

 

彼女は知らない。目の前にいる男がどんな男であるかを。彼が極度のおせっかいであることに。だが、そんな彼の言葉に一つ疑問を感じた華雄はそのことを尋ねた。

 

「ちょっと待て。私は死んでいないのだから、董卓様のところへ戻らなければならない今も仲間が卑劣な連合軍共と戦っているはずだから」

「いや、もう決着がつきそうだぞ」

「「誰だ(ですか)!!」」

 

華雄の質問に答えたのは一刀ではなく、別の人物である。その言葉の発生源はどことなく貂蝉に似た男であった。貂蝉と同じなら、彼もまた漢女かも知れないが。

 

「あら?遅かったじゃない。卑弥呼」

「すまんすまん。ちょっと、状況を確認してきたかっただけだわい」

「状況?」

「せっかくダーリンが患者を治しても、戦が近くにあったら危険だからの」

「なるほどね・・・」

 

やっぱり貂蝉の知り合いらしい。だが、気になることが。彼のダーリン発言だ。ダーリンの患者・・・つまり、医療の心得があるということは、それに当てはまるのはこの場で一人しかない。一刀達の中で華佗の印象が変わった瞬間だった。そんな一刀達を他所に突然現れた貂蝉の知り合いの卑弥呼と呼ばれた彼に華雄は猛然と問いただす。

 

「どういうことだ!!」

「連合軍は虎牢関を突破して、洛陽に迫っているということじゃ」

「な、なんだと!!」

 

虎牢関突破。即ち、事実上董卓軍が敗北したことになる。

 

「呂布、陳宮は撤退。張遼は曹操軍に投降という状況じゃ」

「(そうか、恋と音々は無事だったか)」

 

卑弥呼の報告に内心胸を撫で下ろす一刀。それとは逆に華雄の顔色が悪くなっていく。

 

「そ・・・そんな・・・」

 

女性はショックが大きく放心してしまう。慌てて貂蝉が支えなければ地面に倒れていたことだろう。

 

「でも、連合軍は順調過ぎるくらいに進軍してるわね。難関の関を両方とも突破するなんて凄いじゃない」

「それが、どうやら連合軍は篭城をせず打って出たらしい」

「ええ!!あんな兵力の差がありながら打って出たの!?無謀すぎるわ!!」

「ああ・・・虎牢関では連合軍の士気を下げて、その上で篭城する策だったらしいが結局その前に潰されてしまった。しかし、汜水関の戦いは・・・正直、下策じゃな」

 

卑弥呼と貂蝉が連合軍と董卓軍の戦いの内容を話し合っていく度、華雄の顔色がどんどん悪くなっていく。体も震え始め、まるで痙攣を起こしているようであった。

 

「華雄さん?」

「私のせいだ・・・私があのときに・・・」

「華雄さん?ねぇ、華雄さん?華雄!!」

「私が・・・あ・・・あぁ・・・ぁ嗚呼あああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

頭を抱えて叫んだと思ったら、意識を失ってしまう華雄。一刀達は慌てて華佗に診察をしてもらうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恋殿!今、洛陽の表は連合軍の兵士で一杯です。ここは先に裏口から入りましょう」

「わかった」

 

虎牢関から撤退した恋達は洛陽の近くまでやってきていた。現在の洛陽は難攻不落と呼ばれた虎牢関を突破し、士気が最高潮に達するほど高かった。そんな連合軍の兵がいる中、潜入する気にはなれず、恋達は裏へと周り、そこから洛陽へと潜入する。

 

「なんとか、潜入できましたね」

「うん。このまま、城へ・・・隠れて」

「!?」

 

城へと向かおうと身を乗り出す瞬間、恋が人の気配を察知し慌てて隠れる。その直後、連合軍の兵と見られる男達が数人現れたのだ。間一髪、隠れることに成功した恋達はその場で息を殺し、兵士が通り過ぎるのを待つ。

 

「先遣隊が敵の本拠へと突入を開始した。我々もこれから続く、行くぞ!!」

「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」

 

大きな雄たけびを上げ、兵士達は己の武器を片手に進軍を開始する。音々は兵士達が通り過ぎるのを確認し、身を乗り出そうとする恋を止めた。さきほどの兵達の会話がそうさせたのである。

 

「恋殿。お待ちくだされ」

「どうして?月達を助けないと・・・」

「いえ、さきほどの会話では、すでに連合軍が突入したとこのことです。残念ですが・・・今から恋殿が向かってももう手遅れかと・・・」

「でも!!」

「わかっております!助けにいきたいと思う気持ちは音々にもありますぞ!ですが・・・可能性が低いです。それよりも、セキト達も気になります。連合軍がここにいるということは恋殿の家も被害があるかもしれないのです。ここはまず、恋殿の家にいきセキト達とあの方達の安全を優先して動きましょう」

「・・・・・・・・わかった。そうする」

「すみませぬ。行きましょう恋殿。(これがいいのです・・・音々にはこれが限界です。兄上)」

 

己の中に湧き上がる不安を隠して恋に着いていく音々だった。

 

「セキト・・・セキト?」

「あれ?声も聞こえないのです。セキト、いないのですか?」

 

あれから身を潜めながら恋の家へとやってきた二人。家で留守番をしているセキトを呼ぶも、返事がない。いつもならすぐにやってくる姿も見られない。僅かに嫌な予感がした二人は急いで家の中を確認した。

 

バン!!

 

「「セキト!」」

 

・・・

 

扉を勢いよくあけた二人。そこには人っ子一人いない無人の空間が広がっている。これで嫌な予感が大きくなった二人は、僅かな希望にすがり家の中を探り始める。

 

「セキトセキトセキトセキト・・・」

「どこいったですか?セキト・・・」

 

だが、セキトの姿どころか他の動物達の姿も、あの方達の姿も見つけることが出来なかった。唯一見つけることができたのは・・・。

 

「恋殿!これをみてくだされ」

 

音々が見つけたのは裏にあるこじ開けられた扉と、その淵に僅かにこびりついていた血痕であった。それを見た恋は目から光を失い、その場で膝をついてしまった。

 

「セキト・・・セキト、せきとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「恋殿・・・」

 

恋の絶叫が響く。彼女達の中の嫌な予感が現実になったのだ。大切な家族であるセキトを失った彼女の悲しみはそれほど大きかった。そう、生きるのをやめたくなるくらいに。自分も悲しい気持ちである音々は、隣でそれ以上に悲しんでいる恋を見て幾分か冷静さを保っていた。これ以上は連合軍に気付かれる。そう思った音々は絶叫後、完全に生ける屍のように呼吸だけをする恋を見て、洛陽からの脱出を決意するのであった。

 

 

 

 

 

「(でも・・・音々達は暴君董卓に仕えていた将なのです。他の街へいっても受け入れてもらうのは難しいでしょう)」

 

それでも、恋が普段通りならその武力で領地の一つや二つ、簡単に手に入っただろう。しかし、現状ではセキトを失ったショックで無力になっており、その方法は選ぶことが出来ない。

 

「(そんなことを気にしないで音々を受け入れてくれる人なんて・・・)」

 

無条件で自分達を受け入れてくれる・・・そんな極度のお人好しなど、今の時代に期待することは出来ない。そんなことをすればたちまち他諸侯から攻撃の的にされてしまう。第二の董卓となってしまう。それをわかっていて自分達を保護しようと考える酔狂などおりはしない。この時代はとても残酷なのだ。そう思っているはずの音々には一人だけ心当たりがあるのである。

 

「(そんな人がいるなんて・・・でも、ずっと頭から離れないのです)」

 

そんな究極のお人好しなんて・・・自分達にそんなおせっかいを焼いてくれる人なんて・・・そう思う度に、むしろそう思おうとする毎に強く強く浮かんでくる人物がいる。自分が知っている限り、恐らく大陸一、この世界一であろう究極のおせっかいの存在が・・・。

 

「(もう、あの人に頼るしか音々達に道はないのです)」

 

可能性は万に一つ、いくらその人でも今の自分達の現状を知ってしまえば受け入れてくれはしないだろう。それでも、僅かな可能性に賭けて音々は決意し、その人に頼みに向かう。救いを求めて。

 

「(どうか、音々達を救けて!!)」

 

音々にとって、苦難と試練の旅の始まりであった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・大丈夫だ。精神的な負荷で気絶しただけだ」

「そうか」

「でも、原因は何かしら?」

「さっきの戦の話かもしれないぞ」

「ここにいたってことは、汜水関の主将って華雄か?」

「ああ、自分のした責任を実感したのじゃろうな」

 

気絶した華雄の診察結果を聞いて安堵の息を吐く一刀達。気絶した原因を推測し、悲しそうな目で華雄を見つめる一同であった。

 

「さて、いつまでもここにいるわけにはいかないな。華雄は重傷患者だし。街に連れて帰ろう。華佗達にもお礼がしたいから俺達と一緒にきてくれないか?」

「わしは構わんが・・・ダーリンはどうする?」

「俺も構わん。次は白士の街で診察を行うことにすればな。まだ、そこは行ったことがないし」

「決まりだな。あっ、貂蝉。悪いけど華雄を運んでくれないか?」

「いいわよん♪」

 

こうして全員が一刀の治める街へと向かうことになり、移動しようとしたときだ。

一刀の耳に何か声のような音が聞こえた。

 

「ん?今、何か声が聞こえなかった?」

「はい?私には聞こえまえんでしたけど?」

「そうか。俺の気のせいかな」

 

その場は気のせいということで忘れてしまおうとするが、しばらくするとまた聞こえたのである。再び聞こえた声は仙花にも聞こえたようで忘れられないものとなる。

 

「今度は聞こえました」

「ああ。俺の気のせいじゃなかったみたいだね」

 

二人が辺りを見回すと関の脇にある山の上の林に小さな影があるのが見える。距離があり、その影が声の発生源であるかはわからない。が、そこに何かがいることは見て取れる。一刀達はそこに視線を定めて事態を見守ることにした。すると、影は一旦奥へと引っ込んでしまう。

 

「野生の動物か何かかな?」

「みたいですね。大方、ここで何があったか見に来たのかと」

 

引っ込んでしまったのではどうしようもない。さきほどの声も野生の動物達の鳴き声が聞こえただけだと一刀達は踵を返そうとした。しかし、今度は貂蝉達の足がとまっている為、進むに進めなくなったのである。

 

「どうした?貂蝉」

「ご主人様。あれ見てよ」

「あれ?」

 

一刀は貂蝉に示された方向を向く。その方向とは、さきほど一刀達が見ていた山の先であり、斜面が比較的緩やかなところであった。そこを見ると幾つかの小さな影が斜面を降りてきているのがわかる。しかも、進む方角がこちらになっていた。一刀達はその影がなんなのかわからないが、こちらに向かってきているので警戒態勢に入った。

 

「なんなんだ?あれは」

「わからないわ。とりあえず、警戒しておきましょ。卑弥呼、よろしく頼むわねん」

「ふむ、ダーリン達がいるし引き受けよう」

 

卑弥呼を中心とし、向かってくる影を警戒する一刀達。その影は一定の速度でこちらに向かってくる。一気に緊張感が高まる一同であったが、その影が近づき姿が確認できるようになると、緊張感はなくなっていくのであった。何故なら、その影の正体は一刀の知り合いであったからだ。

 

 

 

 

 

「わんわん!!」

「あれは・・・セキトか!!」

 

そう、一時期、一刀がいた村に滞在したこともある呂布こと恋の愛犬、セキトだったからだ。それは偶然だったのかも知れない。もしかしたら、動物が持つ独特の勘だったのかも知れない。理由はわからないが、セキト達は恋の家を出て森に入り、山を登り、獣道を通って一刀達の目の前に姿を現したのである。

 

「ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・・わん!!」

「やっぱりセキトか。元気だったか?」

「ワンワン!!」

「そうか~。うりうり~♪」

「くぅ~ん♪」

 

久しぶりの再会を喜び、じゃれる一人と一匹。しばらく一通りじゃれあうと、セキトは一刀の服をくわえ動物の群れに引っ張っていく。自分をどこかに連れて行こうとしていると理解した一刀も抵抗せずにセキトについていった。

 

「ワン!!」

「これは・・・」

 

セキトがつれてきた場所、動物達の中心部に横たわっている二人の璃々くらいの女の子が眠っていた。

 

「この子達はセキト達が連れてきたのか?」

「ワン!!」

 

煌びやかな衣装を身にまとっていることから、何かしらの役職についている人物か、その親族なのだと見て取れる。でも、そんなのは関係ない。目の前で眠っている子供を放っておくことは出来ないのだから。

 

「じゃ、この子達も連れて行こう。セキト達もおいで」

「ワンワン!!」

 

こうして、一刀達は新たな同行者を加えて自分達の領地へと帰還するのであった。

ちなみに、気絶した華雄を筋肉だる・・・げふんげふん、貂蝉が。女の子二人を一刀と仙花がそれぞれ受け持ち、運んだのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「詠ちゃん・・・」

「大丈夫よ。月は僕が守るから・・・それに、恋達がそんな簡単に負けないわ」

「うん」

 

王宮で会話をする二人の少女、儚い印象の銀髪の少女に、勝気な目をした眼鏡の少女。二人こそ、連合軍が狙う人物、董卓とその軍師、賈詡であった。月と呼ばれた董卓は玉座に座り、その傍らに詠と呼ばれた賈詡が立っている。二人には分かっていた。圧倒的な戦力の差があり、戦に勝ち目がないことを。だが、月は詠のことを、仲間を信じていたし、詠もいざというときは月のことを守ってみせると絶対的な誓いを胸に抱いていた。そんな二人に無情な複数の靴からなる足音が聞こえてきたのはすぐのことであった。

 

バン!!

 

「お前達が・・・董卓と腹心の賈詡だな」

 

扉を開けて一番乗りをしてきたのは劉備軍の関羽こと、愛紗であった。己が武器を持ち油断など微塵も見られない。凛とした佇まい。賈詡は早々と逃げることを選択肢から外さずにはいられなかった。油断していた場合には僅かな可能性に賭けて逃走を試みただろう。しかし、目の前にいる人物からは油断は見られず、逃走することは不可能だと悟ったのだ。彼女に出来ることは月だけでも助けることが出来る策を考えるだけであった。

 

「うにゃ?見つかったのか?」

「どうやら見つけたようだな」

 

少し遅れて現れたのは張飛と趙雲である。それから劉備、諸葛亮、凰統、公孫賛と次々に到着した。

 

「この子達が暴政をしていた?」

「らしいな・・・」

「全然そうは見えないが・・・」

 

「ふざけないで!!月が暴政をするわけないでしょ!!権力に取り付かれた逆賊なんて言いがかりもいいとこよ!!あんた達のほうが逆賊じゃない!!」

 

劉備達の会話に我慢できなくなった詠が吼える。これには劉備達は言葉に詰まってしまった。意外にも激昂しそうな愛紗達も同様な様子。それも無理ないことである。彼女らは洛陽に入った時点で異変に気がついた。まずは街の様子が綺麗であったことである。

 

「これが洛陽か・・・」

「しっかりと道も整備されているな。人々が苦しめられていると聞いていたがこんなに綺麗にしているところでそんなことがあったのか?」

 

生活の苦しい場所ならば、道端に餓死している者も少なくないし、建物も寂れているはずである。しかし、洛陽にはそのような人も建物も見られなかったのだ。それは洛陽の中を進むに連れて思いが大きくなっていった。

 

「人が見られないですね」

「避難したのであろう?」

「それが本当だったらますます疑問が大きくなりますよ?暴政を行っているなら民達のことなんて考えないですから」

「それもそうだな」

 

理由の二つ目、街人が避難している点である。これは民に被害が及ばないようにする措置であるが、暴政、略取をするような人物がそんなことをするとは思えないからだ。この時点で、自分達が参加した連合軍に大儀などないのではという思いが固まりつつあった。極めつけは・・・

 

「あっ!人です!!」

「民間人のようだな」

 

「ひっ!!」

 

まだ避難していなかったのだろう。数人の青年を見つけた。彼らは愛紗達を見つけると怯えたように顔を歪めたが、恐怖を感じながらも放たれた言葉は怒りに満ちたものであった。

 

「出て行け!!侵略者共!!」

「わ、私達は暴政を強いられた民達を助けようと・・・」

「俺達は平和に暮らしていたんだ!それをお前達が壊したんだ!!」

「なっ・・・」

 

そう、彼らの言葉で確信した。連合に大儀などないのだと。彼女達は、主に軍師の二人だが、連合に参加する前に、疑問に思っていたことがある。この連合に大儀があるのかと。洛陽の情報がないのに、暴政を行っている董卓を討伐する為に集められた諸侯。証拠も何もない状態ではただの言いがかりだ。だが、もしその話が本当なのであれば見過ごすことは出来ない。それを確かめる為に連合に参加してきたのだ。そして、もし董卓達の話が嘘なら、助けたいと思っていたのだ。

 

「そんな・・・」

 

劉備は青年達の言葉にショックを受けた。嘘かもしれないと思っていても心のどこかで連合に参加した諸侯を信じていた部分も存在していた。その信用があっけなく壊されたのだから。

 

 

 

 

 

「私は・・・あんた達を絶対に許さない!!」

 

真実を知った劉備こと桃香達は、当初の通り董卓達を救出する為に動き出す。なんとしても一番乗りして董卓達を保護しようとの考えから愛紗、張飛を先頭に、殿を趙雲が務め、かなりの速度で進軍した。こうして到着した玉座の間で辛辣な言葉を浴びせられたのだ。私達はお前達を救おうとして・・・と反論も出来たが、彼女らは汜水関で董卓軍と戦闘をしているし、将軍一人を斬り伏せている。彼女達も侵略者と言われる資格を持っていた。故に詠の言葉が胸に刺さった。それでも、桃香、愛紗が、みんなが彼女達を助けたいと思った気持ちは嘘ではない。

 

「それで、いいです」

「なんですって?」

「私達がどんなことを言っても、侵略したことには変わりないから・・・許されなくて当然です。でも・・・あなた達を助けたいと思うことは嘘じゃない!」

「・・・で?何がいいたいわけ?」

「私達のところへ来てください」

 

詠は怒りに満ちた顔をしていたが、内心では桃香の反応が予想外で驚きに満ちていた。自分の最初の言葉を聞いたときの彼女達の反応は、理想を否定されて絶望した者がする表情に似ていた。だから、彼女達の心を攻め、精神的に追い詰めることで隙を作りその隙をついて、逃げようとしていたのだが・・・。桃香はそんな予想を超えた反応を示した。つまり、自分の罪を認め、その上で最善を尽くそうとしていたのだ。次は間違えないように。

 

「私達を匿うっていうの?」

「はい」

「何が目的な訳?私達の首を差し出して手柄を上げて、名声でも高めるつもりかしら?」

「そんなことしません!それでは、匿うとも言わないじゃないですか!!」

「じゃ、何を考えてるのかしら?私達を匿うとしたらあなた達に得なんてないじゃない!!」

「理由?ただ、助けたかった・・・それで、それだけで充分です!」

「はぁ!?」

 

詠には理解できなかった。ただ、助けたいと思ったから自分達を匿うといった桃香が。そんなことして、もしバレたら今度は桃香達も討伐の対象となるだけなのに。態々そんなリスクを犯して自分達を匿おうとしている桃香達の考えが詠には理解できるはずがなかった。

 

「そんなこと信じられるわけないでしょ!この時世に誰が不利益とわかっていながら人を助けるのよ!」

「確かに貴殿の言うとおりだがな。けれど、このままではどの道、お主達の死は免れぬぞ?」

「ぐっ・・・」

 

そう返答したのは一番冷静だった趙雲である。彼女の正論に返す言葉がなく詰まってしまう詠。そんな彼女を後ろにいた月が制止する。

 

「もういいよ、詠ちゃん」

「月?」

「私はこの戦争を起こしてしまった責任があります。なので、このまま首を差し出そうと思っています」

「月!?」

「「「「なっ!!」

「ほぅ・・・」

 

月の言葉に詠を含めて桃香達は驚愕した。ただ一人趙雲だけは違う反応を示していたが。

 

「ダメよ!ダメ!僕は絶対に認めないわよ!!」

「そうだよ!そんな簡単に首を差し出したらダメだよ!!」

 

「いいの・・・私のせいでたくさんの人が死んじゃった。たくさんの人に迷惑をかけたから・・・私は・・・」

 

小さな声で、しかし強い覚悟を持って零れる言葉だった。それが理解できた詠は言葉に詰まる。もう、自分が何を言っても意見を変えないだろうと思ってしまったから。桃香達も説得する言葉が出せない。そんな中、一人だけ冷静に聞いていた趙雲が口を開いた。

 

「お主がいたからとは勘違いをされているな」

「え?」

「別にお主のせいでこの戦争が始まったわけではない。たまたま、お主の地位が高かった為に反感を買ってしまっただけだ。お主が気に病むことではないだろう」

「でも・・・多くの人が犠牲になったのは事実です」

「だからといって、首を差し出しても意味はないだろう?逆に死んでいった者達が報われないだろう」

「そ、それは・・・でも、私達はどの道、死刑になる身ですし・・・」

「だから、我らが匿うと言っているだろう?」

「へぅ・・・」

 

月の言葉に冷静に返答していく趙雲。いつしか、月も返す言葉がなくなってしまい口を閉ざしてしまった。

 

「何、責任を取るなら死ぬことはない」

「どういうことです?」

「生きながら償うことも出来よう?どの道、死ぬことが確定しているなら、我らに騙されたと思って提案を受け入れて欲しいのだがね」

 

こうまで言われてしまえば、月達に出来ることは提案を受け入れることだけであった。

 

「よろしく・・・お願いします」

「うん!任せて!!」

 

これで助けることが出来ると、桃香は笑顔を浮かべて月達を匿う為に動くのである。桃香だけでなく、愛紗達も顔が綻んでいる。そんな彼女達を見て詠が呟いた。

 

「全く、あんた達みたいなお人好し見たことないわ・・・。こんなことするのはあんた達くらいでしょうね」

「「「「そんなことないよ(ぞ、のだ)」」」」

 

詠の言葉に桃香達姉妹と趙雲が否定の言葉を放つ。それは見事に重なりハーモニーを奏でた。あまりの綺麗な重なりに詠は呆気に取られてしまった。

 

「こんなことするのはあんた達くらいでしょ?」

「いやいや、我々などまだ甘いくらいだ。もっと凄いことをしそうな御仁を一人私は知っている」

「私も知っている。自分を殺そうとした人物を自分の村に誘い、ご馳走をふるってしまうような人物がな」

「困ったお兄ちゃんなのだ!」

「うんうん」

 

そんな文句を言ってるようで、笑顔で話しているのである。一体、どんな人物なのか。

 

「どんなバカよ。そいつは・・・」

 

こんなことを漏らしても仕方ないことであった。

 

 

 

 

 

 

 

お久しぶりです。

 

 

誤字が多いことに定評のあるびっくりです。

 

 

仕事が軽く修羅場っている為、会社→帰宅→就寝→起床→出社

と執筆時間が休日だけと少なかったので遅くなってしまいました。

 

しばらく続きそうなので、これからも遅くなります。

 

 

さて、内容についてお話しましょう。

 

まず、反董卓連合の話は次回で終了です。

正直、主人公全く絡んでいないのであっさりと終わらせたかったんですけどね。

あれ?今のままでもあっさりですか?

でも、私の当初の予定ではさらにあっさりしてましたので、あっさりということで。

あっさりですねwwww

 

 

そして、医者王の一行登場。

皆さんのテンションも上がることでしょう。特にヒモパン筋肉でwww

 

 

最後に登場した謎の幼女。

彼女らはオリキャラです。他の作品でも多く登場されているあのお方達です。

わかっている人はわかっているでしょうwww

 

答えは本編でwww

 

 

さて、次回予告。

次回の話は次の内どれになるでしょうか?

お答え頂く方はツンデレ風にお願いします。

 

 

1、そろそろ天和分が足りない。補充しようか?ほあ!ほあ!ほあああああああああ!!

2、おとうさん。りりとあそんで~!!の璃々無双!!

3、一刀様、親睦を深めましょう?主に床で・・・まさかの紫苑さん無双!!

4、ごっ主人様~♪ガチムチ・・・。

5、蹴・・・私の愛を受けとって下さい!!「断る!!」

 

 

さあ、どれだ?

 

あっ、大事なことを忘れていた・・・。

 

6、子供は可愛いですね。いずれ私も一刀様との・・・わ、私は何を考えて!?一人慌てる仙花さん。


 
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