No.851804

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

ゆきかぜ

2016-06-06 15:16:35 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3012   閲覧ユーザー数:1463

「フブキさん、今回もお疲れ様です」

 

「あれぐらいならどうって事ないわ。もーまんたい、もーまんたい」

 

その後、待機していた四輪駆動車“雪神(ゆきがみ)”に到着したフブキはディアーリーズとハルカの二人を後部座席に乗せ、同行していたサポーターの青年が運転する形で移動を開始。残った支配人とフィアレスは「少し話でもして仲良くなりな」という理由から、二人は起動したサクラハリケーンに二人乗りする形で雪神の後ろを付いて行くように同行している。

 

「あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”…車の中はクーラーで涼しいわぁ~…もう外に出たくない…」

 

「ハルカ、いくら何でも寛ぎ過ぎ」

 

「あははは……今日、かなり暑かったでしょ? これから向かう“ゆきかぜ”という店も、店内はクーラーは効いているから安心しなよ」

 

「えぇっと、すみません。わざわざ僕等まで乗せて貰っちゃって」

 

「大丈夫よウルちゃん。レイ君逹のお友達なら、私達はいつでも大歓迎だから♪」

 

「そういう事だ……あ、そういえば自己紹介がまだだったな。俺はサポーターを担当してる三川光博。周りからはミツって呼ばれてる。よろしくな」

 

「僕はウルティムス。ウルって呼んで下さい。そして彼女がハルカです」

 

「よぉ~ろぉ~しぃ~くぅ~ねぇ~…」

 

「…ハルカ、挨拶ぐらいちゃんとしなって」

 

「ははは。よろしくな二人共……ところでフブキさん。聞きたい事があるんですが」

 

「はい? 何か、し…ら……」

 

サポーターの青年―――三川光博(みかわみつひろ)、通称ミツに問いかけられたフブキは、運転中のミツの方へと振り向き……そして振り向いた事を後悔した。ディアーリーズやハルカと話していた時と違い、ミツの声がいきなり低い物へと変わったからだ。

 

「レイさんから聞きましたよ……着替えも持たずに、ウル君の前で変身を解いたんですってねぇ?」

 

「…ハ、ハイ、ソウデス」

 

 

 

 

 

-バチコォーンッ!!-

 

 

 

 

 

「へぶふぅっ!?」

 

「「ッ!?」」

 

その直後、ミツは右手でハンドルを握ったまま、何処からか取り出したピコハンマーを左手で構え、そのピコハンマーをフブキの顔面に躊躇なく炸裂させた。その際に響き渡った音でディアーリーズだけでなく、クーラーで涼しげにしていたハルカまで思わずビクッと驚きの反応を示した。

 

「キュゥゥゥゥ…」

 

「全く……人前で全裸姿は見せるなとあれだけ言ったのにまだ分からないんですかねぇアンタって人はさぁってか少し前も着替え無しで変身解いた所為でキャンプに来ていた人達に全裸姿を見られた事があったというのに何でここまで羞恥心って物が皆無なのか理解に苦しみますよ本当に俺等サポーターが普段どれだけ苦労しているのか知った上での行動なんですか冗談抜きでやめてくれませんかねぇブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ…」

 

「あ、あの、ミツさん、フブキさん気絶してますけど…」

 

(…あまり怒らせない方が良さそうね)

 

フブキがピコハンマーを喰らって気絶しているのを他所に、ミツは雪神を運転しながら小声でブツブツとフブキに対する愚痴を零し始める。ディアーリーズが恐る恐る告げるものの、ミツが見せている黒いオーラを前に強く発言する事が出来ず、ハルカもミツをなるべく怒らせないようにしようと心の中で決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇレイ、今ピコハンマーで誰かが殴られる音が聞こえたんだけど…」

 

「どうせフブキさんがミツにしばかれたんだろ、いつもの事だ」

 

サクラハリケーンに乗っていた支配人とフィアレスも、鋭い聴覚でピコハンマーの炸裂音を聞いていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、他の次元世界では…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――よいしょっとぉ!!」

 

「しゃおらぁっ!!」

 

「そしてフィニィッシュ!!!」

 

「ギャオォォォォォォアァァァァァァァァァァァッ!!?」

 

某管理外世界、オルディン海域。ここでは海の生物を片っ端から食い荒らして生態系を破壊して回っていたシャチ型モンスター“覚醒海魔獣オルガロス”が、ルカとmiri、蒼崎の三人によって仕留められていた。ルカのチェーンバインドでオルガロスが一本釣りにされ、戦闘服を身に纏ったmiriが忍者刀をオルガロスの腹部に突き刺す。そのまま忍者刀はオルガロスの腹部を縦に斬り裂き、そこに蒼崎が強力な雷撃を炸裂させる事でオルガロスが黒焦げとなり、陸上に叩きつけられて絶命する。

 

「うし! 一丁上がり!」

 

「一丁上がり、じゃないですよ二人共! こんなデカいのをたった一人で一本釣りさせられる、僕の身にもなって下さい!」

 

「はん、良いじゃねぇか。これで俺達も任務達成出来たんだからよ」

 

「自分等は楽をしておいて!? 全くもう、人の苦労も知らないで…」

 

オルガロスの死骸がグズグズに溶けて消滅していく中、その場に残った黒水晶の欠片。ルカは愚痴を零しながらもこれに封印処理を施した事で、三人は欠片の回収任務を達成させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻…

 

 

 

 

 

 

「グガォォォォォォォォォンッ!!!」

 

「弱ってるわね、後は私の手で仕留めるわ!」

 

「いいえ、ここは私が。朱音にばかり良い恰好はさせなくてよ…!」

 

別の管理外世界、フィローネ火山。ここでは地竜が黒水晶の欠片に触れて覚醒したモンスター“覚醒地皇竜ガルドブラン”が、朱音と青竜のペアによって追い詰められていた。二人に散々傷つけられたガルドブランは苦しげに吼えながらブレスを勢い良く吐くも、朱音と青竜が左右に回避した事で攻撃は失敗。その直後、ガルドブランの足元から巨大な水流が発生し、ガルドブランの巨体を飲み込んでいく。

 

「グガッ……ゴボ、ガボォ…ッ…!?」

 

「さぁ、終わりでしてよ!」

 

「ちょっと瑞希、私がやるって言ってるでしょう!!」

 

水流に飲まれて動けないガルドブラン。その間に青竜は上空に真っ黒な雷雲を生成し始め、朱音は獲物を横取りされまいと刀を鞘に納めて居合いの構えに入る。そして…

 

「サンダガッ!!!」

 

「一閃ッ!!!」

 

-ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!-

 

巨大な落雷と巨大な斬撃が、ガルドブランの巨体目掛けて同時に炸裂。ガルドブランが断末魔を上げる間も無く爆発した後、その場には黒水晶の欠片だけが遺されていた。そこにUnknown、Blaz、刃が駆け寄り、刃が封印処理を施した事で一同の任務も完了された。

 

「うっは、マジで凄ぇなあの二人…」

 

「というか青竜さん、よりによって何で火山に雷を落としてるんですかねぇ。爆発を引き起こせるほどの居合い斬りを繰り出す朱音さんも、大概っちゃ大概ですが…」

 

「何を言うか二人共。あの二人が本気で喧嘩すれば、被害はこの程度じゃ済まんぞ?」

 

「「自慢げに言う事かそれが!?」」

 

「アン娘様~♪ 頑張った私を褒めて下さいませ~♪」

 

「ちょっと、アン娘に抱き着いて良いのは私だけよ!!」

 

「おっと二人共、ご褒美が欲しいのは分かったから任務が終わってから…え、ちょ、待って二人共、刃とBlazがいる目の前でそれはマズい……NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!?」

 

((…緊張感の無い奴等め))

 

…朱音と青竜に飛びかかられているUnknownを見て、刃とBlazが内心で毒を吐き捨てたのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んでもって、楽園(エデン)ではと言うと…

 

 

 

 

 

 

 

 

「式ぃぃぃぃぃぃぃぃっ!! いい加減説明しなさい!! その右腕が義手になっている理由を!!」

 

「喧しい、出会い頭に大声を出すな、そして何度も説明を要求して来るな、俺は忙しい、以上」

 

「なぁ~にが以上よ!? アンタねぇ、人が心配して様子を見に来てあげたのに、いつもそうやって人の話を途切れさせようとするんだから!! 今日という今日は逃がさないわよ!!」

 

「悪いが、これから団長に報告に向かうんだ、分かったら俺の邪魔をするな、そしてしつこい」

 

「ムッキィィィィィィィィィ!!」

 

(((((ま~たやってるよ、あの二人…)))))

 

この日、楽園(エデン)で活動していた作業員の面々はまたしても目撃していた。二百式が持つ義手に対して問い詰めようとするアリスと、鬱陶しそうな様子でアリスを振り切ろうとしている二百式の姿を。ここ数週間、同じような光景がこの楽園(エデン)で何度も目撃されており、作業員の面々はやれやれといった様子で二人の追いかけっこを眺めている訳である。

 

「チッ……おい、そこのお前等」

 

「「お呼びですか、二百式様」」

 

「そこの馬鹿を取り押さえておけ。俺は今から団長室に向かう」

 

「「かしこまりました」」

 

「おいコラ式!! まだ話は終わってな……え? ちょ、何よアンタ逹、何で私を押さえつけてんの!? ちょ、離しなさいよ!? 式、待ちなさい式ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

(((((うん、今日でもう七回目の光景だ)))))

 

いい加減イライラして来たのか、二百式はたまたま近くにいた二人の侍女式人形にアリスを取り押さえておくよう命令。侍女式人形達は命令通りアリスを取り押さえ、アリスは連行されながら二百式の名前を叫び続ける。この光景もまた、作業員の面々にとっては見慣れた光景と化していたのだった。

 

「全く、あれだけ楽園(エデン)には来るなと言ったのに…」

 

二百式はブツブツ小言を言いながらも団長室へと到着。バルコニーではクライシスがいつものように夜空を見上げており、そこへ二百式が歩み寄る。

 

「団長。黒水晶の欠片ですが、既に五つが回収されています。この調子でなら、問題なく全ての欠片を回収し終える事になるかと」

 

「ふむ、そうか…」

 

「…一つ、聞いてもよろしいでしょうか」

 

「何だね?」

 

「団長は何故、あのようなレベルのロストロギアを危険視するのですか? ナンバーズが数人いるだけで問題なく回収出来る程度のロストギアであれば、団長がそこまで警戒するほどの代物でもないのでは…」

 

「二百式」

 

クライシスが杖で床を足元と叩き、二百式はすぐに台詞が途切れる。

 

「黒水晶の恐ろしい点は、生物を覚醒させて凶暴化させる事ではない」

 

「では、どのような点が…」

 

「一番恐ろしいのは……()が覚醒した時だ」

 

「…はい?」

 

その一言に、二百式は思わず呆気に取られる。

 

「団長、それは一体どういう事で…?」

 

「生物の場合、その生物の特徴さえ把握していれば、どのような覚醒を遂げるのかはすぐに分かる……が、物の場合は話が別だ。どのような進化を遂げるかがまるで予測が付かない上に……その()に、生まれない筈の意志が目覚めてしまう事がある」

 

「…過去に同じような例があった、という事ですか」

 

「そうだ。元々黒水晶は、古代兵器の持つ力を覚醒させる為に使用されていたロストロギアだ。そのたった一欠片が持ち合わせている力によって、某大国が一晩で壊滅したという言い伝えもある」

 

「!? では、もしその力に管理局が気付けば…」

 

「これまで以上の惨劇が待っている事は間違いないだろう。だからこそ、我々の手で欠片の回収を急がなければならない。次元世界に被害が出てしまう前に―――」

 

「団長!!」

 

その時、クライシスと二百式がいるバルコニーに突如、橘花が慌てた様子で駆け込んで来た。

 

「どうした、橘花」

 

「も、申し訳ありません!! 実は先程、第56管理外世界フロリアに向かっているFalSig様から連絡が入りまして…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、響鬼の世界…

 

 

 

 

 

「ほら、着いたぜ。ここが俺達の拠点である東北支部、ゆきかぜだ」

 

「へぇ、ここが“ゆきかぜ”…」

 

「ふぅん、こっちの支部は寿司屋をやってるのね…」

 

「さて、久しぶりに“ゆきかぜ”に来たなぁ~」

 

「そうだねぇ~」

 

あれから支配人一行とフブキ逹は、東北地方における猛士の支部―――“ゆきかぜ”に到着していた。寿司屋という表向きの姿を持つ“ゆきかぜ”に、ディアーリーズとハルカは興味深そうな表情を示し、支配人とフィアレスは懐かしげに“ゆきかぜ”を見ている。ちなみにフブキはと言うと…

 

「うぅぅぅぅぅ……まだ頭がクラクラする…」

 

「自業自得です。さ、早いところ大二郎さんの所に行きますよ」

 

ミツにしばかれた時の痛みで、未だフラフラしている状態だった。そんな彼女に対してミツは容赦が無く、彼女の首根っこを掴んでちゃっちゃと“ゆきかぜ”の扉を開けて中に入っていく。

 

「大二郎さんって…?」

 

「この“ゆきかぜ”の板長、雪風大二郎さんだよ~。そんでもって…」

 

「猛士の東北支部における“王”……簡単に言えば、東北支部における指揮官の事だ。さて、俺達もちゃっちゃと大二郎さんの所まで挨拶しに向かうとしよう」

 

先に入って行ったフブキとミツに続き、支配人達も続いて店内に入って行く。店内は和風の雰囲気を醸し出しつつも、クーラーなど現代の設備も一通り整っており、ディアーリーズは「おぉ…」と声を漏らす。そんな中、店内のカウンターの前ではちょうど、この店の板長と思われる男性が魚を捌いて調理していた。

 

「大二郎さん、今戻りました」

 

「あぁ、フブキにミツか。ご苦労さ……ん!? レイ、レイじゃないか! それにフィアちゃんも!」

 

「お久しぶりです、大二郎のおやっさん」

 

「こんにちは~」

 

「いやぁ~久しぶりだなぁ~! お、今日は友達も連れて来たのか?」

 

「まぁ、友達というか、仕事仲間というか…」

 

「あ、どうも。ウルティムス・F・L・マクダウェルです」

 

「三千院晴香です」

 

「ほほぉ~、礼儀正しい子達だなぁ~。俺は雪風大二郎だ、よろしくなお二人さん。ほらほら、せっかく来たんだからゆっくりしていきな! 歓迎の印に、寿司でも握ってやるよ」

 

板長の男性―――“雪風大二郎(ゆきかぜだいじろう)”はハッハッハと豪快に笑いながら、魚の身を素早く綺麗に捌いていく。しかし、ここでミツが大二郎に突っ込みを入れる。

 

「あれ? 大二郎さん、今日は確か休みだった筈ですよね。何で今魚を捌いてるんですか?」

 

「ん? あぁ。実はさっき、買い出しを終えて店に戻る途中で、面白い奴と会ってな。そいつといろいろ話が盛り上がっちまってさ、そいつに寿司食わせてやってんのさ」

 

「面白い奴?」

 

「あぁ。そこの席に座ってる奴の事だよ」

 

大二郎がカウンター席の方を指差し、一同がそちらの方を向く。そこには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もぐもぐ……んん、エビも美味いな。身がプリプリしてて、歯ごたえも抜群だ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何皿分もの寿司を、美味しそうに味わっているげんぶの姿があった。

 

 

 

 

-ズザザザザァーッ!!!-

 

 

 

 

支配人とディアーリーズが同時に顔面スライディングズッコケをするのも、そう時間はかからないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ響鬼の世界、とある森の最奥部…

 

 

 

 

 

 

「ぜやぁっ!!」

 

『ブニャァァァァァァッ!?』

 

ここにも一人、魔化魍退治を行っている鬼の姿があった。吹雪鬼とは違う黒い身体。青色で配色されている腕や仮面の隈取。一本角を生やした頭部の鬼の紋章。そして両手に構えた二本の青い音撃棒・烈水(れっすい)。鬼の戦士―――仮面ライダー渦鬼(ウズキ)は、群れで現れた魔化魍バケネコの最後の一体を、烈水による音撃で見事退治してみせたところだった。

 

「ふぅ……全く、夏の奴は数が多くてキリが無いな。嫌になるぜ」

 

-ガサガサッ-

 

「ん?」

 

その時、近くの茂みから何かの気配を感じ取った渦鬼。彼はすぐに烈水を構え直し、茂みの中に隠れている何かを警戒する。

 

(まだ残ってるバケネコがいたのか? それとも、別種の魔化魍か…)

 

その時…

 

『グォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!』

 

「!? うぉっと…!!」

 

突如、茂みから巨大な火炎弾が飛来。渦鬼はすかさず横に転がって回避し、火炎弾は近くの岩に当たって粉々に粉砕してみせる。そして燃え盛る茂みの中から、一体の火炎大将が飛び出して来た……が。

 

「な……何だ、コイツは…」

 

『グルルルルルルルルルルル…!!』

 

その火炎大将は、通常の個体とは姿が違っていたのだ。纏っている鎧はより禍々しい形状で、鎧その物が赤色から青色に変化していたのだ。おまけに全身から何やらドス黒い邪気を放ち続けており、それだけでこの火炎大将が普通じゃないと渦鬼は理解する事が出来た。

 

『グルァアッ!!!』

 

「うぉあっ!?」

 

青色の火炎大将―――“覚醒炎武将(かくせいえんぶしょう)ホムラ”は構えていた長剣“蒼炎魔剣(そうえんまけん)”という大剣を片手で振り上げ、それを勢い良く地面に叩きつける。それによって発生した強力な斬撃が地面を這い、渦鬼は再び転がって回避しようとするも、繰り出された斬撃の余波で上手く回避し切れず、バランスを崩して地面に転倒してしまう。

 

「くそ、何なんだコイツ…ッ!?」

 

『グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…!!』

 

その時、ホムラが構えた大剣を再び高く振り上げる。すると大剣の刃に青い炎が纏われ、その大きかった剣先が更にどんどん巨大化していく。

 

「お、おいおい、嘘だろ…ッ!!」

 

『グルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!』

 

「く…ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

そしてホムラが大剣を振るった瞬間、炎の刃が前方に見える木々を一撃で焼き払った。その斬撃に巻き込まれた渦鬼は大きく吹き飛ばされ、近くにあった川の中へと落ち、あっという間に姿が見えなくなってしまった。

 

『グルルルルルルル……グルォアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!』

 

渦鬼がいなくなった後も、近くの岩を破壊したり、地面を抉ったり、木々を焼き払ったりと、暴れ足りないホムラは本能のままに破壊活動を行っていく。そんなホムラの様子を、時空管理局非正規部隊の隊員―――リリアナ・ファルシアが崖の上から見下ろしていた。

 

「あらあら、完全に暴走しちゃってるじゃない……まぁ良いわ。旅団の連中が如何に対処するか、ぜひ見届けさせて貰いましょうか…フフフフフ♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued…

 


 
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