No.99689

真・恋姫†無双 金属の歯車 第四話

この物語について
・真・恋姫†無双をベースにとある作品の設定を使用しています。クロスオーバーになるのかな?まあ混ぜている作品は題名でわかるよね。
・クロスオーバーが苦手な方には本当におすすめできない。
・俺の◯GSを汚すんじゃねぇって方もリアルにお勧めできない。
・ちなみにその設定は話の本筋にはあんまり関係ありません。

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2009-10-08 17:11:14 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5929   閲覧ユーザー数:5127

「楽しいね、ご主人様」

「ご機嫌で何よりだ」

 曹操が張角の首を挙げたことによって黄巾の乱は終結を見た。

一方黄巾の乱が桃香にもたらしたのは相という役職であった。街を治めるという初体験の連続であった。

「だってようやく平和になったんだよ」

「・・・どうだろうな」

 黄巾の乱が去ったものの、蒼天には確実に濁りが生じていた。

「どうだ、政のほうは?」

「うっ」

 政は桃香達に任せ、一刀は別の事に専念していたが・・・。

「だってご主人様・・・手伝ってくれないんだもん」

「ははは、私だって忙しいものさ。この前だって薬草の群生地を調べたり、地図の確認に行ったり・・・」

 あまりにも劣悪な衛生環境だったため石鹸を作ったり、この時代では知られていない薬草を採取したりと決して暇なわけではなかった。

「けどご主人様ってすごいよね、いろんな事を知ってて・・・」

「薬に関してはかなり勉強しているからな。その辺の医者より詳しい自信がある」

 忙しいものの充実はしていた。

「平和だね」

「・・・ああ」

 空は雲無き蒼天だった。

いずれこの蒼天は再び戦火により黒く濁っていく。そのためにも今は経験し、蓄えることが重要だった。

「ご主人様、桃香さまー」

「朱里ちゃん?何かあったの?」

「お客様です。確か趙雲さんとか」

「・・・なんでだろ?白蓮ちゃんからの使者かな?」

 

 第四話 英傑集結 ~New Heros~

 

「では・・・主よ。私の初任務を命じていただきましょう」

 趙雲・・・星の居所は劉備軍だったらしい。わざわざ訪ねてきてご苦労なことだ。

「貴女までそう呼ぶのか・・・」

「おや、気に入りませんかな?」

「ああ、今すぐでも全員に止めさせたいくらいだ」

 大げさに態度をとり、どれくらい嫌かを体で表現する。

「よいではないですか、こんな美少女に主と慕われて・・・いい環境を構築されましたな。あ・る・じ」

「うっさい、今止めろ、すぐ止めろ、今すぐ止めろ」

 自分でも驚くほど反射が早かった。どうやら心の底からの本音であるようだ。

 

 * *

 

 星が劉備様ご一行に参加してから少したった日のことだ。

袁紹、袁術連名の手紙であり、話を要約すれば「董卓があの地位にいるのが気に入らないのでみんなで倒しましょう」というわけだ。

「まあちょっと待て、桃香」

「え?」

 会議の途中に意外なところから声がかかる。議題は反董卓連合への参加であった。

「私はこの手紙の内容・・・すべてを鵜呑みにするわけにはいかないと思う」

「主も同じ考えで?」

 星が意外そうな顔でこちらを見ている。

「私が勝手に編成して勝手に放った諜報によると、董卓が重税など圧政を強いているという確たる情報はない」

「・・・本当ですか?」

 今度は朱里と雛里が目を大きく見開いてこちらを見つめている。そんなに意外だっただろうか?

「みんなが内政で精一杯というのは私が一番良く知っている。加えて袁紹、袁術が嫉妬深く私利私欲にかられやすいというのも知っている」

「ではご主人様は反董卓連合への参加は反対と?」

 愛紗の機嫌が少し悪い。やる気をぽっきり折られているのだから仕方ないかもしれない。

「確かな情報もなく諸侯を動かしたというのならば周りが黙っているはずがない。目の上のたんこぶが一つ消えるわけだ」

「つまり・・・ご主人様は袁紹さんたちの失脚を狙っていると」

 朱里の言葉に耳を傾け、難しい話で参っている鈴々の頭を撫でる。

「そうだ。彼女たちには出るところに出てもらって表舞台から退場してもらおう」

 あまりにも役者不足だ。と付け加えた。

「星が先に言ってた孫策と曹操。いずれ彼女たちと我々の戦いになるだろう」

「ううう、ご主人様って意外に怖い人だね」

 桃香が少し縮こまっている。

「舞台に立つのは主役と引き立て役だけでいい」

 羽織を翻し、それに描かれたオオアマナが舞う。

「支度するぞ。私は諜報に加えて、薬など衛生面でも忙しいのでな」

「結局参加には賛成ということですか、全くどっちの味方なのやら」

「愛紗よ、主はいつも我々の味方だ」

「そーだよ、愛紗ちゃん」

 

 

「啄県県令の劉備玄徳です。兵数は二千です」

 一時は六千ほどいた兵も黄巾の乱集結に際して解散している。今残っているのは三千人。残りの千は啄県の守備に当たっている。

「お待ちしておりました。他の諸侯代表はおおかた揃っております。急ぎ中央の天幕までご足労お願いします」

「強行軍でも遅れたか、まあ仕方あるまい」

 啄県からこの陣留群までかなりの距離がある。既にシ水漢まで侵攻しているものだと思っていた。

「じゃあ朱里ちゃん、一緒に軍議に出てくれる?」

「御意です」

「待て、私も出る。雛里よ、すまんが軍を纏めておいてくれないか?」

「は、はいです」

 雛里の頭を撫でて二人に小走りに追いつく。

「顔を覚えておくのもいいだろう」

 この世界に来た目的を達するためにも今情報収集は大事だ。嘘をなるべく言わないように目的を隠す。

「・・・ご主人様、雛里ちゃん達の頭よく撫でるよね」

「撫でやすい高さなんだ」

「「朴念仁・・・」」

「え?」

 桃香と朱里が同じ言葉を言ったように聞こえたがうまく聞き取れない。

「あれが大天幕かな?」

 そして巧く逃げられた。

 

 * *

 

 

「おーっほっほっほ」

 軍議が始まった端からこれだった。袁紹の笑い声に気合いを抜かれる。

「こっちまで阿呆になりそうだ」

「あら、案外分かってるじゃない」

 思わず呟いた言葉に桃香の横に座っていた女性が、こちらに微笑む。

「だけど一つ、貴方は間違っているわ」

 金の縦ロールが二つ、ふわりと揺れる。

その姿から想像できない覇気が体に伝わってくる。少なくとも敵意ではないが、横に座っている桃香は大丈夫だろうか。

「阿呆じゃなくて馬鹿なのよ」

「その違いは?」

 日本では東と西で意味合いが若干違うらしい。関ヶ原で文化が分かれている事は多々ある。

しかし中国に関ヶ原はない。

「馬鹿の方が馬鹿なのよ」

 なるほど、と呟き同時に肩をすくめる。妙に納得できる一言だった。

「華琳様が男性に話しかけるとは珍しい」

 今度は自分の横にいる女性が話しかけてくる。

「・・・曹孟徳、聞きしに勝る覇気だ」

「夏侯淵妙才だ。貴方は?」

「このお馬鹿のお守りの北郷だ」

 そういって桃香の頭をぽんぽんと撫でる。

「ご主人様、ひどーい」

 場が場なので小さい声の非難が聞こえる。

「あら、貴方が北郷?じゃあ貴女が劉備ね」

「そんなに有名とは光栄だ。自己紹介しなくて済む。もっとも名で馳せているわけではないがな」

「そう?天の御遣いってだけじゃなくて幽州随一の知恵者との評判よ」

 それは意外だった。情報量の少ない社会では天の御遣いという名が先走っていると思っていた。

「男で部下にしたかったのは貴方で二人目よ」

「それも光栄だ」

 曹操といえば、優秀な人材を多数登用したことで有名だ。それを思えば実に光栄だ。

間諜の集めた情報によれば、この世界の曹操はずいぶんな女色家らしいが、彼女らしい表現で表してくれる。

 そんなこんなで目の前では各諸侯の自己紹介が始まっていた。

顔見知りである公孫賛が普通の自己紹介を終え、次は袁術だ。 (普通って言うなー)

「袁術じゃ、こちらは客将の孫策じゃ」

 体格的にも覇気的にも小物の袁術と比べて、凛々しく目つきの鋭い女性が一礼する。

(孫策・・・既に孫堅は既に亡きか)

「啄県から来ました劉備です。こちらは軍師の諸葛亮と・・・」

 いつの間には順番が回ってきている。桃香が自分の扱いに少し困っているようだ。

「北郷一刀だ」

 軽く一礼した。少しどよめきがあったが、注目するべきは次の人物だ

「典軍校尉の曹操よ、こちらは夏侯淵」

 自分の時よりもどよめきが僅かだが大きかった。

 

 

「そもそも立候補制とか推薦制が悪いと思うんだ」

「・・・」

 横の桃香はうなだれ、口は開け放たれている。魂は口から抜けるというのは、人間が精魂尽き果てたときに口をぽっかり開けると事から来ているかもしれない。要するに生気が完全に抜けている。

先の会議では総大将を決めるという初歩的な事が決まっていなかった。

諸侯は腹の探り合いであり、業を煮やしても煮やせない状態が続いていた。気の弱い人間なら一発で倒れているところだ。

ところがウチの御馬鹿大将が業を煮やしたのだった。

 

「こうしている間にも洛陽で沢山の人が困っているんですよ!」

 

 その発言からずるずると袁紹のいいように流れ彼女が総大将となった。

そうなれば桃香が推薦の責任を取らなければならない。その結果が僅か二千の兵の先鋒だった。

「桃香よ、やってしまったことは元には戻らない」

「そうですよ、ご主人様の機転で四千もの兵と兵糧を借りられたんです」

 あのときばかりは自分も饒舌でやっていけると思ったくらいだ。

よくまああれだけ単純なお世辞に乗ってくれるものだ。

「あとは朱里たちと愛紗たちの役割だ」

「本当にごめんなさい・・・」

「それ以上謝ると本気で怒るぞ」

 少し怒気を込める。

 おそらく聞いたことのない声に桃香が思わず姿勢を正す。

「桃香、さっきの自分の言動・・・正しかったと思うか?己の義を信じ、己の意志(Sence)を信じた言動か?」

 桃香は大きく頷いてくれた。その目はさっきの生気がない様子とは違う凛々しい目だった。

「ならばいい」

 天幕の中に入ると愛紗、鈴々、星、そして朱里に雛里が桃香を力強く見つめている。

「ここにいるのは桃香の意志に惹かれて集まった連中だ」

 オオアマナの羽織を翻し桃香をその中心に導く。

「ならばその意志を叶えるべく動くだけだ」

 そして蛇は自信に満ちた不適な笑みを浮かべた。

 


 
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