No.971220

愛しい人へ。-罪-

炎華さん

自身の経験だけでなく、近しい方々からうかがったエピソードから、炎華が勝手にその心情を想像して書いたものです。
なので、フィクションとも言えますし、ノンフィクションとも言える作品です。

2018-10-22 15:57:49 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:378   閲覧ユーザー数:377

・・それが、貴方が冷たくなった理由だったんですね。

 

私は、そんなこと、考えもしなかったし、

思いつきもしなかった。

 

「貴方に他に好きな人がいた」、なんて。

 

 

貴方は、いつもとても優しかったのに、

急に怒りっぽくなって、

私といてもつまらなそうで。

 

休みも、私とは別の日にとって、

一人でどこかへ出掛けていく。

 

忙しいせいだと、休みさえ自由な日にとれないのだと、

貴方が言うから、

その言葉を疑いもせず、

寂しいと思うのは、私の我が儘で、

貴方といても、前ほど暖かくはないと思うのは、私の我が儘で、

忙しい貴方に、我が儘を言ってはいけないのだと、

ずっと我慢してきた。

 

 

いつだったか、

今日だけは、一緒に出掛けて欲しいと私が言ったとき、

 

「なんでだよ?一人で行けないのかよ。」

 

そんなこと、貴方に言われたことはなかったのに。

一緒に出掛けるのは久しぶりだったから、

貴方も「行こう。」と言ってくれると思ったのに。

 

車を出してくれても、ずっと黙ったままで、不機嫌な顔をしていた。

 

 

だけど、どんなに寝不足でも、

あの人の誘いには、ちゃんと起きて出掛けていく。

それも仕事の内だと、貴方が言うから、

疑いもしなかった。

 

あの人が、貴方の好きな人だったんですね。

 

なんで、わからなかったんだろう?

 

何度も何度も、見たのに。

何度も何度も、あの人と一緒のときの貴方の顔を。

 

なんで、気がつかなかったんだろう?

 

 

忙しい貴方を、少しでも休ませてあげようと、

寂しくても、我慢して、

冷たくされても、我慢して、

 

自分を、責めて、

苦しくて、

それでも、弱い自分が悪いのだと、

もっと強くなろうとしてた。

 

 

最後まで、

他人に教えられるまで、気がつかなかった。

貴方に好きな人がいる、ということに。

 

 

私がいなかったら、あの人は貴方を受け入れたのだろうか。

私がいなかったら、貴方はあの人と一緒に歩いていけたのだろうか。

私がいなかったら、こんな事にはならなかったのだろうか。

 

もっと早く気がついて、私から別れると言えばよかったんだろうか。

もっと疑って、貴方の気持ちに気がつくべきだったんだろうか。

そうすれば、こんな大事にならずにすんだんだろうか。

 

私ひとりが苦しめば、みんなが苦しむことはなかったんだろうか。

 

そうだとしても、私にそれができたのだろうか。

 

もしまた、同じ事が起きたら、私にそれができるのだろうか。

 

 

貴方が急に冷たくなったのも、

怒りっぽくなったのも、

私との約束を破るようになったのも、

貴方に好きな人が、いた。

それが、全ての理由だった。

 

私の罪は、それに気がつかなかったこと。

 


 
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