第十四.五章~一刀の洛陽での平穏な三日間~
一日目・・・。
「みーーんなーーーーー!!!ありがとーーーーー!!!愛してるーーーーー!!!」
「ほわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「また見に来てねーーーーーーーーーーー!!!」
「ほわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「それじゃ、また次もよろしくねーーー!!!」
「ほわあああ!!!ほわあああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
謎の武装集団による洛陽襲撃からまだ丸一日経たない頃。
街の各所で、すでに復旧作業が展開されていた。大工達が汗水垂らして木を削り、柱を
立て、釘を打ちつけ、壊れた家や店を直す。街の人達や子供達も協力し合い、資材の
運搬、食事の用意をしている中、街の人達を激励するべく、数え役萬☆姉妹こと張三姉妹
が今でいうチャリティーコンサートをしていた・・・。多くの観客の最後列より三歩ほど
下がった所で俺は彼女達の活躍を見届けていた。
天和達もしばらく見ないうちに、とても魅力的な女の子になった。もうあの頃の三人
とは別の次元にいるような錯覚を覚えた・・・。彼女達に会いに来たわけだけど・・・
どうやら俺が出る幕はなさそうだ。
今、午前の部が終わり、舞台の前にいた観客達はまばらになり始めた。俺もその
ひとごみに紛れその場を立ち去ろうとした。あの3人の頑張っている姿が見れた事だし、
昼飯食べて・・・と、そんな事を考えていた時だった。
「「かーーーずとーーーーーーーーー!!!!!!」」
「うん!?」
後ろの方から大音量で俺の名前が叫ばれ、ビクッと驚いた俺は反射的に後ろを振り向く。
が、それより先に俺の背中にドスンと2つの陰がぶつかってきた。
「ぬおッ!?」
ぶつかってきた衝撃で前のめりに倒れそうになったが、そこは両足で踏ん張る事で
耐えきった。一体何がぶつかって来たのだろう?その疑問はすぐに解決した。
「天和!地和!どうしてお前達がここにッ!!」
そう・・・、俺の背中にぶつかって来たのは張三姉妹の長女と次女の2人だった。
二人はそれぞれ俺横に回って腕を抱きかかえてくる。俺の腕がちょうど良く二人の胸の
谷間に割って入っているのが触感で分かった。嬉しい反面、周囲の男達の痛い視線を集め
俺は複雑な心境に立たされていた・・・。
「どうしてですって!?あんたがここにいるからに決まってるでしょ!!」
俺の左腕を抱きかかえる力を強めながら、俺の耳元で怒鳴る地和。
「一刀が一番後ろで見ているのが分かったから、でも私達の所に来ないから・・・
こっちから来ちゃった♪」
一方で俺の右腕にその豊満な胸を押しつけながら、俺の耳元で囁く天和。
そして、男たちの痛い視線がさらに強くなるのが分かった。
「あの大人数の中で見つけたって言うのか?」
「観客が沢山いても、その白い服はすごく目立つから。」
と、そこに張三姉妹の末っ子の人和が遅れてやって来た。
「って言うか一刀。私達に会わないで帰ろうとしてたでしょ!」
「うッ・・・。」
全くその通りです、地和さん。
「あ、図星何だ。むぅ~、何でそんな薄情な事をするの~!?」
気のせいか・・・、少し目が潤んでいる天和さん。
「あー・・・、いや、何と言うか?お前達を見ていて・・・、俺が出る幕は無いな
ぁ~って。」
そんな2人をなだめるのように、俺は言葉を選びながら言い訳をする・・・。
「確かに、世話役のあなたが出る幕はもうないわね。」
グサッ!!!
俺の胸に人和の無情な言葉が刃となって突き刺した。全く以てその通りです、はい。
でももう少し言い方がありませんか、人和さん?
「でも・・・、それは世話係としての話であって、あなたが必要ないという訳では
無いわ、一刀さん。」
「え・・・、人和?」
思わぬ人和の言葉に、俺はドキッとしてしまった。
「お帰りなさい、一刀さん。」
そう言った人和の表情はとても穏やかで優しさにありふれていた・・・。
「ただ・・・」
「あーーー!ちょっと人和ぉーーー!!何一人で美味しい所を持っていこうとしてるの
よーーー!!!お帰り、一刀!!」
「そうだよーーー!ずるいよーーー、人和ちゃーーーん!!!お帰り、一刀っ♪」
「え、別に私はそんなつもりは・・・!?」
俺がただいまと言おうとしたら、横で俺の腕を抱きかかえていた2人の姉がブーブーと
頬を膨らせながら、妹にいちゃもんをつける。妹はそんな姉達のいちゃもんに困惑しながら
言い訳をしていた・・・。
「・・・・・・・・・。」
どうやら、あの頃と何も変わっていないようだな・・・。
昼の刻が少し過ぎた頃・・・。
「北郷総隊長!!」
久し振りの警備隊の詰所にやって来た俺は中で待機していた隊員達に出迎えられた。
「久し振りだな、皆。」
俺は隊員達に軽く挨拶しながら中に入り、椅子に腰を降ろした。
「総隊長、どうぞ。」
そこに隊員の一人がお茶を運んで来て、俺に差し出した。俺はありがとうと言って
淹れたての熱いお茶をすすった。
警備隊での俺は総隊長という立場に置かれていた。あとで凪達に聞いてみると俺が
いなくなった後、俺に代わって凪が隊長になったわけだが、俺がいつでも帰ってきても
大丈夫なように、警備隊の全国化に備えてさらにそのワンランク上の総隊長をつくり、
それに俺を任命したのだそうだ。
要するに国の各地に配備された警備隊全てを取り仕切る一番偉い役所・・・。最も
それも形だけのもので実際、総隊長としての機能はまるで果たしていないのが現状であった。
「隊長。」
「隊長ー!」
と、そこに凪と沙和がやって来る。
「隊長~!沙和、お腹すいたの~!」
沙和が甘い声を発しながら俺の腕に抱きついて来る。
「飯はおごってやらないぞ。」
俺は無情にもバッサリと切り捨てる。
「え~!何でなのー!?可愛い部下がお腹を空かせているのにー!」
俺の腕に抱きつきながら、沙和はぶーぶーと頬を膨らませている。
「別に俺だって意地悪で言っているわけじゃない!
・・・実はさっき、張三姉妹と一緒に昼食を済ませて来たんだ。」
「天和ちゃん達にちゃんと会えたのー?」
「ああ、実は飯を食べようと入った店で季衣と流琉に会ったんだ。」
「季衣ちゃんと流琉ちゃんに?」
「そう・・・、で折角だからって皆で食べようって事になって・・・。」
全てを言い終える前に、凪と沙和はそのオチが分かったのだろう。二人揃って
あーと声を漏らしがらに聞いていた。だが、俺は取り合えず話を続ける。
「季衣が財布を忘れたって言うから、俺が立て替えたんだ。で、今の俺の財布は
こんな状態なんだ。」
そう言うと、俺は尻ポケットから財布を取り出すと凪に目がけて財布を放り投げた。
俺の財布をキャッチした凪は、俺に見てもいいのですかという目線を注いでくるので
俺は縦に頷いた。それを確認した凪は財布の中身を確認する。先に言ってしまうが
現在、俺の財布には小銭が数枚程度しか無い。凪の横から財布の中身を確認する沙和は
あ~っと言葉を探しながら、俺の顔と財布を交互に見ていた。
「えーっと、そのー・・・。隊長、わがまま言ってごめんなさいなの~。」
申し訳なさそうに俺に謝る沙和・・・。そうやって謝れると逆に寂しくなってしまう
だろうに・・・!なんて思っていると。
「隊長ー!おるかー、たいちょー!!」
二人に遅れて真桜が詰所に戻って来た。どうやら俺を探しているようだが・・・。
「ここだ、真桜!どうした?」
俺を手を振りながら、自分が居ることを真桜に教える。
俺の姿を見つけると、真桜はささっと俺に近づいて来た。
「隊長、悪いんやけど・・・万歳して。」
「・・・はっ?」
いきなり何を言っているんだ?俺は思わずポカンとする・・・。
「せやから万歳っ!両手を高く上げて、ばんざーいって!」
どういう訳か、真桜は俺に万歳させたいらしいが、一体何の為にだ?
「何で俺がそんな事をしなくちゃいけないんだ?」
俺はその理由を真桜に尋ねる。
「ええから早く万歳してや、ほら!ばんざーーい!!」
「・・・ばんざーい。」
俺の質問に答えず、早く万歳しろと急かす真桜。俺は仕方なく両手を高く上げて万歳した。
すると真桜は腰に巻かれたベルトに引っ掛けてある道具箱に手を入れるとそこから巻尺を
取り出す。その巻尺をビッと伸ばすと、万歳している俺の胸に巻きつけ胸囲を測る。そして
手際よく腰囲、尻囲も測る。測り終えたのか、巻尺を道具箱に戻す。
「ん、おおきに隊長。そんじゃウチはやる事があるから、ほなー。」
そう言って、真桜は詰所を出て行ってしまった。
「ああー、真桜ちゃーん!・・・行っちゃったの~。」
「・・・何なんだ一体?」
凪に話を振ると、凪は頭に?を浮かべながら首を傾げた。
「さあ・・・、自分にもさっぱり?」
その時、俺の脳裏に電撃が走り、バラバラだった線が1本に繋がった。
「・・・まさかあいつ。等身大俺人形を作る気なんじゃ・・・!!」
「隊長、それはさすがに・・・。」
「ないと思うの~!」
「ですよね~!」
そう言って、俺達は冗談に声を上げて笑いだす。
「「「・・・・・・。」」」
が、すぐさまその笑い声が消え、沈黙する・・・。
「俺・・・冗談で言ったつもりだったんだが、意外と・・・有りえるかも知れない
って今思った。」
「確かに・・・、真桜ならあり得るかも知れません。」
「等身大隊長人形か~、真桜ちゃんなら作れるかもなの~。」
「「「・・・・・・。」」」
そして再び、沈黙が流れる・・・。
その後、俺は凪と沙和に連れられ街の警羅に出ていた。陳留でも思った事だが
2年という月日は街の姿を変貌させるのには十分だったようだ。見覚えの無い建物が
至る所に建ち、人の出入りの流れも大きく変わっていた。街の復旧作業で街の人達が
道のいろんな所で分担された仕事をこなしていた。無論、俺達もその手伝いをした。
その時にお婆さんの差し入れである桃まんはとても美味しかった・・・。
街の皆が俺に駆け寄って来て、俺が帰って来た事を皆なりに喜んでくれていた。
そんな皆の顔を見ていて、ああ・・・、やっぱりここが俺の居場所なんだなと
切実に感じる事が出来た・・・。
「一刀ちゅわーーーーーーーーーーーーん!!!!」
とそこに、身の毛が立つような悪寒が走るような声が聞こえて来る。
俺達は足を止め、その声が聞こえる方向に顔を向けると、その向こうから砂塵が見えた。
俺を目をこらしてその砂塵を見る・・・。
「んぁ!?あ、あれは!!」
俺の目に一人の人間の姿が映る。
「貂蝉ちゃんなの~!」
沙和がその人間の名前を叫んだ。その名前を聞いた俺は思わず顔を引き攣らせてしまった。
「一刀ちゃーーーん!会いたかったわーーーーん!!!」
物凄い勢いで俺の目の前に顔を近づけて来るそのおっさ・・・いや、その自称
漢女(おとめ)の名は貂蝉。この洛陽の街で女性向けの服を売る店の主人だ。
しかしそれに似つかわしくない筋肉まっちょの紐パン一枚のその姿には、多くの人間が
気味悪がせ、恐怖に陥れた事か・・・。当然、俺もそんな犠牲者の一人であったわけだが、
話をしているうちに、凄く良い奴で純粋な心の持ち主である事が分かり、それ以降は
それなりに仲良くしていた・・・。貂蝉を見ていて、やっぱり人は中身が大事なんだと
気付かされたりもした・・・。
沙和は貂蝉と和気あいあいに女の子同士?の会話に花を咲かせている・・・。
その光景は端から見れば、異常に映る事だろう・・・。
沙和も最初は気味悪がっていたが、今みたいにいつの間にか友達の様に
仲良くなっていた。実際、俺も街の情勢をよく知っている事から貂蝉から色々と
話を聞いていたりはしていた。そう言えば、昔…春蘭にこいつの店を紹介したこと
があったっけ・・・。あの時は、結局店に入らないで別の店に行ったけど・・・。
「それより貂蝉・・・、お前こんな所で何をしているんだ?店はどうした?」
「へ?お店って・・・?」
「何を言っているんだ?店って言ったら服屋の事に決まっているだろう。」
「・・・あ、ああ!そうね服屋!私の服屋・・・、前の戦闘で滅茶苦茶になっちゃって
・・・およよ~。」
涙目に親指の爪を噛みながら、腰をくねらせながら崩れ落ちる貂蝉。ただ気持ち悪いの
一言につきる光景だ・・・。最初の頃だったら、拒否反応を起こしていたぞ。
「それじゃ、ここで何をしていたの~?」
そこに沙和が貂蝉にここで何をしているのかを聞く。
「前に話さなかったかしらぁ~?私、店を開く前・・・踊り子していたって。」
「いや、俺は初耳だ。」
「沙和もなの~・・・。」
貂蝉が踊り子だったなんて話は聞いた事がないが・・・。でもつまり、そう言う事
なのか?
「じゃあ何か・・・?店での営業が無理だから、仕方なく踊っていた、と。」
「もちろん、無料(ただ)で私の魅力ある踊りを披露していたの♪」
先程までの態度から一変、片足を上げてうっふんと舌を出してポーズを決める。
「反って寄りつかない様な気が・・・。」
そこにすかさず凪が突っ込みを入れる。確かに突っ込みたい気持ちは分かるが、
凪、どうしてそんな余計なことを・・・!!
「何か言ったかしら、楽進ちゃん?」
「え、あ・・・いえ、な、何も・・・!?」
ドスの聞いた声で凪に聞き直す貂蝉。凪は慌てて言い繕う。
「ま、まぁあれだよ貂蝉!俺達、まだ警羅の途中だから、さ!もう行くな!」
「あらそう?それは残念だわ~。折角だから私の!素敵で!美しい!魅力あふれる踊り
・・・!見せてあげようと思ったのに・・・。」
「そ、そうか!それは残念だー。じゃあまたな!!」
俺はそう言って、これ以上嫌な雰囲気になる前に二人を連れて貂蝉と別れた。
「ばいばいなのー!」
「失礼します・・・!」
「・・・・・・もう行ったわよ。」
貂蝉の後ろから一つの影が現れる。
「・・・ふむ。上手く誤魔化せた・・・、といった感じでしょうか?」
「あらぁ、何のことかしら?」
「・・・まぁ、いいでしょう。貂蝉、そちらはどうですか?ちゃんと力は
取り戻せているのですか?」
「お陰様で♪あと一日か二日でかんぺっき!」
「それは良かったですね。しかし、驚きました・・・。まさか、あなたとこうして
再び出会えようとは。」
「私もよ~。アレが私のいた外史を消滅させる前はねぇ・・・。」
「そういえば、あの方は?」
「さぁ~てね♪きっとこの外史の何処かで良い男でも探してんじゃないかしら?」
「はぁ・・・。」
「それで、そっちは・・・?左慈ちゃんは見つかったの?」
「いえ、全く足取りもつかめていません。一体何処にいってしまったのやら・・・。」
「そう・・・、あの子も困った子ね~。」
「最も、彼も同様・・・北郷殿を狙っているのは間違いありません。彼から目を
離さなければ、いずれ向こうから現れるでしょう。ですので、あなたには今後とも
監視を頼みます。」
「まっかせて頂戴!!だから干吉ちゃんも奴等の動きを掴んでちょうだい!」
「はい・・・。お任せを。・・・ああ、それともう一つ、彼の監視を併せて体の
異変も逐一報告して下さると助かります。」
「体の異変?どういう事なの?」
「言葉通りですよ。彼にもしもの事があれば、草葉の影で見ている南華老仙に会わせる
顔が無いので・・・。」
「そう・・・、老仙ちゃんはもう・・・。」
「はい・・・。ですが、彼は自分の役割を全うしてくれました。後は我々が彼の遺志を
継いで・・・。」
そう言って、影は再び姿形を消した・・・。
「・・・そうねぇ~。」
と、あさっての方向を見る貂蝉であった。
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こんばんわ、アンドレカンドレです。
前回、朱染めの剣士の正体が分かって来た感じで終わった
第十四章。さて、今回は所かわって話を魏の一刀君達に焦点
を合わせ、第十五章につなぐための布石をとして十四・五章
を三部構成で展開します。早めに投稿するつもりです。
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