No.954701

ビーストテイマー・ナタ73

リュートさん

昔、書いていたオリジナル小説の第73話です。

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2018-06-02 09:34:04 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:68   閲覧ユーザー数:68

アラヴァニア大陸の辺境の地。アラヴェスタ騎士団が領主の邸を訪れていました。ドアを乱暴に叩きます。

 

「ゲオルグ!アラヴェスタ騎士団の者だ。ここを開けろ?」

 

しかし物音一つせず、辺りは静まり返っています。

 

「開けなければ強行突破する!これは警告だ」

 

しばしの間、沈黙が流れます。

 

「返事がないな…。よし!やれ?」

 

騎士団員は庭に回り込み、一面ガラス張りの部屋の前に狙いを定めて、ガラスを破ると中に突入しました。

 

「騎士団長!中はもぬけの殻でした」

 

「ゲイザーの手配書を役所に出す前に来たと言うのに、なぜ勘付かれた?」

 

「ゲイザーの奴が先回りして両親をどこかへ逃したのではないかと…」

 

「奴は騎士団員には珍しいインテリ系だったからな…。脳筋揃いの我々より、何手も先を読んで動いている。同じインテリ系のギルバートですら奴にはかなわなかったからな…」

 

「チェスで対戦しても奴は恐ろしく強かったです。五十回に一度しか勝てたことがありませんでした」

 

「一旦、城に帰還して国王様にこの件をご報告してから、手配書をアラヴァニア全土に拡散する」

 

アラヴェスタ城に帰還した騎士団長は国王に報告しました。

 

「おのれ、ゲイザーめ!小賢しい奴だ…」

 

「いかがいたしましょう?国王陛下」

 

「余も一度は奴の頭脳を見込んで、騎士団長の地位を与えてしまったが、余に逆らった時点で首をはねておくべきであった…」

 

「しかし逆に仲間ならば心強い…。安易に解雇にせず懐柔しておけば、優秀な手駒として使えました」

 

「あのように頭の回転が速い男は信頼するのは危険だ。いつ謀反を起こされるかわからんからな」

 

その頃、マルヴェールの執務室では、フラウとゲイザーとアークの三人が、国の今後の方針について、相談していました。

 

「ゲイザー様が国王に即位される事を望む者もいます。これは覆面調査で国民から意見を集めた結果です。ご覧になってください」

 

「私では国王は勤まりませんよ?フラウの方が国民から慕われています。前国王の娘ですからね」

 

「ゲイザー様は軍師タイプですからね。トップに立つより、君主に仕えて智謀を巡らす策士の方が性に合うのでしょう?」

 

「確かに私にはナンバーツーの方が動きやすいです。国王になってしまうと、夜の街の酒場へ遊びに行く事も出来ませんし…」

 

「優れた軍師がいる国は強いです。国王など飾りに過ぎません」

 

「ゲイザー様がそう望まれるのなら、私はこの国のお飾りになります。実質上、今この国を動かしているのはゲイザー様ですから」

 

「フォン様が築いた基盤が出来上がっていたので、それをそのまま活かすだけですから、簡単な仕事ですよ?」

 

「フォン様のやり方は私はあまり好きではありません」

 

「気に入らなかった部分は改正したでしょう?まだ気に入らない事がありますか?」

 

「いいえ、私には政はわかりませんので」

 

…つづく


 
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