No.940884

真・恋姫†無双 異伝「絡繰外史の騒動記」第二十七話


 お待たせしました!

 月からの問いに一刀が取る選択は

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2018-02-10 17:42:18 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:3214   閲覧ユーザー数:2807

 

「一刀さん、昨日劉協殿下から何を頼まれたのですか?」

 

 朝議の後、月様にそう問われる…あっさりばれてるし。しかし、劉協様達から聞いた話を

 

 そのままするのは危険過ぎる気もする…俺がというより劉協様達がだが。ならば…。

 

「いえ、劉協様が畑を造られている事は月様もご存知の事かと思いますが、劉協様はそこで

 

 採れた大根を持ってこられまして、もっと大きな大根を作って陛下を驚かせたいが、それ

 

 に適した絡繰は何か無いかとの仰せでして。さすがに、そのような絡繰は無いので、新し

 

 く造った農機具をいくつかお渡しした次第なのですが…何か具合が悪い話でしたでしょう

 

 か?」

 

 俺は太平要術の版木の件や劉協様が月様に疑念を抱いている事を伏せて、農機具の話をす

 

 る。実際、アリバイ工作代わりにその話をしたのも事実なので、嘘は言っていないのだが

 

 …大丈夫かな?あまり演技には自信は無いから細かい指摘を受けたら躱しきれない可能性

 

 も出て来るのだが。

 

「なるほど…本来、畑仕事などお世継ぎである殿下のやるべき事ではないとは思わないでも

 

 ないのですが、今はまだ何かをやってもらう段階でもないですし、そこまで一生懸命やら

 

 れているのでしたらもうしばらく畑仕事をやってもらっておきましょう。一刀さんも良い

 

 農機具とかが造れたら殿下にも献上なさってください」

 

「…ええっと、俺の立場じゃ殿下に会いに行くわけにもいかないので、盧植様か王允殿にお

 

 渡しするという形にすれば良いでしょうか?」

 

 俺のその問いに月様は少し考えた顔をする。そして…。

 

「いえ、私の方から話は通しておきますので、短時間…そうですね、一刻程度でしたら殿下

 

 に直接会われても構いません。各所への通達がありますので、とりあえずは明日以降とい

 

 う事にはなりますが」

 

 何と俺に劉協殿下に直接会える権限を与えるという話になってしまったのであった。

 

 

 

 ~次の日~

 

「北郷、早速に会いに来てくれた事、感謝します。昨日、月から話を聞いた時にはすごく驚

 

 きましたけど、これで誰に憚る事無くあなたとお話出来るので嬉しいです」

 

 一応試しにと思い、劉協殿下への面会の許可を取ってみたら本当にあっさりと通ったので

 

 劉協殿下以上に俺自身が驚いている状況であったりする。

 

「憚る事無くといっても、月様からは此処にいて良いのは一刻程度と言われておりますので

 

 すが…」

 

「無論、それは分かっています。でも、これで一歩目は踏みだせたのです。この小さな一歩

 

 が後の世において大きな一歩だったと思わせられるようにする事が重要なのです」

 

 なるほど、今回の事は月面着陸に匹敵する出来事だったという事か…などとドヤ顔で語る

 

 劉協殿下を見ながらつまらない事を考えてみたりして。

 

「とはいえ、時間が無いのも事実です。前に私が言った事は覚えていますか?」

 

「もちろんです。ですが、私の懸念については如何でしょう?あれがどうにもならなければ

 

 殿下の計画は十年は先延ばしにしなくてはならないかと」

 

「それについては考えている事があります。ただ、今はまだそちらの準備が出来ていません

 

 ので…おそらく五日後位までには何かしらの答えを出せると思っておりますので」

 

 数日後…一体、何を準備するというのだろう?物なのか人なのか…殿下が準備したものに

 

 よってはこちらも色々と考えておかなければならないしな。今の所は様子見という所だな。

 

「分かりました、それについてはその時に…それじゃ、一応こちらの話もしておきませんと

 

 いけないので…」

 

 俺は一旦話を打ち切り、持ってきた農機具を見せて残りの時間一杯まで劉協殿下と畑仕事

 

 の話をしていたのであった。どうやら殿下は本当に畑仕事が好きになったようで、農業の

 

 話をしている時の眼は純粋に輝いていたのであった。

 

 

 

 そして五日後、俺は再び劉協殿下の所へ向かったのであった。そこにいたのは殿下だけで

 

 なく…。

 

「師匠~~~!ご無沙汰してます!!ウチ、師匠に会いとうてたまりませんでしたわ~!」

 

「えっ…真桜!?何で此処に!?」

 

「ふっふっふ…それは私が華琳に頼んで彼女を私の家臣として貰い受けたからです」

 

 俺の疑問に劉協殿下がドヤ顔で答える…まさか、準備ってこの事か?でも、普通に考えて

 

 月様がこんな事を許可するはずが…。

 

「大丈夫です、北郷殿。李典殿を此処に招き入れる事は既に董卓様より許可は得ております

 

 れば」

 

 王允さんがそう答えてはくれるものの…月様の考えに何か裏があるような気がしてならな

 

 いのは俺の気のせいだったら良いのだが。というか、華琳が此処で介入してくるとか正直

 

 とんでもない事になりそうだ…少なくとも平穏では済まないというより済ませないだろう

 

 な、華琳は。

 

 ・・・・・・・

 

 ~その頃、月の執務室にて~

 

「月、今回は真桜の事ですまなかったわね」

 

「いえ、殿下の意に沿うように努力するのも相国たる私の務めですから。華琳さんこそ、大

 

 事な家臣を引き抜くような形になってしまって大丈夫なのですか?」

 

「ええ、彼女は元々こちらに来たがっていたから、大分前から抜けても大丈夫なようには考

 

 えていたのよ。でも、真桜が抜けてまったく問題が無いというわけでもないし…彼女が一

 

 刀の技術を会得したら、少し位はこっちにもまわしてくれるのよね?」

 

「はい、華琳さんの領地の発展もまた漢の発展につながるわけですから、その程度は」

 

 その華琳は何食わぬ顔で月と談笑していたのであった。

 

 

 

「でも、何でまた劉協殿下は真桜を?」

 

「殿下は今、後宮の一角で畑仕事をされてます」

 

「…えっ!?殿下が…冗談じゃなさそうね」

 

「はい、かなり本格的に。それで一刀さんにも色々と農機具の事をお聞きになられたりして

 

 いるようですが、一刀さんも忙しい身ですのでそんなに長い時間あちらに拘束させるわけ

 

 にもいきません。そこで、殿下は身近にそういう物を造れる技術を持つ者を欲しがったと

 

 いうわけで…どうやら、李典さんが一刀さんに弟子入りしていたというのを王允さん辺り

 

 から聞いていたらしく、今回このような話に」

 

 華琳は月からそれを聞いて、若干顔を引きつらせていた。

 

「…月はそれで良いの?」

 

「えっ?別に何も問題は無いですけど?むしろ畑仕事に精を出してもらっていた方が余計な

 

 事を考えなくて良いのではないかと思って許可したのですけど?」

 

 しれっとそう答える月に一瞬華琳は眉をひそめる。それは今の月の言葉が聞きようによっ

 

 ては『殿下は政なんかに首を突っ込まずに畑でも耕していれば良いんだ』という風に取れ

 

 なくもなかったからだ。

 

「…ああ、そう。月がそれで良いなら私は別に良いんだけど…とりあえず、帰る前に真桜に

 

 もう一度会っていっても良いかしら?」

 

「ええ、どうぞ。日が暮れる前までならご自由に」

 

 華琳は月の言動に一抹の不安を感じながらもそれを顔に出す事もなくその場を離れる。

 

 華琳が部屋を出た後、月が合図をすると物陰から人の影のようなものが現れる。

 

「曹操はこのまま元の家臣に会いに後宮へ向かいます。どういう話をしたのか全て聞いてく

 

 るように」

 

 月の言葉が終わるか終わらないかの内に、その影は姿を消したのであった。そして、一人

 

 残った月の顔は薄暗くなったその部屋の中よりさらに暗さを増したような影を帯びていた

 

 のであった。

 

 

 

 そして四半刻後、その後宮の中の一室…普段は人の出入りのない部屋にて。

 

「やはり月は私の事なんか信用していないようね…分かりました。この曹孟徳、劉協殿下の

 

 為の一臂の力となる事を約束しましょう」

 

 その部屋で華琳と話していたのは…。

 

「ありがとう、これで我らの方も動きやすくなります。この盧子幹、感謝の念にたえません。

 

 とりあえずこの間諜の死体はこちらで始末しておきますので安心して帰ってください」

 

 何と盧植であった。しかもその横には一つの死体が…どうやら月が華琳を尾行する為に放

 

 った間諜のようだ。

 

「しかし、こんなのが易々と入ってくるなんて…洛陽の大半は月の手に落ちているといって

 

 も過言ではなさそうね」

 

「ええ、我々も出来る限りの手は尽くしているのですが…このままでは時間の問題と言わざ

 

 るを得ない状況なのです」

 

「でも、一体どうやったらそんなに…」

 

「これは此処だけの話でお願いしたのですが…どうやら月の手には大量の太平要術の写本が

 

 あるようなのです。おそらくはそれを用いていると…」

 

 盧植の話を聞いた華琳の眼が驚きで見開かれる。

 

「…太平要術!?やっぱり、あの本は月の下に…しかも写本までって一体何をしようという

 

 のよ?」

 

「まだ何を計画しているのか、私も全てを掴んでいるわけではないですが…太平要術の原本

 

 を抑えるか焼却してしまえれば写本には意味は無くなるはずです」

 

「…なるほど、真桜を劉協殿下付きにしたのはあの本を探させる為でもあるってわけね」

 

「それともう一つ…北郷殿の技術を月に独占させない為です。李典殿が北郷殿より技術が少

 

 しでも継承されれば、それだけ技術をこちら側に取り込む事が出来ますから」

 

 

 

「…一応、聞いておくけど、一刀はこちら側なのよね?」

 

「…とりあえずは。しかし、北郷殿の技術の流出を恐れている月は北郷殿が殿下の下に行く

 

 時間に制限を設けています。かの御仁の持つ技術は一刻や二刻程度教わった位で会得する

 

 事など仮に李典殿でも到底不可能と月は考えているのでしょう。それに時をかければかけ

 

 るだけ月の方が有利となっていきます。こちらは遅くとも後一年以内には月と対等に戦え

 

 るだけの戦力が必要なのです。その為にも曹操殿に御助力をお願いした次第なのです」

 

 盧植の言葉を聞き、華琳は少し考え込むような仕草を見せる。

 

「でも、今は私に出来る事は少ないわよ?」

 

「ええ、あくまでも宮中の中の事は私と王允殿が主導します。曹操殿には成功した際の軍事

 

 的の助力、もしくは…」

 

「失敗した際の劉協殿下と北郷の身柄の確保という事ね」

 

「はい、どちらにしても難しい事をお願いする事になりますが…」

 

「構わないわ。その位難易度が高い方がやりがいが出るというものよ」

 

 曹操はそう笑顔で快諾する。しかし、その心の内は…。

 

(ふふ、連合との戦が終わった時はこれ以上は無理かと思ったけど、また良い具合に世が乱

 

 れてきたわね…これこそ待ち望んでいたもの。盧植殿には悪いけど、私は私の利にかなう

 

 ように動かさせてもらうわよ)

 

 そうほくそ笑んでいたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

 ~月の執務室~

 

「董卓様、曹操様は陳留へお帰りになられました」

 

「そう、あの者は?」

 

「分かりません。後宮に入った所までは把握しているのですが…」

 

「消されたか…華琳さんは丸腰だったから、他の誰かが…おそらく盧植様ですね。まったく

 

 …大人しく殿下に畑仕事だけをやらせておけば良いものを」

 

 そう呟く月の眼は昏い光をたたえていたのであった。

 

 

                                       続く。

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 投稿が凄まじく遅れて申し訳ございませんでした!

 

 此処まで考えるのに一月以上、実際に文章を書くのに

 

 さらに数週間…我ながらひどい有様です。

 

 さて、ご覧になられた通り、一刀はとりあえず1の劉協

 

 ルートを選びました…まだまだ予断は許しませんが。

 

 今後は月に仕えつつ劉協様の為に…というのが基本です

 

 が、このルートでも月は魔王っぽくなっていく上に華琳

 

 が色々策動し始めるので、もはやカオスです。一刀の運

 

 命や如何に!?

 

 

 それでは次回、第二十八話でお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 追伸 現在行方不明のあの人達もまた出てきますので。

 

 

 

 

 


 
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