十七話「静かなる烈火」
喜助視点。
なんとか痛む体で、店の仕事をこなしていた。
全身が痛い。
でも、表には出せない。
錯乱して暴れた成を押さえる為、死神の力と――おんじサンと契約して得た神力を使い、なんとか抑え込んだ結果だ。
成の潜在能力の規格外さに、正直驚いた。
もし神力を全開放すれば、成の体が持たないのではとすら思ったほど。
いずれ修行を付けなければならない。
もはや避けられない課題だ。
沖サンがいなくなり、精神的な支柱を失った浦原商店は沈鬱な空気に包まれていた。
だからこそ、今はボクが大黒柱として役割を果たさなければ。
沖サンが最後に教えてくれた、津井原秋次(あきつぐ)という兄の存在――あれを無駄にはできない。
どうにかして沖サンのいる世界を特定する。
成の為にも、必ず。
沖サンが消えた日に部屋を半壊させ、泣き尽くした娘。
今は一週間、部屋に篭ったままだ。
立ち直るのは、成自身の力でなければならない。
ここで手を出せば、成は折れる。
もどかしくて仕方がないが――親であっても、見守る事しかできない。
(成……ここで自分に負けちゃダメっスよ。沖サンの為に、自分で立ち上がるんだ……)
そう願いながら、店の戸を開けた。
今夜は雨だ。
雨竜が助け、そして一護が死にかけ、ルキアに救われる――あの夜。
沖サンのいない日常に、嫌気は募る。
それでもボクは、生きる。娘の為に、役割をこなす為に。
胸の奥で――運命そのものをぶち壊したいほどの怒りを燃やしながら。
※
予報された運命通り、雨が降っていた。
傘を差し、一護のもとへ向かう。
肩には黒猫の夜一サン。
「喜助」
「なんです、夜一サン」
「そなた、大分キレかけておらんか?」
「キレてないっスよ。ただ……全部ぶち壊したいだけっス」
「それをキレてると言うのじゃ。黒崎一護というガキに、その本性を見せるでないぞ」
「見せませんよ……」
ため息を堪えながら、死神達が去った後の現場に到着する。
血に濡れ、倒れている一護と雨竜。
「はぁ……こりゃ治療が必要ッスね。本当、沖サンなら一瞬で終わるんですけど……」
「文句を言うな。ガキが死ぬ前にやれ」
「分かってますよ。黒崎サンもウチを贔屓にしてくれてますし、雨竜サンは大事な店子ですからね」
――あの日の成の声が蘇る。
血を吐くように、喉を裂くように泣き叫んだ娘。
暴走を止めるためとはいえ、気絶させるしかなかった己の判断。
初めて手を上げた事が、胸に刺さったままだ。
もっと早く感情を吐き出させてやれたら。
もっと早く向き合わせてやれたら。
だが、それをしていれば――もっと深く傷付けていたのだろう。
あぁ、もどかしい。
全てが、もどかしい。
それでも。
ボクの役割は、変わらない。
|
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
BLEACHの二次創作です。
浦原喜助の娘で、成長物語です。
※浦原喜助視点です。