No.956294

縁むすびて

雛瑚さん

小説を投稿するというのはどんな感じか知りたくて、出来上がったばかりのイラストから膨らませた小話です。

2018-06-13 21:25:01 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:705   閲覧ユーザー数:704

君の後ろに咲いている花は、なんて名前だろうか。

そんなどうでもいいことが気になっているのは、きっと私が緊張しているからだろう。

 

ブライダルウエディングの撮影、当日。

美しいドレスに身を包んだ君を前にして、平常心でいられる方がどうかしている。

撮影の相手役、それも一部分しか映らないただの相手役とはいえ、モデルが本業ではない私が隣に立つのはとても不安だ。

私が差し出す手を、君はとってくれるだろうか。

震えを必死に抑え、私はシルクの手袋を嵌めた手を差し出した。

そんな私の様子に気づいたのか、君はふっ……と小さく笑った。

差し伸べた手は、とってくれない。

 

だが次の瞬間、ドレスの飾り部分に付けられた赤い紐を解く君。

私が君の行動にあっけにとられていると、君は自分の左手の薬指に紐を結んだ。

 

「そなたもの左手にも、この紐を結びつけましょー」

言われるがまま、私も自分の左手の薬指に赤い紐を結ぶ。

しかし私には君の考えていることが全くわからず、きっとかなり間抜けな顔をしていたに違いない。

そんな私に噛んで含めるように、君は語りだした。

 

「この赤い紐は、人と人とを結ぶ縁のようなものでしてー。

わたくしは『誰かと誰か』『何かと何か』の縁を結ぶことこそが、私に課せられた使命だとずっと思っておりましたー。

ですがそなたに出会ってから、わたくしにも結ばれるべき縁があったのだとー。

そう、理解したのですー」

 

左手の薬指に結ばれた赤い紐は、君と私の間を確かに結んでいた。

勿論これは本物の縁の紐ではないことは百も承知だが、それでも君と私の間に確かに何かが結ばれ、繋がったような気がしてとても嬉しかった。

 

いつの間にか手の震えは止まっていた。

そういえば今日はしっかり君の顔を見ていないことに気付き、艶やかに飾った君を見つめる。

すると、君はまた優しく微笑んだ。

 

 

 


 
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