No.900900

第40話<長い一日(下)>

しろっこさん

青年将校が艦娘を高く評価していること、さらに美保鎮守府が特別な期待を背負っていること。また札付きでありなが「みほちん」提督として推されたことに「私」は驚くのだった。

2017-04-11 22:59:07 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:308   閲覧ユーザー数:307

「新しい軍隊なのだと考えて欲しい!」

 

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マイ「艦これ」「みほちん」

:40話<長い一日(下)>(改)

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時計は11:30を過ぎた。

 

 将校のメガネを見るまでも無く気温は高くなっている。もう昼に近い。部屋の中も次第に暑くなってきた。

 

「私は艦娘には期待しているのだ」

青年将校は次第に白熱してきた。暑い……いや熱いぞ。

 

「例えば、この美保鎮守府にしてもだ……」

彼は大淀さんに聞いた。

 

「確か、司令が着任する際に敵の攻撃を受けたが艦娘で応戦したのだろう?」

 

急に振られた彼女は一瞬、慌てたようだったが直ぐに冷静に応えた。

「はい、当鎮守府唯一の戦艦『山城』が応戦して敵を撃破しました」

 

すると祥高さんも口添えをした。

「その際、戦場となった場所にたまたま居合わせた寛代ちゃんが弾着確認射撃の情報を流して補佐をしました」

 

「……」

一瞬、表情が変わった将校だったが直ぐに元の調子に戻った。

 

「なるほど……分かった」

一瞬、会議室に妙な空気が流れた。寛代……私は知っているが他の参謀たちは知らないだろう。

 

「寛代?」

「さあ……」

案の定、呉や神戸が顔を見合わせている。

 

 そういえば、あの子の名前は、ほとんど聞いたことが無い。恐らく美保以外の鎮守府に転属になったことが無いのだろう。

 もしかしたら建造されて間もないのか、よほどレアなのだ。

 

 将校は寛代のことは無視するようにして話を続ける。

「これだけコンパクトな鎮守府であっても、敵に対して効果的な攻撃力を持つ。今までの鎮守府、いや海軍そのものの常識を覆すのだ!」

 

確かに、コンパクトだ……敵もそうだけど。

 

彼は続ける。

「従来の兵器では歯が立たない敵に対抗できる唯一の手段と言っても過言ではないだろう」

 

「悔しいけど、そうですな」

「もはや陸海空の通常兵器では歯が立たないですよ」

頷く呉と神戸。

 

将校は言う。

「ただ艦娘という存在自体が今までの軍隊の考え方が通用しない。また現場の混乱も知っている」

 

「うん、嫌う提督も少なからず居ますよ」

これは神戸……よく知っているな。

 

青年将校は歩きながら、窓と反対側の壁に到達していた。壁を向いている将校の後頭部しか見えない。意外に小さい頭だな。

 

彼は振り返った。 

「艦娘は、まったく新しい軍隊なのだと考えて欲しい!」

 

将校は力説している。しかしその言動に、やたら「タメ」が多い。性格か?

「その先鞭(べん)としての、ここ美保鎮守府なのだ」

 

「え?」

私は意外に感じた。ここは、そんなに重要だったのか?

 

「そうなんですか?」

意外な事実に神戸も驚いたようだ。

 

 しかし呉は、あまり関心なさそうに、お茶をすすっている。おっさん!

さらに舞鶴に至ってはウトウトして眠そうだ。お前なあ。

 

 しかし神戸や呉、そして舞鶴に比べると、一番後から出来た美保なんて、取るに足らないだろう。伝統ある呉や舞鶴鎮守府様とは格が違うよな……。私が半分僻(ひが)んだ気持ちになっていると青年将校が私のほうを見ている。

 

 また、突っ込みか? ちょっと構えた。

「だから司令」

 

「ハッ」

今度は何?

 

「ここに君を着任させたのは過去の戦歴だけでない。艦娘たちの意見も広く聞いた上での軍令部の判断だと理解して貰いたい」

 

「……え?」

またビックリした。倦怠感が飛んで逃げた。

 

 時計は11:45を指している。

 

 将校の発言に周りの参謀たちも驚いていた。特に舞鶴は目を大きく開いている。彼の眠気も飛んで逃げたらしい。

 

将校はメモを取り出して続ける。

「君の戦歴を見たが……冬の舞鶴での艦娘との初陣は惨敗、負け戦だ。そして、その後の転属願い……」

 

「はあ」

力なく応える私……さすが良くご存知で。

 

だが彼は私を無視するように続ける。

「以後の艦娘が絡む作戦でのたび重なる命令無視もあるな」

 

 これには神戸や呉、そして舞鶴までが目を丸くして私を見ている。それは軍人として、あるまじき行為だ。さすがに、ちょっと恥ずかしい。

 

思わず頭をかいて赤くなる私。

 

将校は言った。

「本来なら、お前は閑職に甘んじるか下手すれば軍法会議モノだな」

 

 穴があったら入りたい。

 

しかし構わず彼は続けた。

「結果として、お前が多くの艦娘を轟沈や自沈から救ったことも知っているがな」

 

 ありゃりゃ? 祥高さんと大淀さんがこっちを見ている。今度は、ちょっと別の意味で恥ずかしくなってきた。まったく今日は晒し者だな。

 

 将校はメガネを押さえた。

「艦娘は非常に特殊だ。だからこそ我々も一兵卒としてではなく対等な戦士として敬意を持って接する必要があるだろう」

 

 将校の、この言葉で会議室の空気が一変した。私も参謀たちも正直、艦娘たちの価値を認めて居なかった。

 だが彼の説明を聞いていると艦娘に対する見方が根底から変わっていくような感覚だった。

 

 窓から入る海風は、いつもの美保湾の清々しい潮の香りに戻っていた。

 

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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サイトも遅々と整備中~(^_^;)

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https://twitter.com/46cko/

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PS:「みほちん」とは「美保鎮守府」の略称です。


 
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