No.93618

お嬢さま観察日記

もぺさん

袁術と張勲は切り離せない関係だと思うのですよ。

2009-09-05 16:27:04 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2905   閲覧ユーザー数:2521

 

           ──お嬢さまの可愛さを以て、この書に記す。

 

 

                                                                   張勲

 ──月──日

 本日は青天なり

 

 今日はお嬢さまとお風呂に入りました。

 お嬢さまのお肌は滑々で、とても羨ましいのですよ。

 背中を流してあげたときの、擽ったそうな表情は、犯罪的な可愛さでしたね。

 上機嫌に鼻歌まで歌って、思わず聞き惚れてしまいました。

 お風呂から上がり、お嬢さまの体を拭いてあげると、お嬢さまは着衣もそこそこに一目散にハチミツの保管場所まで走って行きました。

 急いだところでハチミツは逃げませんのにね。

 その後、私が服を着終えた頃に、お嬢さまが慌てて私の元まで走ってきました。

 お嬢さまは馬鹿の一つ覚えのように、

「ハチミツがー、ハチミツがー」

 と、連呼しました。

 私がハチミツがどうかしたのか尋ねると、どうやらハチミツの底が尽きたようで。

 私の計算上では、後一月はもつ筈でしたが、どうやらお嬢さまは私に隠れて、ハチミツを摘み食いしていたようです。

 お嬢さまのハチミツ好きには困ったものですよ。

 ですが、明日は何とお嬢さまと2人で街へ出かけることになりました。

 勿論、ハチミツを仕入れに行くためです。

 お嬢さま自ら行く気になるとは、流石ハチミツ馬鹿なだけありますよ。

 明日はお嬢さまとお出掛けなので、今日は早めに床につくことにします。

 明日が楽しみです。

 ──月──日

 本日は曇りのち雨天なり

 

 今日はお嬢さまとハチミツを買いに街まで出歩きました。

 雲行きが怪しかったので、折角のお嬢さまとのお出掛けですが、早めに切り上げるつもりでした。

 しかしお嬢さまは、何が珍しいのか目にするものほぼ全てに、袖を引かれて気を惹かれて。

 やっとのこと目的の店に辿り着いた時には空一面の黒雲でした。

 果たして買い物を済ませ店から出た時には雨が降り注いでいました。

 濡れて帰らなくてはいけなくなったというのに、お嬢さまったら何が嬉しいのか、上機嫌で帰路に就きました。

 間違いなく、お嬢さまの脳内は天気なんでしょうね。

 私は、お嬢さまが少しでも雨を凌げるように上着を貸そうとしましたが、お嬢さまは、

「それでは七乃が風邪を引いてしまうのじゃ」

 と、私の心配をしてくださいました。

 お嬢さまの優しさに、私は感激し、

「それに七乃がこの前言っておったえ? 妾は風邪を引かぬ体質とな」

 お嬢さまが、自分が馬鹿だと自覚があったことに感心しました。

 ただお嬢さまの場合、理解してないだけでしょうけど。

 今日はとても楽しい一日でした。

 ──月──日

 先日は晴れ時々曇りなり 

 

 昨日はお嬢さまの部屋で寝たため、朝一からの執筆です。

 昨日のお嬢さまは一日中部屋に引き籠っていました。

 無理もありませんね。

 一昨日、あれだけ雨に濡れてはしゃいでいたのですから、風邪を引いて当然です。

 まあ御蔭で昨日一日お嬢さまの看病が出来たんですけどね。

 茹でダコの様に顔を真っ赤にして呻くお嬢さまの汗を拭いてあげたり、飲食の世話をしました。

 就寝時、お嬢さまの部屋から出ようとするとお嬢さまは私の袖を掴み、一緒に寝て欲しいと仰いました。

 勿論断る理由なんてありませんので、私はお嬢さまと同じ布団の中に入りました。

 病気で気が滅入っていたのか、私が布団の中に入るとお嬢さまは、私に体を寄せました。

 私がお嬢さまを抱き包んであげると、お嬢さまは安心した顔で直ぐに夢の中へ行ってしまわれました。

 私もお嬢さまの頭を優しく撫でた後、そのまま眠りにつきました。

 私は朝目が覚めて一番にお嬢さまの体温を確認しました。

 顔の赤みも消え、手に伝わる温もりは普段通りのもので、お嬢さまの熱も下がったようで、本当に喜ばしいことですね。

 それでは、まだ寝ているお嬢さまを起こしに行きますか。

 ──月──日

 本日は青天なり

 

 朝、日記を付けていたときに違和感を覚えていたのですが、どうやら昨日お嬢さまの風邪を貰ってしまったようです。

 お嬢さまの前でとんでもない醜態を見せてしまいました。

 恥ずかしいので、ここには記しませんけどね。

 代わりに、今日は絶対に書き記したいことがありました。

 何とお嬢さま自ら、私の世話をしてくださいました。

 正直失敗してばかりで見ていられない様な状況でしたが、一生懸命介抱してくれるお嬢さまを見ていると胸の奥が温かくなりました。

 お嬢さまは大切なハチミツを私に分けてくださり、結局私が食べている所を羨ましそうに見ているので、2人で仲良く半分こしました。

 何より嬉しかったことと言えば、お嬢さまが泣きながら、

「七乃は妾にとって、居なくてはならぬ存在なのじゃ。ずっとずっと一緒にいたいのじゃ。だからな、絶対に早く元気になってくれ、七乃ー」

 と仰ってくださったことですね。

 お嬢さまが風邪をうつしたことに罪悪感を持って言ったのか、それとも私の失態を見たからここまで心配かけてしまったのかわかりません。

 ですが、お嬢さまの気持ちはとても嬉しく思います。

 七乃もお嬢さまと同じ気持ちです。

 お嬢さまと一緒に居られることが何よりの幸せです。

 ですから、これからもずっと仕えさせて下さいね、美羽さま。

 私は日記帳を閉じます。

 遠くで私を呼ぶ声が聞こえました。

 私は席から立ち上がると、すぐに呼び声の元へと駆けつけます。

 大好きなお嬢さまの所へ。

 私の居場所へと──。

 

                                                                      ≪了≫

     あとがき

 前回、前々回とコメント、支援してくださった方ありがとうございます。

 もぺです。

 袁術で書くと宣言したのはいいものの、予想以上に何を書こうか悩みました。

 始めは一刀と袁術で書いていたんですが、張勲が絡まないのはあり得ないということでやめました。

 次に一刀と袁術と張勲にしてみましたが、正直一刀いらなくね? と思いこれもやめ。

 後2、3度書きなおして現在の形で落ち着きました。

 でもこれって、袁術というより張勲で1つ書き上げたような気がしなくもない。

 

 ではでは、ここまでお読みくださってありがとうございました。

 

 

 

 

 
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