No.849420

本編

根曲さん

・必要事項のみ記載。
・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。

2016-05-24 22:37:28 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:256   閲覧ユーザー数:256

悪魔騎兵伝(仮)

第12話 魔導人型機構

C1 監獄

C2 証人

C3 移動

C4 罪の意識

C5 追放

C6 再会

C7 死の火山

C8 余興

C9 ゲーム

C10 ウソツキ

次回予告

C1 監獄

 

エグゼニ連邦。グラルタ海セメタ・チャーチ大島にある監獄経済特区の大都市ドクカーレ、中央に聳えるドクカーレ監獄宮殿。Z封魔独房。小鳥の囀り。独房で鉄格子から漏れる光に照らされて、首を傾け、地面に腰を下ろす封魔鎖機構で縛られ、メイド服を着たファウス。エレベーターの扉が開く音の後に靴音。

 

シンシティア・ハリスの声『それで捕縛した偽王子は?』

ドクカーレ監獄宮殿の看守Bの声『はぁ。それが…。見ればわかります。』

ドクカーレ監獄宮殿の看守Aの声『こちらになります。』

 

止む靴音。Z封魔独房の扉の開き窓からファウスを見つめるエグゼニ連邦代表で元グラビアアイドルの女性のシンシティア・ハリス。彼女は開き窓を閉じる。ため息。

 

ドクカーレ監獄宮殿看守Bの声『ここに運搬されるまでずっとあんな感じで…。』

シンシティア・ハリスの声『参ったわね…。』

バルバリゴンの声『随分と御焦りの用で。』

シンシティア・ハリス『獄長公。悠長なことを言ってはいられません。グリーンアイス連邦との裁判の時間は迫ってきているのですよ。』

バルバリゴンの声『まあまあ。我々が何とか証言できるように調整しておきましょう。』

シンシティア・ハリス『頼むわ。』

 

靴音。

 

Z封魔独房の扉の開き窓から暫くファウスを見るエグゼニ連邦ドクカーレ市長兼監獄長公のバルバリゴン。エレベーターの扉の閉じる音。バルバリゴンは開き窓を閉じる。

 

バルバリゴン『行ったか。』

ドクカーレ監獄宮殿の看守Bの声『は。』

バルバリゴン『ローガイ殿に連絡を。』

ドクカーレ監獄宮殿の看守Bの声『は。』

 

靴音。

 

バルバリゴン『さて。はじめるか。』

 

Z封魔独房の扉が開き、ファウスを取り囲むドクカーレ監獄宮殿の看守達。ファウスを縛る魔封鎖機構の先端が上がり、レンズがドクカーレ監獄宮殿の看守達を映す。

 

魔封鎖機構『コレハコレハ看守ノ皆様御機嫌ヨウ!』

 

バルバリゴンの方を向くレンズ。

 

魔封鎖機構『コレハ監獄公様モヨクイラッシャイマシタ!』

ドクカーレ監獄宮殿の看守C『あいかわらず調子のいい機械だぜ。さて。』

魔封鎖機構『ケケケケケ。』

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守Cが警棒でファウスをつつく。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守C『ふむ。』

ドクカーレ監獄宮殿の看守D『甘く見ない方がいいですよ。なんせアレス王国を騙し、傭兵団を金の為に裏切り、自分の主まで殺した、危険な子供ですから。』

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守達を見た後、ファウスの方を向く魔封鎖機構。

 

魔封鎖機構『オオ、ソレハ大変。デモ御安心ヲ!コノワタシガイル限リ、コノ悪~イ奴ニ悪イ事ハサセマセ~ン。ケケケケケ。』

ドクカーレ監獄宮殿の看守C『はいはい。』

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守Dに目くばせして、ファウスの方を向くドクカーレ監獄宮殿の看守C。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守Cはファウスを往復ビンタする。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守C『起きろ!偽王子!!』

 

往復ビンタする監獄宮殿の看守C。

 

ファウス『うっ…。』

 

ファウスはゆっくりとエグゼニ連邦兵士Aの方へ顔を向ける。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守C『起きたか。』

 

ファウスは暫し、エグゼニ連邦兵士Aの顔を見つめた後、泣き出す。腕組みをしてファウスを見下ろすバルバリゴン。

 

バルバリゴン『どうやら戻ってきたようだな。』

 

バルバリゴンの方を向き、頷くドクカーレ監獄宮殿の看守達。

 

バルバリゴン『偽王子の殺菌、消毒、それから服の洗濯。その後は上層のポリピ牢のC独房に移す。』

 

眉を顰めるドクカーレ監獄宮殿の看守達。

 

ドクカーレ宮殿の看守E『監獄公様!こいつは偽王子です!なんでそんな優遇措置を?』

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守達を見つめるバルバリゴン。

 

バルバリゴン『一般の裁判ではない。王侯にグリーンアイス連邦の指導者達に我が国の指導者層。そういった階層の前にいくら犯罪者とはいえ不衛生な臭く汚いものを突きだせるのか?』

ドクカーレ監獄宮殿の看守E『それは。確かに。』

 

深く頷くバルバリゴン。

 

バルバリゴン『分かったら連れていけ。』

 

一礼するドクカーレ監獄宮殿の看守達。ドクカーレ監獄宮殿の看守Fがファウスを引っ張り、立たせる。

 

ファウス『あうっ…。』

 

ファウスを連れていくドクカーレ監獄宮殿の看守達。

 

C1 監獄 END

C2 証人

 

ドクカーレ監獄宮殿。殺菌房前部魔封房の扉の前に立つファウス。彼を取り囲むドクカーレ監獄宮殿の看守達。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守C『着いたぞ。後はお前を縛っているオンボロに聞け!』

 

ドクカーレ環濠宮殿看守Cの方を向く魔封鎖機構。

 

魔封鎖機構『オンボロトハ失礼ナ!』

 

殺菌房前部魔封房の中に放り込まれるファウス。

 

魔封鎖機構『アラララララ。』

ファウス『うわっ…。』

 

床に転がるファウス。彼の顔を覗き込む魔封鎖機構のレンズ。ファウスは魔封鎖機構のレンズを見つめる。

 

魔封鎖機構『ドモ。』

 

会釈するファウス。

 

ファウス『…どうも。』

魔封鎖機構『囚人殿、御機嫌如何?今カラ外レマスケド…ミョ~ナ動キヤ不審ナ動キヲシヨウトシ・タ・ラ…』

 

魔封鎖機構のレンズが殺菌房前部魔封房の至る所に仕掛けられているガントリングガンの方を向く。

 

魔封鎖機構『アレデ…ハ・チ・ノ・ス。ハチノス。ケケケケケケケ。魔法ガ使エルカラッテイイ気にナッテルト…』

 

ファウスの顔を覗き込む魔封鎖機構のレンズ。

 

魔封鎖機構『ト~ッテモ痛イ眼アイマスヨ。ココハ…封魔房デスカラ。ケケケケケ。逆ラオウトシヨウタッテム~ダデスヨー。デハ。』

 

ファウスの体を解く魔封鎖機構。ファウスは立ち上がり魔封鎖機構を見つめる。ファウスを見上げる魔封鎖機構のレンズ。

 

魔封鎖機構『デハ囚人殿。衣服ヲ脱イデ殺菌房ヘ。』

ファウス『服を?』

魔封鎖機構『服ヲ脱グ。当タリ前ジャナイデスカ。ココハ殺菌房デスヨ。』

ファウス『殺菌…。』

 

ファウスを小突く魔封鎖機構。

 

魔封鎖機構『オラ!トットト脱ゲ!脱イデ、サッサト消毒、消毒!撃チ殺スゾ!!オラァ!!』

 

押され、前かがみになった後、振り向いて魔封鎖機構の方を向くファウス。

 

魔封鎖機構『脱ゲ!脱ゲ!脱ゲ!…アラヤダ犯シテルミタイ。』

 

ファウスはメイド服を脱ぐ。メイド服を回収する魔封鎖機構。一歩前に出るファウス。

 

魔封鎖機構『コノ服ハ洗ワセテ頂キマス。上カラノ御命令ナノデ。』

 

殺菌房の入り口の方を向く魔封鎖機構のレンズ。

 

魔封鎖機構『ソレデハアチラヘ。後ハ殺菌房ノ指示ニ従ッテ下サイ。』

 

ファウスは殺菌房の扉の方を向く。ファウスを小突く魔封鎖機構。

 

魔封鎖機構『オラ!トットト行ク!』

 

ファウスは魔封鎖機構の方を向いた後、殺菌房の扉の方へと歩いていく。ファウスを見つめる魔封鎖機構のレンズ。扉を開けるファウス。

 

魔封鎖機構『ソウソウ。言イ忘レテオリマシタガ、殺菌房モココ同様魔法ハ使ウ事ガデッキマセ~ン。残念デシタ。ケケケケケ。殺菌消毒、検査ガ終了シ次第、マタ縛ッテアゲルカラヨロシクネ。ケケケケケケケ。』

 

ファウスは魔封鎖機構を見て会釈した後、殺菌房へ入って行く。

 

魔封鎖機構の声『…コレ定時マデニ洗濯シテ、乾クカシラ…。』

 

殺菌房から霧状の消毒液がファウスの上に舞い降りる。

 

 

ドクカーレ監獄宮殿殺菌房前部魔封房の扉から出て来るメイド服を着、魔封鎖機構の縛られるファウス。彼を取り囲むドクカーレ監獄宮殿の看守達。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守C『検査で異常は無し、このままピリポへと移送する。』

魔封鎖機構『アイアイサー。』

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守達に連れていかれ、エレベーターに乗るファウス。

 

 

ドクカーレ監獄宮殿の上部にあるピリポ牢。エレベーターの扉が開く。天井には天使の絵画が飾られ、壮麗な装飾の描かれた柱が何本も並び、鉄格子にも煌びやかな装飾が施される。各独房の部屋は広く、ソファにベットが見える。周りを見回すファウス。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守C『監獄でないように見えるか?』

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守Cの方を見て、頷くファウス。鼻で笑うドクカーレ監獄宮殿の看守C。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守C『今は、入居者は一人もいないがな。本来は、お前などは入れない牢屋だ。』

 

警棒で自身の肩を叩くドクカーレ監獄宮殿の看守C。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守C『C独房へ。』

 

頷き、ファウスを狭いピリポ牢C独房の前に引っ張って連れていくドクカーレ監獄宮殿の看守達。彼らはファウスをC独房に放り込む。

 

ファウス『あっ…。』

 

床に転がるファウス。鍵をかける音。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守C『世話はその機械が行う。くれぐれも変な気は起こさんことだ。』

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守達を見つめるファウス。魔封鎖機構はドクカーレ監獄宮殿の看守達の方へレンズを向ける。

 

魔封鎖機構『ラジャ。』

 

去って行くドクカーレ監獄宮殿の看守達。

 

 

夜。ドクカーレ監獄宮殿ピリポ牢C独房。壁にもたれて座り、俯くファウス。音が鳴り、扉の下から差し出される食べ物。食べ物の方を向くファウスと魔封鎖機構のレンズ。

 

魔封鎖機構『キタキタ。牢屋ノ中ノオ楽シミタ~イム。』

 

食べ物を見つめた後、顔を背け、俯くファウス。彼の方を向く魔封鎖機構のレンズ。

 

魔封鎖機構『ドウシタンデスカ?折角ノ料理ガ冷エテシマイマスヨ。』

 

首を横に振った後、顔を少し上げるファウス。

 

ファウス『…食べたくありません。』

 

食べ物の方を向く魔封鎖機構のレンズ。

 

魔封鎖機構『ソウデスカ。オ料理ガ台無シデス。』

 

俯くファウス。

 

ファウス『ごめんなさい…。』

 

魔封鎖機構から出た注射針がファウスの肘窩を刺す。

 

ファウス『いっ…。』

 

眼を見開いて注射針の刺された肘窩を見つめるファウス。

 

魔封鎖機構『点滴ヲ打タセテ頂キマシタ。タマニコウ言ッタ分カラズヤイルンデスヨネー。ケケケケケ』

 

魔封鎖機構を見つめるファウス。

 

ファウス『どうして?僕なんか生きていても仕方がないのに…。』

 

ファウスを映す魔封鎖機構のレンズ。

 

魔封鎖機構『オ前ガドウ思オウト、グリーンアイス連邦トノ国際裁判ニハオ前ノ証言ガ必要ダ。オ前ノ証言ガ、我ガ国トグリーンアイスの関係ニ影響スルノダ。勝手ニ死ナレテモ困ル。死ヌンナラ、裁判ガ終ワッテカラ、死刑デモ、自殺デモドーゾ。ケケケケケケケ。』

 

注射針を抜く、魔封鎖機構を見つめるファウス。魔封鎖機構のレンズに映る時間。

 

魔封鎖機構『オンヤモウコンナ時間、モウ就寝ノオ時間デースヨ。』

ファウス『…就寝。』

 

俯き、首を横に振るファウス。

 

ファウス『…できません。色んな事が、頭を巡って…僕…。』

 

魔封鎖機構から麻酔針が出、ファウスの背中に刺さる。

 

ファウス『えっ…にゃ!』

魔封鎖機構『コンナ時間マデ起キテイルノハ不良デスヨ。アラ、ココ監獄デスケドネ。ケケケケケ。チャント休息シナイト、証言ニ支障ガデテモ困リマスヨー。ケケケケケ。』

 

倒れ、吐息を建てるファウス。

 

魔封鎖機構『全ク世話ノヤケルヤツダ。』

 

C2 証人 END

C3 移動

 

早朝。ドクカーレ監獄宮殿ピリポ牢獄C独房。ソファに座らされるファウス。

 

魔封鎖機構『ズット地ベタニ座ッテ、タマニハソファ。イーイモンデショ。』

 

魔封鎖機構の方を向くファウス。

 

ファウス『…貴方はいったい?』

魔封鎖機構『私、私ハ、グリーンアイスノグリア都市国家トエグゼニ連邦トノ共同開発デ作ラレタAIヨ。ケケ。』

ファウス『AI…。』

魔封鎖機構『人工知能デスヨー。』

ファウス『人工知能…ですか。…似たようなものなのかな。僕の住んでいたお城では女性のアンドロイドの方が沢山いて…。沢山…いて…。』

 

泣き出すファウス。

 

魔封鎖機構『アア、マタ泣キ出シチャッタ…。』

 

エレベーターの扉の開く音。靴音が鳴り響く。独房の扉の方を向く魔封鎖機構。

 

バルバリゴンの声『グリーンアイス連邦が予定を早めて来るとはな。』

ドクカーレ監獄宮殿の看守Aの声『ゲゲルツァでバトル王国に大敗したからですか?世論を違う方へ向ける目的で…。』

バルバリゴンの声『まあ、それもあるだろう。裁判はノースではなくブルベドで行われるということを付け加えておこう。』

ドクカーレ監獄宮殿の看守Aの声『ブルベド。元アイドルのマネージャーでしたっけ、露骨に地位を高めたいだけじゃないですか。』

バルバリゴンの声『さてな。加害者側の我々は何も言えんよ。まあ、早く裁判が終わって一息つきたいものだ。偽王子の世話も無くなるだろうし。』

 

鍵を開ける音。扉の方を向くファウス。C独房の扉が開き、ファウスを取り囲むドクカーレ監獄宮殿の看守達。腕組みをし、ファウスを見下ろすバルバリゴン。

 

バルバリゴン『時間だ。出ろ。』

 

バルバリゴンを見上げるファウス。ファウスを立ち上がらせるドクカーレ監獄宮殿の看守B。

 

 

ドクカーレ監獄宮殿の門が開け、出て来るファウスを連れたドクカーレ監獄宮殿の看守達。彼らの前に止まる護送車。

 

ヘリコプターのプロペラの音。

 

上を見上げるドクカーレ監獄宮殿の看守達。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守B『…報道機関は地獄耳だな。』

 

ドクカーレ監獄宮殿の上空を飛ぶ、エグゼニ連邦報道機関のヘリコプター数機とグリーンアイス連邦の新興財閥の一つでテラプメディアグループのヘリコプターが飛ぶ。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守C『おいおい。グリーンアイス連邦まで飛んでるじゃないか。』

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守達の方を向くドクカーレ監獄宮殿の看守A。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守A『早いところすませよう。』

 

頷くドクカーレ監獄宮殿の看守達。彼らは護送車の後部の牢屋の扉を開ける。ファウスの方を向くドクカーレ監獄宮殿の看守A。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守A『乗れ。』

 

頷き乗り込むファウス。ドクカーレ監獄宮殿の看守Dが鍵をかける。護送車に乗り込むドクカーレ監獄宮殿の看守達。護送車は暫く走り、ドクカーレ監獄宮殿のドックに入り、グリーンアイス連邦サンガ都市国家の輸送船の前に止まる。護送車のサイドガラスの横に寄るグリーンアイス連邦サンガ都市国家の海軍士官A。サイドガラスを開けるドクカーレ監獄宮殿の看守A。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守A『偽王子の輸送です。』

 

後ろを手で指すドクカーレ監獄宮殿の看守A。グリーンアイス連邦サンガ都市国家の海軍士官Aと彼が引き連れているグリーンアイス連邦サンガ都市国家の兵士達は後ろにいるファウスを見つめる。

 

グリーンアイス連邦サンガ都市国家の海軍士官A『了解した。』

 

護送車は走り、エグゼニ連邦軍の輸送船に入る。閉まる輸送船のランプウェイ。動き出す輸送船。

ファウスは体操座りをして俯き、床を見つめる。彼の頬を涙が伝う。

 

 

グリーンアイス連邦サンガ都市国家ベルチュ港。停泊する輸送船。機械音。

 

エグゼニ連邦兵士A『ついたか…。』

 

開く輸送船のランプウェイ。光が一同を照らす。フロントガラスから見える人だかり。ファウスの方を向いた後、前方を向き、眉を顰めるエグゼニ連邦軍兵士A。

 

エグゼニ連邦軍兵士A『…大歓迎だな。ちっ…。』

 

動き出す護送車。ファウスは鉄格子に覆われたガラスからグリーンアイス連邦の人々の顔を見る。

指をさし、顔を見合わしたり、睨み付ける人々。ファウスは震え、頭を抱える。

 

エグゼニ連邦兵士B『これは…時間がかかりそうだ。』

 

ため息をつくエグゼニ連邦軍兵士A。フロントガラスに生卵が投げられ、砕け、黄色に染める。舌打ちするエグゼニ連邦軍兵士B。

 

エグゼニ連邦軍兵士B『俺達に当ててもしょうがないだろう!後に当てろ!後ろに!!たくっ、前が見えん!』

 

ファウスは眼を見開き、エグゼニ連邦軍兵士Bの背中を見つめた後、耳を押さえて下を向く。

ゆっくりと動く護送車。

 

C3 移動 END

C4 罪の意識

 

グリーンアイス連邦ブルベド都市国家。ブルベド都市国家議事堂。扉の前に立つ、魔封鎖機構に縛られたファウスとドクカーレ監獄宮殿の看守達にグリーンアイス連邦グリア都市国家所属のエリートクローン兵士とハイクローン兵士達。

 

ラスの声『証人前へ。』

 

音が鳴り響き、開くブルベド都市国家議事堂の扉。円形の議場を埋め尽くす都市国家代表者達。扉の横の臨時に作られた席には委縮するエグゼニ連邦の議員数人にシンシティア・ハリスが座る。

中央の円状のお立ち台にグリーンアイス連邦総代表レッサーパンダ獣人ラス。

 

ドクカーレ監獄宮殿の看守達がファウスを押す。ファウスを見下ろすラスにグリーンアイス連邦の都市国家代表達。黒いスーツを着、眼鏡をかけたショートカットの女性でブルベド都市国家代表のコーはシンシティア・ハリスの方を向いた後、ファウスの方を向く。ファウスを見下ろすラス。

 

ラス『では、これより質問をする。虚偽無く答えるように。』

 

ラスを見上げた後、頷くファウス。

 

ファウス『はい。』

ラス『では…。お前の主はブルベドを攻撃しようとしたので間違いはないな。』

 

暫し、沈黙の後、ゆっくり頷くファウス。

 

ファウス『…はい。』

 

ファウスの眼から溢れる涙。

 

ファウス『あんなに良くして頂いたのに。僕は御主人様を止めることができなかった…。ポンコⅡさんも救えなかった僕が…僕があの時、気付いてさえいれば、御主人様に言ってさえいれば…。』

 

ファウスを睨み、机を叩いて立ち上がるコー。

 

コー『お前の心情などどうでもいい。何が起こったか簡潔に述べよ!』

 

顔を上げ、コーを見つめるファウス。ファウスを見下ろすバルコフ・スターリング。

 

バルコフ・スターリング『証人は、取り乱さずに証言をするように。』

 

俯くファウス

 

ファウス『…はい。』

ラス『どうしてお前の主はブルベドを攻撃しようとしたのだ?』

ファウス『…ポンコⅡさん…アイリスさんの復讐の為とおっしゃっていました。』

 

一瞬、眼を見開くコー。ざわめき。ファウスを見つめるラス。

 

ラス『アイリス…アイリスとは…元ブルベド都市国家代表のアイリス・ヴァンガードの事か?』

 

頷くファウス。

 

ファウス『はい。そうおっしゃっていました。御主人様はアイリスさんを自殺に追い込んだブルベド都市国家に復讐すると…。』

 

大きなざわめき。周りを見回すコー。ファウスを見つめ、胸に手を当て俯くブルベド都市国家の閣僚達。コーの方を一斉に向く一同。

 

ファウス『…御主人様はブルベドの人たちがした心無い行為からアイリスさんを救えなかったことを悔やんでいました。それに…アイリスさんの親衛隊の仲間の方々が追悼コンサートの為に貸し出したコレクション全てを売ってしまったことで人間不信に陥ってしまったんだと思います…。でも、そんな御主人様をアイリスさんが止めたんです。』

 

眼を見開き、ファウスの方を一斉に向く一同。立ち上がるコー。

 

コー『あなた…自分が何を言っているかわかっているの?』

 

コーを見上げるファウス。

 

コー『あの娘は…前代表は自殺したのよ。それがどうやってオータキとかいう奴を止めたというの?まさか…生き返ったとでも?』

 

コーの眼を見つめ、頷くファウス。

 

ファウス『はい。』

 

コーはファウスの眼を見、一瞬口を開いた後、眼を閉じ、鼻で笑ってラスの方を向く。

 

コー『総代表殿。こんな証人の証言を信用することができますか?蘇りなんて明らかな嘘を!作り話で我々ブルベド都市国家を悪人に仕立て上げようとしているのですよ!』

 

首を横に振るファウス。

 

ファウス『違います。アイリスさんは…アイリスさんは…皆のアイドルだから、だれも恨んでないし、復讐なんて望んでないって…。そう言っていたんです。』

 

ファウスを見つめるブルベド都市国家の閣僚達。

 

コーはファウスの顔を見つめた後、眼を見開き、首を横に振る。

 

コー『アイ…。あの娘がそんなこと…。』

 

眼を閉じ、喉を鳴らした後、眼を開いてファウスの方を見つめるコー。

 

コー『そんなこと…あるはずないじゃない。』

 

ずれるコーの眼鏡。

 

コー『あなたねえ。自分が、そう自分だけが助かりたいからって嘘の証言をついて…。』

ファウス『えっ…。』

コー『偽王子ですものね。本当はお前が主をそそのかして我が都市国家を攻撃させたんでしょ。』

 

首を横に振るファウス。

 

コー『自分の身が可愛いから、不利になれば主まで殺す。我々を悪人に仕立て上げて、不都合があればお前の主に罪をなすりつけることができるから一石二鳥よね。』

 

ファウスを見つめる一同。

 

ファウス『ち、違います。』

コー『王位簒奪に雇い主を裏切り、主まで殺して、よくもまあ、今まで自分の罪も償わずぬけしゃあしゃあと生きていられるわね。』

 

ラスの方を向くコー。

 

コー『総代表殿!』

 

お立ち台に駆け上がるブルベド都市国家の女秘書官A。

 

ブルベド都市国家の女秘書官A『もう耐えられない!』

 

ブルベド都市国家の女秘書官Aの方を向く一同。

 

ブルベド都市国家の女秘書官A『その女は、その女の指示で私達は自傷行為を行ったアイリス代表を見殺しにしました!』

 

眼を見開き、女秘書官Aを見つめるコー。コーの方を一斉に向く一同。

 

ラス『これはどういうことじゃ!』

コー『おま…お前は何を言っているの!この重要な時に!』

 

コーを指差す女秘書官A。

 

女秘書官A『そして、ブルベド鉱山事故の対応の非ばかりではなく、自身の不祥事を全てアイリス代表になすりつけた!』

 

眼を見開き、口の開閉を何回もするコー。

 

コー『貴女、自分が何を言っているか分かっているの!』

 

頷く女秘書官A。

 

女秘書官A『アイリス代表を見殺しにした時から、ずっと罪の意識に苛まれてきました。あの時、子供を身ごもっていたから…。』

 

ラスはブルベド都市国家の閣僚たちを見回す。

 

ラス『今の話は本当か?』

 

頷くブルベド都市国家の閣僚達。

 

ブルベド都市国家の閣僚A『はい。その通りです。』

 

ざわめき、顔を見合わせるグリーンアイス連邦の各都市国家代表達。笑顔になるコー。

 

コー『…皆さん。何を言っておられるのですか?』

 

ファウスを睨み付けるコー。

 

コー『各都市国家代表殿もこんな偽王子の作り話を信じてはいけません。それに…。』

 

コーは女秘書官Aとブルベド都市国家の閣僚達の方を向く。

 

コー『我が国の方々は私に何か恨みでもあるのですか?それとも都市国家代表の座がそんなに欲しいの?』

 

首を横に振る女秘書官A。

 

女秘書官A『あなたは先程偽王子に言ったことをそのままアイリス代表にしたんですよ!あなたに罪の意識は無いの!』

 

コーは女秘書官Aの方を睨み付ける。

 

コー『はあ?罪の意識。なんであたしがそんなものかんじなきゃなんないの!あっはは、あんた達だっておなじじゃない。それを、何を今更、私達は私達だけは長年、罪の意識に苛まれてましただって?都合がよすぎるだろ!だいたいねぇ!あの娘は私がプロデュースしたから売れたの!!死んで私の為になる…当然じゃない!あの娘の為に今まで私がどれだけ苦労し、どれだけ金を使ったと思っているの!ドサ周りや枕営業まで必死にこなして…。私は、私はこんなところで、終わってはいけないの!もっと高みに上がるの!もっと高みに…そう。』

 

ファウスを指さすコー。

 

コー『コイツとは違う!』

 

俯くファウス。眼を血走らせるコー。

 

コー『コイツとは…!!!この最低のクズ野郎の偽王子とは違うのよ!私は選ばれた人間なの!分かる!私は選ばれた…。』

 

眼を見開くコー。彼女を見つめる一同。

 

コー『…うっ!!』

 

胸に手を当て、白目を向いて倒れるコー。唖然とする一同。ファウスはコーの方へ駆ける。ファウスの体を取り押さえるグリーンアイス連邦グリア都市国家の数名のハイクローン兵士とエリートクローン兵士。

 

ファウス『あうっ!』

 

彼らを見るファウス。

 

ファウス『どいてください!あの人を助けないと!早くしないと!あの人が…死んじゃう!!』

 

瞬きしてファウスを見下ろすグリーンアイス連邦グリア都市国家のエリートクローン兵士A

 

グリーンアイス連邦グリア都市国家のエリートクローン兵士A『…偽王子の癖に妙なことを言う。心配はいらん。』

 

応急処置されるコーの方を向くグリーンアイス連邦グリア都市国家のエリートクローン兵士Aとファウス。

 

C4 罪の意識 END

C5 追放

 

グリーンアイス連邦ブルベド都市国家。ブルベド都市国家議事堂。尋問室。椅子に座り、机の天板を見つめるファウス。彼を取り囲むグリーンアイス連邦グリア都市国家のハイクローン兵士達とエリートクローン兵士達。扉が開き、護衛のエリートクローン兵士2名を連れて尋問室に入ってくるバルコフ・スターリング。彼に向かって一礼するハイクローン兵士達とエリートクローン兵士達。バルコフ・スターリングはファウスを見、椅子に腰を下ろす。バルコフ・スターリングを見るファウス。

 

ファウス『あの…あの方は大丈夫ですか?』

 

ファウスをゆっくり見つめるバルコフ・スターリング。

 

バルコフ・スターリング『んっ…ああ、コー代表か。幸いなことに一命はとりとめた。』

ファウス『よかった…。』

 

バルコフ・スターリングはファウスを見つめる。

 

バルコフ・スターリング『…他人のことより自分の事を心配したらどうかね。』

 

瞬きするファウス。

 

バルコフ・スターリング『まあいいだろう。先程の証言で…蘇りの話が出た。』

 

立ち上がり、手を組み腰に当て左に歩くバルコフ・スターリング。

 

バルコフ・スターリング『が、…蘇り等ありえん話だ。』

 

髭を人差し指と親指で摘まむバルコフ・スターリング。

 

バルコフ・スターリング『…屍術は今まで使者を蘇らせることはできないばかりか、未曽有の被害をもたらした。人は死を乗り越えることはできん。あのコルヴィデールでも外傷や病などで転生前に死が訪れれば蘇りはしないという話だ…。』

 

ゆっくりとファウスを向くバルコフ・スターリング。

 

バルコフ・スターリング『それにも関わらず、お前は蘇りの話をした。あの手練れの女の前で淡々とな。…お前の主がどんな研究をしていたか仔細を話せ。』

 

ファウスを捉えるバルコフ・スターリングの瞳。

 

ファウス『研究…研究。僕…分からない…。』

 

ファウスを睨むグリーンアイス連邦グリア都市国家のエリートクローン兵士A。

 

グリーンアイス連邦グリア都市国家のエリートクローン兵士A『分からない筈無いだろう!』

 

沈黙。ファウスの頭を鷲掴みし、机の天板に押し付けるグリーンアイス連邦グリア都市国家のエリートクローン兵士A。

 

ファウス『あうっ!』

グリーンアイス連邦グリア都市国家のエリートクローン兵士A『貴様は、貴様の主と共に一つ屋根の下にいたのだろう!』

ファウス『本当に分からないんです。どんなことをしていたかなんて知らないんです!』

グリーンアイス連邦グリア都市国家のエリートクローン兵士A『この期に及んで、だったらお前はうその証言をしたんだな!!』

ファウス『違います!』

 

バルコフ・スターリングはグリーンアイス連邦グリア都市国家のエリートクローン兵士Aの方を向く。

 

バルコフ・スターリング『手荒な真似はするな。』

 

グリーンアイス連邦グリア都市国家のエリートクローン兵士Aはバルコフ・スターリングの方を向いて頭を下げる。

 

グリーンアイス連邦グリア都市国家のエリートクローン兵士A『はっ、も申し訳ありません。』

 

机の天板に肘をおろし、両手を組むバルコフ・スターリング。

 

バルコフ・スターリング『…どんなことをしていたか分からない…か。』

 

頷くファウス。

 

バルコフ・スターリング『ならば、分かっていることを話しなさい。』

 

頷くファウス。

 

ファウス『…はい。その、ポンコⅡさんっていうアンドロイドの女性の方がいて…その方がアイリスさんでした。』

 

眉を顰めるバルコフ・スターリング。

 

バルコフ・スターリング『どういうことだ?アンドロイドを依代にしたということか?』

 

首を横に振るファウス。

 

ファウス『…分かりません。でも、随分前に御主人様はウィンダム諜兵団のネクロさんと研究をしていたらしくて…。』

 

ため息をつくバルコフ・スターリング。

 

バルコフ・スターリング『ウィンダム。あの男か。…何かと縁のある…。』

 

バルコフ・スターリングを見つめるファウス。咳払いしてファウスの方を向くバルコフ・スターリング。

 

バルコフ・スターリング『何。こちらのことだ。続け給え。』

 

頷くファウス。

 

ファウス『…それで生き返ったんです。』

バルコフ・スターリング『…なるほど。どんな研究をしていたか分からないということか。』

 

深く頷くファウス。

 

バルコフ・スターリング『…何か気になる事はなかったか?どんな些細なことでもいい。』

 

暫し、沈黙。

 

ファウス『そういえば、ネクロさんが、天然のアビス層って言っていました…。』

 

一瞬目を見開くバルコフ・スターリング。

 

バルコフ・スターリング『そうかそうか。』

 

口角を少し上げるバルコフ・スターリング。

 

バルコフ・スターリング『なるほどな。』

 

バルコフ・スターリングは立ち上がる。

 

バルコフ・スターリング『時期に裁きが言い渡されるだろう。』

 

頷くファウス。

 

ファウス『はい。』

 

去って行くバルコフ・スターリング。

 

 

ユランシア大陸バトル王国とグリーンアイス連邦カゾ都市国家の国境エグレツスキー。国境の壁からバトル王国領へ放り出されるメイド服を着たファウス。ファウスは立ち上がり、国境の壁の方を向く。銃撃音。ファウスの足元の土が抉れる。ファウスの足元を銃撃するグリーンアイス連邦兵士達。ファウスは彼らに背を向けて去って行く。

 

C5 追放 END

C6 再会

 

ユランシア大陸バトル王国。ツーゴ区。カゾの森の中を俯きながら、暫し歩くファウス。光がファウスに差し込む。彼は顔を上げる。前方の木々の間から見える花畑。ファウスは森を抜け、ゆっくりと腰をおろし、花畑を見つめる。風が草木を揺らす音。小鳥のさえずりや虫たちの鳴き声。顔を上げ、移り行く雲と空を見つめるファウス。彼の眼尻から涙か零れ落ちる。花弁と木の葉が風で舞う。俯くファウス、彼の体を覆う人影。

 

シバ『君は…。』

 

ファウスは眼を見開き、ゆっくりと顔を上げ、目の前に立つ元書生で新米情報屋からフリーの新人ジャーナリストになったシバを眼に映す。

 

シバ『やっぱり。良かった…。』

 

一歩前に出るシバ。ファウスはシバから目をそらす。

 

シバ『あ、…えっと、その久しぶりだね。』

 

暫しシバを見つめるファウス。

 

シバ『…大丈夫かい?』

 

ファウスはシバから目をそらす。俯くシバ。

 

シバ『…そうだよね。』

 

シバはため息をつき、ファウスを見つめる。

 

シバ『嫌われるよね…。僕は君にあんな酷い事をしたんだから。』

 

ファウスはシバの方を向く。

 

シバ『君をあんな城主に紹介してしまって…。』

 

ファウスはシバを見つめ、首を横に振る。シバはファウスを見つめる。

 

シバ『…ともかく無事で良かった。この国でエグゼニがブルベドを攻撃したことを聞いて、君のことが真っ先に浮かんでさ。取材すっぽかし…、本当に無事で良かったよ。』

 

瞬きしてシバを見つめるファウス。

 

シバ『これからどうするの?道に迷ったなら送るけど…。』

 

首を横に振るファウス。俯くシバ。

 

シバ『そうか…。あの時はああいう選択しかできなかったけど…。今は前より色んな情報を知ってるから。』

 

シバはファウスの手を取る。

 

シバ『だから、君の力になりたいんだ。』

 

ファウスはシバを見つめ、肩を震わせて泣き出す。

 

 

ユランシア大陸バトル王国。ツーゴ区。プリンシペル地区。フアテン駅を歩くシバとファウス。ファウスはシバの背を見つめる。

 

ファウス『…あの。』

 

ファウスの方を向くシバ。

 

ファウス『これから、どちらへ?』

シバ『うん。これからシュヴィナへ行くんだよ。』

ファウス『シュヴィ…。』

 

ファウスは眼を見開き、俯く。彼は周りを見回し、シバの手を握る。ファウスの方を向くシバ。ファウスはシバを見つめた後、俯いて、手の力を緩める。シバはファウスの手を握り、彼を見つめる。

 

シバ『大丈夫だよ。心配しないで。シュヴィナ王国がショルガロンの妖女討伐に参戦するらしいから全国から記者達が集まってるんだよ。だから、その道に詳しい人か、もしくはその道に詳しい人を知っている人に会えるかもしれない。』

 

シバを見つめるファウス。

 

シバ『だから、行こう。』

 

シバはファウスの手を引き、フアテン駅の中へ入って行く。

 

 

ユランシア大陸シュヴィナ王とバトル王国国境を移動するユランシア大陸横断弾丸列車。指定席車両。まばらに席に座る人々。椅子に座るファウスとシバ。窓から見えるラエティア火山のある風景を見つめるファウス。ラエティア火山を見つめるシバ。

 

シバ『お、ラエティア火山。』

 

ファウスはシバの方を向く。

 

シバ『別名死の火山って言われてね。クレーターの中に洞窟が形成されているんだ。あの地には流れ星の伝説があって、神話の話なんだけど…。』

 

ラエティア火山の方を向くファウス。

 

シバ『各地に伝わるそういった天からきたっていう伝説にはつきものの神の存在が一切ないんだよ。ただ流れ星が落ちた。それだけ。もっとも古い時代のものだから、資料が四散してしまっている可能性も高いけどね。それで、あの火山の深淵には何かが眠ってるっていう伝承があってさ。年間に何人も挑戦者が出るけど、途中離脱した者を除けば、今だ生きて帰った者はいないっていう…。一度取材してみたいところではあるね。』

 

ファウスはラエティア火山を見つめた後、眼を閉じる。ファウスを見つめるシバ。

 

シバ『…それにしても、まさかあのお城に偽王子がいたなんて思いもしなかったよ。』

 

ファウスは眼を開き、シバの方を向いた後、腕を振るわせて下を向く。ファウスの方を向くシバ。

 

シバ『でも、大丈夫だよ。』

 

シバはファウスを見つめる。ファウスはゆっくりと顔を上げてシバを見る。

 

 

ユランシア大陸シュヴィナ王国。グエウゾク市。ロッペマヤー駅。駅からはラエティア火山が見える。駅前に立つルアント・シュヴィナビジネスホテルのロビー。受付をすますシバと彼に寄り添い、絶えず周りを見回すファウス。

 

ルアント・シュヴィナビジネスホテルのスタッフ『それでは、205号室へ。』

 

シバは205号室の鍵を受け取り、ファウスと共にエレベーターに乗る。

 

 

ルアント・シュヴィナビジネスホテル205号室。ベットに腰を下ろすシバ。ファウスは壁際に立つ。シバはファウスの方を向く。

 

シバ『あ、ごめん。』

 

瞬きするファウス。

 

シバ『別室にすべきだったね。』

 

ファウスは胸に手を当て俯く。

 

シバ『今からフロントに連絡を取るよ。空き部屋があればいいんだけど。』

 

シバはファウスに背を向け、電話の受話器を取る。シバの背を見つめるファウス。

 

 

ルアント・シュヴィナビジネスホテル。208号室に入るファウスとシバ。

 

シバ『明日、迎えに来るからね。今日はゆっくりと休んで…。』

 

手を振り、出ていくシバを見つめるファウス。扉の閉まる音。暫し俯くファウス。彼は受話器の横に置かれたペンを取り、メモ用紙に自分の正体と今までのお詫びを書く。書き終えた後、扉を開けるファウス。暫し沈黙した後、彼は駆け去って行く。

 

 

ユランシア大陸シュヴィナ王国。ネオンの光に照らされるグエウゾク市を見つめ、頭を下げるファウス。彼は顔を上げラエティア火山を見つめる。

 

C6 再会 END

C7 死の火山

 

ユランシア大陸。ラエティア火山。麓から山頂を見つめ、一歩前に踏み出すファウス。足音。振り返るファウス。ヴェルクーク級人型機構とゴロツキ達がファウスを囲む。

 

ゴロツキA『おい、お前。この山に何しに来た?』

 

彼らを見つめるファウス。

 

ファウス『えっ…。』

 

ファウスは眉を顰めて俯く。

 

ファウス『死の火山の伝承を聞いてそれでそこへ行こうかと…。』

 

顔を見合わせて大笑いするゴロツキ達。

 

ゴロツキB『ほう、そうかい。お前みてえな若い女子はくることにゃ来るが…。』

ゴロツキC『大体は自殺願望者だからな。』

 

ファウスに跳びかかるゴロツキDと倒れたファウスを取り押さえるゴロツキE。

 

ファウス『な、何をするんですか!』

ゴロツキD『どうせ死ぬんだろ。なら死ぬ前に一発ヤらせろや!』

 

抵抗するファウス。

 

ファウス『止めてください!僕は!僕は偽王子です!』

 

唖然とするゴロツキCとゴロツキD。ゴロツキ達を掻き分けて出て来るゴロツキの親分でハイエナ獣人のゴルゴザル。

 

ゴルゴザル『おいおい。偽王子だって?本当か?ああん。口から出まかせ言ってんじゃ…。』

 

ファウスの股を掴むゴルゴザル。

 

ファウス『やっ!』

ゴルゴザル『おっ。まじでついてるな…。』

 

ゴルゴザルは後ろを向く。

 

ゴルゴザル『おい。メルエヌ!おめえ、ヨーケイ城行ったんだろ!コイツに見覚えあるか?』

 

ゴルツキ達を掻き分けて出て来るアラクネのメルエヌ。

 

メルエヌ『んっ?どいつ~?』

 

ファウスを指さすゴルゴザル。

 

ゴルゴザル『こいつだこいつ。』

 

メルエヌはゴルゴザルに顔を近づける。

 

メルエヌ『んっ、なんだ。ゴルゴザルの旦那じゃないか。』

ゴルゴザル『俺じゃねえよ。このド近眼!』

 

ゴルゴザルはメルエヌの目の前に手を出し、ファウスを指さす。ファウスの顔を覗き込むメルエヌ。

 

メルエヌ『う~ん。ふ~ん…。』

 

ファウスの頬にメルエヌの吐息がかかる。顔を背けるファウス。

 

ゴルゴザル『偽王子って言ってんだが…。』

 

ゴルゴザルの方を向くメルエヌ。彼女は人差し指を顎に当てる。

 

メルエヌ『偽王子~。間違いないわ~…。』

ゴルゴザル『ほんとかよ。眼え悪くて、食いちぎっちまうお前がよ。そのせいで男もよりつきゃしねえ。』

メルエヌ『うっさいわね!だったらなんで呼んだんだい。それにこの子、死の火山に行きたいって言ってるじゃない。眼は悪くても地獄耳よ。』

ゴルゴザル『まあな。』

 

ファウスを見つめる一同。

 

ゴルゴザル『お前、偽王子かどうかはともかくとして…本当に死の火山へ行きたいのか?』

 

ファウスはゴルゴザルを見つめ、頷く。2、3回頷くゴルゴザル。

 

ゴルゴザル『そうかそうか。おい、皆聞いたか。ここにいる自称偽王子様が死の火山に挑戦なさるそうだ。けけけ、こりゃ今回のゲームは盛大に盛り上がりそうだな。』

 

瞬きをしてゴルゴザルを見つめるファウス。

 

ゴルゴザル『なんだ?おめえ、知らねえのか。死の火山への挑戦者は…。』

 

自身を指さすゴルゴザル。

 

ゴルゴザル『このゴルゴザル様を通さないと挑戦できねえってな。』

 

立ち上がるゴルゴザル。

 

ゴルゴザル『よし!新しい挑戦者様を連れていくぞ!』

 

ファウスを立ち上がらせるゴロツキAとゴロツキB。

 

ゴロツキA『へっへっへ。今回の挑戦者様は何処まで行けるかな。』

ゴロツキB『久々のショーだぜ。楽しみだな。ぐへへへへ。』

 

ゴルゴザル専用ヴェルクーク級人型機構のコックピットへ連れていくゴロツキ達。

 

C7 死の火山 END

C8 余興

 

ユランシア大陸。ラエティア火山。麓にあるラルルの街。ゴルゴザル専用ヴェルクーク級人型機構のコックピットの内部から街を見下ろすゴルゴザル。数人のゴロツキ達に囲まれたファウス。彼は椅子に座るメルエヌの方を向く。

 

ゴルゴザル『さあ、ショーのはじまりだ!』

 

開くゴルゴザル専用ヴェルクーク級人型機構のコックピットのハッチ。ゴルゴザルはファウスの方を向く。

 

ゴルゴザル『といっても余興だけどな。』

 

笑みを浮かべるゴルゴザル。

 

ゴルゴザル『途中で怖気づいてにげようとすんなよ。しらけっから。』

 

ゴルゴザルは前を向いて、コックピットのハッチに出る。

 

ゴルゴザル『レディースエンドジェントルマン!さあさあ、待ちに待った楽しいショーの始まりだ!死の火山に久々の挑戦者!!その挑戦者はなんと!』

 

ゴロツキはファウスの背を押し、コックピットのハッチに出す。

 

ゴルゴザル『あの偽王子だ!王位簒奪、雇い主を裏切り、主を殺した!あの偽王子だ!!』

 

ファウスを見つめる群衆。大歓声が上がる。

 

ゴルゴザル『今回はもしかすると…もしかするかも!開催日は一週間後だ!皆、楽しみに待て!アーハハハハ!ヤーハーハハハハッハ!』

 

上がる大歓声。俯くファウス。

 

ラルルの街。ゴルゴザルの屋敷。廊下を歩くゴルゴザル。その後ろをゴロツキ達に囲まれたファウスが歩く。

 

ゴルゴザル『いやそれにしても久々の挑戦者だよな。前っていやいつだったか?』

ゴロツキA『確か四年位前じゃなかったですかい。』

ゴルゴザル『ああ、いたいた。あそこ間違えてガスで…おっとっと。』

 

口を手で押さえるゴルゴザル。

 

ゴルゴザル『挑戦者様にネタバレしちゃあフェアじゃねえよな。』

ゴロツキB『でも、ショー見てる奴らはだいたい分かってまっせ。』

ゴルゴザル『ショー、見てた奴らはあんな風になりたくないからしねえのさ。見てた奴で挑戦した奴なんぞ今までいねえからよ。』

 

ゴルゴザルはファウスの方を向く。ファウスの顔を見つめるゴルゴザル。

 

ゴルゴザル『おいおい。なんだ偽王子。しんきくせえ顔して、まさか1ステージでドボンするつもりじゃねえよな。』

 

下を向くファウス。

 

ゴルゴザル『まあいい。そんならそれでいいさ。大言壮語して逃げ出した奴もいるし、途中でリタイヤした奴もいる。そういった場合は俺達に金が入り込む。悪くはねえ、悪くはねえがしらけるんだよ。』

 

ゴルゴザルの屋敷の挑戦者の間の前に立つ彼ら。

 

ゴルゴザル『まあ、ショーまでゆっくり英気を養ってくれや。』

 

挑戦者の間に入るファウス。閉じる挑戦者の間の扉。

 

ゴルゴザルの声『では、偽王子、ショーまでごきげんよう。食事はきっちりだすから、その辺は心配しなくていい。大事な大事な挑戦者様だからな。』

ゴロツキAの声『俺達を失望させんなよ!』

 

扉の方を向くファウス。暫くしてファウスはソファに座り、俯く。窓を叩く音。ファウスは窓の方を向く。窓を叩く幼女のロコリン。彼女を見つめた後、窓を開けるファウス。

 

ファウス『…君は?』

ロコリン『あたしロコリンっていうの。』

 

首を横に傾げるファウス。

 

ファウス『えっと、そのロコリンちゃんがどうしてこんなところへ?』

 

ロコリンはファウスを見つめる。

 

ロコリン『にせおうじっていうくらいだからお兄ちゃんつよいんでしょ。』

 

瞬きした後、俯くファウス。

 

ファウス『強い…。』

 

窓枠から体を乗り出すロコリン。

 

ロコリン『おとーさんとおかーさんが言っていたの。こんどのちょうせんしゃはにせおうじだから、もしかするとざいほうをてにいれることができるかもって!

だからおとーさんとおかーさんは…お兄ちゃんにかけるって。そうすればわたしのびょうきをなおすおかねができるって…。』

 

ファウスはロコリンを見つめる。

 

ファウス『病気?ロコリンちゃんは病気なの?』

 

頷き、俯くロコリン。

 

ロコリン『…うん。でもお金があればって…。』

 

微笑むロコリン。

 

ロコリン『だから、お兄ちゃん。ぜったいにざいほうをてにいれてね。』

 

ファウスはロコリンを見つめて、頷く。

 

ファウス『…心配しないで。僕がきっと…僕がその財宝を手にいれるから!』

 

C8 余興 END

C9 ゲーム

 

ユランシア大陸。ラエティア火山。麓にあるラルルの街。村の中央に建てられた急造の物見櫓の上にすわるゴルゴザルとDJプレイヤーの前に立つフクロウ人のDJ。流される音楽。立ち上がるゴルゴザル。

 

ゴルゴザル『さあさ、やってきました!楽しいショーの時間が!今回の奴はどこまでいけっかな!!最初でオッ死んで俺達をしらけさせるかなぁ!』

 

物見櫓の下に設置された箱にばら撒かれる紙幣。ゴルゴザルはラエティア火山クレーター洞窟の入り口の前に立つゴロツキ達に囲まれたファウスを指さす。

 

ゴルゴザル『今回の挑戦者は、あの偽王子。王位簒奪、雇い主を裏切り、主を殺した奴だぜ。今回は、この火山に勝てるかもしれねえ!』

 

花火が上がる。

 

ゴルゴザル『ショーの開幕だ!』

 

ゴロツキ達はファウスの背を押す。ラエティア火山のクレーター洞窟の中に入り、暫く歩くファウス。岩石と流れる溶岩が目の前に現れる。

 

ゴルゴザル『よお。偽王子聞いいか。』

 

ファウスはヘッドセットマイクに手を当てて頷く。

 

ゴルゴザル『これは生中継だ。途中で泣きわめいたり、ちびっちまったりしてもこっちからは丸見えだからな。覚えておけよ!さてさて、第一ステージ!死の火山ってだけあって、流れるものもアッチッチだ。そこらへんに革靴が転がってるだろ。』

 

ファウスは周りを見回し、転がる革靴を見つめる。

 

ゴルゴザル『そいつの持ち主は、16年前の挑戦者だ。ちったあ名の知れた冒険家でよ。この死の火山攻略確実って言われてたんだが。』

 

笑い声。

 

ゴルゴザル『その第一ステージで足滑らせて死んじまった。ゲラゲラゲラ。情けねえ、このどうでもいいステージでよ!他にも足を滑らせて死んだマヌケどもは沢山いるぜ。さあ、お前はどうでる。ここでリタイヤ。いいねぇ。情けねえ、とんだ笑いもんだぜ。跳ぶか?』

 

ファウスは前方を見つめ。流れる音楽。

 

ゴルゴザルの声『ちっちっち、馬鹿野郎。DJ。こういう時はもっとマヌケな音楽かけるんだよ!勇壮な音楽でその気にさせたらフェアじゃねえだろ!おら、すっころべ!すっころべ、へっへっ…。』

 

呪文を唱えるファウス。

 

ゴルゴザルの声『あっ…。』

 

ファウスは手をかざすと凍り付く溶岩。

 

ゴルゴザルの声『あらら、その手があったか。まあ、それを使ったのはお前で107人目だがな。』

 

ファウスは前を向き、歩いていく。ファウスの手前に現れる分かれ道。ファウスは右の穴と左の穴を見回す。

 

ゴルゴザルの声『おお、来たな。偽王子。そこが第二ステージだぜ!その穴の片方に入ると…ククク、必ず死ぬんだぜ。』

 

ヘッドセットマイクに手を当てるファウス。

 

ゴルゴザルの声『たいていの奴はな、ここで大幅に迷った挙句、リタイヤするか間違った穴に入って死んじまう。』

 

地面に手を当てるファウス。

 

ゴルゴザルの声『探索…。ククク無駄なことだ。魔法でもな。穴を見な。』

 

上を見るファウス。左右の穴から噴出するガス。

 

ゴルゴザルの声『そのガスで無駄になっちまうのさ。試しに石を投げて見な。』

 

ファウスは頷く、石を左の穴に投げる。暫し沈黙。

 

ゴルゴザルの声『なっ、それに光も吸収されちまうだろう。』

 

ファウスのヘッドセットマイクについた証明の光がガスに遮断される。

 

ゴルゴザルの声『残念だが魔法も吸収されちまう。ガスは濃いからな、な、コインの裏表の賭けと一緒さ、確率は五分、右か左か。直観に従って賭けてみな。偽王子。ギャンブル好きだろ。』

 

ファウスは右の穴と左の穴を見回し、右の方へ歩く。

 

ゴルゴザルの声『おやおやおや。本当にその穴でいいのかい。クックック。』

 

ファウスは眉を顰め、鼻を抑えるファウス。彼は左の穴へ入って行く。

 

ゴルゴザルの声『あ~、ああ、4年前の奴、臭ったか?』

 

眉を顰めるファウス。

 

ゴルゴザル『そう怖い顔すんなって。』

 

ファウスは洞窟内を歩いていく。ファウスの目の前に現れる、巨大な湖と巨大な穴。

 

ゴルゴザルの声『おお、第3ステージに到達したな。偽王子。』

 

地底湖を見回すファウス。

 

ゴルゴザルの声『綺麗だろ。向こう岸につけばクリアだ。』

 

しゃがんで地底湖を見つめるファウス。

 

ゴルゴザルの声『おいおい。クリアまで目と鼻の先なのになにもたもたしてやがんだ。それとも怖気づいたのかチキン野郎。渡ればいいんだよ。渡れば。』

 

地面に手をあて、しゃがんで地底湖を見つめるファウス。

 

ゴルゴザルの声『へっへ。魔法を使うのもいいぜ。まあ、臆病もんのやるセコい手だがな。偽王子。』

 

口を開くファウス。彼は地底湖の波を見つめ、口を閉ざして立ち上がり、周りを見回す。

 

ゴルゴザルの声『あ、どうした。リタイヤするか。いいんだぜ。リタイヤしても。』

 

ファウスは呪文を何回か唱える。ファウスの手から巻き起こる小さなつむじ風。助走して風魔法を唱えるファウス。彼の体は宙に弧を描き、地底湖の向こう岸に転がる。立ち上がるファウス。

 

ゴルゴザルの声『マジかよ。御名答。そこは地底湖じゃねえ。』

 

ファウスは地底湖の形をした魔脈を見つめる。

 

ゴルゴザルの声『湖のように見える魔脈だぜ。泳ごうとして取り込まれちまった奴や、魔脈に魔法をブチこんで死んだ奴なんぞ大量にいる。大半はそこでリタイヤするか死ぬんだぜ。おめでとう。第四ステージ到達だ。そこにたどり着けたのはお前で3人目だがな。』

 

ファウスは巨大な穴を見つめる。

 

ゴルゴザルの声『そこまできたら行くしかねえよな。』

 

ファウスは頷き、巨大な穴へ踏み込む。暗闇の中を照らすヘッドセットマイクの照明。ファウスは岩についた焦げたローブの破片を見つめる。伏せるファウス。赤いレーザーの無数の照射ががファウスの頭上の岩を焦がす。

 

ゴルゴザルの声『勘のいい奴だ。一人はそこで入った途端に焦がされた。ああ、その焦げたローブで気付いたか。』

 

ファウスは上を向き、呪文を唱える。眼を見開くファウス。

 

ゴルゴザルの声『運のいい奴だなお前。もう一人の魔導士は余程魔法に自身があったんだろうな。立ち上がって呪文となえてよ。逃げ回ってたのが面白かったが、魔法に頼りすぎだな。

結局焦がされた。くくくく、そこはな。天然の魔封場だぜ。』

 

眉を顰めるファウス。

 

ゴルゴザルの声『おい。どうした偽王子。不機嫌そうな顔をして。はは~ん。こんな罠をしかけて俺達が人でなしだと思ってるのか?それはお門違いだぜ。第一俺達は罠なんてしかけてねえ。そんな危険なところになんかいかねえよ。あったんだから。』

 

瞬きするファウス。

 

ゴルゴザルの声『そう、あったのさ。ずっと昔からな。それにな俺達がこういう形で余興をやる前からそいつはあったし、挑戦者はいたんだぜ。』

 

ファウスはヘッドセットマイクに手を当てる。

 

ゴルゴザルの声『さあ、どうする。逃げるか。行くか。まあ最もリタイヤするにしても、またあの魔脈越えなきゃなんねえよな。』

 

ファウスは立ち上がり、一瞬周りを見るとすぐに伏せる。

 

ゴルゴザルの声『おうおう。行くのか。勇ましいねえ。』

 

眼を閉じ、耳を澄ますファウス。風の音。ファウスは眼を開いて立ち上がり、レーザー照射を避けて、転がりながら一つの穴へ入って行く。

 

ゴルゴザルの声『おっ…えーーーーーーっ!おい!抜けたぞ!アイツ!あ、あの偽王子、第四ステージを…ぬ、抜けやがった!!』

 

砂煙が起こり、遺跡の一室に転がり込むファウス。

 

ゴルゴザルの声『はあん。あの先はこんな風になっていたのか。おい偽王子、聞こえるか。』

 

ファウスは苔むした遺跡の壁を触り、ヘッドセットマイクに手を当てて頷く。

 

ゴルゴザルの声『…お前にゃ残念なお知らせがある。その第五ステージからはな。俺達は知らねえんだ。だから、何にもヒントを与えられねえ。それに、またあのレーザーをかいくぐるのか?

もう、前に進むしかねえだろ。』

 

周りを見回すファウス。

 

ゴルゴザルの声『…これが宝かよ。もっといいもんはねえのか。』

 

ヘッドセットマイクに手を当てるファウス。

 

ゴルゴザルの声『あ、こちらのことだ気にするな。』

 

ファウスは目の前の重厚な両開きのかすれた文字が書かれている扉を見つめ、触る。

 

ファウス『あ、あのこれ扉だと思うんですが…。』

ゴルゴザルの声『知るかよ!そこは本当に知らねえんだ。だったら扉だろ。』

 

ファウスは扉の前に立ち、横に暫く引っ張る。呪文を唱えるファウス。ファウスは腕を見つめる。

 

ゴルゴザルの声『どうした。そこも魔封場か。残念だったな。』

 

扉を見つめ、2、3歩後ずさりするファウス。抜ける床。落ちていくファウス。

 

ファウス『いたた…。』

 

ファウスは頭を押さえ顔を上げる。ファウスの目に映える、コックピットのハッチの開いた魔導人型機構。

 

ファウス『…これは何。』

ゴルゴザルの声『…コックピットのハッチがあいてるな。人型機構…だろうがこんな形みたことねえぜ。これがお宝か。』

 

立ち上がるファウス。ファウスを照らす光。機械音。ファウスは周りを見回す。鳴り響くサイレン音。遺跡から丸い機械が無数に飛び上がる。それを見るファウス。丸い機械は銃撃とレーザーをファウスに向けて発射する。それを避け、逃げ惑うファウス。

 

ゴルゴザルの声『お…おうおう。盛り上がってきたな。おら踊れ踊れ。最後の山場だ。ゲラゲラゲラ。』

 

ファウスは銃撃とレーザーをかいくぐり、魔導人型機構に乗り込む。銃弾がファウスのヘッドセットマイクに当たり、壊れる。

 

ゴルゴザルの声『お、おい。ちくしょ…ザー…いいところ…ザー。死んだ…か。』

 

ファウスは魔導人型機構のコックピットの内部を見回す。

 

ファウス『これ…どうやって。』

 

魔導人型機構を取り囲む丸い機械。機械音と雑音。魔導人型機構の開かれたコックピットのハッチの前に浮かぶ無数の丸い機械。眼を閉じるファウス。

 

ファウス『こんなところで、こんなところで僕が負けたらロコリンちゃんが!!』

 

魔導人型機構から七色の光が発せられる。飛び上がる魔導人型機構。七色の光は輝きを増し、丸い機械を覆う。光に覆われた丸い機械は動作を止め、下に転がる。

 

 

ラエティエ火山に穴が開き、飛び上がる魔導人型機構。それを見上げる一同。

 

ゴルゴザル『嘘だろ。あの状況で生きて帰ったのか!この死の火山を抜いたのか!!…ちっくしょう、商売あがったりだぜ!』

 

地団太を踏むゴルゴザルとゴロツキ達。飛び上がって喜ぶロコリンとその母親と父親。地面に着地する魔導人型機構。コックピットのハッチが開き、現れるファウス。大歓声が上がる。

 

騒音と機械音。砂煙がラルルの街から上がる。振り向く人々。

 

ラルルの街に突入するシュヴィナ王国の兵士達とシュヴィナ王国のヴェルクーク級人型機構。シュヴィナ王国の指揮官用ヴェルクーク級人型機構のコックピットの開かれたで副官のジンベエザメ人のメルティエに小判型の吸盤を引っ付けるゴバンザメ人でシュヴィナ王国の軍務官でキザキザの歯を持つコモロ。彼らを見て唖然とする人々。

 

コモロ『違法賭博の現行犯だ!捕縛せよ!』

 

シュヴィナ王国の兵士達が逃走するゴルゴザルとゴロツキ達を捕縛し、金が集約されている場所を確保する。

 

コモロ『タレ込みの通りだな。この金銭は没収する!』

 

コモロは魔導人型機構のコックピットのハッチから出るファウスを見つめる。

 

コモロ『おや、偽王子…。バトルに追放された筈…。なぜまたこの国に…それに…。』

 

コモロは自機のコックピットのハッチから飛び降り、ファウスの前に立つ。コモロを見つめるファウス。

 

コモロ『よう。偽王子。ヨーケイ城以来だな。』

ファウス『あなたは…確かヨーケイ城で…。。』

コモロ『シュヴィナの軍務官のコモロだ。それにしても偽王子いいもんに乗ってるじゃねえか?何処で手に入れた?』

ファウス『何処?何処ってこの山にあったんです。この火山の洞窟の奥に…。』

コモロ『ふーん。そうか。遺物か…。』

 

ファウスを見つめて、眉を顰めるコモロ。

 

コモロ『お前がこれにのるなんざ、危険すぎてしょうがねえ。』

 

周りを見回すコモロ。彼は剣の柄で魔導人型機構の装甲を叩く。音が鳴り響く。

 

コモロ『こいつも回収だ!』

 

一斉に魔導人型機構に群がるシュヴィナ王国兵士達。魔導人型機構からずり落とされるファウス。魔導人型機構のコックピットに入るシュヴィナ王国兵士A。暫くして彼は顔を出す。

 

シュヴィナ王国兵士A『駄目です!動きません!』

 

舌打ちするコモロ。

 

コモロ『仕方ない。運ぶぞ!』

 

魔導人型機構を持ち上げるシュヴィナ王国のヴェルクーク級人型機構。シュヴィナ王国の兵士達はゴルゴザル達を連れ、金と魔導人型機構をシュラナ級起動城塞に積み込み去って行く。彼らを見つめるファウス。彼は横を向く。遠くで倒れているロコリンとそれを介抱するロコリンの母親と父親。

 

眼を見開くファウス。

 

ファウス『…ロコリン…ちゃん!』

 

ファウスは彼らの方へ歩むが、人ごみがそれを遮る。見えなくなるロコリンとロコリンの両親達。

 

C9 ゲーム

C10 ウソツキ

 

ラルルの村。ロコリンの家の前に立つファウス。扉が開き、現れるロコリンの母親。彼女はファウスを見、眉を顰める。

 

ロコリンの母親『偽王子…。』

 

ファウスを睨むロコリンの母親。

 

ロコリンの母親『あんたのせいであの子は!ショックで倒れたのよ!』

 

俯くファウス。扉の隙間から見えるベットに横になり、大量の汗を流すロコリン。傍らには医者とロコリンの父親

 

ロコリン『おかーさん。誰かいるの?』

 

ロコリンの母親はロコリンの方を向く。

 

ロコリンの母親『何でもないのよ。』

 

ロコリンは眼を開き、扉の方を向き、ファウスを眼に映す。

 

ロコリン『…ウソ…ツキ…。』

 

ファウスを見つめた後、眼を閉じるロコリン。医者がロコリンの脈をとる。

 

医者『御愁傷さまです。』

 

ファウスは眼を見開き、俯く。ロコリンを見つめるロコリンの母親。彼女は立ち上がり、笑い出す。

 

ロコリンの母親『アッハハハハハ、くたばった…。』

 

涙を流すロコリンの母親。

 

ロコリンの母親『こんな最後…はは、この子のおかげで、どれだけ、どれだけ不自由したと思ってるんだい!何処にも行けず!遊ぶこともできなくて!そうして我慢してきたそれが、こんな最後…。』

 

泣き崩れるロコリンの母親。

 

ロコリンの母親『保険金にもならないじゃないのよ!』

 

ファウスを睨み付けるロコリンの母親。

 

ロコリンの母親『あんたよ!あんたなんかのせいで!金払えよ!』

 

立ち上がりロコリンを指さすロコリンの母親。

 

ロコリンの母親『今までコイツのせいで苦労した金払えよ!!』

 

ロコリンの母親を抑えるロコリンの父親。

 

ロコリンの父親『おちつけ。この子をせめてもしょうがないじゃないか!』

 

泣き崩れるロコリンの母親。ロコリンの父親はファウスの方を向く。

 

ロコリンの父親『なあ、あんた。少しでも金を持ってたら、本当に少しでいい。俺達に恵んでくれないか。』

 

ロコリンの父親は医者の方を向く。

 

ロコリンの父親『この医者に払う金も…。』

 

俯くファウス。

 

ファウス『お金なんて…持っていません。』

 

ファウスから目をそらし地面に唾を吐くロコリンの父親。

 

ロコリンの父親『ちっ、使えねえな!』

 

ファウスは土下座する。

 

ファウス『本当にもってないんです。ごめんなさい。』

 

ファウスを見下ろすロコリンの父親。

 

ロコリンの父親『もういいよ。お前、どっかいけよ。』

 

ファウスに背を向けるロコリンの父親。

 

C10 ウソツキ END

次回予告 救済

 


1
このエントリーをはてなブックマークに追加
0
0
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択