No.91317

~真・恋姫✝無双 魏after to after~side徐晃

kanadeさん

久しぶりの投稿で、滅茶苦茶かもしれませんがよろしくお願いします。
この作品、いろんな人が使っているのでこのキャラを登場させてみました。
感想・コメント待ってます
それではどうぞ

2009-08-24 01:11:50 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:21186   閲覧ユーザー数:14891

~真・恋姫✝無双 魏after to after~side徐晃

 

 

 ――私は、どうやら北郷隊長の事が好きらしい。

 「はぁ・・・男の人なんて興味ない筈だったのに」

 こぼれるのは溜息だ。

 どうしてこんな気持ちを抱くようになってしまったのだろう。悩んだところで答えは見つかりそうもない。

 「徐晃、警羅に行くぞー」

 「あ、はい!隊長、すぐに行きます!」

 声をかけられただけでドキッとしてしまう。

 ホントに自分はどうしてしまったのだろうか。華琳様〝一番〟だった筈だったのに・・・。

 

 ――徐晃 公明、五胡侵攻の直後に警備隊に入隊した少女である。

 しかし、この少女は桂花ほどでないにしろ、彼女とほぼ同種の人間で〝華琳様大好きっ子〟なのである。

 しかし、一刀が帰還して、警備隊に戻った時・・・なんと華琳は彼女を一刀の部下としてつけたのだ。

 もちろん、男嫌いの彼女は猛抗議したものの、華琳には軽くあしらわれてしまい・・・挙句の果てには同士と思っていた桂花にさえ。

 『あら、お気の毒に、孕まされないように気をつけなさいね』

 と嬉々として告げられてしまう始末。

 おかげで不安いっぱいになってしまったのだが、共に仕事をこなしていくうちに、一刀の無自覚な優しさに触れ、次第に目で追うようになったのだ。

 

 (あう・・・隊長の何気ない笑顔にドキドキしてしまいます)

 最近では、一刀の顔を直視しただけで茹だってしまいそうになるのだ。

 おかげでうつむく回数が増えてしまい。

 (隊長に変な子だって思われてないでしょうか・・・心配です)

 「・・こ・・・、じょ・・・・・・、徐晃!」

 「はひゃ!」

 なんだこの声はと思ってしまう声が思わず出てしまった。もう、色々滅茶苦茶で支離滅裂な思考状態でわけがわからない。

 「大丈夫?体調が悪いなら、どこかで一休みしてもいいんだからな?」

 「いえいえ!全然大丈夫ですから、警羅を続けましょう!休憩は、それが終わってからです!」

 「あ、ああ・・・わかった。そうしようか」

 「はい!行きましょう隊長・・・」

 一刀と肩を並べて歩くことにささやかな幸せを感じる徐晃。だが、ここで彼女の天敵が登場するのだった。

 「一刀様♪・・・と――か」

 一刀に対しては心から喜びの気持ちを含めた声を。そして徐晃にあからさまに不満そうな声を贈ったのは凪だった。

 

 

 「・・・貴女には学習能力がないのかしら、凪」

 「なんだと?」

 二人の声にはすでに棘どころか殺気の刃がギラギラと感じられる。

 一刀の背も額も既に冷汗と脂汗がにじんでいた。

 「隊長の前で真名を呼ばないで頂戴って丁寧にお願いした筈よ?」

 「貴様、一刀様に真名すら許していないというのに並んで警羅とは・・・相変わらず嘗めた真似を・・・」

 「貴女には関係ないでしょう?隊長に終始尻尾を振ってるワンちゃんにはね」

 「・・・・・・いい度胸だ。涅槃に逝く用意は出来たということか・・・」

 「それは貴女に聞きたかったことね?隊長に何か遺言でも残しておいたらどう?」

 凪も徐晃も既に互いの得物を装備している。

 凪は非番で武器など持ってなかった筈なのに、何故か〝閻王〟を身につけており。

 対する徐晃も、自身の得物である戦斧・〝天魔伏滅〟を握っている。

 この二人、互いに〝氣〟の使い手で、本当なら仲がいいだろうと一刀もかつては思っていたのだ。

 ――だが。

 「貴様の半端な辛い物好きといい・・・その態度といい・・・気にくわなかったからな」

 「あら、こちらの台詞ね。あんな・・・唐辛子以外の形容詞がない食べ物を食べてる貴女のほうがよっぽど気に入らないわ」

 「・・・」

 「・・・」

 ――激辛派と中辛派。

 実にくだらない――もとい、二人にとっては死活問題らしく、一貫してこの事にこだわる二人はとにかく仲が悪く、真桜と沙和も手を焼いていたそうだ。

 至近距離で睨みあう二人に、ここで鉄槌が振り下ろされる。

 「いい加減にしろッ!」

 

 ――ゴガンっ!

 

 「「痛っ!!」」

 一刀の怒りと〝氣〟のこもった拳骨が、二人の脳天にお見舞いされたのだ。

 あまりの痛さに二人ともがうずくまって頭をしきりに擦っている。

 「練兵場や城内の庭とかならともかく、こんな街中で本気で戦おうとする奴があるか!春蘭だってここまで過激じゃないぞ!!」

 

 ――同時刻。

 「はーっくしょっん!!」

 「どうした姉者、風邪か?」

 「よくわからんが、風邪でないことだけは確かだ」

 「案外、北郷が姉者の事を思っているのかもしれんな」

 「///そうか、そうだといいな」

 「ふふっ・・・最近はやけに素直だな」

 「からかうな、秋蘭」

 

 ――とまあ、こんなことがあっていたそうだ。

 後に今日の一刀の言葉が・・・経緯は不明だが、春蘭の耳に届き七星餓狼を片手に追われることとなったそうだ。

 

 さて、場所を戻すとしよう。

 

 一刀の逆鱗に触れた二人は、彼の前で絶賛正座中だ。

 「「・・・・・・」」

 一刀の説教が堪えたのか、二人ともしょんぼりとしている。

 「反省してる?」

 「「はい」」

 現状、無駄に息がぴったりな二人は、声のトーンもほぼ同じだ。

 道を遮っていて、本来ならば迷惑この上ない状況なのだが、一刀は完全に怒髪天の状態だった。無理もない、この二人があのまま激突していたなら死傷者さえ出ていた可能性もあったのだ。

 「・・・・・・はぁ・・・二人とも、立っていいよ。流石にこれ以上は皆の迷惑なだけだしね。まぁ俺がキレたせいなんだけど」

 と、ここまで言ってまわれ右をして街の者たちに頭を下げる。

 だが、これまでの一刀が築き上げた信望の賜物か特段、咎められることもなく事無きを得るのだった。

 

 

 ――翌日。

 「二人とも、私が何を言いたいのか分かっているわね?」

 先日の一刀のお叱りの何倍も恐ろしい覇王様のお叱りに、凪も徐晃も戦慄の表情で正座している。

 「一刀がいたからいいようなものを・・・」

 「「・・・・・・」」

 何も言い返せない二人。反論の一つでもすればどうなるかが分かっているからだ。

 「まあ。いつまでもこうしたままでいてもらっても時間の無駄ね。いいわ、二人とも、殴り合いなさい・・・それこそ気のすむまでね」

 「「は?」」

 「正直、私から見ればどっちもくだらないのよ。中辛だ激辛だなんてね。だから自分たちが納得するまで気持ちをぶつけあいなさい」

 「華琳様・・・華琳が辛いものがお好きでないことは存じておりますが、凪と同列視されるのだけはご遠慮して頂きたく存じ上げます」

 フィッシュ・オン!徐晃が釣れた。

 「貴様、自分こそが正しいとでも思っているのか?」

 しかも凪がついて連続ゲットだ。

 互いを睨みあい殺気を迸らせる二人。

 既に火蓋は切って落とされた。前回、不完全燃焼で終わってしまっていた二人はすぐに燃え上がってしまう。

 

 「気の済むまでやりなさい」

 

 聞こえていないことを承知で華琳は告げ、練兵場を後にした。

 「あの二人は〝同じ〟ね。・・・さて、今日の分も含め一刀にはとことん付き合ってもらいましょう」

 そんなことを呟く華琳の後ろでは、女の戦いが始まっていた。

 

 

 ――バチィィィィンッ!

 互いの頬にお見舞いされる平手打ち。

 始まりは無言だった。

 ――バチィィィンッ!!

 続けざまに二発目、これも同時だった。

 「・・・っ」

 「っ・・・」

 それからも、ひたすらお互い同時に叩き続ける。

 

 日が昇りきった頃、とうとう言葉が混ざり始める。

 「私は、貴様の事が気に入らない」

 言い放って、叩く。

 「くっ・・・・私も、貴女の事が嫌いよ」

 そして叩く。

 当然だが、二人の頬は既に真っ赤に腫れている。

 「・・・痛、味の好みなんてどうでもいい。私は、貴様の事が嫌いなんだ」

 バッチィィィン!!

 「痛ぅ・・・偶然ね、私も同じ意見よ!」

 バッチィィィン!!

 「一刀様に真名を教えるつもりもないのに・・・馴れ馴れしくして!」

 「貴女には関係ないことよ!」

 「なんとも思っていないのなら、隊を持って独立すればいいだろう!!」

 「思ってないわけなんてないでしょ!!」

 さらに力を込めて凪の頬を叩く。

 「私が、隊長の事を・・嫌いなわけなんてないでしょ!!」

 バチィィィンッ!!

 思いっきり〝氣〟の籠った平手打ちが凪の頬を襲う。凪が危うく足を崩しそうになった辺り、かなり重い一撃だったのが伺える。

 「だったら、その証を・・・何故、真名を預けない!!」

 先の徐晃と同様の平手打ちを返す凪。

 「殿方に真名を預けることがどれほど大事なものか知っているでしょう!」

 「それを預けることも出来ないくせに一刀様と共にいるなど!」

 「隊長が貴女達の夫になっていなかったらそうしたわよ!!」

 「!ぐっ・・・・」

 ぼろぼろと涙を流しながら徐晃の想いが溢れた。

 「私は、貴女達ほど隊長と時間を過ごしたわけじゃないの!隊長がいなかった時の苦しみなんて知らないのっ!・・・私が隊長の事を好きだって思うようになったのは最近で・・・貴女や華琳様達なんかに比べたら・・・私の想いなんて・・・想いなんて・・・」

 「――・・・」

 「私は、男の人なんてって思ってたのに・・・なのに、好きになってしまって・・・・・・春蘭様が一騒動起こして隊長が成都に行った話を聞いたときだって、私は怖かった!隊長がもし戻ってこなかったらって・・・だからっ!元気に戻ってこられたら、真名を預けようと思ったのに・・・私も、あの人の傍にいつづけるんだって・・・・・・なのに、隊長には運悪く会えない日が続いて・・・やっと会えたと思ったらあの人はもう、貴女たちと生涯を共にする誓いを契っていて・・・」

 徐晃の言う〝運悪く会えない日〟というのは、戻ってきてすぐに一刀は春蘭の破壊した指輪の修繕とウェディングドレスの確認に追われていた日々の事である。

 

 ――つまり、ある意味では春蘭が原因とも言えるわけなのだ。

 

 「その程度で一刀様への思いを諦めるな!」

 「なっ!」

 凪は目の前にいる少女が、かつての自分と重なって見えた。

 何かに理由をつけて〝自分は・・・〟や〝私なんかが・・・〟と、とにかく悲観的だった自分。その度に一刀に救われていた自分。

 

 ――本当はわかっていた。どうしてこんなに気に入らないと思っていたのかが。

 

 ――この少女は、そんなかつての自分に近い感じがしていたのだ。

 

 だから、気に入らなかった。

 あの時の・・・・・・一刀様を困らせてばかりで、何もかも自分一人で背負いこもうとしていた 自分を見ているようで、腹が立ったのだ。

 「好きだと思う気持ちに!時間の長さが関係あると思うな!」

 バッチィィィン!!

 渾身の一発が徐晃にお見舞いされる。

 「あっうう・・・痛・・・」

 「貴様は、ただ恐れているだけだ!かつての私の様に・・・『もし』、『でも』、『きっと』と何かに理由をつけて今の居心地のいい時間のままでいようとする。おかげで、真桜たちに怒られたがな・・・。貴様も、同じだ・・・今の時間が居心地良すぎて壊れるのを恐れる。・・・だがな、以前の私の・・・そして、今のお前がしている事は・・・・・・一刀様への侮辱だ」

 「私は侮辱なんて!」

 「いや、・・・結果としてそうなる。〝私の入る余地なんてない〟というのはつまり、一刀様の器が小さいと言っているのと同じだ」

 「!」

 「計り違えるな・・・あの方の器は・・・華琳様よりも大きいのだからな」

 「そんなことわかってるわよっ!」

 ――バチンッ

 「わかってない!」

 ――バチンッ!

 「わかってる!」

 「わかってない!」

 

 ――それから二人は倒れるまで同じことを言い合い、互いの頬を叩きあった。

 

 ――どうでもいい筈の理由はいつの間にかどうでもよくなくなっていた二人の女の戦い。

 終わった頃には月が昇っていた。二人を優しく、慈しむように照らしている。

 「私は、自分の気持ちに素直になっていいのかしら?」

 「まだそのようなことを・・・いいにきまっているだろう」

 

 それからほんのわずかな間をおいて、二人は声をあげて笑った。

 何が可笑しかったのかはわからない。

 だけど、二人の表情は・・・とても清々しい笑顔だった。

 

 ――するとそこで。

 「ようやく終わったみたいね」

 すっかり存在を失念していた――その間に一刀とデートしてきた――覇王様のお声が真上から聞こえてきた。

 「か、華琳様」

 「もうしわけありませ・・・」

 「しばらく寝てなさい。フフっ、それにしても酷い顔ね?」

 華琳の言うように、二人の顔は散々叩きあったせいで真っ赤に腫れてしまっている。

 これで体の方は全くの無傷なのだから面白い。

 現に華琳が口元に手を当てて笑うのを堪えているのだ。

 「ですが、気分はスッとしました」

 「私も――と同じ気持ちです」

 「それは結構よ・・・・。さて、――」

 「はい」

 「その傷が癒えたら、一刀に真名と想いを伝えなさい」

 「・・・はい」

 徐晃に、反対する理由は一つもなかった。

 

 

 「ししし・・・エライ美人になったやんか、二人とも」

 「真桜ちゃん、イジメちゃかわいそうなの」

 

 ――お前っだって庇う気なんてないだろ、顔が笑ってるぞ。

 

 見事なまでに一致する二人の内心。

 「ま、一刀には面会謝絶にしとるから心配せんでええで」

 「華琳様も念押ししてくれてるから心配ないの」

 「「・・・・・・」」

 全然安心できなかった。自分の部下や妻が医務室に運ばれたと聞いて、あの一刀がおとなしくしている筈なんてないと二人は思っていたからだ。

 そして、噂をすれば影といいまして。

 「二人とも大丈・・・・がはっ!」

 なんか鈍い音と共に聞きなれた声が遠ざかって行った。

 「流琉に協力してもろうてな、一刀が近づいてきたら吹っ飛ばしてもらうように頼んどいた」

 「対策ばっちりなの」

 沙和がVサインをしているが扉の向こうで。

 『兄様、大丈夫ですか!あの、悪気はないんです!本当なんです!・・・・・・って、兄様が白目むいて泡を吹いて・・・あわわ、誰かー!介抱を手伝ってください!』

 割と笑えない状況になっているらしく、何人もの足音が聞こえてくる。

 ちなみに、仕掛け人である真桜と沙和の顔もどこか引き攣っていてどこかぎこちない。

 何せ、流琉の一撃が横撃されたのだ・・・しかも不意打ち。

 「あかん!やっぱ笑ってられへん!沙和、行くで!二人は大人しゅうしといてや!」

 「りょ、了解なの!!」

 猛ダッシュで医務室を後にする二人、―――もう少し静かに出来ないのだろうか。

 まあ、慌てる気持ちは分からなくもないのだが。

 

 顔以外は特に問題のない二人は、安静を言いつけられて医務室に残された。

 「さっきの音・・・本当に笑えなかったんだけど・・・」

 「ああ・・・手合わせの最中ならまだしも、完全に普段の状態だからな・・・しかも、ただの仕掛けでなく相手は流琉」

 「・・・華陀さんがいるからきっと大丈夫よ」

 「ああ・・・そうだな」

 

 ――もう、信じるより他なかった。

 

 

 ――それから半月ほどして。

 「お待たせ、ごめん遅くなって」

 「いえ、・・・あの、お体の方はもう大丈夫でしょうか?」

 「あははは・・・まぁ、自業自得なわけで」

 流琉の〝伝磁葉々〟をモロに喰らった一刀は、〝氣〟による身体機能の活性化による自己治癒をもってしても半月の時間を要したのだ。

 ちなみに、徐晃と凪に至っては・・・ほんの数日で回復してしまったらしい。

 「真桜の仕掛けぐらいは予想できてたんだけど・・・まさか流琉とは・・・しかも本気の一撃。生きててよかったよ、俺」

 ――ええ、まったくです。

 想いこそすれ口にはしなかった。何故なら、そのアイデアを出した真桜と沙和、そして実行した流琉は、華琳からありがたい御褒美を頂いたからだ。

 

 ――内容は、一刀と凪と徐晃の、休んでいる間の書類整理、三人はずっと書類とにらめっこである。

 「しばらく、字ぃなんて見たないわ」

 「沙和もなの~」

 「・・・・・・何で私は賛成してしまったのでしょう」

 終わった後、三人はこう言ったそうだ。

 

 話しを戻そう――。

 月夜の晩に徐晃に呼び出された一刀は、城壁の通路で月明かりの下で彼女と対峙している。

 「ま、俺の事はもういいとして・・・大事な用事って何かな?」

 「え・・っとですね・・・隊長は、御結婚されてしばらく経ちますよね?」

 「ああ、もう半年過ぎたかな?・・・それで?」

 「私は皆さんほど長く、隊長と時間を過ごしたわけではありません」

 「・・・・・・」

 「一年にも満たない程度しか私は、貴方の事を知りません。・・・・・・だから、私は・・・凪が嫌いでした。彼女は、私が望んでいる〝セカイ〟にいたからです。それを自覚したのは・・・隊長の事が好きなんだと気付いた時でした」

 いきなりの告白に戸惑いを隠せないが、徐晃は構わずに続けた。

 「最初は、〝何か気に入らない〟程度だったんです。警備隊で共に仕事をするのも別に嫌ではありませんでした。ですが、隊長が天からお戻りになられて・・・貴方のもとで仕事をこなすようになって時間を過ごしていくうちに、私の中に在った〝男なんて〟や〝華琳様が一番素敵〟といった思いが、だんだん薄れていき始めたんです。まぁ尤も、隊長以外の殿方なんて未だにアウトオブ眼中なのですけど」

 ――なんでそんな言葉を知ってるの?

 と言いたい気持ちでいっぱいなのだが、風の前例もあるので深くは追求しないことにした。この事にいちいち驚いていてはキリがないからだ。

 「・・・話が逸れてしまいましたね。・・・コホン、で・・なのですが、隊長の事を意識し始めた時、春蘭様が起こしたひと悶着で成都に行かれたたことがありましたね」

 「ああ。まあ、アレは俺も悪かったんだけどね」

 苦笑するしかない。華琳が倒れたことも知らずに呑気に夜遅くに帰ってきたのだから、春蘭が怒るのも仕方がないと今でも思っている。

 「あの時、隊長が戻ってこられたら真名をお渡ししようと思っていたんです・・・でも、隊長とは会えずじまい・・・ようやく会えたと思ったら、既にご結婚された後。その時に諦めてしまったんです。〝今でも幸せだからいいんだ〟と・・・私、隊長に拒まれたらと気の事を考えると怖くなってしまって・・・現状に甘えるようになってしまったんです。おかげで凪の幸せそうな顔を見ると、はらわた煮えくりかえりそうになるのもしょっちゅうでした。凪も気付いていたんでしょうね。だから、本当は食べ物の嗜好で揉めてたわけじゃないんです・・・・・・。お互いに見たくない自分を見ている気がしていたからなんですよ」

 初めて知る徐晃の本当の気持ち。そして、一刀は改めて知る自分の間抜けさに腹が立っていた。

 (大切な人の涙を嬉し涙に変えてやるって決めていたくせに・・・・・・俺は、また傷つけてる)

 「この前の怪我はですね、華琳様の計らいで徹底的に凪と叩きあったんです。平手で、思いっきり・・・互いの不満が無くなるまで徹底的に」

 「ひょっとして、俺だけ面会謝絶だったのって・・・」

 「はい、腫れあがった顔を見てほしくなかったんです。流石に・・・流琉は予想外でしたけど」

 ――納得、なら・・・アレに文句は言えない。死なずにすんでよかったよ。

 「決着が着く直前、凪に言われたんです・・・〝一刀様への思いを諦めるな〟と・・・だから、私は貴方に思いを伝えます」

 「・・・・・・」

 「隊長・・・いえ、一刀様、私は・・・」

 今まで見たどの彼女よりも真剣な眼差しで、飾り気のない言葉で――。

 

 「貴方が好きです」

 

 ――想いを伝えた。

 

 

~epilogue~

 

 

 

 ――ある、昼下がりの中庭にて。

 「旦那様、気持ちいいですか?」

 「もちろんだよ、〝紗耶〟」

 自分の真名を呼ばれてはにかんでしまう。

 

 ――告白したあの日、一刀に自分の真名である〝紗耶〟を預けた。その時から彼女は一刀の事を〝旦那様〟と呼ぶようになったのだ。

 もちろん、彼女の気持ちを受け入れた一刀は、彼女の分も指輪とウェディングドレスを用意した。

 晴れて一刀の妻の一人になった紗耶は、何か吹っ切れたように日々を幸せそうに過ごしている。

 相変わらず凪とはしょっちゅう揉めているが。

 

 そして今、一刀をこうして膝枕をして幸せな気分に浸っているわけである。

 「旦那様・・・私、とっても幸せなんですよ」

 「そっか」

 「はい♪」

 その笑顔が見られるだけで俺は幸せだよ――と言おうとも思ったのだが、こうして眺めていたかったから言わなかった。

 すると――。

 「母上、父上は起きましたかー?」

 元気な声が聞こえてきた。声の主は二人が一番よく知っている人物。

 「ええ、起きましたよ。徐蓋ちゃん」

  紗耶が語りかけるのは愛娘の徐蓋だ。

 「それじゃあご飯の時間なので行きましょう。凪様や鎮姉さんもまってます」

 一刀を起きあがらせ、両親の手を握り引っ張っていく幼い我が子に二人の顔には、自然と笑みが広がる。

 「紗耶、今・・・幸せかい?」

 突然の質問に少し吃驚したものの、すぐに百点満点の笑顔を見せ――。

 

 ――「幸せですよ」

 

 その短い言葉には、紗耶の想いの全てが詰まっていた。

 

~FIN~

 

 

~あとがき~

 

 

 

 まずはじめに・・・ようやくの新作、大変お待たせいたしました。

 今回のお話は恋姫に未登場のヒロインを登場させました。

 事の経緯としては、いろんな方の作品を呼んで一番(?)出てるキャラである徐晃さんを起用してみた次第です・・・いかがだったでしょう?

 さて、本作品は・・・一刀が華琳にプロポーズしてからおおよそ半年後を主体としています。つまり、凪は既に懐妊しています。じゃあ、こんなことさせていいのかといえば・・・・・・そこは眼をつむってくだされば・・・

 キャラクターのイメージとしては不動 如耶さんを主体に考えていただけたら・・・武器の戦斧にかんしては、個人的な感性で命名した次第であります。

 さらに補足ですが本文中に徐晃(紗耶)の真名のところが伏せてありますが、最後まで読んでいただいた後、そこに真名を重ねて読んでいただけたら、違った面白さがあるのではと思いこのような形にしてみました。

 面白かったと言っていただけたら励みになります。

 力不足の私は、ネタ不足で中々執筆が進まない状況ですが、変わらず読んでいただけたら嬉しい限りです。

 では次回作でまた――。

 Kanadeでした

 

 


 
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