No.965924

【サイバ】或る日のフローエツァイト(その2)【交流】

2018-09-02 23:59:35 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:875   閲覧ユーザー数:834

「こんにちは」

「あ、いらっしゃい!」

 次にフローエ・ツァイトを訪れたのは、てんくうプロレスリングの花形女性レスラー、寺内静波(じないしずは)と、デモンシード相馬こと相馬種姫(そうまたねひめ)だった。

 二人の服装は対照的だ。静波がシンプルなTシャツとジーンズ姿なのに対して、種姫はフリルをふんだんにあしらったワンピースを着ている。リングの上では悪役(ヒール)を演じることも多い、恐ろしげな吸血鬼のイメージとは正反対の可愛らしい姿だ。

「えーっと、シュバイネハクセと、ブルートヴルスト5人前ずつ、あとコーヒー2杯ね」

 メニューを見て静波が注文を告げる。

「わ、さすがプロレスラー! たくさん食べるんですね!」

 注文を受けた真緒(まお)が思わず驚きの声を上げる。

「まあね」

「レスラーや相撲取りは食事(ちゃんこ)も仕事のうち、ってね」

 しばらくして料理が運ばれてきた。豚肉の脚のロースト、シュバイネハクセと、ブルートヴルストだ。

 ブルートヴルストとは、「血のソーセージ」という意味である。その名の通り、豚の血液を原料に使ったソーセージで、吸血鬼である種姫の好物だ。

「ところで静波ちゃん、彼氏とは上手くいってる?」

 ブルートヴルストを頬張りながら、種姫が瞳を輝かせて静波に尋ねた。

「うん。おかげさまで」

 やや照れくさそうに、静波が答える。

「この前、(こう)君ちでビーフシチュー作ってあげたんだ。紅君、美味しいって言って食べてくれたよ。料理特訓してくれた菜乃花(なのか)に感謝だね」

「あー、最初の頃の静波ちゃんの料理、ヒドかったもんね。初ちゃんこ番の時、あとちょっとで食中毒騒ぎになりかけてたよ」

 種姫は笑った。

「やめてよ人の黒歴史披露するの」

 静波は苦笑しながらシュバイネハクセを口に運ぶ。

 その後も、静波と種姫は女子トークに花を咲かせた。

「ふう。ごちそうさま」

「ありがとうございました!」

 支払いを済ませて、二人の美しきプロレスラーはフローエ・ツァイトを後にした。

 

 ドイツ料理の店フローエ・ツァイト。次にこの店のドアを開けるのは誰だろう。

 

[to be continued...]


 
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