No.926247

マイ「艦これ」「みほ3ん」EX回:第3話<青い髪の少女>

しろっこさん

ようやくブルネイ泊地に到着早々に巻き起こる騒動。そして、そこではすべてが異質に感じられるのだった。

2017-10-15 03:55:23 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:443   閲覧ユーザー数:443

 

「あの……緊急事態とは、この方たちでしょうか?」

 

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マイ「艦これ」「みほ3ん」(第3部)

 EX回:第3話(改2)<青い髪の少女>

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「ようやくブルネイ泊地に到着したんだな」

 私は自分に言い聞かせるように小さく呟いた。

 

窓越しに機長が何度か指を差して、外の者とやりとりをしている。やがて『分かった』といった感じの手ぶりを返していた。

 

その様子を見て不思議に思ったのだろう。

「何だ? 無線機の調子が悪いのか?」

 

問いかける技術参謀に副操縦士が応える。

「はい……嵐で一部、落雷で回路が故障したのかも知れません」

 

彼は片耳の無線機を外したまま計器類を指差して苦笑した。

 

「なるほど」

後ろの方で、そのやり取りを聞いていた私も技術参謀と顔を見合わせて肩をすくめた。

 

「ブルネイの許可が下りなかったのは……無線のせいか?」

私が言うと、参謀も軽く頷いた。

 

「その可能性はあるが……まだ油断は出来ないな」

 

 そのとき後部座席に居た寛代が何か呟き、秘書艦の祥高さんが顔を近づけていた。

 

「どうした?」

私は声をかけた。

 

祥高さんは代弁するように応えた。

「外にブルネイ側の艦娘が待機しているようです。私たちが扉を開けるのを待っているようです」

 

「そっか……寛代の無線は全チャンネルと通じるんだな」

私は直ぐ参謀の顔を見た。

 

彼女は「分かった」と応えると近くに座っていた日向に命令した。

「日向、開けてやれ」

 

「はっ」

それを受けた彼女はスッと立ち上がり、扉の留め金を解除する。

 

 一瞬、私の目を見てから日向は「開けます」と言い取っ手を回した。

ガバッという鈍い音と共に外気が入ってきた。南国らしい陽気と波の音、そしてまぶしい光。

 

「うわぁ、気温が高いわねぇ。それに湿気!」

夕張さんが鼻をクンクン言わせた。さすが技術屋らしい分析だな。

 

「そうですねぇ、やはりブルネイは南国ですよ」

青葉さんもカメラのファインダーを覗きながら記者らしいコメントを出した。

 

「あれ?」

直ぐ何かに気付き驚いたようにファインダーから目を離した彼女。

 

夕張さんも青葉さんと同じ方向を見て絶句する。

「え……五月雨ちゃん?」

 

 扉の直ぐ外側には先方の内火艇が横付けされていた。

その甲板の上には一人の青い髪の少女……紛れも無い。駆逐艦の五月雨が敬礼をしていたのだ。

 

私も言葉を失った。

「五月雨……量産型か?」

 

硬直している私をよそに龍田さんがスッと扉から外へ出た。

「良いわねえ、海よ」

 

マイペースな彼女だ。その言葉でハッと我に返る私たちだった。

 

(今回、遠征メンバーに美保の五月雨を連れて来なくて正解だったのかな?)

 

私は目の前の五月雨と、ほんの数日前、境港の夏祭りで寛代と並んで浴衣を着ていた彼女の姿をダブらせていた。

 

「どいてぇっ! ……ぽいっ」

「痛っ!」

いきなり後ろから跳ね飛ばされそうになった。金髪の……夕立か?

 

「Oh、ヘルプぅ」

続けて機内からは金剛。二人の艦娘は慌ただしく飛び出すと海に落ちんばかりの勢いで内火艇に飛び乗った。

 

 その反動で機体と内火艇が揺れて機体と船体の固定作業をしていたブルネイの艦娘が慌てている。

 

「おいっ」

ムッとした私が注意する間もなく彼女たちは甲板に腹ばいになって海面へ向かってゲロゲロやり始めた。

 

「あ……」

私と他のメンバーは唖然とした。

もちろん甲板上の「五月雨」も目を丸くしていた。

 

 呆れるやら恥ずかしいやら……

 

「誠に申し訳ない」

私も内火艇に乗り移りながら相手側に苦笑するしかなかった。

 

「いえ……」

五月雨は応えた。その困惑して恥らうような雰囲気が、まさに五月雨そのものだった。

 

「お前らなぁ」

私は照れ隠しのように美保のゲロゲロ娘たちに声を掛けた。

 

「それでも帝国海軍かよ? ……ったく」

 

 すると金剛が恨めしそうに振り返った。

「シット……船と空は違ぅ」

 

歪んだ顔も可愛いが……美人台無し。

 

一方の夕立。

「電気で……痺れたっぽぃ」

 

 金髪の彼女は向こうを向いたまま弱々しく、いつもよりは高いオクターブ声で言った。

 

「はいはい。大変でしたね」

遅れて内火艇乗り込んできた秘書艦の祥高さんも苦笑していた。

 

続けて夕張が顔をしかめて声を掛ける。

「夕立? 髪の毛、汚れるわよ」

 

 突然の出来事に目を丸くしていたブルネイの艦娘たちだったが、少し落ち着きを取り戻したようだ。

 

 五月雨が改めて敬礼をした。

「ブルネイ泊地・第3鎮守府所属の駆逐艦、五月雨です。あの……緊急事態とは、この方たちでしょうか?」

 

「あ」

……そうだった。

 

 私の後ろから作戦参謀が小声で呟く。

「本来の認識コードが通用しないってことはブルネイは私たちのことも演習のことも知らない恐れがあるな」

 

「そうですね……」

(ここは一時的に遭難のフリをするしかないかな?)

 

私の意図を察した彼女は軽く頷いた。

 

 目配せをした私は直ぐに機内に引き返すと、まだボンヤリして座席に座っていた寛代に言った。

「寛代、作戦指令だ」

 

「……」

無表情だが、こちらを見て命令を待つ彼女。

 

私は声を潜めて続ける。

「お前は病気のフリをして現地の病院へ行くんだ。そして、この鎮守府の情報収集に努めよ!」

 

(本来、友軍を偵察するとは気が引けるが、何か異質な気配を感じる。これは私の直感だ)

 そんな思いが過(よ)ぎった。

 

「……」

無言で敬礼をした寛代。私の意図は伝わったらしい。

 

 彼女の手を引いて再び外へと戻った私は五月雨に言った。

「申し訳ないが急病人がもう一名だ。救護を頼みたい」

 

私たちを見た五月雨は微笑んだ。

「はい、直ぐに手配します。病気の方は前の幌の下へどうぞ。提督は、その後ろの席へ。到着した機体は港湾内に係留いたしますので機長はこちらの指示に従って下さい」

 

 てきぱきと、しかし淡々と進む。とりあえず私の受けた指令書の件は伏せておこう。まずは相手の出方を見てからだ。

 

「ありがとう」

私は五月雨に軽く頭を下げて礼を言った。その言葉になぜか彼女は、ちょっと驚いた顔をしていた。

 

 一同は改めて荷物を抱えて内火艇へと移動する。

病人役の寛代と半病人の金剛、夕立の荷物は日向や比叡、赤城さんが運んでくれた

 その間も五月雨は自分の無線でブルネイの司令部と連絡を取っているらしい。しきりに頷いていた。

 

 その状況を見ながら私は改めてブルネイの艦娘たちを観察した。恐らく彼女たちも量産型だろう。あどけない表情だから駆逐艦か。

 

 やがて五月雨は、私たちの作業が終わったのを見て言った。

「では宜しいでしょうか? 船を出します」

 

「ああ」

全員を乗せた内火艇は発動機を響かせながら、ゆっくりと出発した。

 

 嵐に翻弄され、ようやく到着したブルネイ泊地。

だが、どことなく異質な印象が拭えない。美保の艦娘たちも同様で、どこと無くソワソワと周りを見回している。

 

 他の船に注意しながら徐々に速度を上げる内火艇。そよぐ風が心地良い。

 

 だがブルネイの妙な雰囲気は泊地の港湾内全体からも感じられる。

 

 青葉さんと夕張さんも盛んに指差しながら何か話している。彼女たちの会話が断片的に聞こえてきた。

「ここには軍の実験施設もあるみたいですね」

「そうね。量産型の艦娘も実用化されているみたいだし……でも、それにしちゃ、あまり見ない機種が多いわね」

 

二人は改めてキョロキョロしている。

「やっぱり……ですよね?」

「でしょ?」

 

私は隣に座っている秘書艦に聞いた。

「君は、ここの第一印象を、どう思った?」

 

 彼女は、いつもの澄まし顔ではなく困惑したように応えた。

「はい。ここは本当に帝国海軍なのでしょうか……? という印象です」

 

「だよな」

そもそも、この内火艇からして変な雰囲気だ。

 

 今度は龍田さんと赤城さんの会話が聞こえる。

「船内の文字表示は日本語よ。外国製じゃないわね」

「でも……どこのメーカーかしら?」

「そうねえ。知ってる所と、そうでない所もあるわね」

 

 そんな私たちの不安と裏腹に鎮守府全体は明るい雰囲気で、お祭りムードで一杯。さっき上空からもチラッと見えたが内火艇で移動すると、さらによく分かる。

 

「屋台に人ごみ、それに浮かれた雰囲気……早い話、ここは『お祭り』なのか」

淡々と分析しながら呟く日向。それで正解だろう。

 

 急にバシャ! というシャッター音がした。青葉さんか。

 

すると振り返った五月雨が言う。

「申し訳ありませんが……港湾内の撮影は、ご遠慮願えますか?」

 

「てへっ」

肩をすくめて私を見ながら舌を出している彼女。

 

私も苦笑して返事をする。

「まあ、友軍であっても遠慮すべきだな」

 

「はぁい」

 

(でも撮った写真は後から見せてもらおう。気になる機体や艦船が多すぎる)

 

 そんな私の思いをよそに、水面(みなも)を撫でている龍田さん。

 

「海が綺麗よぉ」

彼女は相変わらずマイペースだった。それが不思議と安心感を醸し出していた。

 

 

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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サイトも遅々と整備中~(^_^;)

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PS:「みほ3ん」とは

「美保鎮守府:第三部」の略称です。

 

 


 
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