No.928459

九番目の熾天使・外伝 ~ポケモン短編EX3~

竜神丸さん

キズナ現象

2017-11-02 23:09:20 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2432   閲覧ユーザー数:304

竜神丸とのバトルを切っ掛けに、謎の変身能力を獲得したokakaのゲッコウガ。

 

その力は修行中だけでなく、ポケモンを使った犯罪者との戦いでもフルに発揮していった。

 

時には思わぬ苦戦を強いられる事もあった彼等だが、今回はと言うと…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頭領、『つばめがえし』!!」

 

「シュバルゴ、『シザークロス』!!」

 

竜神丸が所有する専用の地下巨大アリーナ。その中央に設置された広いフィールドにて、okakaのゲッコウガは現在も修行に励んでいた。イーリスが繰り出した2本槍を持つ騎士のような外見のポケモン―――シュバルゴが繰り出した『シザークロス』に対し、ゲッコウガは『つばめがえし』による斬撃で攻撃を受け止める。

 

「斬り上げろ、そのまま『つじぎり』だ!!」

 

「コウ、ガァッ!!」

 

「シュバァッ!?」

 

「な、シュバルゴ!?」

 

ゲッコウガの振り上げた刀身がシュバルゴの両腕の槍を上に払い、そのまま『つじぎり』の一撃がシュバルゴの身体を一閃。シュバルゴが地に臥せる中、ゲッコウガは構えていた刀身を鞘に納めるように消し、それと共にバトル終了のブザーが鳴り響く。

 

『シュバルゴ、戦闘不能。ゲッコウガの勝ち』

 

「うし、気も引き締まって来たな頭領」

 

「コウッ!」

 

「…流石ですね。私では到底敵わないレベルです」

 

戦闘不能になったシュバルゴを戻したイーリスは、okakaとゲッコウガがハイタッチしている姿を見て素直な感想を述べる。一時は他の部下達のポケモン達を相手に大苦戦していた彼等が、今ではこうしてほとんど無傷で連続勝利していくほどにまで成長していった。

 

「生意気にも、私の手持ちも何体かは倒してしまいましたからねぇ」

 

「! 博士…」

 

イーリスの隣に、バトルを観戦していた竜神丸が並び立つ。

 

「まさかプテラだけでなく、ヘルガーやドラピオンまで負けるとは思っていませんでしたよ。前者2体に至ってはメガシンカまで使ったというのに…」

 

「現時点で、博士のポケモンでまだ勝負していないのは…」

 

「…不本意ながら、遂にこの時が来てしまったようです」

 

「! では…」

 

「えぇ。次のバトルでは“彼”を出します」

 

イーリスがフィールドから下がり、代わりに竜神丸がフィールドに立つ。それを見たokakaとゲッコウガはすぐに表情を切り替える。

 

「竜神丸。覚えているよな? あの時の約束」

 

「はいはい、言われなくても承知してます……まさか本当に“彼”をフィールドに出す事になろうとは思ってもみませんでしたがね」

 

「俺達にとっては願ったり叶ったりだがな」

 

「その余裕が、何時までも続くと思ったら大間違いですよ……ところでokakaさん」

 

「何だ?」

 

「……何故彼女(・・)までここにいるんですかねぇ?」

 

竜神丸が指差す方向には…

 

「えっほ、はっほ……気合を入れていきますよ、サイゾウ!」

 

「ケロッ!」

 

…okakaの隣で呑気に準備体操をしている弟子のツバメ、そして彼女と同じように準備体操をしているケロマツ(名前はサイゾウ)の姿があった。okakaのゲッコウガしか相手役を請け負うつもりが無かった竜神丸は、okakaに対して冷ややかな目を向ける。

 

「…すまん。あれ以来、自分も一緒に修行させて欲しいってしつこくてな」

 

かつて密漁団と戦った時の事だ。受けたダメージまでokakaとシンクロする想定外の事態もあったとはいえ、“あの姿”に変身したゲッコウガが瀕死寸前まで追い込まれるところを見てしまったツバメとそのポケモン達。支えるべき上司の役に立てなかった彼女は、今のままでは駄目だと思い、彼女達もokakaとゲッコウガのように本格的な修行を開始したのだ。それ故、okaka達が竜神丸とバトルすると聞きつけた彼女はこうして、パートナーであるケロマツと共にバトルへの参加を志願したのである……ツバメに対して何の興味も抱いていない竜神丸からすれば知った話ではない為、彼からはこうして面倒臭がられてしまっている訳なのだが。

 

「…ゲッコウガのあの姿にしか興味は無いと、私は言った筈なんですがねぇ?」

 

「良いじゃないですか!! 確かに今の私達じゃ、竜神丸さんに勝つには力及ばないかもしれませんが、マスターと頭領の戦いをサポートするくらいなら私達だってやってみせます!!」

 

「ケロケロッ!!」

 

「いや、あなた方に関しては正直いるだけ邪魔なんですが……いや、もう良いです。これ以上言ったところで無駄そうですしね」

 

「本気ですまんな竜神丸」

 

「…はぁ」

 

既にやる気満々なツバメとケロマツを見て、もはや彼女達を追い返すのも面倒になった竜神丸は盛大に溜め息をつく事になった。結果、okakaのゲッコウガとツバメのケロマツを相手取る事になる為、勝負はダブルバトルの形式となる訳なのだが…

 

「では、私がサポートに入りま…」

 

「いえ、必要ありません」

 

「え…?」

 

しかし、イーリスの提案は竜神丸に即刻拒否されてしまった。つまり彼は、一人で2体のポケモンを指示しながらバトルするつもりのようだ。

 

「少しばかり、力の差を理解させなければならないようですので……ギャラドス、アギルダー、実験開始」

 

「…!!」

 

「グガオォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」

 

竜神丸が投げた2つのモンスターボールから、それぞれアギルダーとギャラドスが出現。アギルダーが無言のまま腕を組んで立つ中、ギャラドスはアリーナ全体に響き渡るほどの高い咆哮を上げながらゲッコウガとケロマツを睨みつける。

 

「コウ…ッ!!」

 

「ケ、ケロォ…!!」

 

「ッ……サイゾウ、気圧されてはいけませんよ…!!」

 

「おうおう、いつ見ても迫力パネェなぁオイ…!!」

 

ギャラドスの特性『いかく』により、実際に相対しているゲッコウガとケロマツだけでなく、okakaとツバメまで同じく圧倒される。それでもゲッコウガとケロマツは臆さず戦闘態勢に入る。

 

「それでは、始めましょうか…」

 

『ギャラドス・アギルダーvsゲッコウガ・ケロマツ……バトル、開始』

 

バトル開始のブザーが鳴り響くと同時に、ゲッコウガとケロマツが同時に駆け出す。

 

「頭領、『みずしゅりけん』!!」

 

「サイゾウ、『みずのはどう』です!!」

 

「コウガッ!!」

 

「ケロォッ!!」

 

「ギャラドス、『ハイドロポンプ』」

 

「ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

ゲッコウガの『みずしゅりけん』とケロマツの『みずのはどう』、それらをギャラドスが『ハイドロポンプ』で纏めて相殺し、熾烈なバトルが開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「okakaの奴、一体何処にいるってんだ…?」

 

一方、okakaから頼まれていたポケモン用の木の実セットを届けに来た支配人。しかしokakaが現在何処にいるのか分からず、楽園(エデン)のあちこちを探し回っていた。現在はokaka専用の事務室を訪れてみたが、やはりここにもokakaの姿は見当たらない。

 

「たく、急に木の実セット送るよう頼まれたもんだから持って来てやったのに、肝心の依頼した本人がいないのはどういうこったよ…っておわぁ!?」

 

うっかりokakaの机に積まれていた資料の山を崩してしまい、床に資料のプリントが散らばってしまった。慌ててプリントを拾い始める支配人だったが…

 

「やべぇやっちまったよ、okakaに怒られちま……ん?」

 

床に散らばった資料のプリント。その内の1枚に目を付けた支配人は、そのプリントを拾い上げる。

 

「! これは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頭領、『つじぎり』で牽制だ!!」

 

「サイゾウ、『みずのはどう』で援護です!!」

 

「ギャラドス、『ドラゴンテール』」

 

場所は戻り地下巨大アリーナ。okaka&ツバメvs竜神丸のバトルは現在、ゲッコウガとケロマツが積極的に攻め入るスタイルでギャラドスやアギルダーと相対していた。ギャラドスに向かって接近するゲッコウガをギャラドスが『ドラゴンテール』で迎え撃とうとしたところにケロマツが口から『みずのはどう』を放ち、ギャラドスの『ドラゴンテール』の勢いが弱まった隙にゲッコウガが跳躍し…

 

「コウガァッ!!」

 

「グガァ…!?」

 

ゲッコウガの『つじぎり』による一撃がギャラドスの頭部に命中。そのまま連続で『つじぎり』を決めて行こうとしたが…

 

「!? コウガッ!?」

 

「な、頭領!?」

 

「今のは……ッ!? サイゾウ、『いあいぎり』で防御!!」

 

「ケロッ!!」

 

突如、ゲッコウガの身体が後方へと大きく弾き飛ばされた。その原因に気付いたツバメの指示で、ケロマツは鞘から刀を抜くように『いあいぎり』を発動し、ゲッコウガを弾き飛ばした原因(・・)の攻撃を防御する事に成功した。

 

「やはりアギルダーでしたか…!!」

 

「……!!」

 

ゲッコウガを弾き飛ばした物の正体は、『こうそくいどう』による目に見えない速度で、フィールド全体を駆け抜けていたアギルダーだった。目に見えない速度で接近していたアギルダーは、ケロマツに攻撃を防がれると共に距離を取り、再びその場から駆け出してあっという間にフィールドから姿が見えなくなってしまう。

 

「マスター!! アギルダーがフィールドのあちこちを駆け回っています、気をつけて下さい!!」

 

「らしいな……アギルダーの方は任せるぞ!! 頭領、ギャラドスに『みずしゅりけん』!!」

 

「コウッガァ!!」

 

「ガァ!?」

 

今度はゲッコウガの『みずしゅりけん』がギャラドスに命中。その様子を見た竜神丸は小さく溜め息をつく。

 

「埒が明かないですねぇ……アギルダー、『あまごい』です」

 

「……!!」

 

竜神丸の指示を受け、アギルダーは一度その場に立ち止まってから『みずしゅりけん』のエネルギーをアリーナの天井目掛けて撃ち放つ。すると天井に当たる直前でエネルギーが霧散し、そこから生成された黒い雲がフィールド全体に広まり、ゲッコウガ達のいる地上に雨を降らし始めた。

 

「水タイプの技を強化する気ですか……させません、『かげぶんしん』です!!」

 

「「「「「ケロォッ!!」」」」」

 

ケロマツは『かげぶんしん』で複数の分身を生成し、立ち止まっているアギルダーに向かって突撃。しかしそれを見た竜神丸は小さく笑みを浮かべ…

 

「!! 駄目だツバメ、後退しろ!!」

 

気付いたokakaが声を張り上げるも、忠告が遅かった。

 

「ギャラドス、『ぼうふう』です」

 

「グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!」

 

「「「「「!? ケロォッ!?」」」」」

 

「コウ、ガァ…ッ!!」

 

「きゃあっ!?」

 

「ぐぅぅぅぅぅぅ…!!」

 

ギャラドスが大きく吐いた息で発動した『ぼうふう』は、雨が降っている影響で勢いが増していた。それによりケロマツの分身達は本体を残して一斉に掻き消され、ゲッコウガは大きく吹き飛ばされ、okakaとツバメも凄まじい強風を前に思わず吹き飛ばされそうになる。

 

「ッ……なんつう威力だよ…!!」

 

「おや、驚いてる場合ですか?」

 

「!? しまっ―――」

 

「コォウ!?」

 

そして、竜神丸は決して隙を見逃さない。吹き飛ばされながらも体勢を立て直そうとしたゲッコウガに、後ろから接近したアギルダーが禍々しい毒液『どくどく』を命中させ、ゲッコウガを猛毒状態にしてしまう。すかさず反撃に出たゲッコウガは『つじぎり』を繰り出すも、既にアギルダーはゲッコウガから大きく距離を離した後だ。

 

(マズい、アギルダーのせいで思うように戦えない…!! 何とかアギルダーの動きを止めないと……ん?)

 

その時、ツバメはアギルダーの今までの行動を思い出した。

 

 

 

 

目に見えない速度で動き回る『こうそくいどう』。

 

 

 

 

フィールドに雨を降らせる『あまごい』。

 

 

 

 

四方八方から投げつけてくる『みずしゅりけん』。

 

 

 

 

相手を猛毒状態にする『どくどく』。

 

 

 

 

(! あ、もしかしたら行けるかも…)

 

ツバメはある事に気付き、そこから一つの賭けに出てみる事にした。

 

(確率は低いけど、やってみるしか…!)

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ、大丈夫か頭領?」

 

「コォウ……ッ…!!」

 

所持していたラムの実で、何とか猛毒状態から回復したゲッコウガ。しかしアギルダーは速過ぎるせいで何処にも姿が見当たらず、ギャラドスは相変わらず今いる場所から動こうとしない。

 

「竜神丸の奴、面倒なのを従えてんな…!!」

 

竜神丸の手持ちポケモンの中だと、アギルダーは珍しい完全なサポート型であり、1対1の勝負では決して出て来る事は無かった。その為、okakaにとってアギルダーは初めて相対するポケモンであり、その予測不能な動きには流石のゲッコウガでも完全には見切る事が出来ない。

 

(さて、どうするべきか…?)

 

「マスター!!」

 

「!? ツバメ、どうした?」

 

「このままギャラドスに攻撃し続けて下さい!! アギルダーの妨害があっても構う事なく!!」

 

「! …何か思いついたんだな?」

 

「はい!!」

 

「…んじゃ、それに乗ってみようかね。頭領、『みずしゅりけん』!!」

 

「コウ、ガァッ!!」

 

「? 何のつもりか知りませんが……ギャラドス、『ぼうふう』です」

 

「ガオォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」

 

ツバメが逆転の一手を思いついた事を信じ、okakaの指示でゲッコウガは再度『みずしゅりけん』を投擲。しかし当然ギャラドスも黙って攻撃される訳ではなく、またしても繰り出された『ぼうふう』で『みずしゅりけん』は掻き消され、ゲッコウガとケロマツは構えていた刀身を地面に突き刺し吹き飛ぶのを防ぐ。

 

「くそ、またか……これじゃ攻め切れない…!!」

 

(ッ……よし!!)

 

しかし、ツバメはチャンスを見逃さなかった。

 

「サイゾウ、ケロムースを後ろに!!」

 

「ケロォ!!」

 

ケロマツは首元のケロムースをすかさず後方に伸ばし、ケロムースが地面に付着する。

 

その瞬間―――

 

「……ッ!?」

 

―――ケロマツの真後ろから『どくどく』を仕掛けようとしていた、アギルダーの動きがピタリと止まった。足元のケロムースがくっ付いて動きを封じられてしまったのだ。

 

「!? 何…」

 

「今です、至近距離から『なげつける』攻撃!!」

 

「ケェェェェェェェェ…ロォオッ!!!」

 

「…ッ!!!??」

 

そして何処からか取り出した黒い鉄球状の重りを、ケロマツはアギルダー目掛けて叩き込むように投げつけた。予想外過ぎる攻撃にアギルダーは対応出来ず、そのまま地面に減り込まされるように『なげつける』攻撃を喰らう結果となってしまった。

 

その結果…

 

「……ッ…」

 

『アギルダー、戦闘不能』

 

最後まで鳴き声を上げる事が無いまま、アギルダーは気絶し戦闘不能となってしまったのである。

 

「やったぁ!! やりましたよサイゾウ!!」

 

「ケロケロォ♪」

 

「…マジでか」

 

「…これは流石に予想外でしたね」

 

まさかのツバメ達がアギルダーを倒してしまった現状に、流石のokakaと竜神丸も素直に驚愕していた。倒れたアギルダーがモンスターボールに戻される中、okakaはツバメに問いかける。

 

「ツバメ、何故アギルダーが後ろから来ると分かったんだ?」

 

「ついさっき、頭領が『どくどく』を受けた時もアギルダーは真後ろから接近してから技を繰り出してました。だからギャラドスの『ぼうふう』で私達が怯んだ隙を突いて、二度目も同じように後方から『どくどく』を繰り出そうとして来るんじゃないかと思って、真後ろにケロムースの罠を仕掛けてみたんです」

 

「…で、見事その賭けに当たった訳か。にしても黒い鉄球なんて何処から用意したんだよ?」

 

「それはですね! ケロマツのスピードを高める為の訓練で、いつもケロマツに持たせていたんです! バトル開始前に手放すのを忘れてたんですが、今回はそれが結果オーライな形になりました!」

 

「…なるほどねぇ」

 

自身の知らないところで、ツバメとケロマツも少しずつだが成長していっている。その事にokakaは思わず口元が緩み、ゲッコウガも称賛するかのようにケロマツの頭を撫でる。

 

しかし…

 

 

 

 

 

 

「呑気に話してる場合ではないでしょう?」

 

 

 

 

 

 

まだ、バトルは終わっていない。

 

「ギャラドス、『ハイドロポンプ』!」

 

「ギャオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」

 

「「ッ……!!」」

 

雨の影響で威力が上昇した『ハイドロポンプ』が迫り、ゲッコウガとケロマツは左右に別れて回避。外れた『ハイドロポンプ』の一撃がフィールドの地面を抉りに抉っていき、その衝撃でケロマツは体勢を崩してしまう。

 

「邪魔者はそろそろ引っ込みなさい……『ドラゴンテール』!!」

 

「!? ケロ、ォ…ッ!!」

 

そこへ容赦なく『ドラゴンテール』が襲い掛かり、そのままケロマツをフィールド外の壁まで勢い良く吹き飛ばしてしまった。壁に激突したケロマツはゆっくりと地面に倒れ、意識を失ってしまった。

 

『ケロマツ、戦闘不能』

 

「ッ……サイゾウ!!」

 

すぐにツバメが駆け寄り、戦闘不能となったケロマツを優しく抱きかかえる。それを他所に、フィールドではギャラドスとゲッコウガが相対する。

 

「アギルダーを倒されたのは驚きましたが、それまでです。これでようやく邪魔者がいなくなりました」

 

「…少しは弟子の成長を喜ばせてくれないもんかねぇ、竜神丸よ」

 

「知った事じゃありません」

 

「だろうな、分かり切ってたよ……ゲッコウガ、『つばめがえし』!!」

 

「コウガァ!!」

 

「ギャオォンッ!?」

 

息子であるケロマツの敵討ちをするかの如く、ゲッコウガは『つばめがえし』の猛烈な一撃をギャラドスに命中させる。そこからokakaとゲッコウガの動きが少しずつだが合わさっていき、今まで観戦していたイーリスもその事に気付く。

 

「弟子達がここまで頑張ってくれたんだ……俺達もそれに応えてやらなきゃな!!!」

 

「コウガッ!!!」

 

(!? また、二人の動きが…!!)

 

そして…

 

 

 

 

 

 

「ぬぅおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

「コウガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

シンクロする二人の姿が、一つに重なり水流を纏わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!! 待ち侘びてましたよ、その姿…!!」

 

「グルルルルル…!!」

 

再び謎の変身を遂げたゲッコウガを見て、竜神丸は嬉々とした笑みを浮かべる。それと共にギャラドスも唸り声を上げながらゲッコウガを睨みつける。

 

「頭領、『つじぎり』だ!!」

 

「コウガァ…!!」

 

「迎え撃ちなさい、『ハイドロポンプ』!!」

 

「グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

ギャラドスの『ハイドロポンプ』が迫り来るが、水流を纏ったゲッコウガは躊躇せず『つじぎり』の構えで『ハイドロポンプ』に向かって突撃。するとゲッコウガの『つじぎり』が『ハイドロポンプ』の水流を斬り裂き、そのままギャラドスの眼前まで接近した。

 

「コォウッ!!」

 

「グガァ!?」

 

「!? 何と…」

 

「続けて『つばめがえし』!!」

 

「コォォォォォォォォォォォウッ!!!」

 

ギャラドスに反撃の隙を与えまいと、ゲッコウガは手足から伸びた水の刃でギャラドスを何度も斬りつける。頭上から、足元から、左右から、連続で繰り出される斬撃はギャラドスを後方へと追い込んでいく。

 

「行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」

 

「コウガァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「図に乗って貰っては困りますよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「―――ッ!?」」

 

しかし、ゲッコウガの快進撃はここまでだった。

 

「グルァッ!!」

 

「コ、コォウ…!?」

 

ゲッコウガの振り下ろした右手の刃を、ギャラドスはその牙でガッチリ噛みつく事で白刃取りしたのだ。これではゲッコウガは身動きが取れない。

 

「ギャラドス、そのまま『ゆきなだれ』!!」

 

「!? コガァアッ!!?」

 

「な……うぐぅ!?」

 

ギャラドスはゲッコウガを咥えたまま、頭上に発生させた灰色の雪雲から『ゆきなだれ』を発動。雪崩のように降り注ぐ大量の雪玉がゲッコウガを地面に叩きつけ、それと同時にokakaの胸部にも強烈なダメージが入り、彼は苦しそうに右手で胸元を押さえる。

 

「マスターッ!?」

 

「ッ……おいおい、『ゆきなだれ』なんて仕込んでやがったのかお前…!!」

 

「コ、ォウ……ッ…!!」

 

「相手の攻撃を受けた後に繰り出す事で、その威力を2倍に引き上げる……スピードの速いゲッコウガ相手には効果的な技だと思いましてね、技マシンを使って習得させました。最も、『ゆきなだれ』の技マシンは既に生産が終了していたので、入手には苦労させられましたよ」

 

「!? じゃあ、今まで『ゆきなだれ』を使わなかったのは…!!」

 

「…動きの素早いゲッコウガに、確実に命中させるタイミングを窺ってたのね」

 

「ッ……!」

 

イーリスがそう分析する中、okakaは痛む胸元を押さえながらゲッコウガに呼びかける。

 

「頭領、まだ行けるか…?」

 

「コォ、ウ……ッ!!」

 

『ゆきなだれ』のダメージがかなり大きかったのか、ゲッコウガは何とか立ち上がったものの、既に満身創痍でフラフラな状態だ。しかしそれで情けをかけてくれるような竜神丸ではない。

 

「叩き潰しなさい、『ドラゴンテール』!!」

 

「グルアァッ!!!」

 

「かわして『みずしゅりけん』!!」

 

「コォウ……ガァッ!!」

 

叩きつけるように振り下ろされた『ドラゴンテール』をかわし、跳躍したゲッコウガは『みずしゅりけん』を投げつけギャラドスの顔面に命中させる。それにギャラドスが少しだけ圧倒された直後、フィールド全体に降り注いでいた雨が突如として止み始めた。

 

「ん、『あまごい』の効果が切れましたか……まぁ良いでしょう」

 

「ッ……頭領、『かげぶんしん』!!」

 

「「「「「コウガッ!!」」」」」

 

今までは雨の影響で必中技と化していた『ぼうふう』を恐れ、『かげぶんしん』は控えていたokakaとゲッコウガだったが、雨が止んで『ぼうふう』が必中でなくなった今、ここからは遠慮なく『かげぶんしん』を発動。分身達は四方八方からギャラドスに向かって突撃する。

 

「無駄な足掻きです……ギャラドス、地面に『ドラゴンテール』!」

 

「グルゥッ!!!」

 

ギャラドスの『ドラゴンテール』がフィールドの地面を抉り、宙に舞う瓦礫がゲッコウガの分身を次々と掻き消していく。しかしゲッコウガの本体は既にギャラドスの背後に回っていた。

 

「『つばめがえし』!!」

 

「コゥガッ!!!」

 

「ガァア!?」

 

「無駄だと言うに……打ち上げなさい!」

 

「グガァアッ!!!」

 

「コォウ!?」

 

しかしギャラドスは止まらない。ギャラドスの振り上げた尻尾がゲッコウガを高く打ち上げ、ゲッコウガの身体がアリーナの天井へと激突。その際にゲッコウガが右肩を負傷したのか、okakaも同じように右肩にダメージを受けてしまう。

 

「ぐぁっ……体勢を立て直せ、連続で『つじぎり』だ!!」

 

「コォウ!!」

 

天井からバネのように飛んだゲッコウガは、両腕の刃でギャラドスに猛攻を仕掛ける。

 

(負けられない…!! ツバメやサイゾウがあそこまでやったんだ……俺達がここで折れる訳にはいかない!!)

 

「コウガッコウガッコウガッコウガッ!!」

 

「グガ!? ガ、ゴォ…グルァッ!?」

 

ゲッコウガの『つじぎり』が連続でギャラドスに炸裂する。流石のギャラドスも少しずつダメージが表情に出始めるが、竜神丸は構わず指示を下す。

 

「『ゆきなだれ』です!」

 

「ッ……ゴガァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

「!? コォォォォォォウッ!?」

 

「がぁあっ!? くぅ…!!」

 

しかしダメージが溜まっているのはゲッコウガも同じ。ギャラドスが再度繰り出した『ゆきなだれ』でゲッコウガは地面に無理やり叩きつけられ、そのダメージがokakaにも伝わっていく。それでもokakaは立ち続ける。

 

「頭領……『みずしゅりけん』だぁ!!!」

 

「ッ……コ、ォウ……ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

「!? グギャオォッ!?」

 

「…まだやりますか、そろそろしつこいですねぇ」

 

未だ戦い続けるゲッコウガだが、これ以上特にパワーの上昇などは見られない。そろそろ飽きてきた竜神丸は冷徹な口調でギャラドスに告げる。

 

「ギャラドス、何時まで遊んでるつもりですか? あなたにとって、負けるのは死ぬよりも(・・・・・)辛い事だった筈ですよ」

 

「…ッ……グルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

「「きゃあっ!?」」

 

竜神丸の言葉が影響したのか、ギャラドスは今まで以上に高い咆哮を上げ、フィールドだけでなくアリーナ全体を大きく響かせる。ツバメやイーリスが悲鳴を上げる中、okakaも同じように大声を張り上げる。

 

「頭領ォッ!!! 『つばめがえし』だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

「コウガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

残り体力の関係上、これが最後の一撃となるだろう。okakaの怒号と共に、ゲッコウガは右腕から長く伸びた水の刀身で『つばめがえし』を繰り出し、ギャラドス目掛けて勢い良く振り下ろすが…

 

 

 

 

 

 

「牙で受け止めなさい」

 

「グルァアッ!!!」

 

「「ッ!?」」

 

 

 

 

 

 

その一撃が、届く事は無かった。

 

 

 

 

 

 

「フィニッシュです……『ハイドロポンプ』!!!」

 

「ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

「!? 頭りょ……がぁっ!?」

 

牙で受け止めたゲッコウガを、ギャラドスは『ハイドロポンプ』の大きく吹き飛ばした。雨が降っていた時よりも威力が増しているようにも思えるその一撃は、その先に立っていたokakaごとゲッコウガをアリーナの壁まで吹き飛ばしてしまった。

 

「okakaさん!!」

 

「マスターッ!!!」

 

イーリスとツバメは吹き飛ばされたokakaとゲッコウガの所まで急いで駆け寄って行く。二人が見た先には…

 

「ぅ、あ……」

 

「コ、ォ……」

 

壁に背をつけたまま、意識を失っているokakaとゲッコウガの姿があった。

 

『ゲッコウガ、戦闘不能。よってこの勝負、竜神丸様の勝利です』

 

バトル終了のブザーが、アリーナ全体に響き渡った。

 

「…まぁ上出来でしょう、ギャラドス」

 

「フゥー……フゥー……ッ…!!」

 

バトルが終了した事で力が少しずつ抜け始めたのか、ギャラドスは今にもその場に崩れ落ちそうなくらい息が絶え絶えな状態だ。その様子を見た竜神丸は、イーリスとツバメに介抱されているokakaとゲッコウガの方へと視線を向ける。

 

(しかしメガシンカしていないとはいえ、まさか私のギャラドスをここまで消耗させるとは……あの力、やはり侮れませんねぇ…)

 

これまで、竜神丸はゲッコウガが謎の姿に変身しているところを何度か見て来た。一回目は自身のキリキザンとバトルした時、二回目は密猟団と戦った時、そして三回目は今回のギャラドスとバトルした時。それらの戦いを一通り見届けて来た竜神丸は、あくまで可能性でしかないものの一つの仮説が浮かび上がった。

 

(思考と感情……その二つが重なった時、ゲッコウガはあの姿になる。しかし今のところ、それ以上の変化はあまり見受けられなかった。精々、最後に繰り出した『つばめがえし』の刀身が長く伸びた事くらい……つまり)

 

その上で、竜神丸は一つだけだがハッキリした答えを見出した。それは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-弟子達がここまで頑張ってくれたんだ……俺達もそれに応えてやらなきゃな!!!-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…なるほど、焦り(・・)ですか)

 

「少なくとも、今のあなた達ではそれ以上強くはなれないでしょう……ねぇ、okakaさん?」

 

これから二人に待っているのは希望か、絶望か。果たして二人が見据える未来はどちらなのか。竜神丸はククッと思わず小さな笑い声を上げてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――おいおい、マジかよ」

 

okakaの事務室。

 

そこで1枚の資料を見つけた支配人は、何故okakaが木の実セットを要求してきたのか、何となくだが答えに近付きつつあった。

 

「okaka、お前もこの事件に関わってやがったのか…!」

 

支配人が手にしている資料。そこに記されていたのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ブラックフォッグ事件』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

okakaとゲッコウガにとって、決して消えないトラウマとなる事件の名称だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued…

 


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