なみなみとかたみに注ぐ盃に映るけしきは春の夜の夢
月映えの吾が背子の身に積もりては跡も残さず消えゆく六花
君の首に手を触れることを許される僕はこの手を差し出している
雪もよに火鉢をはさみ語り合う話はやっぱり戦の話
投げつけた雪玉あっさり避けられてそれでこそだとニヤリと笑う
頭から爪の先まで刀なる鏡写しの我らが矜持
朔の夜の見回り手当はつくのかとぼやきながらも付き添う君と
君をまるで標本箱の蝶のごと縫い留めし者の血を浴びに行く
もういない君の愛した僕のままいることだけが君とのよすが
人真似を始めひととせ白鞘の頃のももとせ 君とのおうせ
あの炎からの誘惑 飛び込めば君とひとつの鋼になれる
いつだって見送る側に立つという誓いは君には教えてあげない
君のその小さな体の全身で伝える全てを愛しく思う
擦り上げも銘を失くしたことすらも誇りに思うお前が好きだ
あんまり春らしくはねえなとつぶやいて春巻きかじる愛しい刀
地下深く根を張りいつか根の国に届けばいいと綿毛を飛ばす
あのときに永遠に喪ったはずの君の影が僕を苛む
夜半過ぎ遠征帰還二振りの厨でつつく鮭茶漬けかな
背に傷を付けられるのは唯ひとり互いにそっと残す爪痕
俺の居ぬ間に折れるなと伸びもせぬ髪に願掛けもしくは呪い
あの日より再び会える時までと決して口にしなかった名前
君なくてこの名は広く伝えども飛梅になることはあるまじ
枕元ただに自分の気休めにせめて悪夢を見ないでと小鈴
流星はあまたの望み託されて燃え尽きる前眩しく光る
酔ったふりして呟いた「ごめんね」は音の形を取らずに消えた
俳句
好物は隣に移す鮭の皮
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にか薬って何でできてるの?
にか薬って何でできてるの?
美しさ、気高さ、信頼、
それから血生臭いものぜーんぶ
そういうものでにか薬はできてるよ
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