No.983909

【命一家】15話~ばれんたいんでい

初音軍さん

オリキャラ、みき、儚の幼女たちの百合ンタインデー。単品で読めるようになってます

2019-02-13 23:26:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:660   閲覧ユーザー数:658

命一家15話~ばれんたいんでい

 

【儚】

 

「お母さん、その…もうすぐバレンタインだよね」

「えぇ、そうだけど…」

 

 わたしがお母さんに聞くとそうだと言って驚いた顔をしていた。

 

「え、もう儚の年でそういう話題出てくるのね。早いわね~」

「あ、あの…!」

 

「儚にも好きな子できたのね」

「う…うん…」

 

 好き…なんだよね。ずっと一緒にいたくて手握ったり近くにいたりすると

顔が熱くなってその子のことしか考えられなくなって…。

 

「だ、だから…チョコ作るの教えて欲しいなって」

「だめよ」

 

「え?」

 

 お母さんが何とも言えない顔をしてからわたしの前に座って真顔でわたしと目を

合わせて言った。

 

「素人が手を出してまずいのが出来たら、それ…あげられる?」

「まずいのはやだ…」

 

 わたしの言葉に笑顔でうなづくお母さん。

 

「でしょ。だから一緒に買いに行きましょう」

「うん」

 

 そうしてお母さんとお出かけする準備をしてからわたしは家からだと少し遠い

デパートまで行ってきれいな紙に包まれたチョコを迷いながらお母さんと相談しながら

決めた。

 

 帰りの電車の途中、お母さんがわたしが渡す相手のことを気にしているのか

わたしに聞いてくる。

 

「ねぇ、渡す相手は誰?」

「…秘密…」

 

「もしかして、みきちゃん?」

 

 ドキッ

 

 一発で本命の名前が出てきてびっくりすると面白そうに笑うお母さん。

 

「儚、みきちゃんと一緒にいる時だけすごくいい顔するの見たことあるから」

「もう…やめてよ…」

 

 顔が熱くなってうつむくとお母さんはごめんごめんと言いながら私の頭を撫でた。

 

「がんばって、ちゃんと気持ちと一緒に渡しなね」

「ありがとう…」

 

 持っている箱にすこしだけ力を込めてジッと見つめた。

好きなあの子の顔を浮かべながら…。

 

***

 

 一日お休みがあってその次の日、バレンタインの日。

いつものようにみきちゃんと優くんが迎えに来た。

園に向かう途中。カバンに入れたチョコを渡すタイミングがわからなくて

着いても渡せなくてそのまま遊びや勉強の時間になっちゃって。

 

 うーっ、うーうーっ。

どうすればいいのかわからなくて頭の中でうなっちゃうわたし。

そんなことしている内に時間もどんどん過ぎていっちゃってる。

 

 焦ってるだけで何もできなくて一度落ち着くためにみんながいる場所からこっそりと

抜け出してお外に出てみた。冷たい…寒い…、でもすっきりした空気に少しずつ

こんがらがっていた頭の中が少しずつ落ち着いてきた気がする。

 

 でも落ち着いたからってなにも解決はしてないんだけど…。

チョコの箱を持ってうつむきながら立っていると後ろから元気だけど優しい声が

かけられた。

 

「はーかなちゃん!」

「みきちゃん…」

 

「どうしたの?」

 

 いきなりで覗き込まれて隠す余裕もなくわたしの持っているチョコの箱を見られた。

せっかくだし、このまま…渡してしまえ!とくるっとみきちゃんの方に向かって箱を

突き出した。

 

「ちょこ!」

「へ?」

 

 テンパりすぎて変な声が出ちゃった。一瞬びっくりした顔をした後

わたしに笑顔を向けてくるみきちゃん。

 

「くれるの?」

「うん!うん!」

 

「ありがとう!」

 

 わたしの手からようやくチョコの箱が離れてみきちゃんの手に渡った。

緊張と満足した気持ちがわたしの中いっぱいに広がっていた。

するとみきちゃんから予想もしなかったことをしてきた。

 

「じゃあ、はい。おかえし!」

 

 そう言ってわたしのチョコを受け取った方の手とは逆の方から箱を持った手が出てきた。

 

「あげる!」

「え…!?」

 

 まさかすぐにお返しがくるとは思わなかったからまた変な声で返事をしてしまった。

 

「ママから今日は特別好きな子にチョコあげる日だって言ってたから!」

「い、いいの?」

 

「うん!みき、はかなちゃんのこと大好きだから!」

「み、みきちゃん…ありがとう…」

 

 わたしの目の前にいるみきちゃんの笑顔が少しにじんで見えにくくなった。

涙が出てきたからだろうか。嬉しすぎて胸がいっぱいになりすぎて…。

みきちゃんからのプレゼントを受け取るのが精いっぱいでそれ以上何も言えなかった。

 

「このまま帰るとみんなうるさいだろうから、裏にあるイスに座ってたべよ」

「そうだね…」

 

 建物の裏、人気のない場所に古いベンチがあって二人でくっつくくらい近くで座って

きれいな紙で包まれているのをきれいに剥がして箱を開けるといくつか丸くて白チョコと

ふつうのチョコが混ざったような色合いの粒が出てきた。

 

「おいひ~」

 

 みきちゃんはわたしが選んだハート型のチョコを一粒口の中にいれて嬉しそうに

声を上げていた。言葉だけで表現しきれないのか体を揺さぶる動きも加えていた。

 

「よかった」

「みきが選んだ方はどう?」

 

「うん…美味しい…」

 

 一粒食べると口いっぱいに甘さが広がって幸せな気持ちになる。

これをわたしのために選んでくれたという気持ちも合わせるとすごく、すごく美味しい。

 

「よかった~」

 

 うん、手作りも大事だけどやっぱり美味しいのっていいな。

気持ちがちゃんと相手に伝わればいいってわかったから。

でも…いつかはちゃんと手作りをみきちゃんに渡したいなってみきちゃんを見ながら

わたしは強くそう思った。

 

 さすがに短時間で全部は食べることはできなかったのでみんなに見つからないように

隠しながら。戻ったらすぐにかばんに入れて、みきちゃんは人差し指を口の前に立てて

し~っという動きをしたのを見てわたしも同じようにして二人だけの秘密にした。

 

 そういう秘密一つ取ってもわたしの大事な思い出になりそうだった。

 

 いつもと同じ日で、いつもとは違う日。大事な大事な二人の甘い時間、甘い日だった。

 

15話・お終い


 
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