No.960293

にか薬短歌詰め合わせ4

朝凪空也さん

にか薬って何でできてるの?
にか薬って何でできてるの?
美しさ、気高さ、信頼、
それから血生臭いものぜーんぶ
そういうものでにか薬はできてるよ

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2018-07-17 12:29:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:404   閲覧ユーザー数:404

なみなみとかたみに注ぐ盃に映るけしきは春の夜の夢

 

 

月映えの吾が背子の身に積もりては跡も残さず消えゆく六花

 

 

君の首に手を触れることを許される僕はこの手を差し出している

 

 

雪もよに火鉢をはさみ語り合う話はやっぱり戦の話

 

 

投げつけた雪玉あっさり避けられてそれでこそだとニヤリと笑う

 

 

頭から爪の先まで刀なる鏡写しの我らが矜持

 

 

朔の夜の見回り手当はつくのかとぼやきながらも付き添う君と

 

 

君をまるで標本箱の蝶のごと縫い留めし者の血を浴びに行く

 

 

もういない君の愛した僕のままいることだけが君とのよすが

 

 

人真似を始めひととせ白鞘の頃のももとせ 君とのおうせ

 

 

あの炎からの誘惑 飛び込めば君とひとつの鋼になれる

 

 

いつだって見送る側に立つという誓いは君には教えてあげない

 

 

君のその小さな体の全身で伝える全てを愛しく思う

 

 

擦り上げも銘を失くしたことすらも誇りに思うお前が好きだ

 

 

あんまり春らしくはねえなとつぶやいて春巻きかじる愛しい刀

 

 

地下深く根を張りいつか根の国に届けばいいと綿毛を飛ばす

 

 

あのときに永遠に喪ったはずの君の影が僕を苛む

 

 

夜半過ぎ遠征帰還二振りの厨でつつく鮭茶漬けかな

 

 

背に傷を付けられるのは唯ひとり互いにそっと残す爪痕

 

 

俺の居ぬ間に折れるなと伸びもせぬ髪に願掛けもしくは呪い

 

 

あの日より再び会える時までと決して口にしなかった名前

 

 

君なくてこの名は広く伝えども飛梅になることはあるまじ

 

 

枕元ただに自分の気休めにせめて悪夢を見ないでと小鈴

 

 

流星はあまたの望み託されて燃え尽きる前眩しく光る

 

 

酔ったふりして呟いた「ごめんね」は音の形を取らずに消えた

 

 

 

俳句

 

好物は隣に移す鮭の皮


 
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