No.96435

夏の出来事 魏ver

南風さん

恥ずかしながら帰ってきました。今回は二作品の同時投稿です。心・恋姫†無双は明日に再開いたします。今回は一話完結の物語です。一応、魏のその後のネタをお盆にのせて進めてみましたが、オリジナル設定が多くまたキャラ崩壊があるため苦手な方は申し訳ありません。
では、今後ともまたよろしくお願いします。

最後に10月のアニメが楽しみです。

2009-09-20 21:03:35 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:10940   閲覧ユーザー数:8527

夏の出来事 魏ver

~真夏の胡蝶の夢~

 

 

 

 

 

――天、逝く――

 

 

 

 

 

長い長い戦乱が終わり、三国が平和に向けて歩むと決めた日。

そんな、喜ばしい日に訪れた唯一の悲しみ。

 

 

 

 

 

あれから二年を迎えようとしていた・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

天が平和のために天の知識を書かれた書が、魏に存在する。

魏は、その書をもとに呉と蜀と手を取り合っていた。

学校の設立・軍部の解体及び新たな連合軍の設立・自衛軍の設立・街の開発・労働の改革など、天の書の知識を政に生かしていった。

そして、その天の知識の書の中に書かれていた唯一の天の行事。

平和を愛した天が残したもの・・・・・・・・・

それは・・・・・・・・

 

 

 

「お盆ですか?」

秋蘭は魏一の弓の使い手である。

しかし、戦がなくなり平和な世が訪れ、彼女は弓を捨てた。

そして秋蘭は、華琳の身の回りの世話などの補佐的な仕事をしている。

「そうよ。」

今、三国は二度目の春を終え、二度目の夏を迎えようとしている。

「それは、あやつが残していった天の行事ですね。」

「えぇ、祖先の霊などがこの地に帰ってくる。それらを向かえ、さらにまた天へ送る天の行事。」

「それをどうなさるのですか?」

「国をあげてやるのよ。あの馬鹿ったら事細かに書いているのは良いけれど、やる側の事を何も考えてないのだから。」

「それは・・・・・・・・・・。」

「何かしら?」

「いえ。それは慰霊祭のようなものでよろしいのですか?」

「そうね。それとは別のような感じではあるけれども、考え方は間違ってないわ。」

「では、皆を集めます。蜀や呉にも伝えておきます。」

「蜀と呉には、私たちの会議が終わり案を明確なものにしてから伝えましょう。秋蘭、三国で集まって話す必要もあるでしょうから、その席の話を伝え集まる日取りを決められるようにしてくれるかしら?」

「御意。」

秋蘭は華琳のもとに後にする。

華琳と別れたあと、秋蘭の頭の中を一つの言葉がずっと響いていた。

 

 

 

・・・・・・・やる側の事を何も考えてない・・・・・・

 

 

 

主である華琳の唯一の闇。

そんな闇を秋蘭は憎んでいた。

自分の中にある闇と同じであるとわかっているから。

 

 

 

 

 

「しかし、なぜこんな暑い時期にやらねばならなんのだ?」

魏の大剣、春蘭。

彼女は剣を未だに握っている。

連合軍とは別の、各国がもつ自衛軍。

その自衛軍の魏国の代表である。

自衛軍とは他国に攻め入らず、ただ自国を守るための軍。

平和になったとはいえ五胡などの外敵が存在するため、それらに対応するための軍。

「それは、この時期はこの世の生き物が活性化するためですね。この世の生き物が活性化するという事は、あの世の天に昇った者達も活性化すると同意という事です。」

魏で唯一の眼鏡軍師、稟。

連合軍、軍師。

連合軍とは各国の将で構成された軍の事である。

盗賊や国内の不穏分子を鎮圧するための軍。

呉の蓮華を軍の代表とし、先の宴の時には袁術を捕らえている。

また、戦が無い場合は各国の代表として政の意見の交換などをしている。

「なんだそれは?さっぱり意味がわからんぞ。」

「この時期に、草木は緑鮮やかに染まります。動物も鳥も虫も、最も色々な種類が見られます。そういうことです。・・・・・・・・と言っても私もよくわかりません。先程のも本の受け売りです。」

「そういうものなのか・・・・・・・・へんな本を書く奴がいるんだな。」

「そうですね。平和になり様々な本がでるようになりました。皆の心に余裕ができたのですよ。」

「そして、そういった本を読んでは妄想するのですねぇ。」

「するか!」

稟の平手が風の額に当たる。

「おぅ。冗談が通じないあたり怪しいですねぇ。」

「ねぇ、風。あなたは私を怒らせたいの?」

「いえいえ、そんな事はありませんよぉ~。」

稟と同じく連合軍の軍師・風。

風と稟は昔からの大親友である。

 

 

 

「何そこで漫才をしているのよ!話を進めるわよ!」

三人をいさめるのは魏の文官長・桂花。

戦の時は軍師をしていた彼女も今は文官をたばね、政に力を入れている。

しかし、緊急時のときは自衛軍の軍師でもある。

「お盆中にやる行事の主なものは大きく分けて三つ、迎え火・盆踊り・送り火よ。簡単に説明すると迎え火は死者の魂を迎えるためのもので、家の前などに火をたいて迎えるらしいわ。盆踊りはまぁ一般的な祭りよね。変わったところがあるとすれば、歌にあわせて皆で踊るというところよ。最後の送り火は魂をまた天へ送るという行事よ。」

 

 

 

隊長が残した天の行事・・・・・・・・。

 

隊長は何を考えていたのだろうか・・・・・・・・。

 

隊長・・・・・・・・。

 

 

 

「凪、聞いてる?」

「!!・・・・・・・・・・・・・・・・あっ、はい!・・・・・・・・・すみません。」

桂花の言葉に我にかえる。

「疲れているの?」

「いえ、華琳さま。大丈夫です。」

「そう。桂花、続きをお願い。」

「はい。」

 

隊長・・・・・・・私は・・・・・・・・・・・・。

 

一人悩む彼女は凪。

今現在、二代目警備隊隊長をしている。

魏の警備体制は画期的であり、他国へ指導したりもしている。

しかし、今の彼女があるのも警備体制も初代警備隊長のお陰である・・・・・・・・。

 

 

 

「それで、迎え火について華琳さまのご要望だからしょうがないのだけれど・・・・・・・あの馬鹿を迎えに行くことになったわ。それで、その人選なんだけど・・・・・・・・凪・沙和・真桜・霞にお願いするわ。」

 

「「「!!」」」

 

 

 

 

 

 

「私が・・・・・・・・ですか?」

「うちらでええの?」

「そ、そうなの。」

「せや。うちらにやらせるよりも、華琳が行ったほうがええんちゃう?」

皆が行きたいだろう。

いや、本当は行きたくはないのかもしれない。

心のどこかで・・・・・・。

「そうね。けど、私は魏の王として発案者としてやらなければならない仕事が沢山あるわ。

それに、あなた達なら任せられると判断したのだけれど・・・・・・・・嫌なら無理強いはしない。」

「い、いえ。わかりました。」

「凪がそう言うなら、うちもええよ。」

「沙和もなの。」

「・・・・・・・・・しゃあないなぁ・・・・・・・ええよ。やったる。」

「ありがと。」

 

「それと沙和。盆踊りの担当を天和たちに任せようと思うのだけれど、彼女たちに今回の会議の内容とその事を伝えてもらえるかしら?」

「はいなの。」

沙和。

彼女は、元は警備部隊にいたのだが、本人の希望により連合軍に所属している。

彼女の兵の訓練方法は各国で受けが良いらしい。

そして、今や大陸一の歌い手である数え役満☆姉妹との連絡役。

 

「真桜には作ってもらいたいのがあるのだけれど。」

「任しといてください。」

真桜。

彼女も元警備隊所属。

沙和と同じく本人の希望により連合軍に所属している。

また、魏の工兵部隊を率いて、各国に技術の提供を行っている。

 

「霞はあいつの迎え火の代表をお願いするわ。」

「えっ!?まじで?」

「本当よ。」

「うち、めんどい事は勘弁してほしんやけど・・・・・・・今回は、しゃあないなぁ。頑張ったる。」

「お願いね。」

霞は実質的な連合軍の二番手。

自他共に認める武、将としての器は群を抜いている。

そのためか、彼女を慕う者は多い。

 

「では、桂花。あとの振り分けをお願い。」

「はい。」

 

その日の軍議は無事に終わった。

決まったことは、天の迎えを凪・沙和・真桜・霞。

迎え火を稟と風。

盆踊りを天和・地和・人和。

送り火を桂花・春蘭・季衣・流琉。

華琳は魏の代表、補佐を秋蘭。

 

各代表が決まり、魏は慌ただしくも準備を始めるのであった。

 

 

 

 

 

時は進み

三国の代表同士によるお盆の会議。

「へぇ~華琳の口からこんな事がでるなんて思いもよらなかったけど、呉は賛同するわ。いいでしょ、冥琳?」

「良いも何も私の意見なんて聞く気がないのだろう。」

「まぁね♪」

「それに、私とて反対するつもりは無い。」

呉の代表は雪蓮と冥琳。

 

「私たちも賛同します。こういう事はやっぱり皆でやらないといけないですから。」

「はい。それに、これにより一層の同盟の強化も望まれます。」

蜀の代表は桃香と朱里。

 

「同意が得られたようだから後は資料通りよ。盆踊り以外は自国でやってもらうわ。材料や人員は各国で準備してちょうだい。こちらはお盆に必要なものをそちらでも作れるように手配をするわ。何か質問はあるかしら?」

「なんで呉の送り火と蜀と魏の送り火が違うの?」

「それは、呉に河が多いからよ。魏や蜀は山々に囲まれているけれども、呉は違うわ。その土地にあった送り方ってわけね。」

「へぇ~考えているのね。」

「こういうとこだけは気がまわるのよ。」

「同情するわ。」

「ありがとう。」

「それってどういう事ですか?」

「節操が無いって事よ、桃香。」

「そうなんですか?」

「苦労したのね、華琳。」

「まったくもってね。」

 

 

 

その日の夜は宴会が開かれた。

「やっぱり華琳の造ったお酒は美味しいわね♪」

「そう?三国一の酒豪に褒められるなら造ったかいがあるわね。」

「それって褒めてないわよね?」

「褒めているわよ。」

「嘘くさ~い。」

「そう思うなら、酒豪って言われないようにしなさいな。」

「それは無理♪それに、三国一の酒乱よりマシだと思うけど?」

「・・・・・・・・・それは、そうね。」

 

「わぁ!冥琳さぁ~ん、とっても似合ってますよぉ~。」

「そ、そうか・・・・・・・・。」

青筋をうかべている冥琳。

「朱里ちゃんも似合っているぉ。」

「・・・・・・・・ありがとうございます・・・・・・・・。」

涙目の朱里。

 

ベレンベレンに酔っ払った桃香は二人を脱がし、着せ替え人形のように遊んでいる。

冥琳は白黒のフリフリのドレスに小さな帽子、日傘をつけてまるで西洋人形のよう。

朱里は綺麗な和服、こちらは日本人形のよう。

両方とも天のデザインした衣装である。

 

「それにしても可愛いわね~。眼福眼福ってね♪」

「いいの?後で怒られそうだけど。」

「大丈夫♪」

「そう。」

 

・・・・・・・・・・・・・。

 

「丸くなったわね、華琳。」

「・・・・・・・・・何のことかしら?」

「そのまんまの意味よ。最初にあなたを見たときは本当に王だったし。」

「それは今も変わらないわ。・・・・・・・・・私は昔から王よ。」

「そうね・・・・・・・・その通りだわ。」

「・・・・・・・・・・・そういうあなたも丸くなったんじゃなくて?」

「それはそうよ。今は平和なんだから。」

「・・・・・・・・・・・まったく、あなたは人をからかうのが好きなのかしら?」

「華琳に言われてくないわ。」

「私は雪蓮に言われたくないわよ。」

「「・・・・・・・・・・・。」」

「「・・・・・・・・・・ふふふふふ。」」

「「乾杯♪」」

 

 

 

 

 

三国の会議が無事に終わり三国は各国で準備にかかった。

 

初めてという事もあり最初の準備には手間取ったが、すべて無事に終了した。

 

そして、ついにその日を迎える。

「じゃあ頼んだわよ。」

「おぅ!うちらに任しておき!」

「行ってまいります。」

「行ってきますなの。」

「行ってくるで。」

「えぇ。向こうについたら桃香が歓迎してくれるそうだから、少しだけだけど羽を伸ばしてらっしゃい。」

「おぅ。じゃあ行ってくる!」

霞たちを見送る華琳。

こうして慌ただしい日々が幕を開けたのである。

 

 

 

――天の迎え火組・道中――

「出発したのはええけど、蝋燭もつんかいな。」

迎え火。

それは迎えに行く者の墓所から、家まで提灯に日をともし途中迷わないように目印とする。

また、背負う動作を加えおぶって連れてくるという行事。

 

「それは大丈夫や、姐さん。うちが改造して溶けにくくした特性やし。それにその提灯も燃えにくくなってるんやで。」

「へぇ、そうなん。」

「大将きっての頼みやったから。」

「華琳も考えてるんやな。」

「それに万が一に備え、予備の蝋燭と提灯も用意してあります。」

「準備ばっちりなの~。」

こうして四人組の小さな旅行が始まった。

道中は昔話に花が咲いた。

霞がまだ魏に来る前の話や、三羽烏の小さいときなどの思い出話。

しかし、誰一人としてこの道中で天についての話題にふれるものはいなかった。

 

 

 

――送り火・準備組――

「ほら、そこ!ちゃっちゃと運びなさい!」

桂花が現場監督として皆に指示を飛ばしている。

「しかし、こんな山の中でやらなくても良いのではないか?」

「仕方ないでしょ!そう書いてあったんだから!それに高いところに用意しなければ見えないじゃない。」

「私たちが高いところに行けば済む話しじゃないのか?」

「本当に馬鹿ね!私たちだけならともかく、全ての民を山にでも登らせるつもり!?」

「そこは気合で何とかなるだろう。」

「あんたの基準で話を進めないで!!この筋肉馬鹿!!」

「誰が馬鹿で救えないほど筋肉で体が覆われている大猿だ!!!!!」

「そのまんまじゃない!!」

 

「また始まっちゃったね。」

「これって何度目?」

「ん~5回目ぐらいかなぁ~。」

「はぁ~。」

小さい体に似合わない大きなため息。

「どうしたの流琉?」

「・・・・・・・・・なんでもない。季衣、私たちは仕事しよう。」

「にゅ?」

この少女のため息を癒すものはここにはいない。

 

ため息をはく少女は流琉。

華琳の親衛隊長。

魏の中では数少ない良心であり、武の腕もさることながら、料理の腕は三国一と言っても過言ではない。

天の事を「兄」と呼んだ一人の少女。

 

そしてもう一人の親衛隊長。

天の事を「兄」と呼び、天が消えたときに最も暴れ最も泣いた少女。

季衣。

彼女は一言で言うと天真爛漫、魏の元気印。

 

 

 

――迎え火・準備組――

「これで終わりかしら。ねぇ風・・・・・・・・・・風?どこにいったのかしら?」

 

「にゃ~~~。」

 

「・・・・・・・・・何をしているのかしら?」

隅で丸くなり、猫たちに向かい合っている風。

「猫とお話しているのです。」

「・・・・・・・・・仕事は終わったの?」

稟の額に青筋がうかぶ。

「そんな怒らなくても終わってますよぉ~。」

「そう、それは良かったわね。でも最後の確認をしたいのだけれどいいかしら?」

「稟ちゃんはせっかちですねぇ~。そんなに急ぐ必要は無いのですよ。」

「早く終わることは悪いことでは無いと思うのだけれど?」

「むぅ~。ごめんなさい、稟ちゃん一号。四号に呼ばれたので風はさよならなのです。」

「私が四号!?本人なのに!?」

「おぉ~誰かさんと同じ反応ですね。」

そう言いながらトテトテ歩き出す風。

「ちょっと待ちなさい!!・・・・・・・風!!」

「嫌なのですよぉ~。」

 

 

 

――盆踊り・準備組――

「これで準備は終わりね。広報は各国でやってくれると言っていたし、姉さんたちと打ち合わせでもしようかしら。」

「呼んだぁ~?」

「ちょうど探そうと思ってたの。姉さん、今回の公演の形は初めてだし、打ち合わせをしようと思ってたんだけど、ちぃ姉さんは?」

「ちぃちゃんはね、新しいお手伝いさん連れて買い物に行ってるよぉ。」

「そう。じゃあ戻ってきたら打ち合わせしましょう。」

「うん♪」

 

その頃の地和

「ちょっと遅いわよ!ちゃっちゃと歩く!」

「七乃~疲れたのじゃ~。」

「そんな事言わないでくださいよぉ~私だって疲れているんですから。」

「これしきの事で疲れるなど鍛錬がたりんぞ。」

「華雄さんのような人と美羽さまを比べないでください。」

「こら!!ごちゃごちゃしゃべってないでついてくる!!給料から引くわよ!!」

「七乃~。」

新しいお手伝い。

それは袁術たちである。

 

袁紹はと言うと・・・・・・

「喉渇いたから、お水もってきて。」

「・・・・・・・・・。」

「は、はい。ただいま持ってきます。」

「あと、お菓子も。」

「・・・・・・・・・。」

「わ、わかった。持ってくるぜ。」

天和のお守り?をしていた。

「なんで高貴な私がこんなことぉ~~~~!!」

「「麗羽さま(姫)は何もしてないじゃないですかぁ~(何もしてないだろ~)!!」

 

 

 

 

 

 

――天の迎え火組・成都――

彼女たちは無事に蜀の成都に到着していた。

「今日はゆっくりしていってください♪」

そう桃香に言われ彼女たちは各自で羽を伸ばしている。

夜には宴も開かれることになっている。

 

霞は愛紗と仕合、凪は星と仕合をしている。

沙和と真桜は成都の街を歩いていた。

 

「こっちのお茶屋さんもお洒落なの~。」

「せやね。」

「・・・・・・・今度は何をいじってるの?」

「ん~歯車で動く人形らしんやけど、壊れててなぁ。さっき安く売ってたんで買って直し取る。」

「ふ~ん。」

沙和と真桜はお茶をしている。

沙和はお茶を飲み、真桜はカラクリをいじっている。

「・・・・・・・真桜ちゃん?」

「なに?」

「何で私たちなのかな?」

「・・・・・・・・・大将が言ってたやろ。」

「そうだけど・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・そんなん悩むだけ無駄やで。」

「・・・・・・・うん。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・沙和は優しい。」

「何かいった?」

「何でもない。」

「?」

 

その日の夜は皆で楽しい宴が開かれた。

霞は凪と愛紗に迫り、真桜は朱里や雛里とカラクリについて熱心に語った。

沙和は桃香と結託し、蜀の皆で着せ替えをしながら遊んだ。

皆が皆、各々笑いながら楽しい夜は更けていった・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・。

 

・・・・・・。

 

 

 

 

 

「行ってらっしゃい♪」

桃香と蜀の皆に見送られ霞たちは成都を後にする。

天の眠る場所に行くために。

 

 

 

その場所は成都近くの小川にある。

木々に囲まれ川のせせらぎが聞こえるこの場所が天の逝った場所。

しかし、目印となる物や墓標などは一切無い。

 

「迎えに来たで、一刀。」

その場所に着き、今や誰も言わなくなった天の名を呼ぶ霞。

「で、何をすればええの?」

「はい。この提灯に火を灯し、火が消えないように後は戻るだけです。」

「そんだけでええの?」

「はい。本当は背負って連れてくるらしいですが、華琳さまがそこまで落ちぶれる程の馬鹿でもないでしょうとの事です。」

「確かに。それに、一刀の事やから背負ってたら何されるかわからへんで。」

「それは言えるの。」

「確かに・・・・・・。」

「お前ら・・・・・・・・・。」

 

 

 

「なぁ、一刀。」

霞が凪から提灯を受け取り中の蝋燭に火を灯す。

 

「一刀とした約束、やっと叶えられるよ。・・・・・・・・・二人きりじゃないけど、これも立派な旅行や。うちら五人で楽しもう・・・・・・・・。」

 

「「「・・・・・・・・・・・・。」」」

 

「皆偉いで。うちより若いのに必死に我慢して、皆で気遣ってここまでこれてん。互いに傷に触れないように支えあって・・・・・・・・・。」

 

 

 

 

 

「皆のところに帰ろう・・・・・・・・・なぁ、一刀。」

 

 

 

 

 

 

時は進み

 

日は暮れ、辺りはすっかり暗くなっている。

しかし、城の周りだけは違った。

城門には大きな松明が燃え、小さな松明が城の周りで燃えている。

そして、城門の前には魏の主要なメンバーが集合していた。

「華琳さま、ここまでやる必要はなかったのではないでしょうか?」

「秋蘭・・・・・・・・仮にもあの馬鹿は私の盟友だった唯一の男よ。そして、この平和をつくった功労者でもあるわ。それを雑に扱ったら私の名前に傷がついてしまう。」

「・・・・・・・申し訳ありません。」

「それにこれは今までに散った者たち全てを迎え入れるもの・・・・・・・・・決してあの馬鹿のためではないわ。」

「・・・・・・・御意。」

 

 

 

「華琳さまー!!見えましたー!!」

春蘭の声が耳に届く。

まだ遠いが暗闇の向こうにかすかに小さな明かりが見える。

「やっとついたのね・・・・・・・・・・・稟と風はいる?」

「はいはい~。」

「ここに。」

「霞たちが城内に入ったら一斉に城門以外の火を消しなさい。」

「わかりました~。」

「御意に。」

「秋蘭はその手伝いを・・・・・・・他の者たちは霞たちと城に来るように伝えなさい。」

「御意。」

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~遅くってごめんなぁ。」

「いいのよ。長旅、ご苦労様。」

霞たちの到着を、出迎える華琳たち。

「凪、沙和、真桜もご苦労様。」

「いえ。」

「沙和たちは楽しかったですよ~。」

「せや。」

「そう、なら良かったわ。その馬鹿を部屋まで連れて行きましょう。」

北郷一刀の部屋は、今は空き部屋になっている。

北郷一刀が使っていた物は用の無いものは燃やし、他は倉庫に保管し誰も触れていない。

その空き部屋にふいに置かれている、一つの丸い机と椅子。

そして、寝床。

丸い机の上には蝋燭が一本、置かれている。

「では、火をその蝋燭に灯してちょうだい。」

霞が提灯の火を机の上の蝋燭に移す。

「これでええ?」

「ええ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今日はこれから祭りを行うわ。」

「今からすんの?」

「そうよ。本当は宴会の一つでも開けば良いのだろうけど、帰ってくるのはあの馬鹿だけじゃないでしょ。凪は帰って早々悪いけど警備隊の指揮をお願い。祭りだからって浮かれる輩もいるでしょうから。沙和と真桜は凪の補佐をしてちょうだい。」

「「「御意。」」」

「流琉は料理を頼めるかしら?」

「はい!」

「他のものは祭りを楽しみなさいな。今日から暫くは仕事も忘れて各々で好きにすると良いわ。けど、盆踊りは全員参加しなさい。」

「「「御意。」」」

 

 

 

 

 

皆が一刀の部屋を出る。

しかし、華琳だけは一人残り椅子に腰掛ける。

一人、机の蝋燭を眺め・・・・・・・。

「・・・・・・・・・・おかえりなさい、一刀・・・・・・・・・・。」

そう、静かに呟くのであった。

 

 

 

 

 

「ええの?一人にさせておいて。」

「あぁ、私たちがいたら邪魔になるだけだ。」

「でも、何か不安ですよ。」

「心配するな、季衣。華琳さまは我らが主・・・・・・・・とても強い御方だ。」

「・・・・・はい・・・・・・そうですよね。」

 

 

 

その日の祭りは、夜の遅くから始まったにもかかわらず、賑やかだった。

誰もが飲めや歌えやの大騒ぎ。

そんな祭りだったのにもかかわらず警備隊が出動することは一度も無かった。

 

 

 

 

 

次の行事は盆踊り。

各国の代表が勢ぞろいした。

場所は荊州、数え役満☆姉妹の現在の本拠地である。

今や名実ともに大陸一の歌い手である彼女たちは、大陸の中心部で三国を結ぶ要所である荊州に拠点を移していた。

今は華琳からの手を離れ、完全に歌い手として独立している。

また、新たなる歌い手や芸を生業とする人々の育成も行っている。

 

「久しいわね。」

「はい、お久しぶりです。華琳さま。」

「お久しぶりです♪」

「久しぶりね♪」

華琳たち魏の一行を迎える、天和、地和、人和。

 

人和、数え役満☆姉妹の行事・舞台など全てを取り仕切るアイドル兼会社社長的な存在。

彼女がいなければ数え役満☆姉妹は破産している可能性が高い。

とっても可愛い

 

地和、数え役満☆姉妹の歌い手。

舞台では舞台を盛り上げる扇動役。

歌い手の育成よりも舞台の演出を考える仕事を担っている。

みんなの妹である。

 

天和、数え役満☆姉妹の歌い手。

三姉妹の長女だがおっとりしている天然系。

だが、姉らしく妹達を一応心配している。

歌い手の育成の仕事を一手に担っている。

みんな大好きである。

 

 

 

「桃香と雪蓮たちは揃ってるかしら?」

「はい。華琳さま達で最後です。」

「なら、結構。頑張りなさいね三人とも。」

「任せてください。」

「任せなさい!!」

「最高の歌を送っちゃうよぉ~♪」

 

 

 

 

 

夜を迎え、辺りは静まりかえっている。

嵐の前の静けさ・・・・・・・改め、祭りの前の静けさ。

広い平原の真ん中に櫓が一つ立っている。

櫓というよりは一つの高い舞台と言ったほうが良いかもしれない。

舞台には楽器が並んでいる。

その舞台を中心に円を描くように並ぶ踊り手たち。

そしてそれを見守る無数の民。

 

舞台から少し離れ、そこにあるのはもう一つの櫓。

華琳たち、国の要人たちがいる席である。

 

 

 

「始まりますね。」

「えぇ。」

舞台の上に三人が現れ、楽器の弾き手も自らの楽器をとる。

「みんな~~~~~元気~~~~~~~~!?」

「ほわああああああぁぁぁぁぁ!!」

天和の声に反応し、雄叫びをあげる数え役満☆姉妹のファンたち。

その雄叫びは民達の声援をかき消すほど。

「相変わらず凄いわね。」

「慣れませんか?」

「慣れるものではないわ。私は春蘭と違って単純じゃないのよ。」

春蘭は季衣や流琉と一緒になって叫んでいる。

「姉者は素直なのですよ。」

「なによそれ。私が素直じゃないみたいじゃない。まぁ、良いわ。そういう事にしておいてあげる。」

「御意。」

 

 

 

「じゃあ、早速だけどお盆を楽しんじゃお~~~~♪」

「ちぃ達にちゃんと着いてきなさいよ~~~~♪」

「まず、初めは!!」

「私、天和が歌うよ~~~~♪」

「――燃えさかる魂――」

ついに始まった盆踊り。

最初を飾るのは天和の歌。

その歌の激しさは天和の普段の行動からは考えられない。

しかし、天和の歌声と踊り手、弾き手の呼吸が見事に合う。

まさに燃える魂を見事に再現していた。

 

曲が終わり、聞こえるのは拍手ではなく声援。

皆が皆、魂を燃やしている証。

 

 

 

「お次は三人で歌うよ~~~♪」

「「「――我等詠ウハ兵ノ道標――」」」

 

・・・・・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・。

 

・・・・・・。

 

 

 

数え役満☆姉妹の歌はどれも凄い盛り上がりだった。

王から民まで全ての人々の心に響く見事なもの。

歌、歌詞、踊り、音、どれが抜けてもここまでにはならなかっただろう。

実は今回の楽曲には三国の想いがつめられていた。

地和が歌った「――彼方の面影――」は魏の想いが。

人和が歌った「――あさきゆめみし――」は呉の想いが。

三人で歌った「――我等詠ウハ兵ノ道標――」は蜀の想いが。

天和の歌った「――燃えさかる魂――」には戦ってきた全ての者たちの想いが。

最後、三人で歌った「――志在千里――」には恋しい者への想いが。

その想いの全てを天の者たちへ聞かせるために歌にしたのだ。

 

この想いが天へと届きますようにと・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

そして、ついにこの時を迎える。

盆踊りが終わり明日に盆が終わる前日の夜。

「明日の夜の送り火については以上です。」

「わかった。ありがとう、秋蘭。今日はもう休みなさい。」

「御意。」

秋蘭の報告を聞き終え、一人になる華琳。

その足は天の部屋へと向かっていった。

 

明かりもつけず、月明かりを頼りに椅子に腰掛ける。

何をするわけでもなく、ただ椅子に腰掛け窓の外を眺める。

満点の星空にひときは美しい月が一つ。

夜の闇を優しく照らす。

月を眺める華琳の姿はどこか寂しい。

何を思い考えるのか・・・・・・・・それは誰にもわからない。

 

 

 

 

 

たった一人を除いて・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「幻覚か・・・・・・・・それとも妖の技か。どちらにしても、この曹孟徳には通じないわよ。」

部屋の隅、白い服を来た一人の青年がそこに立っていた。

「・・・・・・・・・・。」

その青年は何も言わない。

華琳に近づき、手の届きそうな所で立ち止まる。

「・・・・・・・・・・ふん。夢の続きか・・・・・・・・・・・そっちの方がよっぽど性質が悪いわよ、一刀。」

その顔、姿を忘れたことは一度も無い。

この男に恥じぬように今まで平和のために頑張ってきたのだから。

「・・・・・・・・・・。」

「何も言わないのね・・・・・・・・・・・・・・言えないと言ったほうが正しいのかしら。」

「・・・・・・・・・・。」

「そんな悲しい表情をするなら出てこないで。・・・・・・・・・誰が悲しくて、それは誰のせいか一番わかってるでしょ?」

「・・・・・・・・・・。」

「っ!!」

静かにそして優しく抱き寄せられる華琳。

この温もりを忘れられるわけが無かった。

「・・・・・・・・・・馬鹿。本当に何しに来たのよ・・・・・・・・・・・・・・いえ、こんな事を言う必要は無いわね。本当は泣いて叫びたい気分なんだから・・・・・・・・・・・だから、夢でもいいから・・・・・・・・・・一刀。」

「ん・・・・・・・・。」

唇が静かに熱く重なった。

 

 

 

 

 

「愛してる。」

 

 

 

 

 

曹操。

彼女は生まれながらに王だったわけではない。

所謂、努力の人。

自らの力で運命を切り開き王となった。

誰よりも王らしく、誰よりも気高かった。

正真正銘の覇王。

 

華琳。

素直になれない寂しがりやの女の子。

夢に翻弄された、ただの女の子。

女として、一人の青年と幸せになりたかった・・・・・・・・

しかし、王としての夢がそれを邪魔した。

夢に喜び、夢に泣いた・・・・・・・悲しい一人の女の子。

 

 

 

今ここにいるのは華琳。

愛している男とともに幸せを望む一人の女の子。

いつからだろうか。

曹操よりも華琳が強くなり、いつしか曹操はいなくなった。

いなくなったと言うよりは合体したと言ったほうが正しい。

相反してた二人は、一人の青年の手によって一人の女の子になった。

それは、本人が一番わかっていたことだ。

 

華琳には一刀が必要だってこと。

他の誰でもない、一刀が必要だってことを。

 

 

 

 

 

「うにゅ・・・・・・・・一刀・・・・・・・・・・・。」

 

「!!」

 

 

 

 

 

「一刀!!」

 

 

 

 

 

朝日が部屋に差し込む。

寝床にいるのは私だけ。

「夢・・・・・・・だったのかしら・・・・・・・・・・・。」

私は服を着ていない。

生まれたときの姿。

しかし、隣には誰もいなく温もりも残っていない。

 

 

 

「そう、夢なのね。夢にしては本当に最悪だったわ・・・・・・・・・・悪夢だった。」

 

 

 

「ひっく、えっく・・・・・・・どう・・・・・してよ。どうして、あなたはそうやって私を泣かせるのよ。」

 

 

 

「なん・・・・・・・でよ。一刀・・・・・・・・・。」

 

 

 

「どうして側にいてくれないの・・・・・・・・・・・・・?」

 

 

 

「逝かないでよ・・・・・・・・。」

 

 

 

「ずっと・・・・・・・側に・・・・・・・・・言ったのに・・・・・・・・・。」

 

 

 

「そうやって・・・・・・・また私を・・・・・・・・・・・・・ばかぁ。」

 

 

 

泣き声だけが静かに響いた・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

その日の夜、城壁の上。

「こちらです。華琳さま。」

「えぇ。」

「後は華琳さまの合図だけです。」

「そう・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

 

 

 

 

 

一刀・・・・・・・・・さようなら。

 

 

 

 

 

「火をつけよ!!」

「「「応っ!!」」」

華琳の合図と共に城の周りの松明に一斉に火がつく。

 

 

 

――山頂――

「合図か来たわ!春蘭!」

「任しておけ!!」

「火をつけろーーーーーー!!!!!」

春蘭の合図で季衣・流流、兵たちが一斉に火をつける。

「はっはっはっ!!これで北郷にも見えるだろう!!」

「バイバイ、兄ちゃん!!」

「さようなら、兄様。」

「・・・・・・・・ふん。」

 

 

 

――城壁――

「見事ね。」

華琳の視線の先。

闇夜に現れた火で書かれた ‘ 天 , の文字

「そうですね。」

 

 

 

 

 

これにより三国合同のお盆が終了した。

蜀では火で書かれた ‘ 平和 , の文字が闇夜を照らし、

呉では川に流された無数の灯篭が静かに闇夜を照らしていた。

 

 

 

 

 

後日談ではあるが、天への送り火は魏の主要人物全員で行われた。

その中には数え役満☆姉妹もいる。

しかし、その行為自体は淑やかに行われたのである。

皆でしたのは木を埋めること。

まだ花を咲かすことも無い一本の桃の苗木を天の逝った場所に植えた。

その木に篭められた想いを知るのは魏の人間のみ。

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Happy Endを望む方は次へお進みください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、母様。」

 

「どうかしたの?」

 

「それでは、その女の子がかわいそうです。」

 

「そうね、その通りだわ・・・・・・・・でもね、その女の子はちゃんと幸せになっているか安心しなさい。」

 

「本当ですか?」

 

「えぇ。とっても幸せだわ。」

 

「なら、良かった。」

 

部屋にいるのは母と娘。

母親は腰まである長い髪、そしてわずかにお腹が膨らんでいる。

娘の方は母と同じ金色の髪なのだが、瞳の色が違う。

母は青い瞳なのだが娘の瞳は茶色。

 

「父様を呼んできてくれるかしら?」

 

「うん!」

 

部屋にのこった母親は静かにお腹を撫でる。

とても幸せな顔をしている。

 

トクンッ

 

「ふふふ、動いた。」

 

 

 

トン、トンッ

 

 

 

部屋に響くノック、そして・・・・・・・

 

「入るぞ?」

 

「えぇ。」

 

「父様を連れてきたよ~。」

 

娘の頭を撫でる母。

 

「あのね、さっき動いたわ・・・・・・・。」

 

家族の幸せなひと時が流れていった。

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

 

どうも作者です。

お盆なんてとうの昔に過ぎさってしまいましたが、この作品を読んでくれた皆様には感謝を申し上げます。

久しぶりの投稿ですが、相変わらずの駄文・また原作と異なる設定が多く、消化不良なところも多いので読みにくかったと思います。

その点はコメントで指摘いただけると幸いです。

ちなみに作中の「燃えさかる魂」は真・恋姫のOPを作者が簡単に訳したものです。

英語が苦手ですのでそちらはご容赦ください。

 

また、いつも通りこの作品は思いつきで執筆しました。

似ている作品があるとは思いますが、あくまで作者は自分で考えたのでご了承ください。

では、別の作品で。

 


 
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