No.903568

紫閃の軌跡

kelvinさん

外伝~西ゼムリア通商会議 ジオフロントの戦い~

2017-05-01 13:00:48 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2148   閲覧ユーザー数:1983

~クロスベル自治州 オルキスタワー地下 ジオフロントC区画~

 

ロイドらがテロリストを追っているその頃、その相手であるテロリストらは二手に分かれ、共和国側―――民族主義のテロリストらはC区画の奥深くにまで到達していた。

 

「くっ、まさか大統領を仕損じるとは……!!」

「だが、飛行艇には爆弾を仕掛けている。それが起動すればお陀仏だ」

「それに、それが万が一ダメでも、我々が逃げ延びさえすればいくらでも機会は……」

「あると思っているのか? お前たちに」

「なっ!?」

 

決意を新たにしたところで割って入る声にテロリストらは声のした方角へ視線を向ける。その方向の先にいたのは、各々武器を手にしている人物たちであった。

 

「何者だ!? 我々の邪魔をしようというものは!?」

「クロスベル警察局長、マリク・スヴェンド。貴様らに複数の罪状がかかっているため、この場で拘束させてもらう」

「なっ、<驚天の旅人>だと!?」

「だが、貴様一人で我々全員に敵うとでも思っているのか!?」

「まー、本気を出せば軽く捻ることはできるだろうが……念には念を入れさせてもらっている」

 

マリクがそう呟くと、彼の両翼に並び立つ数人の人物。執事服の銀髪の青年と動きやすい服装を身に纏った金髪の女性。そして双十字槍を携えた少女。彼らはマリクにとって一番信を置ける人物らでもある。

 

「クロスベル警察捜査一課上級捜査官、エドウィン・ウォルター。貴殿らを拘束させていただきます」

「同じくクロスベル警察、リグレット・ジゼル警視。数々の罪により、貴方方を拘束します」

「……クロスベル警察、クルル・スヴェンド警部。めんどいから拘束するね」

 

テロリストらは知る由もないが、彼ら三人は『翡翠の刃』に属していた猟兵の中でもずば抜けた実力を併せ持っている。執事服で戦闘などと思うかもしれないが、その服装にはエドウィンなりの拘りがあることをマリクをはじめ他の面々も理解しているので、特にあれこれ言う者などいない。

 

「なぜ警察がここに網を張っているのだ!? あのガキたちの差し金か!?」

「ガキたち……おそらくは支援課の方々ですね」

「だろうな……それはともかくとして、疑問に答える義理をテロリスト風情に持ち合わせていないんでな。各員、戦闘開始。クルル、間違っても殺したりするなよ?」

「解ってるけど、一人ぐらいは吹っ飛ばしてもいいよね?」

「ああ、それに関しては方角さえ間違えなければ『問題ない』」

「さて、上司殿の手を煩わせる前に片付けると致しましょう」

「くっ、こちらも戦闘開始だ!! 警察の狗に成り下がった猟兵などたかが知れている!!」

「おう!!」

 

治安組織に属しているからと言って実力が落ちたと判断したテロリストは哀れというほかないが、それを悔やむのは戦闘後……まさに『後悔先に立たず』という結果になるとは思いもしないだろう。それは彼らだけでなく、D区画に逃れた帝国側―――<帝国解放戦線>らも同様であったのは言うまでもない。

 

 

~クロスベル自治州 オルキスタワー ジオフロントD区画~

 

テロリストらを次々と圧倒していくクロスベル警備隊の司令―――<猟兵王>レヴァイス・クラウゼル。念のために彼の信を置いている人物を二人ほど逃亡しないように包囲していた。ついには立っている兵士が一人……“G”ミヒャエル・ギデオンは悔しさを顔に滲ませていた。だが、ここであの人物の身勝手を許すわけにはいかない。ギデオンがとった行動は

 

「くそっ!!!」

「!?」

「煙幕!? 団長!!」

 

スモークグレネードによって辺りが煙に包まれるが、レヴァイスは周囲を警戒しつつただの剣圧でその煙を吹き飛ばした。気が付けばギデオンの姿はそこになかったものの、血の跡が点々とその行先を指し示していたが……レヴァイスは息を吐き、自らの得物を納めた。

 

「無事ですか?」

「まぁ、あの程度の輩だから自爆ぐらいは覚悟していたが……正直そのほうが奴さんにしてみれば良かったのかもしれないな……生き残ればの話だが」

「追わなくてもいいんですか?」

「こちらには残った連中の捕縛があるからな。さっさと片付けてお客さんを待つとするか……それに、元々最低一人はそうするつもりだったが」

「ここまでえげつない策を考え付くとは……流石は団長の友人というべきか」

「敵に回したくねえ奴だがな」

 

逃げた奴を追うのは簡単だが、その前に無力化したテロリストらの捕縛が最優先であるとレヴァイスは述べ、テラトレイズとアルティエスは彼の言葉に頷き、素早くテロリストらの捕縛処理を済ませる。そうでなくとも、おそらく彼の逃げた先に待っているのは単純な死よりも残酷な結末に他ならないが。

 

テロリストらを捕縛し、念のために自殺防止もかねて猿轡をかませ終わったところで、ギデオンが逃げて行ったと思しき奥の区画から十数人の集団が姿を見せた。その先頭を歩く大柄な男性の姿……その右手に持つのは先程逃げて行ったギデオンと思しき人物の身体。お互いの姿を確認したところで、男性は右手に持っていたものを前方に放り投げた。それは紛れもなくギデオンであり、既に息絶えていることは明白であった。

 

「やはり、というべきか……<赤の戦鬼>シグムント・オルランド」

「久しぶりだな、レヴァイス・クラウゼル。警備隊に入ったという噂は聞いていたが、そこまで落ちぶれるとは……貴様と一騎打ちをした兄貴が泣くぞ」

「落ちぶれたつもりなどない。だが、今の立場にいる以上どんな言葉も受け入れよう……ここに来たということは、そいつだけじゃ物足りないと解釈してもいいのか?」

「まあ、そういうところだ。邪魔立てするようなら、貴様とて容赦はしない」

 

『赤の星座』の目的はテロリストの処刑。その後ろ盾にあるのは帝国政府の委任状。すでに息絶えているギデオンだけでも十二分な仕事だというのに、その全滅すらしようとするあたり彼らの性質をうまく利用したものだとレヴァイスは内心で思う。だが、彼らの思う通りなどにさせるつもりなどない。

 

「そうか……なら、テロリスト捕縛の公務執行妨害もプラスした形になるが……一時的とはいえ国際犯罪組織『身喰らう蛇』に加担した“準一級国際犯罪組織”『赤い星座』。リベール王国の協力要請に基づき、貴様らをここで拘束させてもらう」

「へぇー、パパやシャーリィたちをその程度の数で拘束するつもり?」

「いや、違うな。こちらの持ちうる切り札……それも切らせてもらう」

 

「はぁ、また『赤い星座』絡みかぁ」

「そうぼやくな、レイア。二人の相手はこちらで受け持つ」

「そういうことになるかな」

 

するとシグムントらの背後を突く形で姿を見せた三人―――アスベル・フォストレイト、シルフィア・セルナート、レイア・オルランドは各々武器を手に構えた。ここに来るまでに姿はおろか気配すら感じなかった彼らの登場に『赤い星座』のメンバーは驚きを隠せずにいた。

 

「なっ!? お嬢だけでなく……!?」

「<紫炎の剣聖>に<銀隼の射手>もだと!?」

「最大の戦力に最大の切り札をぶつけるのは戦における最善の常套手段。それはアンタがよく知っているだろう、<赤の戦鬼>。さて、はじめようか」

 

そして、ほぼ同時刻……ジオフロントC区画でも同様の状況になっていた。

 

 

~クロスベル自治州 オルキスタワー地下 ジオフロントC区画~

 

マリクら四人の前に姿を見せたのは『黒月』の面々。それと彼らに雇われている<銀>の姿もあった。彼らに問いかけるようにマリクが質問を彼らを率いている人物―――ツァオ・リーに投げかけた。

 

「そちらの方向に逃げたと思しき奴が一人いたはずだが、そいつはどうなった?」

「ああ、血相変えて逃げてきたテロリストですか。その方でしたら既に地獄に堕ちたものかと」

「成程……で、それで任務は達成したのだろう? と言ってやりたいが……その様子じゃあ黙って引き返す気もなさそうだな」

「物分かりがよくて助かります。では、そちらにいるテロリストらを大人しく引き渡していただけますね? 許されなくとも実力行使で行かせていただきますが」

 

予測通りのツァオの回答にマリクは一息吐き、真剣な表情でこうつぶやいた。

 

「交渉は決裂……いや、“準一級国際犯罪組織”相手に何を言っても無駄だったか」

「なっ!? いったい何を言ってる!?」

「エド、例のものを彼らに見せてやれ」

「了解しました。―――貴方方『黒月』はリベール王国より“準一級国際犯罪組織”の扱いとなっており、この旨は既に各国へ通知している。並びに彼ら共和国側のテロリストは帝国側と共謀した関係により貴公らが裁く権利を一切有しない。もし妨害された際の生死は一切問わないことを既に承認済みということも」

「フフ……リベールもいよいよ本気ということですか。ですが、そのような事実を<不戦条約>提唱国が発表したとなれば大問題なのでは?」

「そのことならお前たちが知る必要はない。なぜならば……」

 

「お前らはここでほぼ全員消えてもらうからだよ」

「そういうこと。まぁ、どうしてもっていうんなら命乞いの言葉ぐらいは聞いてあげなくもないけどね」

「フッ、まさかこのような形でお前と共闘することになろうとはな、ルドガーにクルル」

 

『黒月』の背後から姿を見せたのはルドガー・ローゼスレイヴ、ルヴィアゼリッタ・ロックスミス、そしてレオンハルト・メルティヴェルスの三人。

 

「なっ!? ルヴィアゼリッタ・ロックスミス!?」

「<調停>に<剣帝>もだと!?」

「……成程、考えましたね<驚天の旅人>。だが、こちらには心強い友人もいる。その程度で我々と張り合えるとでも?」

「その程度、か………見くびっているのは果たしてどちらかな。クルル、ここからは加減なしだ。有象無象はお前一人で十分だろう。どのみち退く気もない相手に命の保証なんてする必要もない」

「……了解」

「フン、本気というわけか……(拙い……<絶槍>だけでも辛いのに、<調停>と<剣帝>の二人も加わった時点で勝ち目なんてない。)」

「そんじゃ、手筈通りに……そこの仮面さん、このルヴィア様が相手だよ」

「!?(なっ、いつの間に懐に!?)」

 

戦闘の火ぶたを切るように、ルヴィアゼリッタは<銀>を引っ張るような形でその場から引き離した。それを確認する暇も与えまいと、ルドガーはツァオと、レオンハルト少佐はラウと対峙する。

 

「私の相手は<調停>ですか。その程度の力で勝てるとでも?」

「阿呆か。手の内を初めから晒すなんざ『愚か者』のやることだ。最初からトップギアだ……少しでも気を抜けば、死ぬぞ」

「ツァオ様!」

「よそ見していいのか? 尤も、助けに行く隙など与えん」

「ぐっ!?」

 

それぞれの常識を超えた戦いが幕を開けた。

 

 

というわけで久々の投稿です。しれっと新キャラが増えていますが、モデルは名前から大体察していただければ解るかと(ぇ

閃Ⅲも更新されてキャラも少し増えてますね。ミュゼかわいい(直球)


 
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