No.948357

ヘキサギアSS 蹂躙

NDさん

一つ前のやつの続きです

2018-04-10 19:19:50 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1000   閲覧ユーザー数:1000

突然降下してきたバルクアームに、野盗集団ーー"南イタリア諸州自警軍"を名乗る彼らは狼狽と混乱を避け得ずにいた。

『あのバルクアームはなんだ!降下しながら狙撃してやがる!なんなんだ!?ッ!うあぁっ!!』

『装甲車隊残存3!撤退させてもらう!』

『三番機のマシンランチャーで対空掃射しろ!何、やられた?クソがッ!!』

『ダメだっ、ヘキサギアは陣形を組み直せ!降りてくるぞ!』

空挺降下しながら、しかも自分が狙われにくいように小刻みにスラスタを使って機動しつつのライフル狙撃。そのある種曲芸じみた技術と続々とあがる撃破、損害報告に彼らは精神戦で既に先手を打たれ、負けの気を発しはじめていた。

『うろたえるな、所詮一機だ!EMPスモーク炊け!狙撃させるな!』

それを差し止めた彼らの指揮官は大したものだろう。自身もヘキサギア スケアクロウに乗る彼の指揮で自警団は徐々に統率と戦闘力を取り戻す。

『グリンウッド隊、殴り倒してやれ!』

号令一下、装甲を簡略化して兵装マウントを増やしたボルトレックスたちが集結し、隊形を組み直してその二脚で倒れ伏したヘキサギアの後ろへ降下したバルクアーム目指して疾走を始める。ダチョウ、あるいは太古のラプトル類恐竜よろしく、力強く跳躍と高速装甲を繰り返して大地を蹴りつける。

そうして三機一組となってバルクアームに殺到した彼らは、しかし逆に青白い背面スラスタの噴射炎を煌めかせたバルクアームに殴り倒された。まず先発の一機が、滑るように機動するバルクアームの質量ブレードに片脚を溶断される。それに激昂した二機目が大口径マシンガンの斉射とともに肉薄する、が倒れ込んだボルトレックスを盾にしたアサルトの連射を叩き込まれて力なく地面に崩れ落ちる。背後より接近していた最後の一機も腰部に質量ブレードをえぐり込まれて生き絶える。最後の機のパイロットの今際の際にヘルメットモニタに映し出されたのは燃えるようなメインカメラの赤色と胸部に貼られた毒蛇のエンブレム。

「ひっ……!」

ボルトレックスを駆る兵士が小さく漏らした悲鳴はかき消され、赤黒い爆発がおこる。

「化け物か……なんなんだ……あのバルクアーム……!」

指揮をしつつ一部始終を観測していた指揮官の顔から血の気が引く。

グリンウッド隊の三機は彼らの中でも古参に類されるベテランであり、その練度は折り紙つきだった。その彼らが、赤子の手を捻るように潰された。その意味を理解しない彼ではなかった。

「射撃を止めるな!あの場にバルクアームを釘付けにしろ!」

三対一で、まして相手は速力と攻撃力に長ずるボルトレックス。まともな兵士なら防戦に徹するし、そうせずに生き残ることはできまい。

そうしない。そうせずに生き残りうる敵。指揮官の脳裏を様々な情報が駆け巡る。戦場データ。収奪できたヘキサグラム量。バルクアーム以外の敵の状態。

しばし逡巡して指揮官は答えを決めた。

「クソッ、だめだ……撤退するぞ!EMPスモークと擲弾砲撃で奴の足を潰して、全速後退!」

苦虫を噛み潰したような気持ちを抑えつつ撤退命令を伝達し、味方撤退を確認しつつ自身もスケアクロウを走らせ撤退する。

「覚えてろ……! 毒蛇マークのバルクアーム……!」

折れんばかりの歯ぎしりをすると彼らは深い森もあたりにおちはじめた夕闇に消えた。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択