「バシャーモ、戻って!」
げんぶのヨルノズク、竜神丸のドラピオンによる連携攻撃で撃破されてしまったバシャーモが、ディアーリーズの取り出したモンスターボールに戻される。
「ごめんねバシャーモ。実力を発揮させられなくて…」
「さて……どうするディア? 正直もう勝ち目が見えない状況なんだが」
「勝ち目があろうと無かろうと、一度バトルを始めた以上は最後までやり切るべきです。そうでなきゃ、これまで僕達の為に戦ってくれたポケモン達に失礼です」
「…まぁ確かにな。今更ここで諦めるのは、俺だって勘弁願いたいところさ。だがどうする? ヨルノズクの
「その事なんですが……ロキさん、ちょっと耳を」
「ん?」
ディアーリーズがロキに耳打ちする中、竜神丸とげんぶは羽ばたきながら空中に制止しているヨルノズクを凝視していた。
「あなたのヨルノズク、そろそろ私の目にも見えるようになってきましたね。一度、残る三番手のポケモンに変えてみては?」
「ん~……いや、問題ないさ。気配を特定されたところで、ヨルノズク自身も充分強いからな」
「ふ~ん……まぁ、それはお好きにどうぞ」
そして二人が話し終えると共に、ロキとディアーリーズも話し合いを終えたようだ。
「お二方、話し合いは済みましたか?」
「あぁ、問題ないぜ(『どくびし』は任せるぞ、ディア)」
「(はい、任せて下さい)それじゃピカチュウ、もう一度頼んだ!」
「ピカッチュウ……ッピ!?」
ディアーリーズがモンスターボールを投げ、ピカチュウが三度目の参戦。そしてピカチュウがジャンプしながら登場すると同時に、周囲の『ステルスロック』が再びピカチュウに襲い掛かる。
「あぁ、また『ステルスロック』がぁ!?」
「相変わらず便利だなぁ、あの技」
「ッ……ピッカァ!!」
しかし『ステルスロック』の岩石がピカチュウに炸裂した後、土煙の中から吹き飛ばされたピカチュウは空中で回転し、その勢いを利用して上手くドダイトスの背中に着地してみせる。
「ほぉ……『ステルスロック』を喰らった時の衝撃を利用して、上手くドダイトスの背中に乗ったか。良いアイデアだが…」
「地面に引き摺り下ろしてやれば良いだけの事です……ドラピオン、『ミサイルばり』」
「ドラァァァァァァァァァッ!!!」
「ドダイトス、『リーフストーム』で相殺!!」
「ドダァァァァァァァァァッ!!!」
ドラピオンが繰り出す無数の『ミサイルばり』を、ドダイトスの『リーフストーム』が相殺。その隙にピカチュウがドダイトスの背中からジャンプし、両頬に電撃を充電し始める。
「頼むぜ、ディア!!」
「了解です!! ピカチュウ、回転しながら『10まんボルト』!!」
「ピィィィィィカァァァァァ…チュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」
「「!?」」
ディアーリーズの指示を受け、ピカチュウは空中で回転しながら『10まんボルト』を発動。それによって繰り出された電撃はフィールドのあちこちに不規則に飛んでいき、地面を粉砕したり、ドラピオンやヨルノズクにも命中していく。
「ドラァァァァァァァァァァァァッ!?」
「ホホォォォォォォォァァァァァッ!?」
「んな、ヨルノズクッ!?」
「これは…!?」
しかもそれだけではなかった。フィールドの地面が一通り粉砕されていく事で、先程ドラピオンが地面に仕掛けていた『どくびし』も粉砕された岩ごと次々と消滅していく。
「凄い!! 『どくびし』ごと地面を吹き飛ばした!!」
「ピカチュウ、凄い…!」
「すごいすごーい!」
「おいおい、そんな戦法ありかよ…!?」
(ん~……まぁ、シンオウリーグでも似たような戦法で『どくびし』を消滅させたトレーナーがいるし、割とあり得ない戦法でもないんだよなぁ。回転しながらの『10まんボルト』も、そのトレーナーが使用した事のある戦法な訳だし…)
支配人が苦笑しながら見ている中、フィールド全体の『どくびし』を消滅させたピカチュウが地面に着地。その一方で、空中で『10まんボルト』の不規則過ぎる電撃を回避し切れなかったヨルノズクは、そのダメージでひとまず地面に降り立つ。
「チッ……ムチャクチャな戦法だな…!!」
「早いところ仕留めた方が良さそうですね……ドラピオン、ドダイトスに『こおりのキバ』!!」
「ドォォォォォォ…ラァッ!!」
竜神丸の指示で冷静さを取り戻したドラピオンは右腕を大きく伸ばし、その爪先から繰り出す『こおりのキバ』をドダイトスの甲羅の首横部分を攻撃する。しかし…
「よし来た、『かみくだく』!!」
「ッ!?」
「ドッダァ…!!」
「!? ド、ドラァァァァァァァ…!?」
これこそがロキの狙いだった。ドラピオンが『こおりのキバ』を仕掛けて来ると読んでいたロキは、敢えてドダイトスに『こおりのキバ』を受けて貰い、炸裂すると同時に『かみくだく』攻撃によってドラピオンの右腕に噛みつかせたのだ。右腕を噛みつかれたドラピオンは悲鳴を上げる中、ドダイトスはドラピオンの右腕に噛みついたまま全く離そうとしない。
「ドダイトス、『リーフストーム』を決めろ!!」
「ドォォォォォォ…ダァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
「ドラァァァァァァァァァァァァァァァァ…!!?」
ドダイトスは背中の大木から『リーフストーム』を発動し、ドラピオン目掛けて発射。しかしその威力は先程までと違って勢いが増しており、強力な一撃がドラピオンに炸裂する。
「そうか! あの威力、『しんりょく』が発動したんだ!」
「『しんりょく』…?」
「ドダイトスの特性だよ。体力が少ない状態で草タイプの技を繰り出すと、その威力が高まるんだ」
「いっけー! どーちゃーん!」
「チルチルゥ~!」
支配人が美空に特性『しんりょく』の効果を教える横では、咲良とチルタリスが一緒になって応援。彼等がそうしている中で、ピカチュウはヨルノズクに仕掛け始める。
「ピカチュウ、接近して『アイアンテール』!!」
「ピカピカピカピカ…!!」
「ここは耐えるしかないか……ヨルノズク、『リフレクター』!!」
ピカチュウが接近して来るのを見たげんぶは、特殊攻撃技の威力を半減する技『リフレクター』を繰り出すようヨルノズクに指示する。しかし…
「!? ホ、ホォ…ッ!?」
「ッ……しまった、さっきの『10まんボルト』で…!!」
先程ピカチュウが命中させた『10まんボルト』の追加効果で、ヨルノズクは麻痺状態となって全身が痺れたまま動けずにいた。そこにピカチュウが容赦なく接近し…
「ピッカァ!!!」
「ホホォォォォォォォォォォォッ!!?」
『アイアンテール』をヨルノズクの顔面に炸裂させ、そのまま大きく吹き飛ばす。そして吹き飛んだ先には、今もドダイトスの『リーフストーム』を受け続けているドラピオンの姿があり…
「ドラァアッ!?」
「ホホォッ!?」
ヨルノズクとドラピオンが激突し、そのまま『リーフストーム』で纏めて大ダメージを受けてしまった。
「よし、決めるぞ!! もう一度『リーフストーム』だ!!」
「ピカチュウ、『10まんボルト』で決めろぉ!!」
「ドォォォォォォ…ダァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
「ピッカァァァァ…チュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!」
「ドラァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!??」
「ホホォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!??」
そこに『リーフストーム』と『10まんボルト』が同時に繰り出され、ドラピオンとヨルノズクがそれを受けて大きく爆発。そして土煙が晴れた後には…
「ド、ラ……ァ…」
「ホォ……ホ、ォ…」
二体一緒に倒れ伏している、ドラピオンとヨルノズクの姿があった。
「何と…!」
「ヨルノズク!?」
「ドラピオン、ヨルノズク、共に戦闘不能…!」
「「…しゃあっ!!!」」
歓喜の表情を浮かべ、ロキとディアーリーズは大きくハイタッチしてみせた。
「やった、これで三対三に持ち込めた!!」
「ウル兄ちゃんときーくん、すっごーい!」
「…だが、げんぶと竜神丸の方がまだ優勢だな。ロキとディアのポケモン達はダメージを受け過ぎてる。それにげんぶと竜神丸の方は、まだまだ元気なポケモンが何体かいるからな」
支配人が解説する中、げんぶと竜神丸は戦闘不能になった二体をモンスターボールに戻す。
「すまない、ヨルノズク。ゆっくり休んでくれ」
「『どくびし』を消滅させられるとは……まぁ、ドラピオンの実力では所詮こんな物ですかね」
片方は労いの言葉で、片方は変わらず辛辣な言葉。それぞれ違う言葉をかけてから、二人は次のポケモンを繰り出した。
「俺の三番手だ……オーダイル!!」
「プテラ、実験再開」
「ダァァァァァァァァイルッ!!」
「ギャオォォォォォォォォン!!」
げんぶは三番手のポケモンとしてオーダイルを、竜神丸は再びプテラを繰り出す。オーダイルがやる気満々な様子でフィールドに立ったのに対し、プテラは若干だが疲れ気味の様子だ。その原因はプテラの右羽根にあった。
(! 竜神丸のプテラ、まだ『れいとうビーム』のダメージが残ってるな…)
バトルの序盤でグレイシアの『れいとうビーム』を受けたプテラは、右羽根が今もまだ凍りついたままで本調子を出せる状態ではなかった。あのプテラが自慢の素早さを活かせないのであれば、ハッサムのスピードで一気に沈めにかかる事が出来る。グレイシアの『れいとうビーム』がここで役立つ事になった。
「ディア。プテラはまだ本調子じゃない、先に仕留めるぞ」
「ですね……ピカチュウ、プテラに『10まんボルト』!!」
「ドダイトス、プテラに『ギガドレイン』!!」
「ピッカッチュウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
「ドォォォォォォォォォォ…ダァッ!!」
まずは右羽根が凍っているプテラを仕留めるべく、ピカチュウが『10まんボルト』を、ドダイトスが『ギガドレイン』で攻撃を仕掛ける。しかしそんな簡単にやられるほど、プテラも甘くはない。
「プテラ、『いわなだれ』で防御」
「ギャォォォォォォォォン!!」
プテラは『いわなだれ』で生成した複数の岩石を目の前に落とし、岩壁を作る事で『10まんボルト』と『ギガドレイン』を同時に防御。それと同時にオーダイルがその岩壁を飛び越え、右腕に冷気を纏いながらドダイトス目掛けて急降下する。
「オーダイル、『れいとうパンチ』!!」
「オォォォォォォォ……ダァイル!!!」
「!? ド、ダァァァァァァァァァァイ…!!?」
「ッ…ドダイトス!!」
オーダイルの『れいとうパンチ』が頭部に炸裂し、ドダイトスは大きく後退させられてから地面に沈む。いくら特性の『しんりょく』で草タイプの技が強化されても、体力が尽きてしまっては意味が無いのだ。
「ドダイトス、戦闘不能…!」
「ゆっくり休め、ドダイトス……そろそろ目ぇ覚ましやがれ、ハッサム!!」
「ZZZ…ッ!?」
瀕死になったドダイトスの次に繰り出されたのは、未だ眠っている状態のハッサム。そんなハッサムに、まだ消滅していなかった『ステルスロック』が次々と襲い掛かる。その結果…
「!! ハ、ハッサ…?」
『ステルスロック』のダメージで、ハッサムは何とか目を覚ます事が出来た。
「たく、やっと起きやがったか……まぁ良い、とにかく『バレットパンチ』だ!!」
「…ハッサァ!!」
首をブンブン振りつつ、ハッサムは右腕の鋏で『バレットパンチ』を発動し、プテラの築き上げた岩壁を破壊しにかかるも、そこにオーダイルが迫り来る。
「オーダイル、『れいとうパンチ』!!」
「オォォォォ…ダァイッ!!」
「かわせ!!」
「ハッサァ!!」
オーダイルが『れいとうパンチ』を繰り出すも、ハッサムは素早い動きで回避してから『バレットパンチ』で岩壁を完全破壊。しかし岩壁を破砕した先にプテラの姿は無く、ハッサムの真上から『そらをとぶ』攻撃を発動したプテラが突っ込んで来た。
「プテラ、『そらをとぶ』」
「ギャオォォォォォォォォォォォォンッ!!!」
「上か……ハッサム、もう一発行けぇ!!」
「ハッサァム!!!」
『そらをとぶ』攻撃で迫って来るプテラを、ハッサムは『バレットパンチ』で迎え撃つ。両者の攻撃がぶつかり合おうとしたその直後…
「『アイアンテール』!!」
「ピーカッチュウ!!」
「ッ!?」
真横から突撃して来たピカチュウが『アイアンテール』を炸裂させ、プテラの『そらをとぶ』攻撃の勢いを小さくさせる。そして…
「ハッサァムッ!!!」
「ギャゴ、ァ…ッ!?」
ハッサムの『バレットパンチ』がプテラの顔面に直撃し、そのままプテラを吹き飛ばした。吹き飛ばされたプテラの身体が地面を大きく滑った後、プテラは目を回してその場に力尽きた。
「ギャ、ォオ…」
「プテラ、戦闘不能…!」
「これで、両チームそれぞれ二体ずつ…!」
「ピカチュウとハッサムが意外に粘ったな……これは分からなくなってきたぞ」
これでいよいよ、どちらのチームも残るポケモンが二体ずつとなった。プテラがモンスターボールに戻され、竜神丸は何も言わずに最後の一体を繰り出す。
「ギャラドス、実験再開」
「グォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!」
「オーダァイル…!!」
再び参戦したギャラドスは、まだまだ元気そうな様子で咆哮を上げる。その隣ではオーダイルが両拳をぶつけながら構えており、ピカチュウとハッサムは疲れながらもギャラドスとオーダイルを睨みつける。
「ここが最後の砦だな…!」
「どちらも水タイプか……ピカチュウ、『10まんボルト』!!」
「ピッカァァァァァァ―――」
「オーダイル、『ハイドロポンプ』!!」
「ダァァァァァァイルッ!!」
「ッ……ピ、ピカァ!?」
しかしオーダイルが『ハイドロポンプ』を繰り出し、『10まんボルト』が繰り出される直前でピカチュウを吹き飛ばす。その間にギャラドスが動き始める。
「ギャラドス、『りゅうのまい』」
「グォォォォォォォォ…!!」
「ッ…マズい、これ以上積まれたら……『つるぎのまい』から『シザークロス』!!」
「ハッサァ!! ハッサァァァァァァァ…!!」
「オーダイル、『アイアンテール』で迎え撃て!!」
「オォォォォォォォ…ダァイ!!」
「ハッサァム!!!」
オーダイルの『アイアンテール』とハッサムの『シザークロス』がぶつかり合う。単純なパワーならオーダイルの方が上だったが、『つるぎのまい』を積んだ事でハッサムのパワーも上がっている事から、両者の攻撃は一歩も引かない互角の勝負だ。
「オォォォォォォォ…ッ……ダァアイッ!!!」
「ハッサ!? …ッ!!」
数秒間の激突、打ち勝ったのはオーダイルだった。ハッサムを吹き飛ばした後、追撃を仕掛けるべくオーダイルが駆け出し、ハッサムもすぐに体勢を立て直してからオーダイルに向かって駆け出す。
「ピカチュウ、『くさむすび』!!」
「ピカッチュ!!」
「!? オーダァ…!?」
「よし、今だ!! 『バレットパンチ』!!」
「ハッサァ!!」
しかしピカチュウの『くさむすび』が発動し、オーダイルの足元に生えた草木が『くさむすび』となってオーダイルの足を引っ掛けた。オーダイルが大きく体勢を崩す中、ハッサムは『バレットパンチ』を繰り出し…
「ッ……ダァァァァァァァァイル!!?」
「オーダイル!!」
ハッサムの『バレットパンチ』が炸裂し、オーダイルを大きく吹き飛ばした。その直後…
「『たきのぼり』」
「グォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!」
「ハッサァァァァァァァ…!?」
「ハッサム!!」
ギャラドスの『たきのぼり』で、ハッサムも大きく吹き飛ばされた。これにより、オーダイルとハッサムが同時に力尽きてしまった。
「オーダイル、ハッサム、共に戦闘不能…!」
「これで、あと一体…!」
「行けぇー!! ウルゥーッ!!!」
残るはディアーリーズのピカチュウと、竜神丸のギャラドスのみ。ここでディアーリーズが一気に勝負を決めにかかる。
「ピカチュウ、これで決めるよ……『ボルテッカー』!!!」
「ピッカ!! ピカピカピカピカピカピカピカピカ…!!」
「ギャラドス、『たきのぼり』」
「グォォォォォォォォォォォォォォ…!!」
それに対し、ギャラドスも全身に水流を纏って『たきのぼり』を発動。先程の『りゅうのまい』で強化した『たきのぼり』は勢いを増し、『ボルテッカー』を繰り出したピカチュウと正面から対峙する。
「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」
「ピッカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
「グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!」
ピカチュウの『ボルテッカー』。
ギャラドスの『たきのぼり』。
両者の技が、真正面からぶつかり合う―――
「ギャラドス、今です」
―――事は無かった。
「グオンッ!!!」
「ピカ…ッ!?」
「な…!?」
技と技がぶつかり合おうとした直前で、ギャラドスが『たきのぼり』の勢いを利用して一気に真上へと上昇。当たる筈だった『ボルテッカー』が空振りに終わってしまった。
(しまった…!!)
「これが本当の最後です……『ギガインパクト』!」
「グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!」
あの竜神丸が、馬鹿正直に真正面から決めに向かう筈が無かったのだ。竜神丸の指示を受けたギャラドスは全身に莫大なエネルギーを纏わせ、そのままピカチュウ目掛けて急降下していく。
「ピカチュウ、逃げてっ!!!」
ディアーリーズが叫ぶも、ピカチュウはまだ『ボルテッカー』の勢いが止まっておらず、すぐには回避行動が取れない。おまけにギャラドスは『りゅうのまい』で素早さも高めている為、今のピカチュウのスピードでは到底振り切れない。
そして…
-ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!-
ギャラドスの『ギガインパクト』が炸裂し、大きな爆発が発生。その衝撃波が周囲に大きく響き渡った。
「ッ……何て衝撃だ…!!」
「あれが、ギャラドスのパワーか…!!」
ロキとげんぶも、ギャラドスの持つ圧倒的なパワーに戦慄する。『りゅうのまい』で強化しているとはいえ、それでもここまでのパワーはそうそう引き出せるものではない。
「ピカチュウは!? ピカチュウはどうなったのさ!?」
「まだ分からないな……と言っても、既に分かり切ってるようなもんだがな」
「グォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!」
土煙が少しずつ晴れていくと、その中から未だ健在のギャラドスが姿を見せる。しかし『ボルテッカー』の電撃を少なからず浴びたようで、決して無傷という訳でもない。そんなギャラドスの前に…
「ピ……ピ、カァ……ッ…」
体力の尽きたピカチュウが、力なくその場に倒れ伏していた。
「ッ……ピカチュウ!!!」
「ピカチュウ、戦闘不能…! よってこの勝負、げんぶ&竜神丸チームの勝ち…!」
ダブルバトルは、これにて完全に決着がついた。
「ッ……ウルの負けか…!」
「ウルにいちゃん、負けちゃった…」
「…げんぶも竜神丸も、手持ちのポケモン達が曲者揃いだったな。特にプテラの『ステルスロック』と、げんぶのヨルノズクが厄介過ぎたんだ」
「…ウル、さん…」
美空が心配した様子で見据えるのは、力尽きたピカチュウに駆け寄っていくディアーリーズの後ろ姿。
「グォォォン…」
「あ……ありがとう、ギャラドス」
「グォン」
ギャラドスが自身の尻尾の上にピカチュウを乗せ、ディアーリーズの前に差し出す。瀕死状態のピカチュウを抱きかかえたディアーリーズがギャラドスに礼を言うと、ギャラドスは「気にするな」と言った感じの鳴き声を上げてから竜神丸の下へと帰っていく。
「あなたも物好きですねぇ」
「…グォンッ」
短い返事を返してから、ギャラドスは竜神丸のモンスターボールへと戻された。離れた位置では、ロキが地面に大の字で倒れていた。
「だぁ~くっそ!! ポケモンバトルでも、負けるとやっぱ悔しいもんだな…」
「悔しさは成長の糧となる。精進する事だな」
「…言われるまでも無いさ、そんな当たり前の事なんざ」
「さて、二人共。時間が惜しい、ポケモン回復させてやっから手持ちのモンスターボールをとっとと寄越せこの野郎」
「「急に辛辣!?」」
「あ、俺達のポケモン達も頼むぜ支配人」
「ついでに私のポケモン達も頼みましょうか」
バトルが終わった以上、ポケモン達を回復させる事はトレーナーの義務。今回のダブルバトルに参加したポケモン達は回復の為、支配人の下に預けられる事になるのだった。
そして…
『ん、ふみゅう…?』
ジラーチもまた、二度寝から目覚める直前だった。
ホウエン地方、とある上空…
「…貴様、大人しく待っていろと言った筈だが?」
「いや、申し訳ない。厄介なネズミに嗅ぎつけられそうになったものでね」
ステルス機能で透明になっている巨大飛行艇。その内部には、ポケモンハンターJにジラーチの捕縛を依頼したボルカノの姿があった。
「安心したまえ。ジラーチの捕縛の邪魔はせんよ。大人しくここから見物させて貰うさ」
「…後から『依頼を取り消したい』などとは言わんだろうな?」
「言う筈が無いじゃないか。目の前に美味しい獲物がいて、喰いつかない馬鹿が一体何処にいるのかね?」
「…口の減らん奴め」
Jが気に入らないといった様子で睨みつけるも、ボルカノはニヤニヤと怪しい笑みを隠さない。
(そうとも、私は何としてでもジラーチを手に入れてみせる。全ては我等がマグマ団の、果たせなかった野望を達成する為に……ククククク…)
そして、リーグ協会では…
「―――で、私も呼ばれた訳ですか」
「今はとにかく人手が欲しい。頼めるな?
okakaの下には、
「分かりました、私も手伝いますよ……ドンカラス!」
「カァーッ!」
「ティオス、お前も出ろ!」
「……!」
刃はモンスターボールを投げ、大ボスのような風格を持ったカラス型ポケモン―――ドンカラスを召喚。okakaはその横でラティオスを召喚し、両者は共にディアーリーズ達の下へと飛び去って行くのだった。
『七夜の願い星 その6』に続く…
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七夜の願い星 その5