No.987473

ごちゆり10~ココリゼ3

初音軍さん

リゼ卒業後の話。リゼさんはこんな軟弱者ではないでしょうが可能性はあるでしょうね。
だって人間だもの みつを。(ぉぃ)

2019-03-17 16:07:30 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:818   閲覧ユーザー数:818

ごちゆり10~ココリゼ

 

【リゼ】

 

 ラビットハウスでのバイト中、ココアが店に入ってきた。学校の用事でいつもより

時間がかかったらしい。急いで店の制服に着替えると私とチノに謝りながら

自分の仕事を始めていた。

 

 私は学校の制服を着ていたココアを見ていて何だか少し羨ましく思っていた。

卒業するまでは何とも思わなかったのに。もしココアと同じ学校で同じ学年だったら

どうだったのだろうと考えてしまうのだ。

 

「ん?」

 

 ジッとココアを見ていたことに気づいたのか、振り返ったココアは私の方に

笑顔で近づいてきた。

 

「リゼちゃん、どうしたの?」

「な、何でもないぞ」

 

「そう?」

 

 不思議そうな顔して覗き見てくるのが何だか小動物のようで嘘を吐くのが辛く感じる。

上目遣いが可愛すぎる。

 

「ほんとに~?」

「はぁ…、本当はココアと一緒に学校生活送れていたら楽しいのかなとか思っただけだ」

 

「リゼちゃん…」

「ちょっと思っただけだ。今は今で充実してるんだからそんな顔をするな」

 

 複雑そうな表情をするココアの頭を撫でまわすと、少し表情が明るくなる。

まるで尻尾でもあればブンブン振り回す犬みたいだ。

 

「じゃあ、今度休みの日にでも制服デートしようか」

「制服デート!?」

 

「私の学校の制服着てデートしようよ」

「でも…いいのか?」

 

 もう高校生ではない私が着るのは少し抵抗あるんだが…。でも私の手を握って

きらきら目を光らせているココアを見ているとそれも悪くはないと思えた。

 

 

 そして約束の日。私はラビットハウスに来てココアの部屋に案内される。

部屋の中へ入るとココアのいい匂いがして一瞬思考が停止してしまうも

ココアの呼びかけにハッと我に返り、そのままココアに引っ張られて出してきた

制服を渡される。

 

「私が着替えさせてあげようか?」

「い、いや。自分で着れるから!」

 

 嬉しそうな顔をして言ってくるココアに私は手のひらを向けてストップをかけて

ココアを止めた。え~って不満げな声を出しながらも私が着替えるまでジッと

見つめていた。

 

 慣れない制服だから少し苦労したけど、着替え終えて鏡を見るとすごく違和感を覚える。

 

「こ、これコスプレ感すごくないか?」

「そんなことないよ~!すっごくかわいいよ♪」

 

 照れる私の手を握ってすごくいい笑顔でそう言ってくるので余計に照れて顔が

熱くなってしまう。

 

 このままココアの部屋にいるとペースが乱されるので私はココアを連れて外に出た。

 

「さて、どこへ行こうか」

「せっかく制服着たんだし。こっそり学校入らない?」

 

「勝手にいいのか?」

「自由な校風なもので」

 

「自由の意味が違う気もするが…」

 

 でもせっかくココアと同じ制服着てるということもあってかその提案に魅力的なものを

感じていた。

 

 そうやって色々考えているとココアは再び私の手を引いて走りだした。

 

「待て!ココア!」

「はぇっ!?どうしたの」

 

 学校の近くまでくると私はココアを止めて静かにするように仕草で伝えた。

 

「侵入したことがばれるとまずい。こっそり忍び込むぞ」

「ステルスごっこだね。たのしそ~」

 

「これは遊びではないぞ。私についてこい」

「いえっさー」

 

 声のトーンを落として会話をする私たち。そして気配を消して学校の中へと忍び込んだ。

休みの日だからか人の気配は感じられない。ココアが使ってる教室に案内されると

優しい日差しが教室内を照らしていい雰囲気を出していた。

 

「文化祭の時以来だけど、また違った味わいがあるな」

「優しい感じがするでしょ~」

 

「あぁ」

 

 ココアの使ってる席に座って正面を見るとまるで自分が生徒であるかのような

感覚がして嬉しかった。すると隣にココアがイスを持ってきて隣に座って

私の肩に頭を預けるように近くに来る。

 

「二人きりで教室って何かいいね」

「そうだな…」

 

「今だったら何をしても気づかれない気がするよ」

「…何をするつもりだ?」

 

「制服姿のリゼちゃんが可愛すぎて私もう我慢できないよ…」

 

 隣で私を見ているココアの目が潤んでいて宝石のように綺麗だった。

私もそんな顔を見ていたらドキドキして顔が熱くなってくる。

 

「し、しょうがないな…」

 

 私の反応を見て嬉しそうに微笑むココア。顔が徐々に近づいてきて

ココアの艶のある柔らかそうな唇に目が釘付けになってしまう。

ゆっくりと二人の唇が重なりココアの唇の暖かさと柔らかさを感じる。

 

「ん…」

「はぁ…」

 

 二人の切ない声が誰もいない教室に静かに響く。

二人だけの時間、二人だけの空間。この時だけはココアと同じ学校で同じ生徒としての

時間を味わうことができた。…それ以上のことをしてしまってはいるが…。

 

 満足するほど触れ合った後、しばらく教室で余韻に浸り。誰にも見られないうちに

こっそりと学校を後にした。

 

「あ~、楽しかった~。何だかちょっとイケナイことをした気持ちでドキドキしたね!」

「まぁ、実際色々イケナイことしたような気もするが…」

 

「楽しくなかった?」

「いや、楽しかったよ。こうやってココアと過ごしてると本当に一緒の学校へ通ってる

みたいだ」

 

「じゃあ、もう少し私に付き合ってね」

「あぁ、ここまでくれば後は一緒だ。どこまでも付き合ってやる!」

 

「その意気だよ、リゼちゃん!」

 

 二人で気合を入れて辺りを散策しながら、普段は見かけない店に入ってお茶したりと

遊びながら残った時間を有意義に使ったのだった。

 

 空も暗がりを見せてきて家に戻る時間に近づいてきたから着替えにココアの部屋まで

戻った。着替え終わって制服がしまわれるのを見るとちょっと胸に切ない気持ちが残る。

そんな私の顔を見ていたココアが聞いてきた。

 

「リゼちゃん、寂しい?」

「…ちょっとな。でも寂しいくらいでちょうどいいんだ」

 

「そう」

「どうせお前とは毎日のように顔も合わせるし、大学も忙しいから。寂しいなんて

気持ちになる余裕もないだろうしな」

 

「がんばって先生になるんだもんね」

「あぁ、そうだ。だから高校生の気分になるのは今日だけで十分。

ありがとうな、ココア」

 

 チュッ

 

「ひゃっ、不意打ちはずるいよぉ!?」

「いつもそっちから不意打ちしてくるくせに、されるのは弱いのか」

 

 頬に軽く口づけをしたら大げさに驚くココアの反応が面白くて私は笑っていた。

 

「むぅ、今度は私の方からするからね」

「簡単にはやらせないからな」

 

 そんなやりとりをしてから二人で笑っていたら、気になったのかチノが私たちの様子を

見にきていた。

 

「た、楽しそうだったので…つい…」

「あぁ、すまない。何でもない。もう終わったことだ。悪いなチノ。店一人にして」

 

「いえ…お客さんほとんどこないので…」

 

 客のことを話すチノはやや死んだような虚ろな目をしていた。そんな落ち込んだチノを

見て私とココアは急いで着替えて妙なテンションで働くことにした。

いつもの場所、いつもの面子でいつものように騒いで。少しずつ変化はするけど

ここだけはいつもと変わらない落ち着いた雰囲気でお客さんも働く方も和ませる。

すごくいい場所だと改めて思ったのだった。

 

お終い。

 

 


 
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