No.946715

とある傭兵と戦闘機  第19話  火種と

それはあまりにも突然で
それでも主人公はーーー背負う事を決める
彼女はーーー運命を惹き寄せて行く

彼女が定めたモノを守る為の力を

2018-03-27 22:26:29 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2204   閲覧ユーザー数:2163

 

カロウトの基地から飛び立つ一機の輸送機

 

輸送機は後部ハッチを開けた状態で、そのまま離陸して基地の滑走路から空に上がっていた

 

ハッチ入り口に立つ三人のエースは、各々に必要な装備を選択して待機している

 

全員、長距離戦闘対応装備なのだが・・・・

 

 「アオハガネにはブレードとショートライフルしかないですよ・・・・」

 

そう、唯一近接特化仕様のアオハガネだけ、長距離攻撃を行える装備が無いのだ

 

 「う~ん・・・・あ、なら輸送機の操縦やれる?」

 

 「一応可能ですが・・・」

 

 「大丈夫大丈夫。全部叩き落とす予定だから」

 

 「(叩き落す予定ってこの人が言うと本当にできるんだろうと思えるのが凄い所)」

 

そうしてヘイトが機内に入り

 

私とリフィがハッチから外を警戒する

 

 「護衛機なしで撤退戦とか洒落にならないです」

 

 「確かに・・・でもまぁあの時のヴァレーよりはマシかなぁ・・・」

 

 「比べるるまでもないでしょうに・・・」

 

そうしていると、ストラティアのレーダーが目標を捕捉する

 

最大望遠で視認すると、空対空ミサイルを満載した新型機の編隊が

 

この輸送機に機首を向けて来ているのが判った

 

 「敵影多数確認

 

  目標総数14機、識別信号・・・イギリス国防空軍所属隊」

 

 「”こちら空軍所属航空機隊 ラヴェリア隊 ヴァルクト所属機に告ぐ

 

   直ちにこちらの指示に従い、速やかに最短基地まで追従されたし

 

   尚、指示に従わない場合、貴機を撃墜する”」

 

無線で指示が飛んでくる

 

さて・・・この兵士達はどういう指示で私達を追っているのか

 

疑問に残る所がある・・・その匂いもまた、あの時代の物に嫌になる程似ている

 

特に、この世界での一般兵士の扱いは私の居た頃の傭兵並の扱いだ

 

 「ラヴェリア隊か・・・サイファー、あいつらの所属基地もまたあの戦争で

 

  生き残ったエストバキア軍兵士の為の基地だ」

 

 「ラヴェリア隊・・・確かーーー」

 

 

 

 

    警告!!

 

 

  索敵範囲外から高速で空域に侵入する物体を捕捉

 

  保有熱量から推測される物体名称はーーー

 

  XAADMー02NCーーー

 

  対小規模空域制圧用特殊気化弾頭ーーー”レイダル・ニンバス”

 

  

 

  着弾まで180sec 

 

  直ちに高度を上げてください!!

 

  

 

ストラティアから表示される警告

 

物々しいアラートと共に機内に響くーーー

 

 「ヘイト!!緊急上昇!!

 

  高速巡航ミサイル接近!!着弾まで3分!!」

 

 「了解!!機首上げます!!」

 

機首があがり、急速に高度を確保していく輸送機

 

 「サイファー!!」

 

 ”ラヴェリア隊航空機のコントロールジャックを開始します”

 

同時にFACS経由で無線周波数を解析

 

追手の航空機のFACSにストラティアのシステムで介入をかける

 

 ”目標機 F/A-43R 14機のFACSシステム掌握を完了

 

  アイハブ コントロール”

 

 「ドロップタンク以外の装備を投棄!!同時に上昇開始!!」

   

全ての機体が同時に頭を上に向ける

 

スロットルを制御し、最大出力で高度を稼ぐ

 

早くーーー急いで効果範囲の上側へ!!

 

 

 

 

 

 

 「なっ!?FACSの機隊制御が切り替わっている!?」

 

 「各機!!コントロール確認!!」

 

 「駄目だ!!操作権限がロックされていて制御できない!!」

 

 「武装の投棄を確認!!ドロップタンクは未投棄!!」

 

 「目標機体が上昇を開始!!視認する全機がそれに追従します!!」

 

 「何だ!?制御が奪われている!!」 

 

口々に慌てるパイロット達に、リフィが間髪入れずに叱咤する

 

 「うるさい!!黙ってさっさと昇りなさい!!」

 

 

     ”空が落ちてくる”わよ!!

 

 

 

 着弾まで10----

 

 

 

 

 ”No5 ライトエンジンストール”

 

一機が若干遅れる

 

 「ドライノフ!!トラブルか!?」

 

 「エンジンが火を噴いた!!どうーーー」

 

パイロットの対処が遅い!!アクティブコントロール!!

 

 「ライトエンジンカット!!

 

  ヒューエルバイパス、レフトシフト

 

  スロットルフルオープン!!」

 

FACS側からアクセスし、強制的に右エンジンを停止

 

延燃を防ぐ為右側燃料系を切り離し、左の燃料系バイパスに接続

 

スロットルを最大開放し、上昇出力を稼ぐ!!

 

 「も・・・持ち直した・・・!!」

 

  3---- 

 

 ”全機体の弾頭効果範囲からの離脱を確認”

 

  2----

 

 「この機も離脱します!!」

 

  1----

 

 「全機!!衝撃に備えて!!」

 

 

 ”インパクト・ナウ”

 

 

瞬間、

 

下の空が一瞬眩く輝き

 

衝撃波が、機体を押し上げる

 

軽い戦闘機がフラフラと木の葉の様に舞い

 

轟音が空に轟き響く

 

 

 

 

衝撃から回復した私は、我に戻って全員の無事を確かめる

 

 「いたた・・・損害報告!!」

 

 「操縦、装備及び計器に異常なし!!」

 

機体は大丈夫

 

攻撃の回避に成功したようだ

 

そしてレーダーを確認し、コントロールを奪った敵機が全機反応がある事を確認し

 

 「ラヴェリア隊。被害のある機は報告を」

 

構わずに安否確認を取る

 

 「・・・・・・何故助けた」

 

まぁ、そりゃそう思うよね

 

状況的に私達だけ逃げていても、ラヴェリア隊はあの攻撃で勝手に全滅していただろう

 

それは私達にとってはメリットでしかない。

 

でも、私は・・・助けた

 

ただ反射的に、助けたいと願って行動した

 

何故助けたのか・・・それは物凄く簡単なこと

 

 「命を使い捨てさせるような戦いを、私は否定する

 

  それが私が戦争を見て、そして決めた私の”戦争”だから」

 

そう、これが私の意志

 

そして、これからも私の中に在り続ける信念

 

 「だから助けた。甘いと思うなら思えばいい

 

  私は、もう目の前でそんな死に方を見たくないから」

 

同じように堕ちる相手を、嫌と言うほど見てきた

 

そして、自分自身が使い捨てにされる事も山のようにあった

 

その度に生き残った

 

その度強く願うようになった

 

 「だから助けた。そして、貴方達に問います

 

  あそこで死んだほうが良かったと、心の底から思えますか?」

 

無線から返ってくる反応は、ただの沈黙

 

皆、思い残すものがあるようだった

 

 「帰るべき場所があるのなら帰ってください

 

  行く場所が無いのなら、私達の所に来ればいい」

 

そう、私にも帰る場所が無かった

 

でも、そんな場所を作ってくれた人達が居た

 

だから、私もそんな場所を

 

これからも、作っていきたい

 

 

 

ラヴェリア隊全機が輸送機の周囲を囲む

 

同時に、IFFの信号が全てブルーに変わる

 

先程銃口を向けていた敵機はーーー私達を護る為の翼へと変わっていた

 

 「ラヴェリア1より各機へ これよりメビウス1の護衛位置に付く」

 

 「ラヴェリア2から9 スタンバイ」

 

 「・・・・・・・」

 

沈黙が無線を支配する

 

やがて、ラヴェリア1が口を開いた

 

 「俺達に帰る場所は無くなっちまった。敗戦し祖国を失い、今また帰るべき場所を

 

  失った・・・だが、俺達は生きなきゃならないんだ

 

  俺達は・・・託されたんだ」

 

 「隊長・・・」

 

 「だから俺は信じる

 

  あんた達の行いは、確かに矛盾するがーーー何だろうな

 

  あんた達なら、さっき言った事を貫き通せる気がするよ」

 

 

 

 

 

 

   一方、IS学園ではーーー

 

 

 

医務室に居る千冬はカルテに目を通し、そして溜息一つ

 

 「・・・・・・」

 

目の前の意識が回復しない二人のパイロット

 

その正体は・・・信じられない事に

 

25年前の戦争で消滅した、亡国の戦闘機のパイロットだった

 

更に信じられない事に

 

この二人は・・・公式記録としてKIA・・・戦死の記録があるのだ

 

 「・・・・・・やはり、”彼女”を起点としているのか?」

 

彼女・・・フィリアが来てから、不可解な事象が多発しているのだ

 

到底説明が付かないような・・・それこそ神の所業としか考えられないような

 

確かにこちら側としては好都合だ

 

好都合だからこそ、この行く末が不安で仕方が無い

 

まるで何かの前触れのような

 

そう、まるで備えろと云わんばかりだ

 

 「変化の前触れ」

 

横で壁にもたれかかって思案していたフォルクが言葉をつむぐ

 

 「千冬、どのみちの話だ

 

  あいつ達を差し引いても、IS学園はありとあらゆる爆弾を抱えている」

 

 「・・・生徒を、戦わせなければならなくなるのか?」

 

 「現状、そうせざるを得ない

 

  俺一機が出たとしても、継続戦闘能力なんてたかが知れてる

 

  その上数で押されたら負けるかもな」

 

そんな若干の弱音を口にする

 

が、現実はそんなものだ

 

ISの軍用使用を禁止されている以上、通常戦力を使用するしかないのだが

 

ここはあくまで”学校”であり”国家”という扱いを受ける灰色の施設

 

条約に縛られる上、過度の戦力の保有は各国からの負い目を作る事となる

 

必然、ここにある戦力は”最低限度の絶対数”でなくてはならない

 

故に、理想的な戦力は”少数精鋭”・・・フィリアのような

 

桁違いの戦闘力を保有する人物が対応せざるを得ないのだ

 

 「物理戦力として、あいつやメビウスの嬢ちゃんが頼りになり過ぎるからな

 

  だが、それは瞬間戦力であって継続戦力では無い」

 

 「・・・今回のように、二人が不在の状態になってしまうと

 

  極端に戦力が低下するという事だな・・・」

 

そう、この状況で物量攻撃を仕掛けられたとき

 

対応する為の通常防衛戦力が不足する

 

 「アクィラ隊の4番と13番・・・お前達は”どれだ?”」

 

そう、眠る二人に問いかける

 

これはフォルクが考える”エース”の種類だ

 

一つは”金の為に敵を食らう奴”

 

   ”状況をに的確に判断できる奴”

 

   ”プライドに生きる奴”

 

そしてーーー”世界に戦う事を定められてしまった者”

 

 「学び舎に戦力を置くのは妥当じゃない

 

  だが、それなりに戦力を投入するだけの戦略的価値をこの学園は持っている

 

  国連の野郎共はアラスカ条約を使って建前は保っているが

 

  これはISという共通する未来の可能性を保護する為の条約であり

 

  この条文には学園の安全保障に関する表記は無いからな

 

  防衛手段としてのISの使用すらグレーゾーンの域を出ない

 

  下手に学園独自の判断で使用すれば、所在する日本という国も

 

  国際的に負い目を作る事態になりかねないだろう」

 

 「かといって、通常戦力を持つ方法も限られる

 

  学園運営費はある程度各国から支援を受けているが、

 

  用途を明確に決められており、それらを割り振れない

 

  だからこそ、運営費の設備投資費を使い

 

  旧世代の供与装備を維持し続けるしかない」

 

そう、この学園は特殊の中の特殊な状況で運営されている

 

下手に手を打つ事ができないのだ

 

だからこそ、帳簿に載せなくてもよい”自由で潤沢な資金力”が必要だが

 

それも叶わない・・・

 

 「唯一の救いは、俺が所属するオーシア・・・現アメリカの空軍装備の

 

  量産試験機を割り当てられる事だ。量産評価用の機体だが、

 

  高性能故に、FACSのアシストに頼りきった操縦が主体の現在のパイロット達が

 

  全性能を生かせるだけの経験と腕を積んでいなくてな・・・

 

  当然、この計画・・・エクスカリバー計画は途中で中断され、

 

  この先行量産された20機もの機体は倉庫で誇りを被る事となる

 

  本来、この計画はISに対抗できるだけの性能を持つ戦闘機の開発という

 

  表沙汰にはできない名だったが、開発された機体・・・F-45

 

  プラヴィティ・イーグルは、現状最強の戦闘機と謳えるだけの

 

  性能を有する高性能機に仕上がった」

 

これらは除籍済みで、今は解体ラインに入っている名目だが

 

既にナターシャの部隊を使って、極秘にIS学園に船舶輸送している

 

 「戦場で躊躇う奴は死ぬ

 

  躊躇わない奴だけが生き残れる

 

  それを知るのは俺達だけでいい

 

  そんなどうでもいい事を、小娘達が知る必要なんてのは

 

  本来、あっていい事じゃ無い」

 

 「・・・・・・」

 

 「知らなくていい。知れば必ず戻れなくなる

 

  そうして戻れなくなった存在を、俺達は良く知っている

 

  これ以上、あの世界に引きずり込まれていく子供達を増やしてたまるか

 

  俺達が託そうとした未来は、間違ってもそんな未来じゃない」

 

俺が願った未来と

 

相棒が護った未来は確かに違う道だった

 

だが、お互いの未来を望んだ最終的な到達点は同じだった

 

この各国の思惑と利害の一致という危ういバランスで

 

成り立っている”平和”という二文字の世界

 

 

 

  ”降ってきたな・・・”

 

 

あの時ーーー俺はその二文字の為と

 

多くの犠牲を強いようとした

 

 

  ”全てをゼロに戻し、次の世代に託そう”

 

 

そしてその先をーーーその先の面倒事を

 

今、この時代を生きている子供達に背負わせようとしていた

 

この汚れきり、腐りきった

 

汚い真っ黒な血が何万ガロンという途方もなく流れた

 

国境という区切りでできた向こう側ーーー他国という籠から何かを手に入れるため

 

あるいは、その何かを守る為に

 

その戦いは多くの犠牲を生み出した

 

国境なんて無くせばいい

 

全てが統一されればーーーそれは平和になるはずだと

 

国境沿い・・・内戦により治安が悪かった俺の故郷

 

国境が無ければ・・・俺の故郷はーーー

 

安易にも、俺はそう考えてしまっていた

 

 

  

 

   ”違うッ!!”

 

 

 

 

   ”それは違う!!”

 

 

 

無線から響く高い声は、俺の考えを否定した

 

 

   ”確かに国境を無くせば、戦争は無くなるかもしれない!!”

 

 

 

   ”それでも、国境がなくなればーーー

 

  

    それは今よりも悲惨な地獄が

 

  

    絶望に染まった世界が、暗闇の未来が

 

   

    永遠に続く事になるかもしれないッ!!”

 

 

 

ーーー身近だった、その軌跡に魅せられた

 

 

俺の元寮機はーーー立ち向かってきた

 

 

 

   ”それが判っていながら未来まで否定する気かッ!!”

 

 

  

   ”未来を作るのは未来の世代だ、邪魔をするな!!”

 

 

 

   ”その未来にまで絶望を引き継がせる気か!!”

 

 

 

   ”なら阻止してみせろ!!サイファー!!

 

 

    

    お前の望む未来を賭けてーーー来い!!(円卓の鬼神)!!”

 

 

 

   ”お前だけに背負わせる物じゃないッ!!行くぞ(片羽の妖精)!!”

 

 

 

 

 

この世界には、国境がある

 

この学園には、国を超えて同じ学び舎で

 

ISという機械を扱う為に、共に手を取り合い

 

切磋琢磨しあい、笑い合う若い雛達が居る

 

 

 

 

国境を無くした世界で、同じ物が見られるのか?

 

 

 

そんな事、判りきっている

 

 

 

俺が望んだ世界には

 

 

 

この日常は、存在しないのだ

 

 

 

だから言える事は唯ひとつ

 

 

 

  相棒はーーー本当に世界を救っちまいやがったんだ

 

 

 

  その相棒が願ったものが”平和”なんだ

 

 

 

  そしてこの二文字の、ままならないながら保たれた二文字は

 

 

 

  俺の歪んだ心を、ずっと癒し続けてくれていたのだ

 

 

 

  だから、その二文字を・・・俺は護っていく

 

 

   

  そう、心に決めたんだーーーーーーー

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「こちらガルム1!!IS学園管制塔に緊急連絡

 

  帰還中にIS学園に向かう所属不明の編隊を捕捉!!

 

  爆装機と護衛制空機を多数確認!!迎撃体制をとってください!!

 

  こちらは輸送機編隊と装備及び燃料不十分の機を引き連れており

 

  護衛を離れる事ができない!!」

 

 

 

 

 

 

  ソラがーーーーー濁り始める

 

 

 

 

 

 どうも作者です

 

 

 スランプ突入して、いつの間にか一年経過してしまいました

 

 

 安定した執筆ができるようになるのはもう少し先になりそうです

 

 

 以前に増して駄文ですが

 

 

 どうぞよろしくお願いします

 

 

 

 

 

 

 
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