No.852952

艦隊 真・恋姫無双 114話目

いたさん

これが華琳の考えです。

2016-06-12 21:52:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1048   閲覧ユーザー数:962

【 再挑戦 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

冥琳「そんな馬鹿な! 前提条件が違っているなど──!?」

 

詠「ボクだって………信じられない。 あのくらいの策、アンタなら仕掛けても可笑しくないわよ………」

 

秋蘭「……………!」

 

ーー

 

余程自信があったらしい推論が容易く不定されて、ほんの少し涙目になる冥琳。 他の者も目を白黒し驚愕した顔を見せた。 それだけ冥琳の推論は、現在の状況を的確に把握して練られ、筋道が通った内容だったのである。

 

それを当事者の華琳が、ハッキリと『否定』したのだ。 

 

ーー

 

翠「くそぉ! こんな時に……朱里や雛里が居てくれたらなぁ………!」

 

蒲公英「無い物強請りしても仕方ないよ………お姉様。 ねねか詠で代用しなきゃ………」

 

ねね「な、何と失礼なぁ!! ねねも一流の軍師ですぞ!?」

 

詠「ちょっと! これでもボクだってね! 董卓軍の軍師で大活躍してるの!」

 

ねね「──詠殿!?」

 

詠「確かに………朱里や雛里には及ばないかも知れない。 だ、だけど──幾ら何でも、ねねと同格の軍師扱いはしないでくれるっ!?」

 

ねね「そ、そんなぁぁぁ~~~~!」

 

ーー

 

では、先程の行動は何だったのか? 

 

周りの恋姫達は、華琳の考えを読もうとするのだか、この部屋の中に華琳達へ対抗できる軍師が居ない。 詠、ねね………この二人だと些か荷が重かった。

 

そうなれば、疑問を解消するために、本人に視線が集まるのは当然の事。

 

しかし、その視線にウンザリした顔をした華琳は、軽く説明だけする。

 

ーー

 

華琳「はあ…………結果だけ説明すれば、私は真剣に桂花へ挑み勝負に負けたのよ。 これだけでも分かるでしょう? 前提条件が違う事ぐらい……」 

 

春蘭「華琳様ぁ! それでは、私に意味など全く───」

 

華琳「春蘭、難問があれば直ぐに人へと頼る──それは、自分の成長できる機会を失うのも同様よ? 人と言うものは悩んで成長する者。 私の愛する春蘭は、そんな大事な機会を逃すような困った将だったかしら?」

 

春蘭「───そんな、そんな事ありません!」 

 

華琳「では、まず自分で理解できる範囲で考え、それでも分からなければ……尋ねなさい。 貴女が望む物を全部が全部、簡単に教えるつもりは無いけど、少しなら手助けしてあげるわ……」

 

春蘭「華琳様ぁ───!!」

 

華琳「………そう、良い子ね」クスッ

 

 

「「「 …………………… 」」」

 

秋蘭「ああぁ………華琳様から簡単に足払われる姉者は、何時も通り可愛いなぁ………」

 

ーー

 

華琳に詰め寄って説明を願う春蘭だが、簡単に華琳から遊ばれて終わる。 一部の将が、ほのぼのと主従の様子を見ているが、それはさておき。 

 

再度、その奇異な行動を推測した軍師が、華琳の前に現れた。

 

ーー

 

冥琳「───それは困る。 少し前だが稟と風に世話を掛けた身だ。 その二人が今も慕う君主に異変あらばと、こうして心配しているのだが……」

 

華琳「天の国では『小さな親切 大きな御世話』という格言があるそうよ? 今の貴女に贈る言葉として、これ以上の言葉は見付からないわ!」

 

冥琳「そうか? だが、そんな雑な扱いをされると悲しむぞ。 主に私が……だ」

 

華琳「ふん、勘違いしないで。 そもそもこの話は、私と桂花の問題なのよ! 本来、他国の貴女が口を出す事など──何も無いわ!」

 

冥琳「それは違う。 華琳達が関係する者は──呉にも蜀にも重要な人物『北郷一刀』だ!  それに、華琳が言っていた前提、確かに見過ごしていた!」

 

華琳「そう…………では、何なの?」

 

冥琳「───つまり、その考えの元に居る人物は『覇王』ではない! 『寂しがり屋の少女』だ! この事を踏まえなければ、私は永遠に理解できないままだった! その少女が持つ、哀しいまでの執着の心に気付かなければっ!!」

 

ーー

 

冥琳曰く、自分は『超世の傑 曹孟徳』として事の顛末を考えたが、それが間違いの始りだった、と。 『寂しがり屋の少女』──華琳をそう呼んで消えた少年の名を──倒れている一刀を見て思い出したという。

 

『そうなれば、華琳と桂花の争いは違う話になる。 桂花に免罪符を与えるなどと悠長な話ではない。 どちらも相応な気力、体力を使い、全力で相手の思惑を外そうとしたのでないのか?』

 

『そこから考えれば、二人の『アレ』は仕組んだのではなく、形を変えた戦いだったとなる筈だ。 快楽で相手を破壊しようとする者、快楽に耐えて想いを貫く者。 皮肉にも……愛した男は同じ男なのに……』 

 

こう冥琳は結論付けると、眼鏡を二本指でクイッと動かし位置を調整し、真剣な表情で華琳と桂花を見据える。

 

ーー

 

華琳「───その通りよ。 二つの前提とは………冥琳。 貴女は私を『曹孟徳』として判断した事。 そして、桂花の想いの強さを見誤った。 それだけの話……だけど、決して忘れてはいけない事………」 

 

冥琳「…………………」

 

ーー

 

華琳は桂花に『話していい?』と顔を向ける。 

 

頬を染めた桂花が、軽く首を縦に振るのを見ると、承諾を得たと言わんばかりに───『真相』を話し始めた。

 

 

◆◇◆

 

【 真相 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

華琳「───私はねぇ……本気で嫉妬して、桂花を襲ったの………」

 

流琉「か、華琳───様?」

 

季衣「────えっ!?」

 

華琳「だって………一刀とせっかく逢えたのに。 記憶が無かったとはいえ、この私を散々罵った桂花が口付けするって、桂花の幸せそうな顔を見ていたら、本気で一刀から排除しようと…………思ったの………」

 

ーー

 

冥琳は、華琳の告白を聞いて驚く。

 

自分が思っていた以上に華琳の独占欲は大きいようで、まさか此処まで嫉妬に狂っていたとは思ってもいない。 これは、前の世での桂花との強固な繋りがあった為、普段は隠している『素顔』が露になり、桂花を襲ったのだ

 

──冥琳は、そう判断した。 

 

ーー

 

桂花「───始め、華琳様が私に手を出して来た時、何が何だか分からなかったの。 む、昔の私だったら………泣いて感激するのだけど。 ………その……ご、御褒美……なんだけど………今の私には、苦痛でしかない……」

 

華琳「それは………桂花にね。 褒美として私の同衾を許可したら、 直ぐに断られたのよ。 だから、この方法を使って桂花を屈服させて、一刀が目覚めとしても、二人の繋りを断ち切らせるようにしたの」

 

桂花「…………………」

 

華琳「………我ながら……醜い嫉妬だと自覚したわ。 だけど……止めれなかった。 先導者としてのも決意、統率者としての矜恃も、桂花に対しての感謝さえも──全ては纏わり付く邪魔な感情でしかならなかったのよ!」

 

ーー

 

冥琳の言葉から堰を切ったように話し出す、華琳と桂花。

 

その少女達の小さな身体に、どれだけの黒き感情が蠢いていたか。 このままの状態で行けば、今の起きた件を軽く流して、日常の生活に戻っていただろう。 昨日より更に増えた黒き負の感情を抱きつつ、明日に向かって──

 

だが、冥琳の言葉が──二人に捌け口を与えられ、感情のまま語り合う。

 

ーー

 

桂花「そんな私は………華琳様が怖かった」

 

華琳「……………………」

 

桂花「…………幾ら私が許否しても、身体は抵抗できなかった。 華琳様の導きで私は快楽の海へと投げ込まれ、意識は夢心地になり快楽に溺れ……そのまま全部、華琳様に委ねてしまいそうになったわ………」 

 

ーー

 

周りの者達は、二人の行動に頷いて納得する者、口を開けたまま驚く者など反応は色々だ。 特に桂花の行動は……どうやら百合の部分が綺麗に抜けている事に皆が驚き…………最大最強の恋敵と認識するのである。

 

ーー

 

冥琳「………今度は正解か。 これは確かに私の誤りであり、大きな声で言えぬ話だ。 一人の王である前に『女』であると気付かぬとは、私も軽慮浅謀、まだまだだったよ。 雪蓮や穏、祭殿に知られれば……どうなっていた事か……」

 

華琳「ふふふ………その時はその時よ。 冥琳が自分の才覚で気付けた事を、感謝しておくべきね」

 

冥琳「そうだな。 それに………桂花の想いの強さか。 理解していたつもりが、更に予想を上回る程だったとは。 うむ、これなら蓮華様に御報告する時も大いに納得されるだろう。 あの方も、一刀を大事に想っている女であるからな………」

 

ーー

 

華琳と冥琳のやり取りを見ていた桂花は、話が終わったと察し華琳に声を掛ける。 華陀により治療が済んだとはいえ、その傷は浅くはない。 だが、語らなければならない事が多く、今も無理をしてでも口を開いて意見を述べている。

 

ーー

 

桂花「……………………華琳様、私は──」

 

華琳「桂花、貴女はまだ……死を望むの? あれだけの想いを私に示しながら………一刀を助けたくないの? 一刀と一緒に……居たくはないの?」

 

桂花「……………………」

 

華琳「貴女に対しての罰は、先程の行動で償いは済んだわ。 大体、私の方に非があるのだから………」

 

桂花「華琳様…………」

 

華琳「それに………ね。 久しぶりに私の手管で、快楽に惚けて善がる桂花を見れたのは僥倖だったわ。 一刀が居なくなってから、桂花は私の誘いにちっとも応じてくれないんだもの。 私だって………寂しかったのよ………」

 

桂花「………………申し訳……ありません……」

 

ーー

 

そんな百合百合しい雰囲気が二人を包み込む、争いが終わるのだった。

 

 

◆◇◆

 

【 荒れる艦娘 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

瑞穂「あ、あの………不躾ですが、質問させて頂いても……宜しいですか?」

 

桂花「私に………? 見ない顔だけど……一刀の……」

 

ーー

 

興味深げに聞いていた瑞穂が、桂花と華琳に口を開いた。

 

華琳と桂花は、途中から部屋に入ってきた瑞穂達の姿を見ていない。 

 

春蘭達が城内で桂花を探している途中で、赤城より連絡を受けた瑞穂達に出会い、桂花本人が戻って来たのを知って一緒になり戻ってきた。 だから、知らない者が実際何人が居たわけである。

 

ーー

 

瑞穂「こ、これは大変失礼つかまつりました。 瑞穂の名は『瑞穂型 1番艦 水上機母艦 瑞穂』となります。 一刀提督が采配を振るう艦隊への末席に連なる艦娘が……瑞穂と。 新参の身ですが……どうか良しなに………」

 

華琳「やっぱり一刀の関係者ね。 それなら、此方も名乗らせて貰うわ。 私は──姓は曹、名は孟徳、真名は華琳。 真名を貴女に預けるわ。 華琳と呼んで頂きたい」

 

桂花「…………う、うん。 分かったわ。 私は姓は荀、名は文若、真名は桂花よ。 そ、その……真名も預けるから………桂花と─────んっ!?」

 

ーー

 

瑞穂の姿に華琳の目に妖しい光が宿る。 

 

果たして、一刀の臣下だから取入れようとしているのか、自分の性癖で食指が動いたのか判断が出来ないが、何らかの興味を持った様子だ。

 

桂花も瑞穂の存在に驚きつも華琳が真名を預けたので、桂花も真名を許した。 その際に、桂花へ突き刺さる視線を感じ目を向ける。 

 

そこには──── 

 

ーー

 

赤城「ぐぬぬぬ………! 私は桂花さんから真名を預かる為に、あれだけの罵声、脅迫、惨い仕打ちを一身に浴びせられたのに、なんで瑞穂には簡単に許すんでしょうか!? これは紛うことなく──私に対する冒涜です!」

 

加賀「…………赤城さん、私は文若殿より真名を預かってないのだけど?」

 

赤城「──はっ!? これはまさか……真名を預ける相手を限定し、そして私達仲間内での温度差を実感させ信頼を失墜、そして艦隊を離間させる策を企んでいるに違いありません!! な、なんて………恐るべき軍師なんですか!?」

 

加賀「……………………………」

 

ーー

 

遠くから赤城がジト目で睨み、『待て、慌てるな。 これは──』と言う台詞回しする軍師様のように深読みを開始して、加賀が呆れ果てていた。

 

桂花にしてみれば、そんな馬鹿な話をしながら自分を睨んでいるとは夢にも思っていない。 

 

桂花に言わせれば『自業自得』と一言で言い表していただろう。  

 

ーー

 

桂花「……………赤城……ね。 なんで私を睨むか……分からないけど。 ああ、此処に到着する際に………散々からかったから遅参して、部屋の料理が食べれなくて……恨んでいる訳ね。 全く………本当に器が小さい女なんだから………」

 

瑞穂「あ、あの………」

 

ーー

 

赤城の扱いは、この世界でも大食艦認定済みである。 だが、赤城より食べる量の多い加賀は上手く立ち回り、その認定を外れていた。 

 

それはさておき、桂花は自分に声を掛けてきた瑞穂に慌てて返事を返す。

 

ーー

 

桂花「──わ、悪かったわね。 考え事をしていたから………で、何を……聞きたいの? 答えられる範囲なら答えるけど………」

 

瑞穂「…………ま、誠に失礼ながら………桂花様……」

 

桂花「け、桂花様ぁ!? そんな……大袈裟な敬称なんか使わなくても──」

 

ーー

 

赤城の視線で気を取られ、瑞穂の存在を忘れていたとは言えない桂花は、慌てて取り繕う。 しかし、瑞穂は真剣な眼差しで桂花に詰問をした。

 

先程の敬称発言よりも、驚愕する内容を───

 

ーー

 

瑞穂「桂花様は…………提督と………! ど、どど、同衾とか──なされているのでしょうかっ!?」

 

「「「 ────!? 」」」

 

桂花「─────えっ!?」

 

ーー

 

その言葉により、桂花を元より───殆どの恋姫が硬直する。 

 

特に、この部屋で唯一『同衾どころか子供も授かりました』の桂花は、手に汗を握る。 『王佐の才』と言われし桂花だが、瑞穂の言葉に関しては、直ぐに返事を返す事が出来なかった。

 

ーー

 

瑞穂「け、桂花様の意思の強さ。 とても、夢想の乙女が得るような強さでは御座いませんっ! そ、そ、その……心より提督を慕う御姿……瑞穂は深い感銘を覚えると同時に、す、垂直な勘で提督への関わりを疑問視するのです!」

 

桂花「…………………」

 

瑞穂「…………桂花様。 どうか、どうか……瑞穂の疑問に御返事を賜りたく…………」

 

ーー

 

瑞穂は戸惑う桂花に向かい、更に見据えて一歩近付いていった。

 

 

◆◇◆

 

【 案じる者 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

??「───そんな事より、一刀の身体を優先した方が良いじゃない?」

 

「「「 ─────!? 」」」

 

瑞穂「──は、はいっ!?」

 

桂花「………か、華琳様…………」

 

ーー

 

瑞穂の言葉に硬直する桂花の代わりに答えたのは、華琳である。

 

瑞穂が驚きのあまり数歩……退く。 盗み聞きしていた艦娘達も一斉にびくついた。 桂花も驚き、声を発した華琳の顔を見るが……華琳は既に瑞穂の前に出て表情が分からない。

 

ーー

 

華琳「そんな馬鹿な質問するのなら、一刀の容態を心配した方が遥かに有益──って言うのよ。 そんな簡単な話も分からない?」

 

瑞穂「ば、馬鹿な話って…………幾ら曹……んん! か、華琳様でも失礼な答えではないでしょうか!?」

 

ーー

 

瑞穂が思わず激昂して、華琳に強く抗議する。 

 

しかし、その抗議も涼しげな顔で受けた後、笑みを浮かべて反論した。

 

ーー

 

華琳「瑞穂………と言ったわね。 貴女は何様のつもりで桂花の心に土足で踏み込むの? 幾ら御遣いの末席に加わるからと言って、この娘(こ)の大事な想い出まで赤の他人に晒していいものでは無いわよ!?」

 

瑞穂「と、とんでも御座いません! み、瑞穂は……ただ………」

 

華琳「…………言っておくけど、貴女の『提督』と同衾した者は、仲間内には間違いなく居ないわよ。 どちらかと言えば……瑞穂の仲間となっている将達を疑う所だけどねぇ?」

 

瑞穂「なっ───どう言う!?」

 

華琳「私達が洛陽に到着して数日。 いつでも貴女達が傍に居る状態で、どうやって近付けばいいの? それに、恋愛の隠し事に関して苦手な者ばかりだもの。 何か関係を持てば、他の者の追求に掛かり直ぐに分かるわ!」

 

瑞穂「……………………」

 

ーー

 

ついでに華琳は、自分の唇を軽く舐めてから瑞穂の目を覗き込む。 瑞穂の目が思わず泳ぎだして頬を染める。 華琳は何気なく瑞穂の耳にソッと口を寄せて、内緒話をしておいた。

 

ーー

 

『(…………初夜を迎えた女はね………一時だけど、歩き方が変わるのよ。 アソコの違和感を感じてねぇ普通には歩き難いの。 ふふふ………この意味が示す事……うぶな貴女でも理解できるでしょう~?)』

 

『(─────!?!?)』

 

ーー

 

顔を更に朱色で染め、首を光速で縦に頷く瑞穂に対して、華琳は言葉を更に紡ぐ。 …………口許を少し上げて嗤いながら。

 

ーー

 

華琳「前の世界で『北郷一刀』と同衾した者なら、私を含めて全員よ。 戯れなんかじゃなく……一人の男して愛し愛した。 ただ、桂花だけ──その想いが私達より一歩も二歩も進んでいただけ。 どう、理解して貰えたかしら?」

 

瑞穂「────しょ、承知致しました。 瑞穂……これで下がらせて頂きます。 ご協力………ありがとうございましたぁ!!」

 

ーー

 

瑞穂は惚けた表情を浮かべて、礼もそこそこで退く。 華琳は瑞穂が下がるのを見定めると、桂花の様子を見る。 

 

その顔は真っ青になり、身体は左右にふらついている。 いつ倒れてもおかしくない様子なのだ。 瑞穂の質問に答える時に、何時もの桂花と違い毒舌が出なかったのを不審に思った華琳が、桂花の様子を注意深く確認していてのだ。

 

ーー

 

華琳「桂花──身体は大丈夫なの?」

 

桂花「……だ、大丈夫です。 心配して頂き……あ、ありがとうございます」

 

華琳「………………………」

 

ーー

 

幾ら治療が済んでいるといっても、流した血の量は元には戻らない。 桂花は気丈にも平気な振りをしているが、立っているだけ辛い筈だ。 

 

そう考えた華琳は、桂花に声を掛ける。

 

ーー

 

華琳「貴女は私の束縛を破り、一刀の目を覚ます役割り正式に得たのよ。 だから、こんな場所で倒れるなんて無様な真似は止めなさい。 倒れるのなら、愛しい男の胸の中! それくらいの意地を皆に見せつけてやるのよ!!」

 

桂花「───は、はいっ!」

 

ーー

 

華琳が厳しい言葉を掛けたのは、別に意地悪をした訳ではない。 これでも桂花を気遣い声を掛けたのだ。 

 

理由は──優しい言葉を掛けると、安心して意識を飛ばす可能性がある為である。

 

 

★☆★

 

日ノ本では昔、海で船が難破して、とある集落に生存者達が流れ着いたそうだ。

 

その時、生存者を長の家に集め、その周りを集落の者が囲み、悪口や軽くちょっかいを出し一晩徹夜させ、その後に薄い粥を呑ませたそうだ。 

 

『あの時は実に生きた心地がしなかった』と……生存者は後に語ったと。

 

だが結局、生存者達は全員助かったそうだが………その理由が、集落で行われた生存者に対する扱いだったという。 

 

わざと悪口とかを言ってちょっかいを出したのは、助かった安心感で心の臓が止まる者が居るそうで、意識を持たせ寝させないように邪魔をした。

 

そして薄い粥。 弱っている胃に普通の飯を与えると、逆に体調が狂い同じく死に至るとの事で、胃に易しい粥で栄養を取らせたそうだ。 

 

その集落の者は、漂流者がよく流されてくるので体験的に知っていたとの事、だから適切な処置をして助けることができた──そんな話が伝承されている。

 

★☆★

 

 

華琳の言葉で、桂花の顔に少しは緊張感が戻る。 華琳は春蘭達に桂花の様子を任せると、急いで此方の様子を窺っている加賀へ声を掛ける。 

 

ーー

 

華琳「───加賀! 貴女に頼みたいがあるの!」

 

加賀「…………何かしら?」 

 

華琳「色々と有り過ぎて……まだ頭が混乱してるけど、早急に準備して欲しいの! 一刀を、いえ……貴女達の提督を! 今から目覚めさせるわ!!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

 

早めに投稿するつもりが………結局細部の直しとかあって遅れてしまいました。

 

土曜には出来る筈だったのですが、推敲に時間が掛かりまして。

 

来週は、もしかすると一、二週間ほど遅れるかもしれません。

 

よろしくお願いします。

 

 

 

下記の文章は、『艦隊 真・恋姫無双 113話目』の台詞です。 

 

元の部分は 「「「 ………………… 」」」 となっていますが、本来はコレが入る予定でした。 だけど、月がちょっと………性格に合わなかったのでボツ扱いに。

 

 

ーーーー

 

 

【 冥琳の推理 の件 】

 

〖 都城内 予備室 にて 〗

 

冥琳「さて、役者も揃った所だ。 皆も華琳と桂花が、何故このような事をする事になったのか知りたいと思う。 ただ、先程の行為を行っていた二人に、思惑を語らすのは、あまりに酷だ。 ───そうは思わないか?」

 

 

ーー

 

恋「………………ん」コクッ

 

ねね「恋殿………! なんと、お優しいっ!!」

 

ーー

 

月「………そうですね、私から言えるのは………あ、詠ちゃんが先に話す?」

 

詠「…………月からで良いよ。 月はボクの君主だし………」

 

月「じゃあ、ごめんね詠ちゃん。 それでは失礼しまして──」

 

冥琳「───うむ」

 

月「華琳さんが普段と違い、相手を気遣いつつ前戯から開始していましたし、桂花さんも昔のように快楽に委ねる事もせず、抵抗していたので色々と無理をなされた為かと。 その為に普段されない真似をされた反動もあり、一部の身体にも負荷が及び、動作も緩慢になっているみたいですね………」

 

華琳「……………はっ?」

 

桂花「…………はいっ!?」

 

冥琳「………………」

 

月「御二人の身体の外傷は軽微なため、既に治療は済んでいらっしゃるようですが、内面の臓器、それと精神も過度に負担が掛かっていますので、長期の治療が必要かと思いますので、華陀さんに相談なさって下さい」 

 

「「「 ────── 」」」

 

 

月「一応、簡単に状況を説明すれば……ですが。 へ、へう~、詠ちゃん………恥ずかしいよぉ…………」

 

詠「ゆ、月が……サラッて……そんな話をするの……正直聞きたくなかったんだけど。 ───そ、そうだね。 自分達の艷事を喋れって言うのは……黒歴史を語るような物よね? ボクだって………言いたくないわよ………」

 

ーー

 

翠「ちょっと待てぇ! な、なんで……月があの状態の二人を見ただけで、そこまで分かるんだぁ!?」

 

蒲公英「あ、お姉さま………知らなかった? 二人がご主人様の小間使い任された時、寝台の布を毎日変えていたんだって。 だから、皺ぶきの具合い一つで、ご主人様の夜の睦事の状況が分かるって………言っていたんだよ?」

 

翠「────そ、その当たり具合いは………」

 

蒲公英「…………えへへへ。 皆の話に依ると………九割近くだって!」

 

翠「──────☆§*※∧∂∀」

 

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
7
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択