No.932017

九番目の熾天使・外伝 ~短編30~

竜神丸さん

偽りの聖王 その1

2017-12-03 03:12:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1762   閲覧ユーザー数:1261

嫌だ。

 

 

 

 

 

もう痛いのは嫌だ。

 

 

 

 

 

 

あそこから逃げなきゃ。

 

 

 

 

 

 

誰か、誰か私を助けて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ…!!」

 

「「「グルルルルァッ!!」」」

 

某次元世界、ジャングルエリア。白色の病衣らしき服を着た金髪の少女が、自身を追いかけてくる存在から必死に走って逃げ続けているところだった。彼女の後方からは数体の猟犬型モンスター“ハウンド”が、鋭い牙の隙間から涎を垂らしつつ、必死に逃げる小さな獲物を喰い殺すべく疾走する。

 

「ッ……あぅ!?」

 

途中で木の根に足を引っかけたのか、走っていた少女は転んだ拍子に勢い良く地面を転がり、ある程度転がったところで地面に背中をつける。それをチャンスと見たか、ハウンド達は小さな獲物を睨む目がギラリと光り、一番先頭を走っていたハウンドが大口を開けながら少女に向かって飛びかかる。少女は恐怖に怯え、これから襲って来るであろう痛みを覚悟し必死に目を瞑り…

 

「ひっ…!?」

 

「グルァアッ!!!」

 

その時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪Full Charge≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ギャワンッ!?」」」

 

「……え?」

 

少女に噛みつこうとしたハウンドが、何処からか飛んできた刀身に胴体をスッパリ斬り裂かれた。一瞬で絶命したハウンドが地に伏し、それに続いて他のハウンド達も一斉に斬り裂かれていく中、少女は襲って来ると思っていた痛みがなかなか来ない事に気付き、恐る恐る両目を開く。

 

「キャンキャンキャンキャンうるせぇんだよ、犬ッコロ共」

 

少女の視界に映ったのは、銅色の装甲に身を包んだ長身の戦士だった。戦士が右手に持つ武器の先端に、ハウンド達を一匹残らず斬り裂いた刀身がガシャンと接続され、戦士は苛立った様子で首をゴキゴキ鳴らす。

 

「チッ腹が減り過ぎてイライラしてきやがった……コイツ等じゃ腹の足しにもなんねぇだろうが、喰わねぇよりはまだマシか……あん?」

 

「……」

 

「…何だ、ただの餓鬼か。何か用か」

 

「…あ、あの……ッ…」

 

自身を助けてくれた戦士に礼を言おうとした少女。しかしここまでハウンドに追われ続けてきた事で体力が限界に達していたのか、少女は何かを伝えようとする前に意識を失い、その場に倒れてしまった。

 

「あ? おい、お前……急に倒れやがった。何だってんだ一体…」

 

倒れた少女を見て困惑を関せない戦士―――仮面ライダーガオウは腰のベルトを外し、変身を解除してZEROの姿へと戻る。元々倒れている少女には微塵も興味が無かった彼は、少しでも空腹を満たしたいが為に、自身が斬り殺したハウンド達の死体へと目を向けるのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャングルエリアから離れた位置に存在する、岩場に囲まれたエリアのとある研究施設では…

 

 

 

 

 

「おい、まだ見つからんのか!!」

 

「も、申し訳ありません!! 部隊ごとに分かれて捜索しているのですが、既に遠くまで移動したのか、まだ目撃情報が無く…」

 

「言い訳なんぞ聞きたくもない!! 一刻も早く見つけ出すんだ!! もし良識派の連中に見つかれば、我々とてただでは済まないんだぞ!!」

 

「は、はい!!」

 

現在、施設内は慌ただしい状況だった。施設内で行われていたクローン開発実験により、複数のクローン人間がこの施設に収容されていたが、そのクローンの1体が施設から脱走したのだ。元々クローンの開発は表向きの法律では固く禁じられている研究である為、もし暗部を知らない良識派の魔導師にでも見つかってしまえば面倒な事になるのは目に見えている。

 

(くそ!! 成功作(・・・)は既に上層部に送りつけてやったから良いものの、あの研究は良識派の連中に知られる訳にはいかない…!! 何としても見つけ出さねば、我々の首が纏めて飛ばされる…!!)

 

この施設における主任らしき男は焦りに焦った様子で、逃げ出したクローンが一刻も早く施設に連れ戻されて来るのを待ち続ける。彼が右手を置いている机の研究資料には、こう書かれていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『聖王のゆりかご計画』……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(―――ん)

 

焼けた肉の香ばしい匂い。それに釣られた少女は少しずつ意識が戻り始め、閉じていた瞼をゆっくり開く。

 

「……あ…」

 

彼女の目に映ったのは、焚火でハウンドの肉を焼いているZEROの後ろ姿。パチパチ音を立てながら焼き上がるハウンドの肉を、ZEROは無言のまま自身の口へと運び、その鋭い歯で噛み千切った肉をじっくり味わう。その様子を眺めていた少女は、気付かぬ内に口元から涎が流れ始めていた。

 

「ムシャムシャ……チッ。これじゃ大して満たせねぇな」

 

(……美味しそう)

 

その時、少女の腹の虫がグゥ~と鳴り出す。少女は恥ずかしそうにお腹を両手で押さえるが、腹の虫が鳴り響く音を耳にしたZEROは、少女が目覚めている事に気付く。

 

「ん、何だ。起きてやがったのか」

 

「…あ……えっと…」

 

-ギュルルルルル…-

 

「……」

 

「……」

 

再び鳴り響く腹の虫。少女がお腹を押さえながら顔を赤くしているのを見て、ZEROは特に表情一つ変える事なく無言で少女を見る。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……チッ」

 

ZEROは小さく舌打ちした後、先程自身が焚火で焼いたハウンドの大きな肉を少女の前に差し出す。ハウンドの肉を豪快に貫いた串を地面にドスッと突き刺し、少女はそれを見て涎を垂らす。

 

「……ジュルリ」

 

「…喰いたきゃ喰え。俺はその味に飽きた、喰ったところで満たされねぇ」

 

「…!」

 

それを聞いた少女はすかざす串を手に取り、ハウンドの肉に思いきり噛みついた。食い千切った肉を口の内で何度も噛み、噛むたびに溢れ出す肉汁が少女の口の中を覆う中、少女は幸せそうに涙を流しながら必死にハウンドの肉を食べ続ける。

 

(…前にもあったな、こんな事が)

 

ZEROにとって、空腹の少女に食べ物を分け与えるのはこれが初めてではない。過去にも一度、不正転生者に奴隷として売られそうになった少女を助け、その時も同じように少女に食べ物を分け与えた。しかしZEROの場合これは善意でやっている訳ではなく、その一見優しそうな行為の裏には必ず何かしらの目論見が存在している。無償で人助けをするほど彼は優しくはない、むしろ彼は悪人と呼べる存在である……それ以前に人間ですらないのだが。

 

「やっと見つけましたよ、ZEROさん」

 

「…!」

 

そんな時、植物を掻き分けながら竜神丸が姿を現した。竜神丸の顔を見たZEROは「何だお前か」みたいな軽そうな態度の表情を見せるが、それに対する竜神丸の表情は明確な苛立ちを露わにしていた。

 

「テメェか」

 

「テメェか、じゃありませんよ。あれだけ一人で勝手な行動はするなと言ったのに、あなたの耳は飾りか何かですか」

 

「知らん。俺は空腹を満たせりゃそれで良いんだ、テメェ等の任務なんざ知った事か」

 

「任務前もあれだけ食料を食い尽くしておきながらまだ食べるつもりですか? あなたのせいでジュエルミートが底をついて、支配人さんが泣きを見てましたよ」

 

「アイツが食糧難で泣いてるのはいつもの事だろうが、何を今更」

 

「まぁそれは確かにそうなんですが……む?」

 

「ハフ、ハフ…!!」

 

呆れたように語る竜神丸は、ZEROの傍で必死にハウンドの肉を頬張っている少女の存在に気付いた。

 

「おや、珍しい。まさかZEROさんが食料を他人に分け与えるとは」

 

「ハウンドの肉はもう喰い飽きた。この肉じゃ俺の腹はもう満たされねぇ」

 

「食い物の選り好みまでするとはタチが悪いですね……それで? 何があって、その少女に食べ物を分け与えるような状況に?」

 

「何故かハウンドに追われていた、俺はハウンド殺して喰った、飽きたからそいつに喰わせた、以上」

 

「適当過ぎる事情説明をどうもありがとうございます……しかしこの娘、何処かで見たような…」

 

「ハフハフ……ハフ?」

 

美味しそうに肉を食べている少女の顔を、竜神丸はジィーっと見つめ続け……そして気付いた。

 

「…ZEROさん。あなた、なかなか面白い拾い物をしましたねぇ」

 

「あん?」

 

「容姿、髪の色、瞳の色……特徴が一致した以上、間違いありませんね」

 

「? ? ? ? ?」

 

竜神丸は肉を食べている途中だった少女の前にしゃがみ込み、少女の顎を指で上げて彼女の顔を見据える。少女は何が何だかよく分からず、頭の上にクエスチョンマークを浮かべる。

 

「ちょうど良いですねぇ。今回の任務も、例の研究を潰す事が目的でしたし」

 

「おい、どういう事だ。いい加減説明しやがれ」

 

「あぁ失礼。簡潔に説明しますとですね…」

 

「むぎゅ…!?」

 

竜神丸は少女の口元を右手で掴み、ZEROの方へと顔を向けさせてから言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聖王オリヴィエ・ゼーゲブレヒト……そのクローンですよ、この娘は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女の瞳は、それぞれ緑色と赤色の輝きに満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued…

 


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