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真・恋姫無双~魏・外史伝29

 こんにちわ、アンドレカンドレです。
今回から第十四章。3部構成でいきます。一刀君と華琳さん
が仲睦まじくしている頃、蜀と呉の人達は・・・?久方ぶりの呉の方々が登場する予定。衝撃の展開はまだまだあります。
 暑い日があったり、突然の雷雨があったりともうすぐお盆なのに・・・。温暖化とはいえもう少し過ごしやすくなって欲しいと思うこのごろ・・・。
 そんな事は置いといて、真・恋姫無双~魏・外史伝~第十四章~何がために・前編~をどうぞ!!

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2009-08-10 15:30:06 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:6265   閲覧ユーザー数:5289

第十四章~君は何がために・前編~

 

 

 

  蜀と呉の国境より蜀側の地・・・、開拓されていない森林。

  「ひ、ひいぃい・・・!!」

  「助けてくれ~・・・!!」

  そこで狩りを生業としている狩人達が血相を変え、何かから逃げていた。

 自分達が所持していた弓矢を捨て、その森の出口までもう一息というところ・・・。

  「ぎゃ、ぎゃあああぁああっ・・・!!!」

  前方を走っていた狩人がその叫び声に足を止め、恐る恐る後ろを振り向く。

  「た、助け・・・、てくれ・・・!た、助け・・・て・・・!!」

  そこには後ろから黒い触手の様なものが数本、仲間の狩人の胸を刺し貫いていた。

 不思議な事にその刺し貫かれた箇所から血が流れていなかった。触手状のそれは生きているかのように

 うねうねと動き、その気持ち悪さが一層恐怖を募らせる・・・。

  「ひ、ひぃいい・・・!!」

  その光景を見ていた狩人は恐怖のあまり、腰が抜けその場に尻餅を着く。恐怖が体を支配されそこから

 動く事が出来ない。全身から大量の汗が流れ落ちる・・・。

  「あ、がぁ・・・!!た、助け・・・て・・・!」

  必死に目の前で腰を抜かしている狩人に助けを求める。しかし、その助けの声は次第に消えていった。

 触手に刺し貫かれた箇所から、黒く変色していく狩人。その黒はやがて狩人を覆い尽くす・・・。

 そして黒が完全に狩人を覆い尽くすと、今度は黒く覆い尽くされた狩人から何かが出て来る・・・。

 それは黒い文字のようであった。喜、怒、哀、楽、恨、憎、快、善、悪、・・・そう言った文字達が序列して

 どこかに飛んでいく・・・。その先、その狩人のさらに後方へと・・・。黒く覆い尽くされた狩人は序列化した

 文字達が出ていくと同時に小さくなっていき、ついには完全に消えてしまった。腰を抜かしていた狩人はそれを

 ただ黙って見ていた・・・。そこに残るは黒い触手のみ、そして今度は腰を抜かしている狩人を次の目標にした。

  「ひ、ひいっ!!いやだ・・・、こっち来るな・・・!こっち来るなぁぁぁあああ!!!」

  腰が抜けて立てないその体を二本の腕を使って、出口方向に後ずさる狩人。だがそれも空しく・・・、触手は

 その狩人に狙いを定めると狩人に突進していった。

  「あんぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ・・・・・・っ!!!!」

  その断末魔にも似た叫びが森の中を駆け巡る。その叫びに驚いた木々で羽を休めていた鳥達が一斉に空へと

 羽ばたいていった。

  

  その頃、ここより近い林道・・・。

 そこには、道中で恋、音々音の二人とその配下を拾い、雪蓮達に合流すべく進軍していた星の部隊がいた。

  「星・・・、お腹、すいた・・・。」

  つい先程、食事を済ませたにもかかわらずやはりと言うべきか、恋が空腹を星に訴えた。

 この時、人選を間違えたか・・・と星は心の中でつぶやいた・・・。

  「そうか・だが済まぬな恋。もうしばし我慢してくれんか?もう少し先で呉軍が陣を張っている。」

  「・・・そこでご飯?」

  「ああ、そうだ。だからもう少しの辛抱だ。分かったか?」

  「・・・・・・。」

  恋は首を縦に頷く事で意思を表示した。

  「・・・それにしても、呉の連中も手前勝手ですな・・・。こちらは正和党の連中で忙しいというのに

  手を貸せとは。」

  恋の横に並ぶ小さい少女、音々音は一人呉の人間に対して愚痴をこぼしていた・・・。

  「呉領内での問題ではあらばそうだろうが・・・、何せ我々の領内で起きた事だからな。それに向こうから

  首を突っ込んできてくれているのだ。愚痴を言うのは筋違いであろう?」

  「うむむむ・・・、しかし、しかしですぞ!その謎の集団は元々呉の方で暴れておったのでしょう!?

  何故にこのような時にこっちにやって来るのですか!?」

  「いや、それを私に言われても仕方のない事だろう?文句ならばそ奴等に言ってくれるか?」

  「・・・、星。」

  そこに突然恋が割って入ってきた。

  「何だ?飯ならもう少しの辛抱だと・・・。」

  「愛紗・・・、大丈夫?」

  「・・・そうか、すでにお前の耳にも入っていたか?」

  「・・・・・・。」

  恋がその事を知っていた事に、星は少なからず驚いた。すでに愛紗の事が軍内に行き渡っている事に・・・。

 だが、星は態度を崩さない。そして星は恋にこう言った。

  「逆に聞くが、お前は愛紗がそう簡単に死ぬような女と思っているのか?」

  「・・・・・・。」

  恋は首を大きく横に振る事で意思を表示した。

  「では、お主が信じる愛紗を信じればいい。」

  「・・・・・・・・・。」

  少し考えて、恋は首を縦に振る事で意思を表示した。

  「あんぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ・・・・・・っ!!!!」

  その断末魔にも似た叫びが林道にまで届く。その叫びに驚いた木々で羽を休めていた鳥達が一斉に空へと

 羽ばたいていくのを見る事が出来た。

  「た、助けてくれーーーーーーっ!!!」

  助けを求める人の声・・・、それは道の前方から聞こえてくる。

 そしてすぐさま男の姿が目視することができた。血相を変え、必死に走って来るのが見て分かった。

 星は部隊の足を止め、その人物に注意を払いつつ近づいて行った。星の姿を確認できたのか、その男は崩れさる

 様にその場にしゃがみ込んでしまった。

  「お主、大丈夫か?」

  星はしゃがみ込んでしまったその男に駆け寄り目線を合わせようとしゃがんだ。

  「あ、あの・・・た、助けで助けてくだせぇな!」

  涙目気味のその男は星に助けを求めて来た。

  「落ちつけ・・・、この先で一体何があったというのだ?」

  「ば、化け物だ・・・。ありゃぁ・・・化け物だぁ~・・・!」

  落ちつけとなだめたにもかかわらず、男は恐怖に顔を染め一層取り乱しながらそう答えた。

  「待て待て、一体何を言っておるのだ?化け物・・・だと?」

  「そうだ~っ!ありゃ化けもんだぁ!皆、あいつに殺されちまった!!おらも!おらも~!」

  そう言いながら男は星の両肩を掴む。

  「星・・・!!」

  後方で待機していた恋が自分の名を叫ぶのに気が付いた星。その瞬間であった。

  「ぎゃあああっ・・・!?!?」

  「なにっ!?」

  突然として、男の胸、腹に何か黒い触手状のものが背中から刺し貫いていた。

 星はとっさに後ろへと下がる。

  「い、嫌だ・・・。助けて・・・!た、助け・・・、死にだぐねぇーーー!!」

  そして男の腕と足にも触手が刺し貫かれる。不思議な事に貫かれた箇所から血が流れていなかった。

 そのまま男は宙い浮き上がっていく。星はその光景をただ見ている事しか出来なかった。

  「た、たす・・・たすけて・・・!たす、げて・・・!」

  男は涙を流しながら、助けを求めて来る。が、その一方で触手に刺し貫かれた所から黒く変色していく。

 そしてついにはその黒が男の全身を覆い尽くしてしまった。今度は黒く覆い尽くされた男の頭、足から何かが

 出て来る・・・。それは黒い文字のようであった。喜、怒、哀、楽、骨、筋、神経、蛋、糖、・・・そう言った

 数多の文字達が序列してどこかに飛んでいく・・・その先には。

  「な、何なのでありますか!?あれは・・・!」

  「・・・・・・・・・。」

  黒く覆い尽くされた男は序列化した文字達が出ていくと同時にその部分削れていく・・・、そしてついには

 完全に消えてしまった。その文字と化した男の体を服の裾から全て取り込んだその人物は触手をその裾に戻していった。

  「貴様、何者だ!今の男に何をしたのだ!?」

  星は目の前の男か女か定かでない人物に尋問する。しかし当の人物は星を見ているだけで尋問に答える事は無かった。

  「星・・・。」

  そこに後方にいたはずの恋が武器を携えながら星の側にやって来る。その影に隠れる様に音々音の姿があった。

  「恋、後方で待っているように言ったはずだぞ。」

  「・・・ごめん。」

  「趙雲殿!恋殿はあなたの事を心配した上で加勢に来てやったのですぞ!」

  と、恋の背中から出て来た音々音が星に文句をぶつけてきた。

 一方で恋は戦闘態勢に入る。目の前の人物に注意を払いながら星に話しかける。

  「・・・気を付けて。そいつ・・・危険。」

  そうであろうな・・・。と、星は軽くつぶやいた。

 その時、触手を操る者が右腕を星達に向ける。そこから三,四本の黒い触手が飛び出し向かって行った。

  「ふっ・・・!」

  星はその触手達を左に避け、恋は音々音を抱え右へと避ける。

  ザシュッ!!!

  その際、星はその触手を自慢の愛槍『龍牙』で切り上げ気味に切断した。

  触手は切断された先が地面に落ちる。触手はたこの足の様に地面にのたうち回っていた。

  「正当防衛・・・成立だな!!」

  そう言って、星は攻撃を仕掛けて来た人物に向かって行く。

  「はああぁぁぁあああーーーっ!!!」

  星は突進しながら、連続攻撃を放った。

 触手を使ってくる者はその槍の斬撃に切り刻まれていった。

  「・・・っ!?」

  しかし、星の表情は浮かないものであった。彼女には手応えが全く感じられなかったのだ、まるで紙切れを切って

 いるかのように。

  「・・・ふんっ!!!」

  そこにすかさず恋が止めに奴の胸を刺し貫いた。

 その瞬間、ポンッという音とともに奴の首が飛びあがった。そこに残るのは奴が身に着けていた服のみ。

 二人は上を見上げると、そこには蛸の様な黒い物体が宙に浮いていた。蛸と違ってそれの足が八本以上であるという事。

  「人間では・・・無かったのですか?」

  有りえないと言わんばかりに音々音の口はあんぐりと開ききっていた。

  「・・・タコ?」

  「ほう、空飛ぶタコか・・・。どういう冗談なのだ?」

  恋の言葉に星は心に余裕があるかのように皮肉を言うが、内心はかなり参っている様子であった。

  「うぎゃああーーーっ!!」

  と、後方から叫び声が聞こえてくる。

  後ろを振り向いた星の目に映ったものは・・・。

  「ぎゃあああっ・・・!!ああ、何だこれはー・・・!」

  「あっーーー、あーーー・・・!?!?」

  先程、自分が切り落とした触手がまるで意思があるように、後方で待機していた兵士達に襲いかかっていた。

 ある者はその触手に貫かれ、先ほどの男の様に黒く変色していき、ある者はその触手に攻撃を仕掛けていく。

 しかし、攻撃されることで切り刻まれた回数分だけその触手の手は増え続け、なおも兵達に襲いかかっていた。

  黒く覆い尽くされてしまった兵士から序列化した黒い文字達が空飛ぶ蛸へと飛んでいき、蛸の体の一部となった。

  「・・・っ!!」

  攻撃しようにも空を飛ばれては自慢の愛槍も届かない。それは恋にとっても同じく言えた。

 弓隊を使って落とそうとも考えたが、後方は思わぬ奇襲を受け混乱していた。そこで星は後方混乱を静めようと

 恋と共に下がろうとした。

  「・・・来る!」

  「ちぃ・・・っ!?」

  恋の言葉に星は警戒する。空飛ぶ蛸の八本以上の足はまるで触手のようにうねりながら二人に襲いかかっていった。

 恋は音々音を抱きかかえ、二人は後ろに飛ぶようにその攻撃を回避していくが、容赦なく二人(+一人)を触手が

 襲いかかる。

  「いかんな・・・、これでは一方的だ。こちらも何か・・・痛打を与えなくては!!」

  星はとっさに地面に落ちていたやや大きめの小石を拾い上げると、そのまま蛸に目がけて投げつけた。

 しかし、それは触手によって叩き落とされた。だが星の狙いは次にあった。

  ザシュゥゥウウッ!!!

  蛸の顔を龍牙が刺し貫く。小石と一緒に星は龍牙も投げていたのであった。さすがの蛸も第二の攻撃に対応

 できなかった。同時に触手の攻撃も止まり、兵士達に襲いかかっていた触手も動きを止めた。

  ガギッ!!!

  空を飛んでいた蛸は龍牙に刺し貫かれたまま共に落ちていき、龍牙は地面に突き刺さる。

  「ふう・・・、手こずらせ負って・・・。しかし、こうして見るとまるで蛸串のようだな。」

  地面に突き刺さった龍牙に刺し貫かれる蛸。その光景を見て、星はそう言った。

  「・・・美味しそう。」

  恋は口からよだれを垂らしながら、そんな事を言っている。

  「待て待て。こんな物を食べては腹を壊すぞ。」

  「・・・・・・。」

  少し残念そうな顔をする恋。

  「それにこいつは少し調べてみたいしな。研究用に朱里への手土産にしよう。」

  「・・・朱里と一緒に、食べるの?」

  「・・・恋殿・・・。」

  恋一筋の音々音もさすがに呆れかえっていた・・・。

 星はその蛸を回収するべく、龍牙を回収しに向かった。

 全く動かない蛸、星は完全に油断していた。

 星が龍牙に手をかけた瞬間であった・・・。

  「・・・っ!?」

  突然蛸が息を吹き返し、一本の触手が星の顔面に向かって襲いかかる。

 避けようにも、完全に油断していた星はほんの数秒対応が遅れ、それは不可能であった。

  「星・・・!」

  「趙雲殿!」

  恋と音々音が彼女の名を呼ぶが、間に合うはずもなかった。

  

  「み~つけた♪」

  

  ポンッ!

 

  それはまるで長い間開封されずにいた蓋を力を込めてようやく取れた時に聞く空気の破裂音にも似た音が鳴ると

 同時に、その蛸の触手が消える。星の眉間と触手の先端との距離が髪の毛一本の太さ程の所であった。

 触手が消えたように、龍牙に刺し貫かれていた蛸も姿を消していた。

  「やれやれ・・・、ようやく捕まえられたよ~。・・・全く手間取らせちゃってさ~。」

  そしてその代わりではないが、星の数歩前に別の男が現れた。

  「ああ・・・、でも結果的には意外な収穫だったねぇ~。一石二鳥・・・いや、一石三鳥かな?」

  男は満面の笑みを零しながらそう言った。しかし、その笑みは見る者の背筋に悪寒を

 走らせる・・・そんな悪意に満ちた笑みであった。


 
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