No.91665

軍師風の事件簿

もぺさん

見た目は子供、頭脳は大人。今日の魏は平和とは言い難く。
密室殺人事件に風が挑むって書くと聞こえだけはいいなぁ。
別に推理物じゃありませんので、悪しからず。

2009-08-26 12:02:49 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:4358   閲覧ユーザー数:3498

 えー、皆さん。バタフライ効果って知っていますか?

 お兄さんから聞いたのですが、ごく僅かなズレが、後の結果に大きな差を生み出すとのことの例えだそうです。

 何気ない行動が後に予想もつかない大きな出来事を引き起こす。

 そう考えると、自分の行動の1つ1つがとても重要な気がしませんか?

 ですが、風は一々そんなこと考えながら生活なんてできませんけどね。

 

 

「ないっ! どうして、どこにも見当たらないのよ?」

 桂花は声を荒げ、部屋中を荒らす。

 私室は見るも無残な有様だ。泥棒が侵入したと言われれば、別段疑うことなく納得してしまう。

 泥棒が部屋を荒らした証拠を残したまま逃走するかは、また別の話だが。

「もしアレが他人の手に渡りでもしたら……ああ、考えただけでも恐ろしい」

 頭を抱え、その場に蹲る。

 余程桂花が探している物は、人に見られては具合が悪いことが窺える。

 桂花は、小声で呟きながら記憶を辿り、探し物が確かに私室に置かれていた、一番新しい記憶を思いだす。

「そうだ。確か、華琳さまの招集が急にあったから、慌てて机の上に置いて、その後華琳さまと……」

 今は必要のない昨日の房事まで思いだし、少しの間を置いてから、勢いよく首を振る。

「そう机の上に置いたのよ。それで鍵は……閉めた覚えがない。それじゃあ、もしかして」

 最悪の事態を想像し、1人身悶える。

 丁度そこへ、合図もなく扉を勢いよく開け、誰かが室内に入ってきた。

 急なことに、桂花は一瞬身を硬直させ、鼓動が速くなっていくのを感じながら、侵入者の方へ振り替える。

「春蘭! あんたって人は、毎度毎度合図もしないで」

 侵入者の正体が春蘭とわかり、怒りをそのままぶつける。

「すまんすまん。桂花に話があってな」

 言葉で謝罪はしているが、全く反省の色が見えないところは、相変わらずのこと。

 桂花が苛立っていることを気にする素振りもなく、春蘭は話を進めようとする。

「何よ? 今、立て込んでいるんだから手短にお願い」

「ああ、実はな……」

 春蘭が続きを話そうとした、そのとき──

「きゃーーーーーーーーーーー!!」

 叫び声が響いた。

「何だ、一体?」

「わからないわよ。今の声って稟よね? 取りあえず稟の部屋に行ってみましょう」

 流石に只事ではないと感じ、2人は稟の部屋へ向かって走り出した。

 稟の部屋に辿り着き、取っ手を握り扉を開けようとしたが、鍵がかかっていて動かなかった。

「稟、悲鳴が聞こえたけど、どうかしたの?」

 桂花は扉を叩きながら、室内に居る筈の稟に話しかける。

 しかし中からは何も反応がない。

「私に任せろ」

 桂花を扉の前から退かし、春蘭は勢いよく扉に体当たりした。

 衝撃を受けた扉は、無残にも壁から外され、扉としての機能を失った。

 事態が事態だけに、桂花は春蘭を咎めない。

「稟、大丈夫……か」

 体当たりした勢いのまま、室内に入った春蘭は、稟に声をかけようとして、そして言葉を失った。

「どうかしたの、春蘭?」

 呆然と立ち尽くした春蘭を訝しみ、桂花も室内へと入り、春蘭の目線の先に目をやると、そこには血塗れになって倒れている稟の姿があった。

「いやぁぁーーーーーーーー!!」

 信じられない光景に、桂花は悲鳴を上げる。

 しかし、流石は軍師と言うべきか、すぐに冷静さを取り戻し春蘭に告げる。

「春蘭、すぐに華琳さまを呼んできて!」

「……ああっ! わかった」

 未だ呆然としていた春蘭だったが、急な桂花の命令に体が勝手に反応し、慌てて頷き急いで華琳の元へと向かった。

 桂花はその場に残り現場を視察する。

「一体、どういうことなのよ……」

 稟の体を見て、桂花は呟いた。

 街から戻り、城内の廊下を歩いていると、目の前から勢いよく春蘭さまが走ってくるのが見えました。

 春蘭さまは風に気がつくと、足を止めて、慌てた口調で風に話しかけます。

「風か、ちょうど良かった。稟がまた鼻血を出して倒れたんだが」

「またですかー。稟ちゃんも仕様がない人ですねー。でも、春蘭さま、そんなに慌てるほどひどいのですか?」

 風の質問に、春蘭さまは目を見開き手をうった。

「あまりの惨劇に我を失っていたが、よくよく考えると、わざわざ華琳さまを呼ぶほどのことでもないな」

「何故華琳さまを呼ぼうと?」

「それは桂花に言われてだな……って桂花をその場に置いてきてしまった」

「そうですかー、取り敢えず稟ちゃんの部屋に向かいましょうかー」

 まったく、稟ちゃんの癖にも困ったものです。

 大方、艶本でも読んでいたか、先日のお兄さんとの秘め事でも思い出したんでしょうが。

 稟ちゃんの部屋に辿り着くと、桂花ちゃんが胸を手で押さえ、青ざめた顔で立ち尽くしていました。

 一体、稟ちゃんはどれだけ鼻血を出したんでしょうか。

 桂花ちゃんの表情を気にせず、春蘭さまが呑気に桂花ちゃんに語りかけます。

「桂花。風がいたから連れて来たぞ。よくよく考えれば、鼻血くらいで華琳さまを呼ぶ必要はないからな」

 しかし桂花ちゃんは春蘭さまの話に耳を傾けず、相変わらず立ち尽くし震える口調で信じがたいことを口にします。

「し……死んでる」

「何を言ってるんだ? 鼻血くらいでそう簡単に死なんだろ」

 春蘭さまはまったく信じず、呆れていましたが、風は嫌な予感がしました。

 いくら桂花ちゃんと言えど、そんな冗談を口にするとは思えませんし、あの表情が演義とは思えません。

 慌てて稟ちゃんに駆け寄り、呼吸、脈、動悸を確認します。

 しかし、何一つ感じることはできませんでした。

 当たり前ですが、何時ものようにトントンしても反応がありません。

 風は稟ちゃんの体を抱き、大声で呼びかけます。

 何度も、何度も、稟ちゃんが返事をしてくれるまで。

 それでも、稟ちゃんが答えてくれることは2度とありませんでした。

 風は愕然としながら、稟ちゃんの体を寝かせようとし、あることに気が付きます。

 稟ちゃんの頭には細長く凹みができていました。

 風は確信しました。

 稟ちゃんは鼻血による出血死なんかではありません。

 何者かに頭を殴打されて殺されたんです。

 風が絶対に犯人を見つけ出して見せます。

 ですから、稟ちゃんは安心して眠りについてください。

 

 風は城内にいた人を集め、始めに第一発見者である桂花ちゃんと春蘭さまの話を聞きました。

 2人は叫び声が聞こえて、稟ちゃんの部屋に来たそうです。

 扉には鍵がかかっており、春蘭さまが無理やり開けたそうです。これは、無残な扉を見ればわかります。

 窓には格子がされているので、人が通れることはありません。

 つまり密室状態ということになります。

 しかし自殺や事故にでも見せない限り、密室にする必要性なんてありません。

 もしくは、本人以外で部屋の出入りが自由な人に擦り付けるかですが。

 そうなると全ての部屋の合鍵を持っている華琳さまか、部屋の鍵を作った真桜ちゃんになりますが、それもありえませんね。

 華琳さまを犯人にしたてあげようとする人が魏にいるとは思えませんし、この時間帯真桜ちゃんが街の警備に出ているのは周知の事実です。

 仮に2人のどちらかが犯人だとして、鍵をかけて出て行ったら、自分が犯人ですと暴露しているようなものですから、2人がそんなへまをするとも思えませんし。

 では何故犯人はわざわざ密室になんてしたのでしょうか?

 考えてみてもわからないことに時間を割くのは得策ではありませんね。

 現場不在証明は見周りから帰って来たお兄さんにしてもらうとして、風は部屋の状況をもう一度確認してみますかね。

 室内には未だ、稟ちゃんが倒れたままになっています。

 稟ちゃんのすぐ傍には椅子が転がっている所から、椅子に座っているとき背後から襲われたんでしょうか。

 いや、それはおかしいですね。

 もし、座っていて倒れたなら椅子は足元側に倒れているはず。

 ですが稟ちゃんの倒れている向きは頭が椅子に向いています。

 どうゆうことでしょうかと、疑問に思い、もう一度稟ちゃんの体を見たとき、違和感に気付きました。

「これは──」

 稟ちゃんの服には血の跡が付いていますが、一部だけ不自然に付いていない箇所がありました。

 風は慌てて、集まった皆さんに向き直ります。

 そこには事情聴取をしてくれているお兄さん。

 変わらずに青い顔をして胸を押さえる桂花さん。

 状況が理解できず、おろおろする春蘭さま。

 春蘭さま同様、おろおろしている季衣ちゃん。

 事件を知って顔を押さえ泣いている流琉ちゃん。

 目を閉じ、沈黙する秋蘭さん。

 そして、何か考え込んでいる華琳さま。

 凪ちゃんと真桜ちゃんと沙和ちゃんは、まだ警備から帰ってきていないようですね。

 ですが、これで確信しました。

 もし風の考えている通りだとしたら、今回の事件あまりに悲しすぎますよ……稟ちゃん。

 えー、今回の事件。

 実に悲しい事件でしたー。

 何故、稟ちゃんが死ななくてはいけなかったのでしょうか?

 運命とは皮肉なものです。

 皆さんお忘れかもしれませんが、今回最初に起こった事件は、桂花ちゃんの大切なものの紛失です。

 その後に、稟ちゃんの密室殺人事件が起こりました。

 一件関係なさそうな、二つの事件。

 もしこれが、一つに繋がったとしたら?

 皆さんも、もうお気づきですねー?

 程昱でしたー。

「風、どうも全員にアリバイがあるみたいなんだが」

「ありばいですか?」

「ああ、ごめん。殺害されたと思われる時間、みんな別の場所にいたことが証明できるみたいなんだ」

 なるほど、詰まる所、誰も稟ちゃんを殺害することはできないということですか。

 思っていた通りなので、問題ないのですが。

「でも、それじゃあ稟はどうやって殺害されたんだ?」

 悩むお兄さんに、風は言います。

「大丈夫ですよ、お兄さん。風の考えが正しければ全て証明できます」

「本当か? 風」

 お兄さんを始め、皆さんが驚いた顔で風を見ます。

「聞いてもいいかしら?」

 華琳さまが話を促してきたので、風は語り始めました。

「では、先ず春蘭さま。稟ちゃんを見て、風を呼びに来る前と何か変わった所はありませんかー?」

「いや、特に変わっていないと思うが」

 春蘭さまは、首を傾げ思い出そうとしますが、どうにも違いが判らないようです。

 あの時の春蘭さまの慌てようでは、些細な所まで目が行き届かなかったでしょうし、仕方ありませんか。

「では、桂花ちゃんはどうですかー?」

「私もわからないわ」

「そですかー。ところで桂花ちゃん。先ほどからずっと胸を押さえてますが、腕が疲れないですか?」

「べ、別に私の勝手でしょ」

 吃って、答える桂花ちゃん。

 相変わらず、嘘が下手といいますか、馬鹿正直といいますか。

「桂花、腕を下ろしなさい」

 風の代わりに華琳さまが桂花ちゃんに腕を降ろすよう催促します。

「で、ですが、華琳さま……」

「いいから下ろしなさい」

 細則ではなく、最早命令ですね。

「わかりました……」

 桂花ちゃんが渋々、腕を下ろすと服の中から一冊の本が落ちました。

 見た目は変哲のない兵法書ですね。

 しかしその兵法書には血痕がありました。

 床に落ちた兵法書を華琳さまが拾います。

「桂花、これはどうゆうことかしら?」

「その、これはですね……」

 華琳さまに問い質され、慌てて何か言おうとする桂花ちゃんを余所に、春蘭さまが大声をあげました。

「その本、私が稟にわたしたやつだ」

 それを聞いた桂花ちゃんが、我を忘れたかのように春蘭さまに勢いよく迫ります。

「ちょっと春蘭、どうゆうことよ。何であなたが私の本を持っていたのよ」

「何、これ桂花のだったのか?」

「そうよ、どうして春蘭が持っていて、しかも稟に渡したの?」

「いやな、稟と廊下で会ったとき、桂花に貸した本を返してもらいに行ったら、留守だったと聞いてな、桂花の部屋に行ったら扉が開いていたから、机の上にあった本を稟の所に届けてやったんだ」

 私って親切だろうと胸を張る春蘭さまですが、それはちょっと違う気がしますね。

「だからって、普通勝手に持ち出す? しかも、確認もせず違う本を持って行くなんて」

「そう言えば、稟に渡したとき何か言おうとしていたみたいだが、本が違ったのか」

 悪びれる様子もない春蘭さまは流石ですねー。

「でも桂花ちゃん。自分の本なら何故服に隠したんですかねー」

「それは……」

「その本血が付いてますよね。ちょうど稟ちゃんの服に不自然な形で血の付いていない場所があったんですが、その本、稟ちゃんが持っていたのではないのですか?」

「ええそうよ。確かに稟が持っていたわ。でも何? 稟が持っていたからって別に今回の事件と関係ないでしょ?」

 桂花ちゃんはそう言いますが、確かにその本が兵法書だったら今回の事件関係ありません。

 ですが──

「その本、艶本じゃありませんか?」

「なっ?」

 風の発言に、桂花ちゃんは驚きを隠せず、また華琳さまは本の中身を確認しました。

「これは……」

 中身を確認した華琳さまは耳元まで真っ赤になってしまいました。

 これは風も気になりますね。

 ということで本の中身を拝見しましょうか。

 他の人も気になったのか、一様に華琳さまの後ろから覗きこむように本を見ます。

 そして皆一様に驚きの声を上げます。

 本の内容は、桂花ちゃんの字で、華琳さまとの、口に出して言えないような内容がびっしりと書かれていました。

 皆さん例外なく桂花ちゃんを蔑んだ目で見ます。

 このままだと話の流れが変わってしまうので、風は手を叩いて皆さんの注目を集めます。

「桂花ちゃんの性癖がわかった所で本題に戻りますね。状況を見るに死の間際、稟ちゃんが艶本を読んでいたのは間違いないようです」

 これで風の考えては憶測ではなく確信に変わりました。

「今回の事件の概要はこうです」

 だから風は、全てを皆さんに語ります。

「春蘭さまが間違えて持ってきた本を、稟ちゃんが読み、毎度の如く鼻血を出します。現状からわかる血の量や、桂花ちゃんの艶本の内容から考えても、何時も以上に激しいものだったのでしょう。鼻血を出した勢いで仰け反った稟ちゃんは体勢を保つことができず、倒れた先にあった椅子の背凭れの角に後頭部を打ち、そのときの衝撃で息を引き取ったのです。頭部の凹みは撲られて出来たものではなかったのですよ」

 全貌を聞いた皆さんは、無言になり、

「えっと、それってつまり……」

 代表してお兄さんが風に尋ねます。

「今回の事件、他殺ではなく不慮の事故によって起こされたものだったのです」

 事件は解決した──と、思われたのですが。

「風少し聞いてもいいかしら?」

 華琳さまが風に尋ねてきます。

「何でしょうかー?」

「稟って本当に死んでるの?」

「っ?」

 華琳さまの予想外の発言に、皆さん驚き華琳さまに振り返ります。

 おや、秋蘭さんだけは、驚かずに変わらず目を閉じたままですね。

 ということは、秋蘭さんも華琳さまと同じ考えってことですかねー。

「どういうことでしょうか、華琳さま」

「仮に風の言った通りのことが起きたとしても、稟が死んだにしては不自然なことがあるのよ」

「不自然ですか?」

「ええ。風は稟が死んだ原因を解明するためにあえて冷静さを保っていたとしても、一刀が平然としていることが納得いかないのよね」

「え? 俺?」

 行き成り話を振られ、困惑するお兄さん。

「そうよ。一刀が全員に事情聴取をしていたとき、少なからず他のみんなは今回の件で動揺していたわ。流琉に至っては泣いてしまうくらいに。でも一刀、あなたは別段気にする素振りもなく、私たちと話していたわね、それは何故かしら?」

「それは、俺も気が動転していて、兎に角何かしなくちゃって思って、それで風に事情聴取を頼まれたから……」

「嘘ね。私の知っている北郷一刀なら、気が動転しようとも、仲間を思いやらないはずはないわ」

 うぅ、お兄さんのことを華琳さまは信頼されている発言ですよ、これは。

「それは……」

 お兄さんは反論する言葉が思い浮かばないのか、口を閉ざしてしまいました。

 仕方ないですねー、風が助け船を出しましょうか。

「ですが、華琳さま。仮にお兄さんが平然としていたからと言って、それが稟ちゃんが死んでいない理由にはならないと思いますが。死を確認したのが風だけなら誤魔化しようがありますが、桂花ちゃんも確認していますし」

 風は桂花ちゃんに視線を向け、確認を取ります。

「ええ、確かに脈も呼吸もしていなかったわ」

「そう。でもね人は心肺停止しても死んでいるとは限らないわ」

「確かに華琳さまの言う通りですが、1刻も持てばいいところです。すでに手遅れな時間ですね」

 風は最もなことを言ったはずですが、華琳さまは何時もの余裕な笑みを浮かべています。

「実は前に一刀から聞いたんだけど、首の後ろをトントンと叩くのは間違った処置だと一刀が風に言ったとき、あなたはこう言ったそうね。稟は鼻血を出したとき、偶に心肺停止するって。首をトントンするのは実は風独自の心肺蘇生の気功法だって。風のことだから、既にその気功法とやらを稟に行っているのでしょう」

「そういえば、稟の状態を確認した時、風がいつものように首を叩いていたわ」

 どうやら桂花ちゃんに見られてしまっていたようですねー。

 それにしてもお兄さんの口の軽さには困ったものですよ。

「ふぅ、ばれてしまっては仕方ありませんね。全くお兄さんが不甲斐ないせいですよ」

「俺が悪いのか?」

 お兄さんに文句を言うと、今まで黙っていた秋蘭さんが初めて口を開きました。

「北郷の不甲斐なさも計算に入れていたのだろう? 誰かが、気が付かないとそのまま郭嘉は死んだままの扱いになってしまうからな」

 流石、秋蘭さん。そこまで見抜いていましたか。

「ところで風、何故わざわざこんなことを仕出かしたのかしら?」

 華琳さまが当然の疑問を口にします。

 ばれてしまった以上、全て語るのがお約束というものなので、打ち明けましょうか。

「実は、桂花ちゃんを困らせてやろうと思いましてねー。稟ちゃんと桂花ちゃんを見た時点で状況は把握できていましたし」

「なっ、一体どういうことなのよ、風!」

「風には桂花ちゃんが服の中に艶本を隠していることは一目瞭然だったんですよー。だから先ず、稟ちゃんには申し訳ありませんが死んだことにしてもらい、桂花ちゃんが艶本を置きに行く暇をなくすと同時に皆さんに集まってもらい、そこで暴露させちゃいましょうと」

「だから、何でそんなことするのよ! 私に恨みでもあるわけ?」

「いえいえ、ただの嫉妬ですよー。風でさえまだお兄さんに抱いてもらっていないのに、あんなにお兄さんを毛嫌いしている桂花ちゃんが先に抱かれたのが許せなかったんですよー」

「そう……つまり、全ては全身精液男のせいってわけね」

 風が全てを語り終えると、黒い氣を発した桂花ちゃんがゆらりとお兄さんに近づいて行きます。

「なっ? 俺のせいじゃないだろ?」

 気配をさっしたのか、お兄さんは慌てて逃げ出しました。

「こら、待て! 北郷!」

「兄様、やっていい冗談と悪い冗談の区別くらいつけてください」

「よくわからんが、北郷のせいなのか?」

「どうなんでしょうね、春蘭さま」

 何故か桂花ちゃんだけでなく、流琉ちゃんや春蘭さま、季衣ちゃんまでお兄さんを追いかけて行きます。

 華琳さまと秋蘭さんは、呆れ顔で自室に戻って行きました。

 さて、お兄さんが身代りになってくれた所で、今回の事件も一件楽着ですねー。

 それでは稟ちゃんを起こすとしましょう。

「稟ちゃん、起きてください」

 すでにトントンは済ませたので、後は体を揺さぶれば起きるでしょう。

「………………あれ?」

 

 

                                                                      ≪了≫

     あとがき

 夜勤明けのハイテンションで勢いのまま殴り書きした今作。

 いやぁ、普段遅筆なんですが、半分くらいの時間でかけました。

 意味不明な所があったら、申し訳ありませんが脳内で適当に補完してください。

 もうね、稟の鼻血ネタなんて何番煎じかわかりませんが、書きたいときに書きたいものを書く、これに尽きます。

 前回董卓か袁術辺りで何か書くとか書いたけど、思い浮かんだのがこれだったので……。

 今回の話で言えることは1つだけです。

 稟が好きな方、誠に申し訳ありませんでした。

 

 前回の「娘に語りて」に支援、コメントしてくださった方ありがとうございます。

 コメントにて袁術で物語をと頂いたので、次は袁術でいこうと思うのですが、復習の為にもう一度呉ルートをやるので、間にもう一作はさむかもしれません。

 

 それでは、ここまでお読み頂き誠にありがとうございました。


 
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