No.982545

紫閃の軌跡

kelvinさん

外伝~想定外と曲者の邂逅~

2019-02-03 01:37:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4705   閲覧ユーザー数:3853

~エレボニア帝国サザーラント州 ハーメル村跡地~

 

「相変わらず、ですね……」

「そうね……って、あれってもしかして!?」

「ああ、間違いないだろう」

 

 エレボニアにとっての“アキレス腱”ともいうべき場所。ハーメル村跡地はひっそりと静まり返っていた。すると、奥の方の廃屋に座り込む一人の少年の姿があった。それを見つけたユウナたちが声を上げたということは、その少年がアッシュ・カーバイドなのだろうとアスベルは推測する。

 

「どうしてここに来た。つーか、わかってんだろ? 俺が引き金を引いて、皇帝を撃ったことは紛れもない事実なんだと……あの時、俺がもっと強ければこんなことには……とっととここから去れ。てめーらに話すことなんざねえ……」

 

 同じクラスメイトとして声を上げたユウナ達だが、アッシュはそれを突き放すような態度を見せていた。それは自分がエレボニア皇帝であるユーゲント・ライゼ・アルノールⅢ世を撃ったこと。それを引き留めれなかったのは自分の弱さであると断じ、『この舞台に自分の出番はない』と言い放った。

 

「そんなことなんてない! こんな状況であんたに出番がないなんて言わせない! だって、あんたは……あたしたちと同じ“Ⅶ組”の一員でしょう!!」

「……ハッ、どこまでも甘いというか……」

「甘いと言ってくれて結構です。私達は既に覚悟を決めています……あなたや“あの人”の背負ったものを分かち合い、背負っていく覚悟を」

「お前は知らないかもしれんが、お前らの教官は今大変なことになっていてな。帝国を覆うこの状況―――“黄昏”っていうこの状況の引き金を引いたらしい。しかも、ヤバい状態のまま敵に拘束されているおまけつきだ。その意味じゃあ、お前さんはまだ恵まれてるほうだと思うぞ?」

「………」

 

 ユウナの言葉を切り捨てるように言葉を零したアッシュだったが、アルティナとランディの言葉に押し黙る。そして、クルトは視線の高さを合わせるように片膝をつき、言葉を紡ぐ。

 

「過去は変えられない。この悲しいハーメルのように……けれど、君が生きていたことがすべてこの状況を仕組まれるための“駒”だと君は断じた」

 

 そしてクルトはアッシュの制服を掴み、強引に立たせるようにしつつもこう言い放った。

 

「―――ふざけるな! 君は本当にそう思って言っているのか!? 自分に向けられた諍いをこれまでも片を付けてきた君が、そんなけじめのつけ方でいいと本心から納得しているのか!?」

「っ……」

 

 この状況なら下手に口を出すまでもないだろうと思ったが、親切心なのかお節介なのかアスベルはアッシュに向けて言い放った。

 

「全くその通りだと思うな。そこまで言われて悔しいと思えなきゃ情けない」

「……てめえは……」

「まあ、“Ⅶ組”の関係者と思ってくれて結構。アッシュ・カーバイドといったな。自分の価値を自分で決めても別に構いはしないが、それだけしか意味がないというのは流石に早計が過ぎるというものだぞ。凡その事情は察するに余りあるが……今まで生きてきたことや出会ってきた人々。それに引き金を引いてしまった事実も含めて、他の誰でもないアッシュ・カーバイドとしてすべきこと。それを導き出せるのは他ならぬお前自身だぞ」

 

 罪はどう足掻いたって事実として残る。ならば、どう向き合うかはその人にしか決められない。既に“鉄血宰相”と敵対している上に彼はこの“黄昏”を利用しようとしている。ここでアッシュが裁かれても何の意味を成さなくなる。ハッキリと決別するための材料が一つ増えるだけに過ぎないといえばそれまでだ。

 

「クハハ……揃いも揃ってというか……あのお人よしとそっくりな服を着た奴が本人に見えちまうほどに、どれだけ影響されてんだっつーの……」

「残念ながらその当人に出会ったことはないけどな。でも、そう言ったからには肚を括れたようだな」

「ああ。確かに、落とし前をつける相手を見失っていたようだ。てめー、名前は?」

「アスベルだ。君らの教官代理みたいなものだが、よろしくな」

「ああ……さて、気づいてるんだろ?」

「無論といったところかな。―――とっとと出てこい、有象無象が」

「う、有象無象とは余計な口を!!」

 

 何かに気付いたアッシュ、それに続くように放たれたアスベルの言葉で姿を見せたのは赤系統の武装をした連中。だが、似たような配色である『赤い星座』のものではないとすぐに理解し、更にはその武装からして覚えのあるアスベルが呟く。

 

「成程、その出で立ち……結社『身喰らう蛇』の強化猟兵か」

「ほう、我らのことを知っているとは……さぞ“裏”に詳しい人間と見た」

「ああ―――お前らに話す情報は何一つないが、なっ!!」

 

 アスベルは抜き放つように大剣を地面に叩き付け、ただの剣圧だけでその猟兵たちを吹き飛ばした。これにはユウナ達はおろか、さっき合流したばかりのアッシュも引き攣った笑みを零していた。

 

「……なあ、コイツはあの分校長並にやべえ奴なのか?」

「多分、それ以上かと……」

「少なくとも、私達のリハビリの時に全力を出したことはありませんので……」

「教官を軽く超えていると思っていいだろう」

「あの聖女様と同等クラスなのは間違いねえと思うぞ」

「ユウナ達、ここでの戦闘は少々不利になる。場所を移すぞ」

「え、あ、はい!」

 

 呆けているユウナ達を叱咤するようにアスベルが言い放ち、一行は村の入り口前に移動する。そしてそれから遅れること1分ほどして強化猟兵らが追い付いてきた。表情はメットで見えないが、リーダーらしき人物は焦りを見せるような口調で言い放つ。

 

「き、貴様ら! 我らに楯突いてタダで帰れると思うなよ!」

「―――言いたいことはそれだけか。『狗』の遠吠えにしか聞こえんぞ」

 

 闘気を少しだけ解放するアスベル。その姿にあの分校長―――オーレリア・ルグィン伯を思い起こさせる力の波動にユウナ達も猟兵たちもたじろぐ。

 

「あ、あはは……」

「正直、味方でよかったと思えますね……」

「ったく、外見はあのお人よしに似ておきながら中身はあのバケモノ並とか詐欺とかで済むレベルじゃねーぞ……まあいい。どうせ俺を捕まえに来たんだろうが、生憎その気はサラサラねえよ。なにせ―――俺と同じようにヘマ打って、敵に捕まったアイツに一言言わなきゃ気が済まねえからな!」

「やれやれ、すっかり調子が戻ったか」

「ここが君の復帰戦だ! 共に乗り越えるとしよう!」

 

 そこからアスベル達6人と強化猟兵の戦闘なのだが、既に遊びというレベルになってしまっていた。ユウナ、アルティナ、クルト、ランディの4人でもローゼリアが本気を出さないとやばいレベルなのだ。そこに彼らを鍛えたアスベルが加わった時点で……もう一方的な蹂躙でしかなかった。これにはアッシュも苦笑しか出てこなかった。

 

「クハハ……てめえら、マジで何があったよ。そこの教官はともかくとして、銃弾弾き返すとか並じゃねえぞ」

「えっと、リハビリ?」

「あれをリハビリで片づけるのは些か腑に落ちませんが……」

「ともあれ、無力化に成功したが……アスベルさんにランドルフ教官?」

「……気づいてるな、アスベル」

「ええ。―――出て来いよ、『西風』の方々」

「ほう……」

 

 アスベルの言葉に反応するように姿を見せたのは『西風の旅団』の三人。両端の人物は<破壊獣>レオニダスに<罠使い>ゼノ。真ん中の人物に面識はないが、恐らくは彼がこの世界における<猟兵王>であると推察した。

 

「中々に鋭い洞察力もそうだが、その大剣に雰囲気。あの聖女様と互角に渡り合っても不思議じゃない……お前さん、本当に人間か?」

「『不死者』のアンタがそれを口にするのか、猟兵王? ……間違っていたとしたら詫びを入れるが」

「ククク、正解だ。ま、アンタやオルランドのことも気にかかりはするが、本題はそっちの少年というわけだ」

「―――言いてえことはそれだけか」

 

 どうやら彼らの目的は皇帝を撃ったアッシュをスカウトして連中の味方に引き入れようというもの。だが、アッシュは得物を構えて拒否の姿勢を見せた。これには猟兵王ことルトガー・クラウゼルは笑みを零した。

 

「ま、ただで手に入るなんざ思っちゃいねえ。ここは猟兵らしく、アンタらを倒して連れていく。来な―――ゼクトール!!」

 

 どうやら先ほどの戦闘を観戦していたようで、ここで生身での戦闘は不利と判断して“紫”の騎神を呼び出す。ユウナが道中で見つけたドラッケンⅡ、そしてパブロ、タチアナ、カイリの3人の協力でアッシュのヘクトルⅡもハーメル村跡地に着陸する。

 こうなれば生身でも参戦すべきか思慮するアスベルに謎の声が聞こえてくる。

 

“………使え”

 

 最初は聞き間違いかと思ったが、明らかに自分だけしか聞こえない声。ゼクトールとの戦いを彼らに任せたアスベルが辿り着いた先は小さなお墓。そこには朽ちている魔剣ケルンバイターがあり、声はそこから響き渡っていた。

 

「俺を呼んだのはお前か? 何をしてほしいんだ?」

 

“……使え。お前の新たなる剣の礎として”

 

 もう何が何だか解らないが、何もしないよりはマシだと思い、アスベルは徐にケルンバイターの柄を握る。すると足元に巨大な魔法陣が展開し、突如としてアスベルの周囲が真っ白に染め上がる。その眩しさをこらえつつもアスベルが見た先には一人の青年が立っていた。

 

「“剣帝”レオンハルトか」

『ああ、俺が呼んだ。このハーメルが“特異点”となっていることは業腹と言うべきだが……正確にはお前の持つ力が俺の魂を再形成したようだ』

 

 アスベルの持つアーティファクト『天壌の劫火』。悪しき魂を浄化する力を持つだけでなく、意志を持った炎。その力が想定外の方向に働いて彼の魂を再形成した。それを成した意味はレオンハルトが答えた。

 

『時間が惜しい。今から騎神を造る……俺の魂が核(ケルン)となり、この異常な霊脈の高まりでゼムリアストーンを組み上げる』

「……ちなみに、小さい石でも代用は可能か?」

『できなくはないが、それでも1億以上は』

「あ、それなら楽に行けるな」

『何?』

 

 色々ぶっ飛んだ展開だが、もう驚くのも一々疲れそうなので簡略化できるところは簡略化しよう……そう思ったアスベルは転生特典の一つである『アイテム無限保持』を使って大量のゼムリアストーンを取り出す。無限から1億を引いても無限のままという現実に打ちひしがられながらも積み上げたゼムリアストーンの山にレオンハルトも流石に苦笑したようだ。

 

『―――遠くて近きゼムリアにはお前のような埒外もいるのだな。さあ、我の『起動者』よ。我に名を与えよ』

「―――その契約に応じよう。焔の騎神『アクエリオス』」

 

 その言葉にレオンハルトは核となり、一機の騎神を象る。基本ベースは“灰”に近いが、“緋”や“蒼”の特徴だけでなく“幻”の一部も合わさったモチーフ。そしてその右腰には一本の騎神用の太刀を携えたアスベルの騎神―――『天壌の劫火』による奇蹟により生み出された焔の騎神『アクエリオス』。

 

 ゼクトールと戦っているユウナのドラッケンⅡとアッシュのヘクトルⅡにもその光の柱が突如現れたことに驚いたが、その光の柱が収まると一機の騎神が姿を見せたことにゼクトールを操るルトガーも驚きを隠せない。

 

『な、なにあれ……』

『騎神!?』

『オイオイ、どういうことだ? 七機目の騎神は“黄金”のはずだが……』

 

 すると、その未知の騎神の目が煌めいて、スラスターを吹かして一気に加速する。その行先はルトガーの“紫”の騎神。それを察したルトガーは得物を構えるが―――

 

『―――なっ』

「団長のゼクトールの武器を切り落としたやと!?」

「馬鹿な、あれはゼムリアストーンでできている……それ以上の業物だと言うのか?」

 

 たった一合でゼクトールの武器を破壊した。その騎神はユウナ達の前に背を向ける形で降り立ち、手に持った太刀を構える。いまいち状況が呑み込めないユウナとアッシュに通信が入り、表示されたのはアスベルの顔であった。

 

「二人とも、大丈夫か?」

『ア、アスベルさん!? その機体に乗ってるのはアスベルさんなんですか!?』

『おいおい、そういう隠し玉があるんなら初めから出してくれよ』

「無理言わないでくれ。この騎神自体想定外だったんだ。ともあれ、状況は覆せたからそれで手打ちにしてほしい。さて、猟兵王。まだ続けるというのならこの“焔”の騎神アクエリオスが相手になるが……退くのなら追い討ちはしない」

 

 愚痴っぽい言葉も聞こえてきたが、そもそも騎神を入手できたこと自体が想定外だったためにそれは勘弁してほしいと述べつつもアスベルはゼクトールに乗るルトガーに対して呼びかけた。このまま戦っても目的は達しない……そう判断したルトガーは一息吐いた。

 

『―――得物が壊されたんじゃ無手で戦っても無理だな。ゼノ、レオ、退くぞ』

「ま、しゃーないわな。ほなな、トールズⅦ組の諸君。フィーにはよろしく言っといてや」

「次会う時まで、生き残っていれば見えるであろう」

 

 気が付けば強化猟兵の連中も綺麗に退散していった。ひとまずの危険は去ったと判断して騎神からアスベルが降り立ち、ユウナとアッシュも自分たちの機体から降りた。

 

「さて、色々聞きたいことはあるんだろうが……まずはお疲れ様。ユウナにアッシュ」

「えっと、はい」

「ま、アンタにいい所は持ってかれたの癪だが、助かったことには礼を言うぜ……何だよ、お前ら」

「……アッシュさんが珍しく感謝を口にしました」

「ああ。明日は雪でも降りそうだ」

「いや、槍でも降ってきそうだな」

「てめえら、人を珍獣扱いにすんじゃねえ!!」

 

 すると、パブロ、タチアナ、カイリだけでなくサラやエリオット、フィーも姿を見せた。彼らもアスベルの騎神であるアクエリオスには驚きを隠せなかったようだ。その過程でアッシュとタチアナの一コマからリア充の雰囲気を醸し出すこともあった。

 それよりも、アスベルはこの辺り一帯に多い“昏い”プレロマ草を見た後、ユウナに話しかける。

 

「ユウナ、多分この地が“特異点”じゃないのか?」

「えっ!? そういえば、ロゼさんから貰ったペンデュラムが反応してましたね」

「確かに、プレロマ草の群生具合を見るに……」

『やれやれ、本題に入るのが遅いであろうに』

 

 そう言いながら姿を見せたのはローゼリアの幻影。どうやら先程ハーメルの霊脈を掴めたので幻影を飛ばすことに成功したようだ。

 

『まあ、かなり大きな力の発生があったので場所を特定できたのじゃが……よもや騎神が更に“2機”も増えようとはな』

「2機って、これ以外にも!?」

「うん。こっちのは白と黒の騎神だったかな」

「でも、あたし達には目もくれずに西の方角へ飛び去ったから解らないのよ」

「敵だとするなら厄介かもしれない」

 

 もしかすると、転生組の誰かである可能性はあるとアスベルは推測する。だが、それは下手に言うわけにもいかないので秘匿することにした。それはともかくローゼリアの言葉でユウナが杭を打ち込み、特異点の固定が完了。これで二つ目となる。そして帰り道なのだが、アスベルは自身の騎神となったアクエリオスにダメ元で話しかける。

 

「アクエリオス、聞こえるか? ここから『精霊の道』を開いてエリンの里に行くことは可能か?」

『―――可能だ。複製した“力”のお蔭で充填不要と思ってくれていい』

「って、その声は“剣帝”!? ちょっと、どうなってるの!?」

『気にするな、サラ・バレスタイン。昔はどうあれ今はそこにいる起動者の剣。それを違えるつもりはないと述べておこう』

「……はあ。あの子達が知ったら大騒ぎになりそうね」

「だね」

 

 昔の仇敵が味方という複雑な心境に頭を抱えるサラ、それとなく事情を知っているフィー、更に言うと……驚きを隠せなかったのはアッシュも同様だったようだ。それを見抜いたのか、アクエリオスはアッシュに目線を向ける。

 

『許せ、などというつもりはない。だが、救えなかったことは事実。それは素直に受け入れよう。アイツもそう思っていることだろう』

「ハッ、何言ってるんだかサッパリだが……ま、てめーの言葉が聞けただけでも満足してやるよ」

「ア、アッシュさんってそういう趣味が……」

「いや、ちげーからな!!」

 

 ちなみに、複製した“力”のことを内密に聞いたところ、力の大きい“零”のほうであると答えたアクエリオスにアスベルは本気で頭を抱えることになったのは言うまでもなかった。この時ばかりはシュトレオンの気持ちが初めて理解できたと心の底からそう思った。

 情報収集や他の分校生達のことも鑑み、パブロ達に加えてランディが行方の知れないティオの情報を探るついでにそのフォローに回ることとなった。リィンの代わりとなるアスベルの存在も決め手になったようだ。

 

「Ⅶ組の連中は何かと曲者揃いだが、頼んだぜ?」

「ああ。ランディも気を付けて。こちらでも何か掴めたら連絡する」

 

 

~エレボニア帝国サザーラント州 エリンの里~

 

 結局、この場所に呼び出した人物には邂逅できなかったが、自身の新たなる剣である焔の騎神であるアクエリオス。そして『精霊の道』を起動させて一路エリンの里に帰還する。転位石の傍に騎神と機甲兵を置き、アスベルらはロゼのアトリエに戻ってくる。すると、聞こえてきた声に一同は目を見開くことになる。

 

「お、お帰りなすったか。ご苦労さんなこったァ」

「って、貴方は確か……!?」

「てめえ、何で……いや、俺の知ってる『かかし野郎』じゃねえな、アンタ」

「ハハッ、物分かりがよくて助かるぜ……久しぶりだな、アスベル」

「成程。貴方も飛ばされたんですか―――レクターさん」

 

 そう、アスベル達の前に姿を見せたのはレクター・アランドールその人。だが、アッシュはその印象から自分が知る彼でないことを見抜き、それに安堵しつつもアスベルに話しかけたので、それを返す。そのやり取りを少し見た後でローゼリアが口を開く。

 

「うむ、妾も驚いたがどうやら其方と同じく飛ばされてきたのは事実。何せ、目の前で光った直後に意識を失ったそ奴がいたのじゃからな」

「そうだったんですか……」

「サラ?」

「解ってるわよ。こっちのアンタとは色々因縁があるけれど、それを当り散らしても意味ないってことも」

「ハハ、向こうのお前さんとは立場上上手くいってねえのは事実だが、含むところはねえ。アンタらの大切な連中を取り戻す手伝いはするさ。尤も、表立って動くことはできねえが」

「ええ、厄介な人物が味方になってくれるなら心強いですから」

 

 レクターの存在はできるだけ明るみにしないほうがいい。それはほかの面々も同意した。その代わりにレクターも鍛錬に付き合うと呟いた。彼自身思うところはあるのかもしれない。次の特異点として目指す場所はラマール州だが、その小休止ということで翌日はエリンの里で体を休めることにした。

 その夜、アスベルの持っているARCUSⅡに着信音が鳴り、それを手に取って操作すると……画面に表示されたのは二人の人物―――アッシュブロンドの髪を持つ青年と黒髪と琥珀の瞳を持つ女性が映っていた。

 

「これは、予想外というべきなのかな」

『それはこちらもだな』

『何はともあれ、まずは無事で何よりです』

 

 その二人の存在はある意味ワイルドカードにもなりうるため、名前を口に出さないようアスベルは会話を続ける。そのことを察したのか、二人も名前を出さないように軽く頷いた。

 

「彼からパルム方面に二人いたと聞きましたが」

『間違いなく俺らのことだな。とはいえ、面倒事になりそうだったので早々にレグラム方面に抜けた』

『一通りの調査が済み次第、私達はクロスベルに向かおうと思います。彼の手伝いもできるでしょうから……セントアークにいた人ですが、“彼女”はどうやら西部……オルディス方面に向かったようです』

「……解りました。そちらも気を付けて」

 

 どの道ラマール州に行くことは決定済みなので、それは渡りに船だろう。通信を終えると、アスベルは里にある温泉に浸かっていた。こうやって湯に浸かっていると元の世界に残った連中は大丈夫なのかと思えてくる。すると、そこに新たな面々―――新Ⅶ組とレクターであった。どうやらサングラール迷宮で訓練していたようで、その汗を流そうと全員入りに来たようだ。

 

「どうでした、レクターさん。彼らの手ごたえは?」

「いやはや、魂消たもんだぜ。これが実戦なら今頃首と胴体がオサラバしてただろうよ」

「よくもまぁ抜け抜けと……そんな俺らの攻撃を捌き切ったじゃねえか」

「アッシュさん、途中から割と全力でしたからね……」

「ああ、しかも仕込みまで使うという始末……躱されたが」

 

 レクターは自分の実力など大したことないと言い切ったが、それには他の面々が納得いかなそうな表情を浮かべていた。これを見たレクターはアスベルに視線を向けた。

 

「なあ、アスベル。お前さんやルドガーは人外製造機にでもなるつもりか?」

「甚だ心外です。もしあの人に会えたら引き取ってもらいますから」

「やめてくれ……つーか、アイツもこっちに来てそうで怖いんだよ……」

「えっと、どういう人なんですか?」

「対レクター・アランドール最終兵器」

「ククク、そいつは是非会ってみてえものだな」

「いっそのことこっちの俺に両方ぶつけるように仕向けられねえかな。そうできれば俺の心労も減るんだが……」

「……私の知っているアランドール少佐とは違って、別の意味で曲者ですね」

 

 ジト目のアルティナにそう言われるほど異質なレクターが弄られつつも、里の夜は更けていったのであった。

 


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