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戦国†恋姫 三人の天の御遣い    其ノ二十五

雷起さん

これは【真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第二章『三爸爸†無双』】の外伝になります。
戦国†恋姫の主人公新田剣丞は登場せず、聖刀、祉狼、昴の三人がその代わりを務めます。

*ヒロイン達におねショタ補正が入っているキャラがいますのでご注意下さい。

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2016-10-19 04:54:42 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:2116   閲覧ユーザー数:1934

 

戦国†恋姫  三人の天の御遣い

『聖刀・祉狼・昴の探検隊(戦国編)』

 其ノ二十五

 

 

房都 本城 皇帝執務室

 

 三人の一刀たちと華琳、桃香、蓮華が部屋の中央に置かれた卓を囲み、その卓の上に置かれた大きな水晶玉に固唾を飲んで注目している。

 そしてもうひとり、吉祥こと管輅が水晶玉に手を翳して念を送っていた。

 

「…………繋がったわ………もう直ぐ画像が届くわよ………」

 

 吉祥が静かに告げると六人が身を乗り出し、半年以上振りに目にする子供達の姿をいち早く見ようと期待を寄せる。

 

 

『『は♪あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い♥』』

 

 

 貂蝉と卑弥呼のどアップが映し出され、この場の全員が卓に突っ伏した。

 

ビキィッ!!

「きゃぁあああああああっ!水晶玉がぁあああああああっ!!」

 

 室内に吉祥の悲鳴が響き渡る。

 水晶玉は真っ二つに割れて映像も消えてしまっていた。

 通信量を上げる事には成功したが、水晶玉は漢女二人のどアップという負荷に耐えきれなかったのだった。

 

 

 

 

 連合は小田原城で大休止を取った後、玉縄城へ向けて出陣した。

 小田原城から玉縄城までは、通常の旅人ならば立冬を迎え日の短くなったこの時期の夜明けに出発しても日没までには到着出来る距離だ。

 しかし、五万もの軍勢が行軍するとなるとそうは行かない。

 殿(しんがり)が出発するのは良くて正午である。

 先頭は小田原城までと基本は変わらないが、朧の率いる黄備え衆も案内役として加わっており少々狭苦しくなっていた。

 そんな中で姫野はゴットヴェイドー隊に居る祉狼に会いに来ている。

 

「四郎♪姫野これから玉縄城へ先触れに行ってくるね♪」

「ああ♪気を付けてな、姫野♪宝譿、何か有ったら直ぐに連絡をくれ。」

「おう、任せとけ。」

 

 手を振り合う姫野と祉狼を朧は離れた場所で馬上から見詰めていた。

 その顔には複雑な想いが表れている。

 朧は初夜の翌日に姫野と祉狼の現在の状況を知らされ、何やら自分が姫野の想い人を寝取ってしまった様な気持ちになっていたのだ。

 そんな朧に麦穂が声を掛ける。

 

「朧さん、そう気に病まれている場合ではないですよ。我らが良人はあの様な方ですから、例え勘違いな行いであったとしても、それを支え良い結果となる様に持って行くのが妻の努めです♪」

「麦穂どの…………」

 

 麦穂の強い意志の籠もった瞳を見て、朧も己の心が奮え立ってきた。

 

「かたじけない!既に姫野の心を傷付けない様に祉狼さまの正体を気付かせる策を正室、側室、愛妾が一丸となって進めているのでした。私が姫野の為に率先して動かねばいけませんね!」

「はい♪その意気です♪」

 

 こうして女達は姫野と祉狼には内緒で策を進めて行る。

 そんなゴットヴェイドー隊を中心とした先陣が相模川を越えて玉縄城へ到着したのは、間も無く日が沈もうかという頃だった。

 玉縄城で連合の先陣を出迎えるのは先触れに出た姫野…………ではなかった。

 

「うふふ♪来ちゃった♪」

 

 玉縄城の大手門前で出迎えていたのは、何と現北条家当主、北条朔夜氏康本人だった。

 

「「「「母さまっ!?」」」」

「さ、朔夜姉さまっ!?忍城に居る筈の朔夜姉さまが何故玉縄城にいらっしゃるのですっ!」

 

 十六夜、三日月、暁月、名月、朧の反応で朔夜と面識の無い織田勢は目の前の女性が北条氏康だと認識し、長尾勢、武田勢は朧と同じ様に驚いている。

 しかし、当の朔夜本人は外野の様子などまるで気にせず、ニコニコしながら娘達へゆったりと歩み寄った。

 

「そんなのあなた達のお婿さんへ挨拶をしに来たに決まってるじゃない♪」

「そのお気持ちは嬉しいですが、朔夜姉さまが忍城を離れては防衛線に綻びが出てしまいます!」

 

 朧の叫びは連合の懸念を代弁するものだった。

 

「ああ、それなら大丈夫よ。関東の鬼は連合迎撃の為に東へ集結し始めてるから♪」

「鬼が集結!?」

「そりゃそうでしょ。駿府屋形を落とした連合が真っ直ぐ東海道を進んで来るんだから、鬼だって対処するわよ。」

 

 さも当然と言い放つ朔夜に対し、麦穂が朧の後ろから進み出て頭を下げた。

 

「相模守様、お初にお目に掛かります。私は尾張美濃国主、織田久遠の名代。織田家家老、丹羽麦穂長秀にございます。」

「初めまして♪貴女が米五郎左ね♪……ふぅん♪もっと恐い人かと思ってたけど、いい女振りじゃない♪旦那様のおかげかしら♪」

 

 麦穂は朔夜の和やかな笑顔の裏に鋭い物が見え隠れしているのを感じ取り、これは祉狼に会わせられないと咄嗟に思った。

 しかし、朔夜は祉狼へ挨拶に来たと口にしているので会わせないという訳にはいかない。

 

「仰る通りでございます♪我が良人は相模守様のご存知の通り…」

「朔夜よ♪」

 

 麦穂は朔夜の言葉よりも、体から発する凰羅に言が止まってしまった。

 

「堅苦しいのは嫌いなの♪通称の朔夜で呼んでちょうだい、麦穂さん♪」

 

 穏やかな声に反して有無を言わさぬ威圧的な凰羅。

 それは麦穂が久遠に感じるのと同質の『英雄の氣』とも呼べる威圧感だった。

 

「………では、朔夜様。我らが良人にお引き合わせする前にひとつお伺いして宜しいでしょうか?」

「ふぅん………何かしら?」

 

 朔夜は堅苦しいのは嫌いだと言ったのに、口調をさほど変えない麦穂に対し興味が薄れ始めている。

 

「姫野さんは今どちらにいらっしゃいますか?」

「え?姫野?」

 

 予想もしていなかった問いに、朔夜の興味が麦穂に戻った。

 

「実は姫野さんが今、複雑な状況になられていまして………朔夜様、ちょっと内緒話になりますのでお側に寄らせていただきますね♪」

 

 朔夜と麦穂、そして十六夜、三日月、暁月、名月に朧も加えて身を寄せ合いその場にしゃがみ込み、ヒソヒソと現状の説明が始まった。

 親子再会の挨拶すらそこそこに四姉妹と朧は麦穂の説明が真実である事を真剣に訴えるが、朔夜は説明される内容とこの状況を心から楽しんでいた。

 

「なる程ねぇ♪それでやっと繋がったわ♪姫野に華旉伯元くんってどんな子だったって聞いても姿を見てないって言うし、十六夜も名月も朧も姫野に会わせないとか有り得ないでしょ?でも、そんな理由なら納得だわ♪」

 

 朔夜は面白がってクスクス笑い出す。

 

「それで姫野だけど、お仕置きとして鬼の集結状況を確認させに向かわせたわ♪戻ってくるのは早くても明日の午後でしょうね♪」

「朧姉さま!それは姫野が可哀想では有りませんか!」

「確かに最初は泣いたけど、あの宝譿ちゃんが手柄になるって言ったら張り切って出掛けたわよ?」

 

 朧達はその姿が容易に想像出来てしまい、更に姫野が憐れに思えてくる。

 

「そんな訳でぇ♪あなた達のお婿さんを紹介してくれないかなぁ♪お母さん、とぉっても楽しみにしてたのよ♪」

 

(いよいよね………)

 

 麦穂は全力で祉狼を守ると決意を新たにし、小波に祉狼をこちらへ寄越す様に口伝無量で伝えた。

 それから連合の一団に居る昴へ振り向き頷く。

 昴も頷き返し、朔夜の前に落ち着いた足取りで歩み出た。

 

「初めまして。私が孟興子度、通称を昴と申します。三日月ちゃんと暁月ちゃんの良人となる事をお許しいただきありがとうございます。」

 

 昴は真面目な顔で礼をし、一拍置いてから一言付け加えた。

 

「お義母さま♪」

 

 溢れる様な笑顔は誰が見ても美少女の物で、麦穂はこの猫被りを見て自分より『女の技』を身に付けていると思った程だ。

 しかし、朔夜にはそんな昴の行動の意味もお見通しだった。

 

「そんなに警戒しなくても大丈夫よ、昴ちゃん♪私も昴ちゃんは標的外だから♪三日月と暁月をお願いね」

「はい♪それはもう!ぜっっっっったい幸せにしますっ!!!」

 

 今度の顔は本性と本能を剥き出しにした心からの言葉だと誰もが判る返事だった。

 そこへ祉狼が人垣の中から現れる。

 

「初めまして♪華旉伯元祉狼です♪お義母さん♪」

「きゃあ♪可愛い♪私の事は朔夜おばさんって呼んでちょうだい♪」

 

 朔夜は祉狼の姿をその目で捉えた瞬間から一気にテンションが上がっていた。

 

「え?十六夜と名月の母親だし、お義母さんの方が…」

「だぁめ♪朔夜おばさん以外は認めません♪ね、祉狼ちゃん♪」

 

 物腰は柔らかいが有無を言わさぬ押しの強さに、流石の祉狼も圧倒されてしまう。

 

「は、はぁ………それじゃあ朔夜おばさん、よろしく…」

「もうっ♪本当に可愛いんだからっ♪」

 

 祉狼が挨拶を言い終わる前に朔夜は感極まって抱き締めた。

 

「さ、朔夜様っ!!」

「「「「母さまっ!!」」」」

「朔夜姉さまっ!?」

 

 余りにも突飛な行動は、相手の行動を予測する麦穂の御家流をも凌駕し、この場に居る全員を驚愕させるが、朔夜はそんなのお構い無しに豊満な胸に祉狼の顔を埋めている。

 

「さ、さささ、朔夜姉さまっ!いくら親愛を表すにしてもやり過ぎですっ!!」

「親愛?違うわよ、朧。これは親愛じゃなくて情愛よ♪」

「じょ…情愛っ!?」

 

「だって私も祉狼ちゃんのお嫁さんになるんだもん♪」

 

 昨夜のいきなりな発言に、朧、十六夜、三日月、名月が目を見開いて驚く。

 しかし暁月だけが「やっぱり………」と溜息を吐いていた。

 

 

 

 

 口伝無量で知らせを受けた正室達が疾風の如き速さで玉縄城へ向かった。

 しかし、中軍に位置していた本陣は相模川を越えた茅ヶ崎に居たので到着まで時間が掛かる。

 その間に朔夜は場所を玉縄城の評定の間へ移し、久遠達を迎える準備を整えたのだった。

 

「北条氏康っ!!貴様どういうつもりだっ!!」

「余の良人を誑かしなどさせぬぞっ!氏康っ!!」

「ちょっと、おばさんっ!何企んでるのよっ!!」

「これだけ産んでまだ産むのっ!?」

「祉狼兄さまっ!無事ですかっ!?」

 

 正室五人がひと塊になって縺れ合う様に評定の間へ雪崩込んで来た。

 

「あらあら♪ようこそいらっしゃい♪」

 

 和やかに微笑み上段に座する朔夜。

 その姿を目にした五人は動きがピタリと止まる

 祉狼はその膝の上に抱っこされる形で座らされていたのだ。

 

「朔夜おばさん…………子供みたいで恥ずかしいんだが………」

「祉狼ちゃんは私から見たらずっと子供よ♪」

「それはそうだが…………」

 

 祉狼が殆ど見せた事の無い、顔を赤くして恥ずかしがる姿。

 正室五人の嫉妬心を燃え上がらせるには充分過ぎる起爆剤だ。

 部屋の空気が一気に固形化した様に張り詰め、三千世界と三昧耶曼荼羅と風林火山と夕波千鳥が同時に発動し始める。

 

「お待ちください!ご正室方!」

 

 評定の間に響いたのは雹子の声だ。

 一番初めにキレて暴れだしてもおかしくない人物の制止に、五人の正室は正気を取り戻す。

 

「氏康公は伝えたき義がお有りだそうでございます。その話を聞いた上で納得が行かなければ、不詳この各務兵庫介元正が斬り捨てますので今はご辛抱ください。」

 

 久遠達はひとつ深呼吸をして気を落ち着け頷いた。

 

「デアルカ………おい氏康。今は雹子に免じて話を聞いてやる。しかし下らない話だったら十六夜達の母親とは言えタダでは済まさんぞ。」

「あら♪娘達の事は認めてくれてるのね♪それじゃあ感謝の意を込めてザビエルが私の所に現れた時の事を教えてあげる♪」

「やはりザビエルは現れたのか…………」

「ええ。あれは砥石崩れ直後だったわ。兵の力を何倍にもできる薬が有るから、それを無償で提供して関東を平定する手助けをしたいとか胡散臭い話を持ちかけて来たの。」

 

 朔夜の顔には嫌悪感が溢れ、思い出すのも汚らわしいと物語っている。

 それでも朔夜は話を続けた。

 

「そしてザビエルはその場で私にその丸薬を見せ、私はどんな物かと一粒手に取ってみたわ。」

「鬼の丸薬に触れたのかっ!?」

「ええ。でも、その丸薬が私の手の中で塵になって消えちゃったの♪」

「塵になって消えただと!?鬼の死体の様にか!」

 

「そう。これは私の御家流『禄寿応隠(ろくじゅおうおん)』の力。」

 

「禄寿応隠?」

 

 久遠の疑問に光璃が答える。

 

「禄は財産、寿は生命、(まさ)に穏やかなるべし。領民全ての禄と寿を北条が守っていくという誓いの言葉。その四文字を刻んだ虎印が、後北条家当主が使う家印。でも、御家流という事は恐らく魂にも刻まれた身を守る力。」

「流石、光璃ちゃんね♪正にその通り、病、怪我、毒、呪いなんかを立ち所に治してくれる御家流で、鬼の毒があまりに強いから持っただけで発動しちゃったのよ。でも、その時のザビエルの顔は見ものだったわよ~♪驚いたり怒ったり♪慌てて逃げ出す姿なんか、美空ちゃんが見たら大笑いする事請け合いよ♪」

「それは是非とも見てみたかったわ♪でもそれで鬼対策に動き出したって訳ね。」

 

 美空はその光景を思い浮かべて少しは溜飲の下がる思いだった。

 

「凄い御家流だ………御家流とは攻撃技ばかりでは無いんだな♪」

「ありがとう、祉狼ちゃん♪…………でもね、これは私の身を守る事しかできない御家流なの………」

 

 朔夜の顔が悲しみに曇る。

 

「祉狼ちゃん、十六夜は次女、三日月は三女、暁月は五女、名月は七女よ…………」

 

 朔夜の言葉の意味が判り、祉狼も顔を曇らせた。

 

「………病………なのか………」

「ええ………長女の西堂丸が病に倒れた時に、どれだけこの禄寿応隠を授けたかったか……気が狂いそうになる悲しみを三度も経験しても、狂うことは許されない………そんな呪われた御家流なのよ………」

 

 この話に正室五人の意気が消沈する。

 朔夜の気持ちを想像すれば当然だろう。

 

「でもね、祉狼ちゃんならこの禄寿応穏を活用できると思うの♪」

 

「俺が禄寿応穏を?」

「ちょっと待て!それは祉狼に北条家御家流を継がせるという事かっ!」

「それって祉狼を北条家の当主にするってことじゃないっ!」

 

 久遠と美空の驚きの声はこの場に居る者全ての代弁だった。

 特に朧達北条家の者の驚きは半端では無い。

 

「朔夜姉さまっ!禄寿応穏は十六夜が継ぐべき御家流です!」

「あら?祉狼ちゃんはもう十六夜のお婿さんでしょ♪別にどっちが当主になってもいいじゃない♪」

「いやいやいや!それは余りに乱暴すぎます!」

「朧はお嫁さんなのに祉狼ちゃんの人物を認めてないの?」

「祉狼さまが傑物であることは認めております!そうでなければ身も心も捧げておりません!」

「朧ったら人前で身を捧げるだなんて、ヤラシイんだぁ♪」

「ひゃっ!」

 

 からかわれた朧は顔を真っ赤にして縮こまってしまった。

 

「禄寿応穏は北条の当主を守る為に有るけど、祉狼ちゃんが十六夜を守ってくれるから大丈夫♪むしろ禄寿応穏で祉狼ちゃんを守った方が日の本の為になるでしょ♪ね、十六夜♪」

「うん♪私もそう思うよ、母さま♪」

 

 十六夜も最初は驚いていたが、今は母の考えに賛同してすっかりその気になっている。

 

「うちの嫡子はこう言ってるし、十六夜と祉狼ちゃんの子が家督を継ぐ時に祉狼ちゃんが禄寿応穏も継がせれば良いだけ♪別に難しい事じゃないでしょ♪」

 

 朔夜は人懐っこい笑顔を見せているが、正室五人はまた眉間に皺を寄せていた。

 それというのも朔夜の凰羅が強く、警戒心を抱かずにはいられない所為だ。

 

「ひとつ問う。貴様を含めたこの北条家の婿取り、いつから考えていた。」

「そうねぇ………十六夜達を甲斐に送り出した時は私が祉狼ちゃんのお嫁さんになるのは決めてたわ♪娘達と朧は本人任せ♪」

 

 朔夜が姫野の名を口にしないのは祉狼が居るからである。

 久遠達もそこには気付いたので口にはしない。

 

「十六夜達をそう仕向けたのではないか?」

「朧にはひと押し必要だろうから手紙にはそう書いたわ。娘達はそうなるといいなぁくらいの気持ちで送り出したけど、それを”仕向けた”って言うならそうよ。本人が好きになるかどうかなんて会ったこともない相手じゃ不確定要素が多過ぎ。ある程度は予想してたけど、十六夜と名月が祉狼ちゃんを選んだのは意外だったなぁ♪これだから人の世って面白いのよねぇ♪」

 

「つまり本人達が望まなければ嫁に出す気は無かったのか?」

「そりゃそうよ。無理強いするなら朧に見合いなんかさせないで婿を取らせるでしょ。私は恋愛至上主義なの♪」

「ふむ………暫し待て。」

 

 久遠は他の正室四人と共に朔夜から離れて小声で協議を始めた。

 

「(彼奴の話し、嘘ではないと我は思う……思うがどうにも信用できん。)」

「(余も久遠と同意見じゃ。女狐臭さが匂うてくるわ!)」

「(ボクもあの人が祉狼兄さまの傍に居ると無性に気分が落ち着きません!)」

 

 久遠、一葉、眞琴の三人は警戒心をハッキリと口にするが、美空と光璃は少し違った。

 

「(私もそう思うのだけど………名月の時を思い出すと………あの子は初めて会った時からとても懐いてくれたのよ……朔夜はきっと、名月が私を気に入らなかったら養子に出さなかった………それが判っちゃうのよねぇ………)」

「(光璃も朔夜を見てるとザワザワする………でも、祉狼を守るのに禄寿応穏の力はとても適している。それに…………)」

 

 光璃はチラリと祉狼を見た。

 

「(例の風魔小太郎の事を穏便に済ませるには朔夜の協力が絶対に必要。)」

 

 久遠、一葉、眞琴、美空も、昨夜に抱っこされた祉狼をチラ見して、大きく溜息を吐いた。

 

「(皆様、嫉妬されるお気持ちは某もお察し致しますが、ここは我等が旦那様にお任せしてはいかがですかな。)」

 

 五人の様子を見かねた幽がやれやれといった具合に助言を述べる。

 

「(何を言うか!幽にもあの氏康の凰羅を感じるであろう!)」

「(それはここにお出での皆様が互いに感じる物と同じでございましょう。氏康公も方々から同じ物を感じていらっしゃいますよ♪故に氏康公は敢えて凰羅を隠されない♪)」

「(ふむ♪ならば氏康は余らに負けじと虚勢を張っておるのだな♪)」

「(虚勢とは言い過ぎでございましょう。氏康公は力量を計れと申されていらっしゃるのですよ。)」

 

 久遠は納得がいったと頷いた。

 

「(デアルカ。我らは祉狼を心配する余り自分を見失っていたのだな。)」

「(左様で。そして、祉狼どのについてでございますが、皆様は祉狼どのを愛しすぎるが故に過保護になられておいでですな。祉狼どのは既に百戦錬磨、いえ、千戦錬磨の強者ですぞ♪氏康公相手でも己を失う事はございますまい♪)」

「(いつになく強気であるな、幽。)」

「(某も愛妾とはいえ祉狼どのの妻と自負しております故♪それに根拠もございますよ♪)」

 

 そう言って幽は雹子をそっと見た。

 正室五人は「ああ」と納得する。

 

「(では決まりだな。)」

 

 久遠の言葉を合図に五人は立ち上がり、朔夜と祉狼の前へ戻った。

 

「祉狼。氏康は祉狼の妻になると申したが、お前は了承するか?」

「ああ♪俺には断る理由が無い。」

 

 祉狼の真っ直ぐな瞳に無言で頷き、次に朔夜の目を見据える。

 

「と、言うわけだ。…………そう言えばまだ名乗っていなかったな。我が織田久遠信長だ。」

「今更だけど初めまして♪通称は朔夜よ♪あと、そちらが…」

「初めまして、江北小谷城城主、浅井眞琴長政です。」

「はい♪よろしくね♪あとは………まあ良く知った仲だから、取り敢えずお久しぶりって事で♪」

「公方である余に対して、雑把な扱いではないか。」

「お気に召さないようでしたら、礼法に則り正式な挨拶で改めてお迎えいたしますわよ、公方さま♪」

「いや、よい………御簾まで用意され兼ねんからの………」

 

 朔夜の相手を一葉達に任せた久遠は、静かに座っている雹子の前に立った。

 

「苦労。」

「ありがとうございます、殿。」

 

 雹子は久遠に頭を下げるが、その肩が小刻みに震えていた。

 

「そういきり立つな。お前のお陰で朔夜にひと泡吹かせられるのだ♪」

「はい?…………それはどの様な意味でしょう?」

「明日の朝になれば判る♪今はその怒りを身に留め、鬼にぶつけるがよい♪」

「御意。」

 

 久遠は明日以降の戦闘時に、森一家には近付かない様に指示を徹底せねばと内心笑いながら考えていた。

 

 

 

 

 いつもであれば結菜が初夜を取り仕切る所だが、今回は北条家御家流継承の儀という事も有り、全て朔夜本人が取り仕切った。

 十五畳の部屋の中央に祭壇と布団が設けられ、その前にひと組の布団が敷かれている。

 四台の行燈と四台の燭台が布団を囲み、その中で朔夜が純白の肌襦袢姿で正座をして目を閉じていた。

 

「朔夜おばさん、入って大丈夫か?」

 

 襖の向こうから聞こえた祉狼の声に朔夜は目を開く。

 

「ええ♪いらっしゃい、祉狼ちゃん♪」

 

 襖を開けて入ってきた来た祉狼も純白の肌襦袢を着ている。

 風呂場で禊ぎをしてきたので髪がまだ湿気っていた。

 

「ごめんなさね。ホントはおばさんが一緒に入って体を洗ってあげたかったんだけどね。」

「それはまたいずれ。それよりも朔夜おばさんはこんなに広い部屋にひとりで寝ているのか?」

 

 祉狼はそう言いながら朔夜の正面に座った。

 

「刺客対策でね。あ、この祭壇はこれからする儀式の為に用意したから普段は無いわよ。」

「この城は朧の城だと聞いていたが…」

「主要な城には当主が訪れた時に寝泊まりする部屋を用意してあるの♪贅沢だと思う?」

「いや、それよりもこんなに広いと冬場は寒くて風邪を引くのが心配だ。」

 

 朔夜は祉狼から医者らしくも少々的外れな言葉を初めて聞き、祉狼の新たな一面を見れて相好が崩れる。

 

「北条家の当主は風邪を引いても禄寿応穏で直ぐに治るから、私の祖母、初代の早雲庵宗瑞さまがこう決めたのよ♪」

「いや、いくら治ると言っても寒い部屋に寝かされるなんて拷問と変わらないじゃないか。あっ!これも朔夜おばさんがさっき言っていた御家流が呪われているという意味のひとつなのかっ!」

 

「ぷっ♪あははははははは♪え、ええ♪その通りよ♪」

 

 朔夜は祉狼の純粋過ぎる反応に大笑いをして涙が滲んでいる。

 同時に祉狼が自分の事を本気で心配してくれた事が嬉しかった。

 家中の者は禄寿応穏のお陰で病気で死ぬ事は無いと判っている。

 しかし、病気で死にはしないが病気にならない訳ではないのだ。

 怪我の時も同じだ。

 怪我を負わない訳ではない。

 怪我の治りが早いだけで痛みは伴うのだ。

 北条家の当主として痛くない振りをして強がって見せねばならず、そうすれば周りはますます病気や怪我の心配をしなくなる。

 早雲庵宗瑞が国盗りで覚えた良心の呵責と自己嫌悪、その贖罪の為に領民の暮らしを守り豊かにすると掲げた夢、その夢の実現の為にと『禄寿応隠』の四文字を魂に刻む儀式を行ったのだ。

 しかし、孫である朔夜にとってはこの御家流は呪い以外の何物でも無い。

 そんな呪いとしか思えない御家流がザビエルの陰謀から自分を救ったのだ。

 六女氏忠が病に苦しみ息を引き取るのを見届けて以来、数年ぶりにこの御家流に感謝した。

 そして祉狼の存在を知った時、この御家流をより良く、より民を救う為に役立てる事が出来ると思ったのだ。

 朔夜の瞳から溢れる涙は、この想いも込められた涙だった。

 

「そう言えば、祉狼ちゃんに禄寿応穏をあげたら風邪を引かない様に気を付けなくちゃ駄目ね♪」

「ああ♪是非そうしてくれ♪そうだ、明日の朝は一緒に乾布摩擦をしよう♪実に手軽な健康法なんだ♪」

「ふふ♪いいわよ♪でもその前に禄寿応穏を祉狼ちゃんにあげないとね♪」

「御家流か………今更だが本当に俺が受け取ってもいいのだろうか?」

「嫡子の十六夜が納得してるからいいの♪祉狼ちゃんが十六夜を守ってくれるから体の中に有るか外に有るかの違いしか無いでしょ♪面倒くさい当主の仕事は十六夜に任せて、祉狼ちゃんは今まで通りお医者さんの仕事に専念してればいいのよ♪」

「うん、判った♪本音を言えば御家流を身に付けられると思ってワクワクしてたんだ♪」

「祉狼ちゃんのゴットヴェイドーは充分御家流だと思うけど………まあ、いっか♪そんな事は♪」

 

 祉狼には既に北郷家御家流が在るのだが、存在その物に誰も気付いていないのだから仕方が無い。

 

「それで、どんな儀式をするんだ?」

「それじゃあ説明するわね。禄寿応穏は魂への刻印。引き継ぐには魂を結び付けなければいけないの。十六夜にだったら親子だから手を握っておでこ同士をくっつけるくらいで大丈夫なんだけど、祉狼ちゃんとはもっと深く身体を繋ぎ合わせないといけないわ。」

「ふむふむ。」

「この祭壇と八卦の方角に置いた灯りが儀式装置。この灯りに囲まれた中で魂が深く結び付いた時に刻印の引き継ぎをしてくれるの。だからぁ♪」

「だから?」

 

「私たちは難しい事を考えずに愛し合えばいいのっ♪」

 

 朔夜が飛び付く様に祉狼を抱き締めた。

 

………………………………

 

………………………………………………………

 

………………………………………………………………………………………………………

 

 朔夜と祉狼が同時に絶頂を迎えた瞬間、周囲に置かれた灯りが輝きを増す。

 

 禄寿応隠継承の儀式が発動したのだ。

 

 真っ白になった視界の中に互の存在を強く感じた。

 そして朔夜から四つの光の玉が現れ、それぞれ『禄』『寿』『応』『隠』の文字が浮かんでおり祉狼の中へと吸い込まれる。

 絶頂感の中で二人は儀式が成功した事をハッキリと自覚したのだった。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…………祉狼ちゃん………♪」

 

 朔夜は祉狼の身体に覆い被さる様に身を倒し、髪を乱したまま微笑んだ。

 

「ああ………禄寿応隠……確かに受け取った♪」

 

 祉狼も朔夜の体重を受け止め、微笑んで頷く。

 

「朔夜おばさんは禄寿応隠を呪いと言ったが、俺には宗瑞さんの愛だと感じたよ♪」

「え?………愛?」

 

 禄寿応隠の継承前なら朔夜は祉狼が子供らしい夢を語っていると、笑って聞き流しただろう。

 しかし、魂を繋げた今は、祉狼の言葉へ素直に耳を傾けた。

 

「宗瑞さんのしてきた事は十六夜と朧から教えて貰った。宗瑞さんは鞠のひいお祖母さんとお祖母さんに仕えていたけど独立して相模を手に入れたそうだが、鞠のひいお祖父さんは宗瑞さんのお兄さんなんだろ?俺は鞠のお祖母さんの今川氏親さんが宗瑞さんになら相模と関東を任せられると思ったから独立を許したんだと思う。これはただ単に血縁だからじゃない。当時は応仁の乱が起こり何年も戦乱が続いていて、宗瑞さんは民の暮らしが困窮していく事に胸を痛めていた。」

 

 祉狼の語る宗瑞の気持ちは明らかに断定の色があった。

 

「祉狼ちゃんは………禄寿応隠から早雲庵さま……お祖母さまの気持ちも伝えられたのね………」

 

 朔夜は早雲庵宗瑞が晩年になってから生まれ、四歳の時に他界しているので顔が朧気に思い出せる程度の記憶しかない。

 禄寿応隠を受け継ぎはしたが、祉狼の様にその想いをそこまで感じる事は出来なかった。

 

「ああ♪そして俺は宗瑞さんと同じ想いで民の為に戦った人達を知っている。」

 

 祉狼は天井を見上げ、その人達の顔を思い出す。

 

「皇帝の一刀伯父さんたちとその奥さんの伯母さん達!そして俺の父さんだ♪あ、貂蝉と卑弥呼もそうだった♪」

 

 祉狼の瞳に映る尊敬の念に、朔夜は祉狼が祖母を同格に見ている事を知り、嬉しくて涙が出てきた。

 

「宗瑞さんは相模だけではなく、関東全て、いや、手の届く範囲なら何処までも戦を無くし民を救いたいと願い、己を人身御供とする為に禄寿応隠を魂に刻んだんだ。禄寿応隠を受け継ぐ者に申し訳ないという気持ちも伝わって来た………朔夜おばさんも辛い思いをしたけど、宗瑞さんを許してあげてくれないか?」

「ええ………もちろんよ、祉狼ちゃん♪お祖母さまの気持ちを伝えてくれて、本当にありがとうね♪」

 

 朔夜は満たされた心で祉狼に寄り添い、祉狼との出会いを心から神に感謝した。

 

 穏やかな気持ちになっていた朔夜だが、身体に変化が起きる。

 

「ね、ねえ、祉狼ちゃん♪おばさん嬉しくなったら、もっと祉狼ちゃんが欲しくなちゃった♥」

 

 禄寿応隠が祉狼に移った事で、北郷家御家流が枷を外され朔夜の身体に猛威を振るいだしたのだ。

 

「判った!朔夜おばさんがもっと幸せな気持ちになれる様に全力を尽くすぞっ♪」

 

 この夜、理性という檻から解き放たれた相模の女獅子が何度も祉狼を求めた。

 祉狼は朔夜の要求に全て応え……いや、それ以上に応えて最後は朔夜が失神して果てた。

 朔夜の要求は全て雹子が祉狼に求めた事がある物だったので、祉狼は余裕を持って対処出来たのだった。

 

 

 

 

 翌朝、東から玉縄城に向かって走る人影が有った。

 

「本当に夜が明けちゃったしっ!」

「いやいや。あれだけの範囲を一晩で調べ尽くすとか。どんだけ張り切ってんだよ、姫野。」

 

 姫野とその胸の谷間に挟まれた宝譿だ。

 

「だって、この報告したらご本城様に四郎との仲を取り持ってもらえるんだもん♪」

「いや………そうは言ったけどよ………」

 

 宝譿は恋する姫野のパワーを見誤っていた。

 良くて今日の夕方ぐらいまで掛かると思っていたので、とにかく小波に口伝無量で帰還を伝え、玉縄城が姫野に真実を伝える準備が出来ているか確認する事にする。

 

〈おーい、小波!もうすぐ玉縄城に戻るがそっちはどうなってる?〉

〈宝譿どの!もうお帰りになられたのですかっ!?〉

〈ああ!姫野が張り切っててよ!だから…〉

〈今お戻りになるのは拙いです!〉

〈あ?〉

 

 宝譿が確認しようとするより早く、小波が玉縄城の塀を越えて弾丸の様にやって来た。

 

「おいっ!風魔のっ!これ以上は玉縄城に近付くなっ!!」

「ええっ!?服部半蔵!?何訳のわかんないコト言ってんの!?意味わかんないし!!」

 

 立ちはだかる小波に姫野は急制動を掛けて目の前で止まった。

 

「ははぁ、さては姫野と四郎が夫婦になるのを阻む気なんだっ!」

 

 指を突き付けてビシリと言い放つ。

 小波は正反対の目的でここまで急いで来たのだが、もしかしたら嫉妬心でそんな気持ちが何処かに有ったのではと戸惑いを見せる。

 

「そうよねぇ。姫野と四郎が夫婦になったら伊賀者は風魔に吸収されちゃうんだもんねえ。必死になるわよねえ♪」

 

 小波は姫野がどうしたらそんな考えになるのか、訳が判らず首を捻った。

 

「隙ありっ♪」

 

 姫野が小波を躱して玉縄城へ向かって走り出した。

 

「しまった!」

 

 小波も慌てて姫野を追う。

 だが、今の姫野は祉狼を想う心が力を増加させていて、小波は追い付く事が出来ない。

 

〈申し訳ありません!抜かれました!どなたか風魔を止めてくださいっ!!〉

 

 小波の必死な叫びを乗せた口伝無量が全員に届けられた。

 その願いも虚しく、姫野は玉縄城の塀を飛び越え、誰かが阻もうと出てくる前に朔夜の寝室に面した庭の塀を飛び越えた。

 

「ご本城様ぁ~~~♪姫野!ただいま戻りまし…………」

 

 姫野の笑顔が凍りついた。

 姫野が目にしたのは朔夜と祉狼が上半身裸で乾布摩擦をしている所だった。

 しかも二人は楽しそうに笑い合っている。

 空中に居る姫野は引き返す事が出来ず、そんな二人の前に降り立つしかなかった。

 

「姫野!?」

「やあ、おはよう♪姫野も乾布摩擦をしに来たんだな♪」

 

 二人の声は姫野の耳には届いていない。

 目の前に在る光景が頭を支配していた。

 朔夜の性格は長く仕えているからよく知っていた。

 故に朔夜が祉狼に何をしたか直ぐに予想出来た。

 尤も具体的な事は見た事が無いので想像でしかないが。

 

「………ヒドい………ヒドいよ、ご本城様……………姫野が好きになった人に………」

 

 姫野は瞳一杯に涙を溜めて、ヨロヨロと後退る。

 この時、祉狼は初めて姫野の自分に対する気持ちを知った。

 祉狼は姫野が自分を友達として見ていると思い込んでいたので、姫野の気持ちを理解出来ていなかった事にショックを受け、自分が大きな間違いをしてしまっていた責任を取らねばと姫野に手を伸ばす。

 

「姫野!黙っていたが、俺の姓名は華旉伯元というんだ!初めて駿府屋形で会った時に、驚かせてしまうと思って言わなかった!」

 

「華旉………伯元…………じゃあ……天の御遣いの………朧さまと十六夜さまと名月さまの………」

 

 姫野は受け入れ難い事実に思考が止まった。

 

 

「いやぁああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

 

 叫んだ姫野はその場から逃げ出した。

 塀を越えて来た道を引き返す。

 その顔は来た時とは真逆で、悲しみに塗り潰され涙をボロボロと流している。

 

「姫野っ!!」

 

 祉狼が空かさず姫野を追って塀を飛び越えた。

 姫野の走り去る姿は既に遠くなっているが、祉狼はただ追い付く事だけを考え、その背中を目指して走る。

 

 一方、朔夜は姫野と祉狼が飛び去った塀を呆然と見上げ、己の失敗を悔やんでいた。

 そこに小波の句伝無量を聞いた者達が続々と駆け込んで来る。

 

「朔夜っ!祉狼と姫野はどうしたっ!」

「……………姫野を泣かせちゃったわ…………祉狼ちゃんは姫野を追い掛けて………」

 

〈済まねえ。俺がもっと姫野を足止めできてりゃ……〉

 

 宝譿の声が句伝無量で届いた。

 

〈姫野と祉狼は俺が必ず何とかする!だから姫野が調べた鬼の動きを先に伝えるぞ!鬼は江戸城だ!江戸城に集まっていた!今日にも奴らは出て来るぞ!迎撃の準備を急げ!〉

 

 この情報に集まった者達が騒然となる。

 

「むむっ!」

「この気配はっ!」

 

 その中で卑弥呼と貂蝉が怒りの表情で祉狼の向かった方角を睨んだ。

 

「久遠!ザビエルの気配だっ!」

「わたし達は祉狼ちゃんを追いかけるわっ!」

 

 そう叫んだ二人は塀を飛び越え祉狼を追った。

 ザビエルと聞いて場は更にざわめく。

 

「静まれっ!我らが成すべき事は疾く鬼を迎撃する準備であるっ!」

 

 久遠の遠くまで良く通る大音声が響き、場が落ち着きを取り戻した。

 

「久遠さま!祉狼さまをお守りする為!森一家出陣いたしますっ!」

 

「任す!疾く駆け!祉狼を守り!機会あらばザビエルの首級を上げよ!鬼兵庫っ!」

「はっ!桐琴さんっ!小夜叉っ!鬼共を全殺しにしますよっ!」

 

 雹子の鬼気迫る凰羅に桐琴と小夜叉が嬉々として得物を担ぐ。

 

「がっはっはっはっはっ!良い面構えじゃ、各務っ!」

「ひゃっはぁああああああああああああっ!ザビエルの野郎はこのオレ様がいただきだぁああああっ♪」

 

 駆け出す三人を見送り、久遠は次の指示を出す。

 

「先鋒隊は急ぎ準備を整え江戸へ向け出陣せよ!ゴットヴェイドー隊は先鋒隊が全て出陣した後から随伴!後続へ早馬を飛ばし、早急に合流するよう伝えよ!各々、疾く掛かれっ!!」

 

『『『ははっ!』』』

 

 久遠の号令は何処の者かなど関係無く、只祉狼を守る事のみを考え行動に移った。

 

「さあっ!我らも祉狼の下へ向かうぞっ!」

 

 久遠の言葉に正室達は大きく頷く。

 

「うむ、当然じゃな!」

「今度こそ三昧耶曼荼羅を叩き付けてやるわっ!」

「ザビエルの所為で命を落とした者、全ての無念を晴らす!」

「祉狼兄さまに救われたこの命!今こそご恩をお返ししますっ!」

 

 そんな正室達の突出しようとする姿に幽は諦めの溜息を盛大に吐き、詩乃と雫は状況が状況だけに仕方が無いと諦めた。

 

 

 

 

「姫野っ!待ってくれっ!」

「バカバカバカぁああああっ!ついて来ないでよおっ!四郎なんか嫌い!大っ嫌いなんだからぁあああっ!」

 

 泣きながら走る姫野は祉狼が全力で追い掛けても追い付けない速さだった。

 

「嫌だ!ちゃんと話をするまで何処までも追い掛けるっ!」

「そんなに姫野を笑い者にしたいのっ!?」

「違うっ!俺は姫野に謝りたいんだっ!」

「ウソだしっ!四郎は姫野がバカだって笑ってたんでしょっ!」

「そんな事は無いっ!俺は姫野が一生懸命に頑張っていると思っていたっ!だからあの時も応援したくて按摩をしたんだっ!」

「じゃあ何であの時に名前を言わなかったのよっ!あの時に言ってればこんな目にあわずに済んだしっ!」

 

「俺は姫野と友達になりたかったんだっ!」

 

「え………………」

 

 姫野の速度が急速に落ち立ち止まった。

 それを祉狼は話を聞いてくれる為だと思った。

 

「姫野♪」

 

「四郎…………祉狼…………姫野は『友だち』だったの?」

 

 背中を向けたままの姫野の雰囲気に、祉狼は言葉に詰まる。

 姫野の気持ちは先程気付いていた。

 

「……………姫野……」

 

 祉狼は魂を振り絞ってその名を呼んだ。

 振り返った姫野は大粒の涙を流しながら自嘲の笑みを浮かべていた。

 

「………姫野ホントにバカじゃん………………ひとりで舞い上がって…………」

 

 

「俺は姫野が好きだっ!!」

 

 

 打ち拉がれている姫野の目をしっかりと見つめて祉狼は叫んだ。

 

「そ…………そんなの………」

 

 姫野の心が揺らいで子供の様な泣き顔になる。

 

 

「女の子を泣かせるなんて、いけない男の子だっぺ。」

 

 

 突然聞こえた声に祉狼と姫野は周囲を警戒する。

 

「えっ?どこっ!?」

「上だっ!姫野っ!」

 

「わっほぉおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ♪」

 

 遥か上空から奇妙な掛け声と共に人が降って来た。

 

ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!

 

 落下の衝撃は壬月の御家流五臓六腑と同じくらいの威力で、土砂をまるで爆発したかの様に吹き飛ばした。

 

「おめぇが噂の薬師如来け♪」

 

 朦々と立ち込める土煙の中、先程の少女の声が聞こえて来る。

 声のする場所から発せられる氣はどす黒く、祉狼はそれが鬼だと空から落ちて来る時から気付いていた。

 しかし、土煙が薄れ現れた鬼に祉狼は驚く。

 

「虎っ!?」

 

 目の前の鬼は虎の頭をしている。

 

「かっかっかっ♪驚いたっぺ♪オラの名は佐竹美奈義重!この面を被った鬼虎美奈が相模の虎、甲斐の虎、越後の虎、その他日の本全ての虎を食い殺し、新しい日の本の虎になるっぺよ♪」

 

「佐竹さん!あんたは鬼の毒に犯され正気を失っている!勝手にだが治療をさせて貰うぞっ!」

 

 

「華旉伯元くん♪あなたに佐竹義重を治療できますかねぇ♪」

 

 

 更に聞こえた新たな男の声に、祉狼の凰羅が怒りに燃え上がる。

 

「ザビエルっ!!」

 

 祉狼が声に振り向くとザビエルが空中に浮かんでいた。

 

「よそ見なんかしてる場合じゃねえっぺよ♪」

 

 佐竹義重、通称美奈が地を蹴り祉狼に正拳を打ち込んで来た!

 祉狼は拳を両腕でガード!

 しかし祉狼の体が大きく後ろに吹き飛ばされる。いや!

 

「跳んで衝撃を逃がしただか♪ザビエルが言った通りオラと同じく格闘術を身につけてっぺ♪」

「その身の熟し………相当な功夫(クンフー)を積んでいるな……」

「聞いた事あっぺ。明じゃ格闘術をそう呼ぶんだっぺ。」

「正確にはそれだけでは無いんだが、詳しい事は治療が終わってから教えよう!」

 

ズンッ!

 

 祉狼が得意の活歩からの崩拳を繰り出した!

 だが祉狼の拳は空を切る!

 美奈が宙高く飛んで、体を捻ってドロップキックだ!

 祉狼が間一髪で避けた!

 そのまま背後の美奈に鉄山靠!

 しかし美奈も迫る背に両手を着き、弾ける様に飛んで威力を殺した!

 

「おもしれえっ♪オラ、この鬼の力さ手に入れてから全力で闘える相手を探してたっぺ♪刀や槍を持った鎧武者でも、オラの腕斧のひと振りで首がもげちまうかんな♪この前なんかひと振りで首を七つ刈ってやったっぺよ♪」

「くっ!…………佐竹さん、あんたを絶対に治療するっ!」

 

 祉狼が拳に氣を溜めた!

 

「はぁああああああああああああああああああああああああっ!!

我が拳は、我が魂の一撃なり!拳魂一擲!全力全快!必察必治癒!病魔覆滅っ!!

鬼の毒が溜まった凝りを!俺が指圧で温め治す!」

 

 躑躅を鬼から戻した祉狼の必察技だ!

 

「俺達の全ての勇気!この指先に全てを賭けるっ!!

もっと輝けぇぇえええええええええええええええええええええっ!!

 

 

凝溜治温(コルジオン)按摩(アンマ)ァアアアアアアアアッ!!!」

 

 

 目にも止まらぬ指圧の連撃!

 

 

 しかし美奈はその全てを弾いて逸らした!

 祉狼の胴がガラ空きになってしまった!

 美奈が地を蹴り身体を空中で捻って一回転!

 

「わっほいっっ!!」

 

 ローリングソバットが祉狼の胸に叩き込まれた!

 

「祉狼ぉおおおおおおおっ!!」

 

 祉狼は姫野の悲鳴を己の肋骨がバキバキと折れる音と一緒に聞いた。

 

「がふっ!」

 

 血を吐き、北郷学園の白い制服が紅に染まり、祉狼は大地に倒れる。

 

「いやぁああああああああああああああああああああああああああっ!!」

ドサッ!

 

 祉狼を助けようと姫野は飛び出すが、足がもつれて転んでしまった。

 いや、足だけではなく全身が動かせなくなっていた。

 

「うるさい傀儡ですね。義重、処分して下さい。」

 

 ザビエルの術の所為だ。

 姫野を飛び交う蠅くらいにしか思っていないザビエルは無感情に言い、倒れた祉狼の前に降り立った。

 

「や…………めろっ………」

 

 上手く言葉も出せなくなった祉狼だが、その瞳の闘志は衰えていない。

 

「おお♪華旉伯元くん♪実に良い目です♪不屈の闘志♪素晴らしい♪」

「ひ…めの………にげろ…………」

「おやぁ?そんなにこの傀儡を助けたいですかあ?ならばひとつだけ私の願いを聞いてくれたら、この傀儡は生かしてあげても良いですよお♪え?何かって?華旉伯元くんの真名を呼ぶ事を許してくださぁい♪それだけですよぉおおお♪」

 

 それだけで姫野が助かるならばと、祉狼は承諾しようとした。

 

「ダメよぉおおおおおぉぉぉぉおおおおおおおおっ!!祉狼ちゃぁああああああん!!」

「早まるでないぞっ!!祉狼ちゃんっ!!」

 

 貂蝉と卑弥呼がダブルライダーキックの様に飛んで来た!

 

「わっほーーーい♪今度のも強そうだっぺ♪」

「これは拙いですね。義重、一度江戸へ戻ります。」

「そりゃねえっぺよ!オラ、今、ワクワクしてっぞ!」

「そんな超有名漫画の主人公みたいな事を言っても駄目です。あ、その傀儡を持ってきて下さい。ちょっと使い道を思いつきました♪」

 

「そうはさせないわよぉおおおおお!」

「風魔小太郎から手を離すが良いっ!!」

 

 漢女の蹴りがザビエルと美奈を捉える直前に、その姿が掻き消えた。

 美奈が姫野を担いだまま。

 

「くそっ!逃げられたかっ!!」

「姫野ちゃんまで連れ去られちゃったわよん!どうすんのよ、卑弥呼!」

 

「ひ…めの…」

 

「「祉狼ちゃんっ!!」」

 

 祉狼は姫野の姿が消えた虚空へ必死に手を伸ばしていた。

 漢女二人が祉狼を抱き上げる。

 

 と、同時に周りの地中から鬼が無数に這い出して来た。

 

「あぁ~ら…………わたし達、今とっても怒ってるから手加減出来ないわよぉ~~~………」

「祉狼ちゃんを傷つけた罪………その命で贖って貰おうではないか………祉狼ちゃんは暫し休むが良い………」

 

 卑弥呼が祉狼の目元に手を置くと、直ぐに穏やかな寝息が聞こえてくる。

 そして一刀たちですら見た事の無い怒りの凰羅が漢女から噴き上がった!

 

「貂蝉様!卑弥呼様!森一家到着……………」

 

 馬を跳ばして現れた雹子が、血まみれの祉狼を見て顔が真っ青になる。

 次の瞬間、漢女と同じに怒りの凰羅がその身を包んだ。

 

「誰じゃぁあああああっ!!祉狼さまをこんな目に遭わせた奴ぁああああああっ!!」

 

 瞬時に太平広を引き抜いて鬼の中へ飛び込んで行った。

 

「ちょっと待て!各務!そりゃオレの獲物だぞっ!!」

 

 小夜叉も雹子の後を追って鬼の群れへと突っ込んで行く。

 

「おうおう、久方ぶりに鬼兵庫が出たわ♪」

 

 桐琴だけが落ち着いてその様子を静観している。

 

「桐琴ちゃん………ちょっとだけ祉狼ちゃんをお願いね………」

「わしらも今は自分を抑えきれぬ………」

「おう、任せとけ。手当もしといてやる。」

 

 貂蝉と卑弥呼は祉狼を預けると雹子と小夜叉とは違う方角の鬼へ殴り込んだ。

 

「祉狼のこんな姿を見ればああもなろうさ………さて、祉狼の手当を………何じゃこれは?祉狼の折れた骨が元に戻っていくではないか………」

 

 それは禄寿応隠の力だった。

 

 

 

 

 江戸城。

 太田道灌が築城し、最近までは北条家が支配していたが防衛上難有りとして捨てた城だった。

 その一室の虚空にザビエルと、姫野を担いだ美奈が現れ、ゆっくりと床に降り立った。

 そして美奈は姫野を粗雑に床へ放り投げる。

 

「ザビエル、こいつをどうすんだ?」

「鬼に与えてボロボロになった姿を華旉伯元くんに見せたら、どういう反応を見せるかと思いましてね♪」

 

「そんな事はさせねえぞ!」

 

 姫野の胸元から宝譿が言い放つ。

 ザビエルと美奈は驚き、訝しんだ目で宝譿に顔を寄せた。

 

「なんだっぺ?この人形?」

「これは傀儡………ではないですね。」

 

「おう!それ以上姫野に近付くと怪我するぜ!」

「なに言ってるだ、人形のくせして。」

 

 美奈は無造作に手を伸ばす。

 

バチッ!

「あいだぁああ!!なんだあ?」

「結界………やはり管理者…………いえ、観測者ですね、あなたは。」

 

「知らねえよ、そんな事はよ!俺はこいつの夢を叶えるって約束したんだっ!命に代えても守ってやんぜ!」

 

 ザビエルが忌々しそうに宝譿を睨む。

 だがその顔は直ぐにいつもの他人を見下す嗤いに変わった。

 

「あなたに残された生命力で何時まで保つか楽しみですねぇ♪まあ、あなたが自分の意思で命を使うのですから、どうぞご自由に♪私の遊びはあなたが死んだ後で思う存分させて頂きましょう♪あはははははははは!」

 

 狂気を孕んだ目で高笑いをしたザビエルは、美奈を連れて部屋を出て行く。

 残された宝譿は姫野に振り返った。

 

「すまねえな、姫野………ウソ吐いててよ………」

 

 身動きの取れない姫野だが、僅かに首を動かして宝譿を見た。

 

「……でも………今のは嘘じゃないんでしょ………それで許してあげるよ…………だから姫野の事はもういいからひとりで逃げて!宝譿ならできるんでしょ!」

「そいつは出来ねえ相談だな。お前を祉狼の嫁にすると決めたんだ。手を繋いで、市で買い物がしたいんだろ。俺が居なくなったらあのゲス野郎はお前を鬼のオモチャにするに違いねぇ………絶対にそんな目には遭わせねえよ。」

「でもそれじゃあ宝譿が死んじゃうんでしょ!」

「俺は人形だ。長く人の歴史を見てきた只の人形だ。最後にお前の夢を叶えられりゃ、存在意義が有ったってもんだ♪」

「………………宝譿…………」

 

 姫野は涙を流して宝譿を見詰め続けた。

 

(だけど本当に時間が無ぇ…………エーリカから離れすぎて氣が供給され無ぇ………)

 

 それでも宝譿は姫野を守る結界を張り続ける。

 

(早く来い!祉狼!姫野を助けてやれんのはお前だけだ!)

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

祉狼敗北!

しかも姫野がなんかメインヒロインっぽくなってる!

 

そんな感じで着実にクライマックスへ向かっております。

 

 

作中で朔夜の長女、四女、六女が病気で他界しておりますが、飽くまでもこの『外史では』なのでご了承ください。

因みに正史では四男氏邦と六男氏忠は共に関ヶ原の数年前まで生きています。

 

後北条家豆知識として嫡男は新九郞を襲名します。おかげで「自己紹介させる時の台詞が十六夜と朔夜で混乱しないか?」と唸ったり「浅井家も新九郞だからややこしいんじゃぁあああ!」と、心の中で叫んだりしましたw

 

西堂丸と言う幼名も上杉景虎(名月の元になった方)につけられたそうですが、作中でその話を出すとややこしくなるので見送りましたw

 

 

《オリジナルキャラ&半オリジナルキャラ一覧》

 

佐久間出羽介右衛門尉信盛 通称:半羽(なかわ)

佐久間甚九郎信栄 通称:不干(ふえ)

佐久間新十郎信実 通称:夢(ゆめ)

各務兵庫介元正 通称:雹子(ひょうこ)

森蘭丸

森坊丸

森力丸

毛利新介 通称:桃子(ももこ)

服部小平太 通称:小百合(さゆり)

斎藤飛騨守 通称:狸狐(りこ)

三宅左馬之助弥平次(明智秀満) 通称:春(はる)

蒲生賢秀 通称:慶(ちか)

蒲生氏春 通称:松(まつ)

蒲生氏信 通称:竹(たけ)

六角四郎承禎 通称:四鶴(しづる)

三好右京大夫義継 通称:熊(くま)

武田信虎 通称;躑躅(つつじ)

朝比奈弥太郎泰能 通称:泰能

松平康元 通称:藤(ふじ)

フランシスコ・デ・ザビエル

白装束の男

朝倉義景 通称:延子(のぶこ)

孟獲(子孫) 真名:美以

宝譿

真田昌輝 通称:零美

真田一徳斎

伊達輝宗 通称:雪菜

基信丸

戸沢白雲斎(加藤段蔵・飛び加藤) 通称:栄子

小幡信貞 通称:貝子

百段 馬

白川 猿

佐竹常陸介次郎義重 通称:美奈

 

 

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、NEXTON-PASSPORTのゲームコーナー、ポーカーにて月間3位に入り、『戦国恋姫X直筆サイン入りB2ポスター』を頂きました!

八葉香南先生のサインで嬉しさMAXでした!

チャンスはまだ有るので、皆さんも是非貂蝉、いえ、挑戦して下さい!

 

 

Hシーンを追加したR-18版はPixivに投降してありますので、気になる方そちらも確認してみて下さい。

http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=7380059

 

 

次回はザビエルと決着が着くかも…………

 


 
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