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呂北伝~真紅の旗に集う者~ 第026話

どうも皆さんこんにち"は"。
最近はインフルエンザの他にも、ノロウィルスや麻疹も流行しています。皆さん、外から帰ったら、手洗いうがいを忘れずに行なってくださいね。

さて今回は軍議の回ですが、一刀さんの種馬能力発揮です。主人公補正もかかっていますから、何処かで女の一人や二人堕としていても不思議ではないですよね。
種馬ではありますが、一刀さんの心の身持ちは結構固いです。白華が本気で(女遊びを)辞めるように懇願すれば、恐らく辞めるぐらいには白華さんに夢中ではあります。

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2019-02-22 19:02:00 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1660   閲覧ユーザー数:1560

呂北伝~真紅の旗に集う者~ 第026話「握手」

 「皆の者よくぞ集まってくれた。予は大将軍何進である。今回、陛下の足元を脅かす賊盗伐に参戦してくれたこと、陛下に代わって礼を言いたい」

一刀達らの会合よりしばらく経つと、煌びやかな衣装に身を包んだ女性がやってきた。彼女の姓は何、名を進、字を遂高(すいこう)といった。黒い膝上までの黒い革ロングブーツ。服は紫を基調とし、Tラインで胸元が開き、腹部にもXラインで穴が開いているキャミソールと腰までスリットがミニスカを合わせた様な衣装に身を包み、下着はガーターベルトと使用しているのか、ミニスカとロングブーツの間から紫色の線が見える。ベルト状の黒と黄色の首輪を付けて、胸の谷間に合わせるかのように小さくて青い宝石が付いている。高価そうなシルクっぽい表地が青、裏地が紫のストールを身に着けており、長いブラウンの髪は後頭部で留めて、頭には金の髪飾りにイヤリングには銀杏(いちょう)を模したかのような物を付けている。

「いえ、我らは陛下の忠実なる家臣。お呼びされれば何処へなりとも参上仕ります」

誰かがそう答えると、周りの諸将は口々に「そうだ!!」と高らかに宣言すると、妙な熱気包まれて、何進は満足そうに頷く。

彼女の妹は現皇帝霊帝に寵愛を受けている妻・何太后。その経緯で武官に取り上げられて、流れでやっていった際にいつしか大将軍にまでなった者であるが、全くの無能というわけではない。ただ酷薄で権力欲が強く、保身を第一に考える性格である。彼女の好きな物は賄賂(おひねり)であり、皇帝に取り入るために数多の者が彼女に賄賂を渡してはご機嫌を取っている。現在もこうして、指揮高らかであることを見せつけて満足させるために、皆我先にと声量を出しているのだ。そんな中席に着いてその光景を傍観している者が二人いた。一刀と曹操である。曹操は絡まれることを避ける為に、普段のその充溢した気を限りなく抑えて目立たないようしている。仮に現状の軍議にて目立たなかったとしても、自らは周りを出し抜き、美味しいところで手柄をいただく腹積もりでいたのだ。

すると何進は頬をほんのり赤く染めて、この天幕内の状況を傍観しているもう一人の人物の下に歩き出した。周りは何進の動きに注目して、やがて彼女の動きが止まると、その人物と何進に全ての視線が集まる。

「一刀、よく来てくれた。お前が来てくれれば心強い。予も大手を振って指揮を振るえるものだ」

何進が向かったのは呂北のところであり、何進の問いかけに、未だ呂北は目を瞑っては彼女のことを見向きもしない。

「久しぶりだな(けい)。しばらく見ないうちに随分と奇麗な手になったな」

「え?そ、そうか?いやぁ、そうかも知れぬな。人の上に立つ者としては、普段から肌の手入れは欠かせぬからの」

「そうか。俺は”昔の”お前の手の方が好きだったがな」

あたかも男が昔振った女に語り掛ける様な口調になっており、皆何事かとそれぞれ席の隣の者達と顔を合わせたりしている。一刀のいう昔とは、傾の屠殺業時代である。彼らはその頃から知り合いであり、当時は傾も屠殺業という仕事の関係上肉を裁くために、包丁の片跡や握力による皮剥けでよく手豆が出来ていた。その様に働く姿勢に関しては、一刀自身好印象を持っていたが、彼女は官位を貰えば、昔を忘れるかのように包丁から遠ざかり、今では身分が低い者がおべっかで使う賄賂の方が重要となっている。当時から欲が強い方であり、常に成り上がろうと策を巡らせていたが、如何せん現在はその思考を止めてしまっている。思考を止めた人間は、肉畜生・愛玩人形にも劣ると考える一刀は、やがて傾を見放し、現在は彼女の持つその地位を利用する為に繋がりを持っている。

「ま、まぁ、それは良いとして。一刀よ、今日の戦、余の参謀として働いてもらえぬか?そなたが余の頭となってくれれば、どれ程心強いか。皆の者もそうであろう‼」

その言葉に、また皆「そうだ‼」と賛同する。無論これを機に呂北や何進に取り入ろうという魂胆に変わりは無いのだが、事実一刀は文武両道の将として知られており、不正をもみ消す際、荒事に関しても彼は長けていた。そんな彼らに対し、一刀は「いいのか?」と小さく呟く。彼の言葉を聞き逃すまいと、彼らはジッと押し黙る。

「......いいだろう。この軍の参謀として指揮を取ろう。......だが、諸侯達一言伝えておきます。私が指揮を取るのは、勝つために指揮をします。途中独断専行を行なおうと、勝手な判断にて被害が及んだとしても、私はその責任の一切を取りませんからね。それを各代表者は確約していただきたい」

全員の視線を捉えるようにして、一刀は諸将の目を見据える。視線が合った諸将はそれぞれに頷いて了承させられる。そして一刀は傾に即席の認可状を作成させ、端に大将軍の印を押させた。これにより誰であろうとも、呂北の指揮に逆らうことは出来ず、例え被害が及んだとしても、文句が出来ない状況が作り出される。

やがて連合軍の軍議が始まる。一刀は状況を確認する。敵は張角、張宝、張梁を中心とした黄巾軍20万。配下の将に張曼成に張燕や張牛角や孫夏といった名であった。元は腕っぷしの強かった農民が成り上がったり、腐敗しきった漢王朝に不満を持って反乱を起こした県令達でもあった。他にも名の知れた人物もいるであろうが、現在その者達は各地で暴れまわっており、今も大陸の民を苦しめており、各地の領主達にとっては溜まった膿同然であった。

対する何進を中心とした漢軍は何進率いる3万。呂北率いる1万5千(西扶風7千・天水3千・義勇軍1千・東扶風4千)。曹操軍7千。他何苗(かびょう)軍1万に続き、徐璆(じょきゅう)秦頡(しんけつ)などの諸将8万。約14万。今更ながら、この盗伐軍に召喚した将で、名がそれなりに知れたものは少ない。他の河北の袁紹や、左中郎将の皇甫嵩(こうほすう)、右中郎将の朱儁(しゅしゅん)などといった、名の知れた将は、他の黄巾軍の盗伐に向かっている。大陸では多くの戦乱の火が灯っている。漢軍や諸将はその対応に追われ、あらゆる場所に派遣で出撃しており、洛陽に残ったのは何進を中心とした軍のみとなってしまった。そんな時に20万の黄巾軍が洛陽に攻めてきているという事態に陥った。

慌てた何進は、各諸将に盗伐召集令を出したが、ここに集まったのは、国に余裕がある者か、運営はかつかつであっても、何とか一躍して官位をもらおうと躍起になっている者である。

 何進が奥の席で踏ん反り返っており、距離を置いて何進の前に、一刀は先程何進がいた長机の奥にいる。

「それでは軍議を始める。敵は黄色頭巾の賊徒、通称黄巾軍20万。我が軍は14万。数は6万だが焦る程でもない。こちらは正規の兵だ。身長に、冷静に、対処を間違えずに行動すれば大勝も夢ではないから、皆私の指示に従って欲しい。まずは――」

一刀の伝えた作戦は「釣り野伏せり」という囮作戦である。野戦において全軍を三隊に分け、そのうち二隊をあらかじめ左右に伏せさせておき、機を見て敵を三方から囲み包囲殲滅する戦法である。 まず中央の部隊のみが敵に正面から当たり、敗走を装いながら後退する。これが「釣り」であり、敵が追撃するために前進すると、左右両側から伏兵に襲わせる。これが「野伏せ」であり、このとき敗走を装っていた中央の部隊が反転し逆襲に転じることで三面包囲が完成する。何進と何苗は本陣にて囮役。初戦の一当て、釣りは呂北軍が引き受ける。曹軍を中心とした一部の諸侯は第二陣として本陣側面に待機。呂北が引き付けている間に、大回りで敵の背後に向かう。残りの諸将は呂北の撤退経路に配置。敵軍に一当てした瞬間に各自左右に散開。本陣近くまで来た瞬間、呂北軍は反転。何進・何苗軍1万を残し、呂北軍1万4千を加えた4万4千で敵を迎撃。それを合図に、散開した軍と、後方に控えていた二陣が強襲。四面楚歌で敵を殲滅する作戦だ。一刀が囮役を引き受けたのも、作戦立役者が実際に一番難しい役目を引き受けることと、美味しい所を他の者に与えるという”建前”があった。その作戦に意を唱える者はいなかった。無論呂北が立てた作戦という名目もあったが、基本的に美味しい所だけもらえるのだから、意義などあるはずも無かった。作戦の概要を終えると、皆「承知」と声を揃えて答える。

「それでは各々(おのおの)、抜かりなく」

 

 一刀達が自軍陣地に戻ると、皆慌ただしく動いていた。具足や兵糧の準備、各所から戦いに備えてのやり取りが聞こえる。

戻ってきた4人を白華は迎え、畏まっている劉備や関羽を余所に、一刀は彼女の誘導されるままに歩いていき、夢音も付いていき、どうすればわからない二人は、一刀に催促されてから改めて陣営の天幕に向かった。

「あなた、お茶が(はい)っています。一杯どうですか?夢音ちゃんや劉備ちゃん、関羽ちゃんも」

軽く答える一刀に対し、真面目に答える夢音。あたふたと未だに狼狽しそうになる劉備・関羽は皆白華の点てた茶で一服する。

「ふぅ。何時もは刃照碑が点ててくれているが、相変わらず白華の茶も旨い。腕落ち知らずだな」

「その通りです。ボクも奥方様の点てられたお茶は好きですよ」

「あらあら、褒めても何もでないわよ。劉備ちゃん達はどうかしら?」

「ふ、ふぇ。あ、いや、その、とても美味しいです」

「そうですね。これ程落ち着くお茶を飲むのは初めてです。心が暖まる気がします」

4人の言葉に白華は「褒め上手」と照れると、劉備達はとあることを質問する。

「そういえば、奥方様。こういう時に不躾ではあるのですが、今回の作戦の概要を聞かなくともよろしいのですか?」

関羽の質問に、少し考えた白華は何かを納得したかのように両手を合わせる。

「『釣り野伏せり』でしょう。知っているわ。私たちは囮役で、今郷里ちゃん達が準備にとりかかっているわ」

「い、いつの間に話したのですか?」

劉備の質問も尤もである。陣に戻ってきてしばらく共にいるものの、二人はそういう話をしている素振りすら見せていなかった。現に共にいた夢音も、茶飲みの際は普通に夫婦の談笑に交じっていた。いったいいつの間にと思うのは普通である。

「別に報告も連絡もしていない。若のお考えは語らずとも奥方様なら全て理解している。軍議が決する前から、臧覇殿が準備を始めている」

そう言いながら夢音はお茶をまた飲む。

「白華、騎馬はどれ程揃いそうだ?」

「道中で買い取った馬も含めて.........4千程かしらね」

「......あと2千は欲しいな。残りは何進に出させるか。俺の言うことだ。こっちの気を引くのに大抵は聞いてくれる」

その言葉に、劉備と関羽はあることに感づいた。先程の集会にて、何進の呂北に対して何処か警戒というか、何かに気を付ける反応は、彼に対する敬意や恐れといった感じではなかった。頬を若干赤らめ、他の者を見つめる下卑た視線ではなく、どちらかというと暖かさを帯びていた。

実をいうと、傾は一刀に惚れていた。彼の私塾時代に色々あったのだが、傾の惚れた晴れたさえ、一刀は狡猾に利用していた。さらに言えば、当時と比べ時の流れが何進を変え、彼の内心では『友人』と思っていた気持ちも、何時しか『(てい)のいい政治道具』と思うようになった。

「失礼します。――呂北様、陳留の曹操と申す者が、呂北様にお目通りをと願っております」

伝令の兵士が一刀に告げると、彼は飲んでいた湯飲みを持つ手を止めて小声で話す。

「白華、香を焚け。そしてここには一切誰も近づけさせるな。夢音、曹操殿をこちらにお通しろ。おい。郷里にも徹底させておけ、この場所の護衛は最小限。何人たりとも中に通すなと――。それと白華――」

一刀は白華になにか耳打ちをすると、彼女は頷いて行動を開始する。

 「本日はご来訪いただきましてありがとうございます。私は丁原臣、成徳易と申します」

接客対応様であるのか、夢音の一人称が変わっていた。また眩しいほどの営業笑顔も全開にしている。

「陳留太守、曹孟徳よ。突然の来訪悪いわね」

「いえいえ。若も曹操様の様な賢人がご来訪なさったこと、大変喜んでおります。しかし現在は戦支度を行なってございますので、くれぐれも失礼が無いよう、私が案内を勤めさせていただきます」

「よろしくお願いするわ。後ろの二人は夏侯妙才、徐公明よ。秋蘭......妙才は私の護衛として。公明も同じく護衛としてだけど、呂北殿と面識があるみたいだから、連れてきたわ」

曹操の後ろに控えている二人の女性は、小さく頭を下げると、夢音も返した。

4人は呂北のいる天幕まで闊歩している際に、曹操が成簾(せいれん)に質問する。

「そういえば徳易殿、貴女は呂北殿のことを”若”と言っていたけど、貴女は呂北殿の家臣ではないのかしら?」

「厳密には今は違います。私は若のお養父上(ちちうえ)、丁原様の臣でございます。しかし若は丁原様の養息子(むすこ)であると同時に、頭首が丁原様であらされる間は、主の家臣でもあります。ですが次期頭首であることに違いはありませんから、間接的には私は若に臣下の礼を取ってはいます」

「なるほど。こんなことを訪ねると失礼に当たるかもしれないけど、もし丁原殿と呂北殿が仲違いでもしたら、貴女はどちらに付くのかしら?」

「難しい質問ですね。まずは両分の訳を聞き、非がある方に考えを改めるように説得します。それでも個人には個人の考えがあります。両者の考えが尤もでしたら、仲直りしてもらうように努めますね」

「それなら、命のやりとりにまで発展したら?」

「その時は、命を賭してまで、お二方をお引止め致しますね」

「そう。それより個人的に気になっていたのだけど、貴女はこの大陸の人間ではないの?」

成簾ののらりくらりな回答から。これ以上聞いても無粋と思った曹操は、一転し話題を変える。

「いえ、一応私の生まれはこの大陸でございますが、母が基は五胡の遊牧民である月氏の末裔でございますので、その血が体に流れています」

「ふ~ん。そうなのね」

闊歩する中、曹操は成簾の髪を見つめる。

「珍しいでしょう。この大陸の者には馴染みのない髪の色でございますから」

成簾自身、幼少期の頃は周りと違う目の色と、髪の色で酷い虐めを受けていた。髪を少し持ち、自身の髪を見つめる成簾であった。

「そうね、珍しいわ。でも奇麗な髪の色じゃない」

曹操がそう言った瞬間に、思わず成簾は立ち止まってしまった。

「.........奇麗?私の髪が?」

「えぇ、そうよ。髪の色だけじゃない。その気品に満ちた佇まい、目の色。私は美しいと思うのだけども」

曹操の言葉に邪心は無く、素直に成簾の容姿を褒め称える。

「......変わっていますね。......皆この髪と目を見た瞬間、不気味に思いますのに」

「あら、それは貴女の魅力を本当に理解できない者に、貴女が出会わなかっただけよ。この曹孟徳、真名に誓っても美しくない者に美しいとは言わない質よ」

胸を張ってそう断言する曹操に、成簾は振り返って一つ頭を下げる。

「お褒めに預かり本当に恐悦至極です。その様に言っていただいた方は、貴女で3人目です。恐れ入りますが、僕の真名は夢音といいます。どうか受け取っては貰えませんでしょうか」

「あら、まだそれ程話していない相手に、そんな簡単に真名を預けていいのかしら?」

「貴女様は普通の者とは何処か違います。感覚も一般人とかけ離れています。悪い言い方をすれば変人の域に達すると思います。しかし、悪い人には見えません。もし宜しければ、”友”として、僕の真名を受け取っていただきたい」

夢音の晴れやかな笑顔に、曹操は笑顔で返す。

「いいわ。私の真名は華琳よ。私の真名も、貴女に預けるわ」

華琳がそう答えると、夢音は右手を差し出して、華琳は首を捻る。

「私と同じように右手を差し出してください。これは相手と交渉・契約を成立させた時。または友人と仲を取りまとまった時にする行為、握手というものです」

理由を聞くと、華琳は疑いもなく夢音の右手を握り返す。真名まで交わした相手が、いきなりその相手を殺害するとも考えられなかったからだ。

「これは貴女の母上の習慣かしら?それに貴女の髪を褒めた後の二人も気になるわね」

「これは若に教えてもらった行為でございます。そして、今までボクの髪を褒めてくれたのは、今は亡き夫と、若だけです」

夢音は握手の行為を終えると、再び一刀の待つ天幕に華琳達3人を案内した。

 


 
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