No.846214

模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第46話

コマネチさん

第46話『ジェットストリームアタック』

 アイ達は無事三回戦も突破、しかし準決勝においてぶつかる筈だった『ゴウセツ三兄妹』は三回戦で敗北した事を知るのだった。

2016-05-05 22:23:07 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:594   閲覧ユーザー数:576

「ユキ!!」

 

 場所は女子更衣室前の廊下、うなだれながらベンチに座った目隠れの少女『ゴウセツ・ユキ』。ナナは、いの一番に彼女に駆け寄った。

 

「は、ハジメ……」

 

 弱々しくナナに返事をするユキ、彼女の格好はパイロットスーツのまま、負けたショックからか着替える気力もまだ沸かないのだろう。

 

「破られた……兄ちゃん達が……ウチらのジェットストリームアタックが」

 

 いつもは猫を被ったキャラで通してるユキだが、この時はショックが大きいのか素の状態だった。

 

「……ユキ、そんなあからさまにひきずるな」

 

 女子更衣室の隣、男子更衣室から出てきた青年、彼女の兄であるコウセツが妹を慰める。彼は既に着替えは済んでいた。と、しかしユキ達を破った面々の顔はまだ知らない。アイはユキ達を破ったビルダーがどんな人物達なのか気になった。

 

「相手のチームは……『グラン・ギニョール』ってチームでしたね。どんなチームだったんですか?」とトーナメント表を見ながらアイが問いかける。

 

「それは……」

 

「私達を探してるってわけ?『女王』様?」

 

 コウセツが応えようとした時、更衣室から三人の少女ビルダーが現れた。それを見てアイ達は言葉が出なかった。

 

――な……何だあの格好は――

 

 アイの隣、ツチヤが思わずそう言いそうになる。が『失礼な発言』と自分で判断し言葉を飲み込んだ。相手は三人とも女子だった。薄化粧をしているが年齢は恐らく10代後半、しかしそれぞれの服装が特殊すぎた。リーダーらしき少女は振袖の様な恰好をしてるが着物を着ているわけではない。右眼には眼帯、衣装にもフリルにコルセットが目立つ。

 

「何アレ?着物?」

 

「…和ゴシック、和ゴスか和ロリって奴さね。ゴシックアンドロリータの一種」と意気消沈していたユキが答える。

 

「ゴシックアンドロリータ?」

 

「知らねぇ奴ならゴスロリって呼べば解りやすいか?」

 

 「あぁ!」とナナは納得の声を上げた。和ゴスの左右にいる2人も妙な格好だった。一人はバンドで使われそうなゴシック衣装だが、アクセサリーであろう骸骨やロザリオが目立つ。『パンクロリィタ』という奴だ。そしてもう一人はチャイナドレスを連想させるロリィタ服『チャイナロリ』を着ていた小柄な少女だ。ちなみにどちらも服装はユキの解説だ。

 

「……よく知ってますねユキさん」とアイ

 

「ウチもいつもは甘ロリの格好だから」

 

 彼女も普段着はピンクのロリータファッションだ。だからそれ位は知っていた。と、アイの前に和ロリの少女はつかつかと歩いてくる。かなり真に迫った表情だ。アイの前に立つなりこう言った。

 

「こっちが話しかけたのにシカトとは随分じゃない『女王』」

 

「え?女王?誰が」誰に言われたのか理解できず辺りを見回すアイ、だが和ゴスの少女は強い口調で言う。

 

「何を言っているの?ヤタテ・アイ、お前が模型店『ダハールのピラミッド』では女王とうたわれたトップのビルダーなのは知っているわ」

 

 なおも理解出来ないといったアイ、だがナナ達は『あれか……』と思い出していた。以前アイは模型店『ダハールのピラミッド』において挑戦者からガンプラバトルを挑まれる。しかしその時ある事情でアイは対戦相手の股間をゴッドフィンガーでヒートエンドしてしまい、相手の心に大きな傷をつけた。その容赦のなさからアイは『女暴君』や『女王』と呼ばれていたのだった。(第24話参照)

 

「そりゃ別の模型店で戦った経験はあるけど、そんな通り名がついた覚えなんて……」

 

「自分の通り名すら把握して無いというの?バトルはなかなかやるみたいだけど。正直気位はそれほどではないと言うことかしら?」

 

 失望したかの様に吐き捨てる和ゴスの少女、アイ個人に対して思う所があるのか言い方が刺々しい。

 

「……年上の割には礼儀がなってないっスね。初対面でやる態度と言葉っスか?」

 

 ソウイチがアイの前に躍り出る。

 

「子供ね。私は相手と馴れ合う為にガンプラバトルをやってるわけじゃないの」

 

「そういう態度や考えは随分と大人げないんじゃないスか?そういう余裕の無さ、みっともないっス」

 

「フン……どの分野も舐められたら終わりなのよ。トップに立つのに必要なのは他人を引っ張っていく強さとカリスマ性。といっても子供じゃ解らないでしょうね」

 

 ソウイチの眉間の皺が更に深くなる。自分も勝つ結果には執着がある。だがそれでこんな態度を取っていいとは思わなかった。……以前自分が似た様な態度を取っていた経験からか。

 

「女王と呼ばれるくらいならそれ位持ってると思ってたのに、別にそんな事はなかったわね。こんなのにあの人が目をつけていたなんて……」

 

 苦虫を噛み潰した様な顔をする和ゴスの少女。「あの人?」とアイ達が疑問に思うも。少女は話すのをやめない。

 

「まぁいい。次にお前達と当たるのは私達よ。倒すには変わりないから首を洗って待っていることね」

 

 そう言うと少女は踵を返し会場から去って行った。チームメイトの二人はアイ達におじぎをすると彼女に続いて去って行った。和ゴスの少女とは対照的に丁寧だった。

 

「次はあの色物集団と戦うわけ?随分と失礼な奴らじゃない」

 

「だが、奴らの実力は見かけからは想像できん。俺達のジェットストリームアタックを打ち破り、それぞれ一対一の勝負になったが誰一人勝てなかった」とヒョウ。続いてコウセツが口を開く。

 

「そこでだ。ヤタテさん、俺達は君達に勝ってもらいてぇ。幸い試合は来週だ。明日是非俺達と特訓のバトルをしてくれねぇか?」

 

「ナナ、正直ウチらもリベンジしてぇが、負けた以上それは無理だ。だからアンタ達に託したい」

 

 ユキもナナに向かい胸中を吐く。断る理由は無い。アイ達はそれを了承。翌日にガリア大陸でまた会おうと約束をするのだった。

 

 そして翌日……模型店『ガリア大陸』にてビルダー達は集う。指定した時間にユキ達はくるも、アイ達の姿は未だ見えない。

 

「おやおや~?ナナちゃん達はまだ来てないんですかぁ?」

 いつもの猫を被ったユキが二階のガンプラバトルのスペースを見回す。と、二階に上がってきた兄のヒョウがユキに指摘する。

 

「いや、下の階の工作室を見てみろよ」

 

 ヒョウが一階店の奥に案内する。工作室の中でアイ達はやいのやいのと話し合ってるのが見えた。

 

「何やってるんですかぁ?」

 

「あ、ユキちゃん。次の準決勝でどの機体で挑むか話し合っていてね」

 

 テーブルの上にはHGのAGE-3フォートレスとオービタルが置いてあるのが見えた。特別手は加えられておらず、これから改造をするつもりなのだろう。

 

「ありゃ、次の機体は乗り換えですかぁアイちゃん」

 

「ウェアを変えるつもりだよ。それに伴ってサブのビルダーも変えるつもりだよ」

 

「次はフォートレスで行きたいんで俺が乗るっスよ。あの女、なんか気に入らないっスからね、準決勝は俺がヤタテさんと出ます」とアイに続いてソウイチが言う。

 

「まぁ最もまだ改造案もいまいちだから次のバトルで色々参考にしたいんだけどね」

 

「リベンジも兼ねたバトルのつもりでしたが、まぁいいですぅ。準備出来次第バトル開始といきましょ~☆」

 

 昨日の敗北は立ち直ったらしい。片腕上げて笑顔のユキ、

 

「それだったらいつでもいいよ。よろしくね」

 

 快く応じるアイ、このままバトルに直行かと思いきや、コウセツが口を開けた。

 

「それなら、ハジメは次のバトルはアイの僚機で出るのか?」

 

 いきなりコウセツがナナに話を振る。予期してなかったナナは「へ?アタシ?」と素っ頓狂な声をあげた。

 

「ハジメ、お前は聞けば、かのサツマからライバル視されてると聞いたぜ。サツマといえば地区の中でも有数のビルダーだ。お前さんに負けてから彼女は散り散りになっていたチームを再結成し、修行し今地区予選では快進撃らしいぜ」

 

「イモエの奴が?」

 

 サツマというのは以前ナナが倒したビルダー『サツマ・イモエ』(薩摩妹江)の事だ。プライドの高い実力者であり、アイとの連携とはいえ自身を倒したナナに対して執着を見せていた。コウセツはその件において何故ナナに執着しているかが気になっていたわけだ。

 

「そのサツマの奴が執着するお前の実力、見てみたい」

 

「あー、お手柔らかに、そんな期待するもんじゃないですよ……」

 

 自身なさげにナナは答えた。

 

――何でアタシなわけ!イモエ!――

 

 謙虚な言葉の裏で、そうナナは心の中でサツマに対して毒づいた。

 

 そしてバトルが始まる。今回のバトルは晴れた洋上でのバトルとなる。母艦は空母、綺麗な水平線と太陽照り付ける中でアイ達は出撃する。ナナのフリーダム・アルクスとツチヤのアッシマー・デコレーションが青空を舞う中、アイとソウイチのAGE-3フォートレスは飛ばずに水面に着地する。フォートレスはホバーと両肩、両腕に搭載された4門の大型ビームキャノン『シグマシスキャノン』が特徴の機体だ。今のAGE-3は水面に浮いている。

 

「飛ぶのは慣れてるけど、浮いてるのはどうも変な気分だね」

 

「まぁホバー機は限られてるっスからね。それよりあの三兄妹の戦い方、俺見てましたけど手の内言わなくてもいいんスか?」

 

「まずは初見でどれだけ気付けるか試してみたいんだ。来るよ!」

 

 そう言うや否や、一機こちらに迫ってくるのが見えた。『ガンダムSeedDestiny』で登場した『ドムトルーパー』という機体だ。白く塗装され、背中にケルベロスウィザードという装備をしているユキ専用機だ。こちらもホバーで浮いており、ドムの走る後はドム以上の大きさの水柱がたっている。

 

「お久しぶりですぅ!『ドムトルーパー・スノーマン』ですよぉ!!」

 

「白いって事はユキ専用機か!一機で来るんならアタシが!」

 

 ナナのフリーダムが全射撃武器を展開、ハイマットフルバーストだ。全てをユキの白ドムとその周辺目がけて発射。回避地点を考慮した上で撃ったビームは白ドムに向かう。が本体へのビームはビームシールドで防御、周りに当たったビームは幾つもの水柱を上げる。白ドムは臆さず、ナナの射撃を見抜いてるかの様な動きで水柱をかわす。器用にビームの間を縫う動きだ。

 

「ちょっとは腕を上げた様ですけどぉ!!ユキ達はそれ以上上げてるんですよぉ!!」

 

 そう返しながら白ドムはバズーカで迎撃してくる。ビームと実弾の併用だ。ナナもそれをかわしビームライフルを向ける。

 

「っ!ハジメさん!一人に気を取られないで!!」

 

 叫ぶソウイチ。その時だった。水中から一発の砲弾が空のフリーダム目がけて飛んでくる。

 

「っ!いけない!ナナちゃん!!」

 

 気づいたアイはフォートレスの右袖部のシグマシスキャノンで砲弾を迎撃、一門でもビームバズーカ並の出力だ。ビームに飲まれた砲弾は大爆発を起こす。眼下で起こった爆発にナナは一瞬気を取られる。

 

「気を取られましたねぇ!!」

 

 ユキはバズーカを撃ち続ける。

 

「強気ね!でもドムは飛べないんでしょ!!」

 

 ナナは相手は飛べないと知っていた為、距離を置きながら対応しようと両手の重火器を向ける。

 

「距離を取るか。いい判断だ!だが基本だな!!」

 

 直後、白ドムの背後からもう一機の機体が現れる。巨大なハルバードを持った茶色い砂漠仕様のドムトルーパーだった。白ドムの後ろにピッタリついていた為、派手な水しぶきで隠していたのだ。この為わざと白ドムは水しぶきを大袈裟に起こしていた。茶ドムは白ドムを踏み台にするとフリーダム目がけて大ジャンプ。

 

「妹を踏み台にしたぁ!?」

 

「括目しろ!!これが俺の『ドムトルーパー・サンドマン』だぁ!!!!」

 

 驚愕するナナ、ビームサーベルで対応しようとするも、それより早く茶ドムはフリーダムにハルバードを振り降ろそうとする。

 

「させるかよっ!!」

 ツチヤのアッシマーがフリーダムの前に割って入り、トマホークでハルバードを受け止める。鍔迫り合いになり茶ドムはアッシマーを海に落とそうと全バーニアをふかす。膠着状態となる二機、その時、フリーダムとアッシマーの二機を目がけて水中からミサイルが飛んでくる。

 

「おっと!」

 

 ツチヤはアッシマーの背部コンテナからマイクロミサイルを発射、ミサイルは海面からのミサイルに向かいミサイル同士で誘爆。すぐさまアイ達はいぶりだすべく、敵が撃ってきた水中へビームキャノンを撃ち込んだ。起こる爆発の水柱。

 

「ハハッ!やはりそう簡単にはいかねぇか!!」

 

 そこから三機目の機体が飛び出してきた。長男コウセツの声が機体から聞こえた。

 

「緑のドムトルーパー!?」

 

 アイが叫んだ。ミサイルポッドと実弾のキャノン砲を背中に装備した、密林仕様の緑色に塗られたドムトルーパーだった。緑ドムは脚部のホバーを作動させる。水面を波打たせつつ、緑ドムが水面に立つ。すかさず白ドムと一緒に撃ちながら後退、緑のドムトルーパーはかなりの重武装だったが、ホバーの所為かかなり軽快に動く。

 

「ツチヤさんから離れてよ!」

 

 ツチヤの援護をすべくナナのフリーダムはビームライフルを鍔迫り合い中の茶ドムに向ける。しかし撃とうとした直前にフリーダムとアッシマーに緑ドムの射撃が迫る。とっさにシールドで防御するナナとツチヤの機体、その隙をついて茶ドムも後退、三機とも色違いのドムトルーパー。それがユキ達ゴウセツ三兄妹の機体だった。

 

「ドムトルーパーが三体か!」

 

「その通り!!これが俺の『ドムトルーパー・ウッドゴーレム』!!」

 

『そして!!三人揃ってチーム!!ゴーレム兵団!!!』

 名乗り終わるとすぐさまドムトルーパーはアイ達に撃ってくる。アイ達は攻撃を避けながら重火器を撃ち続ける。しかし三体ともビームシールドで射撃を防御、そのうちドムトルーパーはチーム同士、三機との間隔を狭ませる。縦一列に並ぼうとしてるのだ。それを見たソウイチは焦り出す。

 

「いけない!奴らを一列にしちゃいけないっス!!」

 

「え?!」

 

 しかしすぐにドムトルーパーは縦一列に並ぶ。前からヒョウ、コウセツ、ユキの順だ。

 

「一対一ではやっぱ苦戦するよなぁ!だがこれ位は出来て当たり前だぜ!ここからがテストの本命!いくぜ!ヒョウ!!ユキ!!」

 

「は~い☆」

 

「いつでもOKだ!!兄貴!!」

 

 そしてすぐさまアイ達に向かいだした。三機とも腹部の兵装『スクリーミングニンバス』を起動させる。

 

『ジェットストリームアタック!!』

「っ!!」

 

 スクリーミングニンバスはドムの全身にビームと同属性の攻性防御フィールドを張る装備だ。この装備は三機同時に使う事により数倍の出力を発揮する。その為三機のドムが赤く強く輝きだす。ドム三機はそれぞれの射撃武器をアイ達に撃ちまくってくる。

 

「そらそらそらそらぁっ!!」

 

 三機共武装は元々豊富な上に、更に追加されてる、距離が離れていても容赦がない。

 

「くっ!考えなしに撃ってきて!!一列に並んでるなら貫通させちゃえばいいでしょ!!」

 

 ナナは左腕のロングレンジライフルを展開、発射。アイ達も負けじとそれぞれの火器をジェットストリームアタックに撃ち込む。が、撃った攻撃はビーム実弾問わず全てドム前面のフィールドに砕かれる。

 

「何よあれ!前戦った時はあんなに強力じゃなかったのに!!」

 

「三機揃うと更に出力は上がってるんですよぉ☆」

 

 その直後、ナナのフリーダムにコウセツの緑ドムの180mmキャノンが当たる。ナナの方はまだ撃ち続けていようとした為回避が遅れたのだ。そのまま落下するフリーダム。

 

「うわっとと!!」

 

 しかし撃墜にはならずフリーダムは海面スレスレで体勢を直す。しかしドムの方はそれを逃がさない。

 

「フリーダムが落ちた!散開だ!」

 

 フリーダムに反応するかのようにドムトルーパーはそれぞれ散開(燃費の都合上スクリーミングニンバスは解除)、あっという間にフリーダムの周りを囲む。

 

「ターゲットを中央に固定……!やるぜ!マシン展開!フォーメーション『デルタアタック』!!」

 

「な!何よ!きゃあっ!!」

 

 ドムトルーパー三機はグルグルとフリーダムの周りを円形に回り、一斉に火器をフリーダムに撃ち込む。

 

「ナナちゃん!!」

 

 グルグルと動きながらドムの攻撃は続く。アイ達はフリーダムを討たせまいとビームを撃ち込みながらフリーダムの元へ急ぐが、ドムトルーパーはそれぞれビームシールドも展開していた。アイとツチヤの射撃は正確な反応で防がれ、集中砲火にさらされたフリーダムはあっという間にボロボロになっていく。

 

「そんな!飛べない相手にぃっ!!」

 

 直後フリーダムは爆発。フリーダムの周りを回っていたドムの間隔は綺麗なトライアングル状になっていた。

 

――……これがサツマの奴が執着してるというハジメ・ナナか?弱くねぇか?――

 

 コウセツはナナの実力に納得がいかないでいた。サツマが執着するにはどうも肩すかしの実力だ。しかしその思案もアイ達の射撃によって中断せざるを得なくなる。

 

「ハジメさんが!よくも!!」

 

 ナナの弔いとばかりにツチヤとアイの射撃は激しさを増す。対するドムトルーパーはこの場から離れようと三機とも背中合わせとなり、再びグルグル回り出す。ビームシールドと重火器を撃ちまくりながらという防御と攻撃を兼ね備えた体系だった。

 

「密集体系だ!!離れるぞ!!」コウセツの声に返事で返すヒョウとユキ。そう言いながらアイ達の射撃をかわしながら回ったままの体勢で後退していく。

 

「くっ!こんなにガードが堅いなんて!!」アイがユキ達の連携に驚きの声を上げる。

 

「さっきのハジメさんを取り囲んでいたフォーメーション、綺麗な正三角形状だった。ああいう攻撃はタイミングがズレれば仲間を撃ちかねないというのに、それだけ彼らの連携が優れているという事か……」

 

「でも向こうの弾薬だって無限じゃないっス。このまま長期戦に持ち込めば勝機も……」

 

「……それだったらさ。ちょっと考えがあるんだけど」

 

「え?もう何か思いついたんスか?!」アイの提案に驚くソウイチ。

 

 

一方こちらはコウセツ達の方、ドムトルーパー三機は現在近場の小島、その中の森に隠れていた。

 

「ユキ、お前の方のエネルギーは」

 

「六割位ですぅ……六割位さね」いつもの猫なで声で答えようとするが、兄から何を言われるか解っていたので言い直すユキ、

 

「俺の方も同じ位だぜ兄貴。このまま順調にいけばエネルギー全部使い切る前に倒せるな」

 

「どうだろうな。ハジメ・ナナという奴が思ったより弱かったわけだが、正直ヤタテ・アイの実力はあんなもんじゃねぇ筈だ。あのサツマも倒したんだからな」

 

「考えすぎじゃない大兄ちゃん?」

 

「そうでなければ地元でなく、こっちで選手権にエントリーした甲斐がねぇ」

 

「ま、こっちじゃサツマと戦わないで済むから気楽でいいけどねぇ」

 

と、その時、コウセツの視界にAGE-3フォートレスが入った。こちらを探しているらしくキョロキョロと辺りを見回してる。

 

「本命が来たな。一人なのは気になるが、頂く!!行くぞ!」

 

 そしてドムトルーパーは三機ともフォートレスを撃墜すべく襲い掛かる。フォートレスは後退しながら両腕のビーム砲を撃つが、いずれのドムトルーパーも軽やかにかわす。そして逃がすまいとあっという間にフリーダムと同じ要領でフォートレスを取り囲んだ。

 

「飛行できないフォートレスで俺達の前に姿を現すとは愚かだなぁ!!デルタアタックだ!」

 

 そう言って全火力をAGE-3に叩き込む。だが着弾の直前だった。フォートレスは分離し真上に逃げる。AGE-3は頭部と背中を構成するコアファイターと残りの部分を構成するウェアに分離する事が出来る。フォートレスでは飛行は出来ないが分離状態なら可能だ。

 

「な!逃がすな!撃ち続けろ!!」

 

 アイの乗ったコアファイター、ソウイチの乗ったウェア『Gホッパー』、ドムトルーパー各機はそれぞれを撃ち落とすべく撃ちまくる。しかし二機はぐねぐねとした軌道を描きながら器用に追撃をかわし、真上へと高く、速く飛ぶ。

 

「ソウイチ君!チャージは?!」

 

「つい今終わったっス!!」

 

「よし!AGE-3!再合体!!」

 

 アイの号令と共にコアファイターとGホッパーは再び合体。この状態では飛行が出来ないので落ちるだけ、下でドムトルーパーが武器を掲げこちらが落ちるのを待ってる。が、フォートレスは全てのシグマシスキャノンを真下に向ける。

 

「っ!やべぇ!皆離れろ!!」フォートレスの様子にコウセツがその場から離れようとする。しかし遅い、フォートレスのシグマシスキャノンはフルチャージで発射。四門の出力をまとめた威力は単体の比では無い。フォートレスの全長の何倍もの大きさのビームが海面に放たれる。ドムトルーパーはシグマシスキャノンをどうにか回避する。しかしシグマシスキャノンは海面に当たり、直後ビームのエネルギーによって気化された海は広範囲にわたって大爆発を起こす。水蒸気爆発だ。ドムトルーパーはシグマシスキャノン自体は回避したものの。爆発によりそれぞれが大きく吹き飛ばされる。

 

「な!なにぃっ!!」

 

「シグマシスキャノンに当たればめっけもんだったんだけどね!!」

 

「コ!コンチクショー!!なんとか体勢を立て直してもう一度ジェットストリームアタックを!!」口悪く叫ぶユキ、そんな彼女の発言にある男の声が割って入る。

 

「いや!悪いがおしまいだ!!」ツチヤだ。

 

「っ!!」

 

 直後、ユキとヒョウ、それぞれのドムトルーパーをビームが貫いた。ツチヤのアッシマーデコレーションだ。分離して飛行形態となりそれぞれを撃ったのだ。吹き飛ばされてる状態で無防備だったドムトルーパーは簡単に撃ち抜かれた。

 

「れ、練習したのに──っ!!」

 

 それがユキの断末魔だった。ヒョウも呆気にとられながら爆散。残りはコウセツの緑ドム一機となった。

 

「ユキ!ヒョウ!!っ!?」

 

 兄妹達の名前を叫ぶコウセツ、だが自分の上空に影が見え、上を見ると、シグマシスキャノンを構えたAGE-3フォートレスが降ってきた。フォートレスは袖部のシグマシスキャノンをパンチの容量でドムトルーパーを脳天から殴りつける。フォートレスにはビームサーベルが無い。しかしパワーとシグマシスキャノンの頑丈さは高く、殴りつけるのも得意だった。

 シグマシスキャノンは脳天にめり込み。その勢いのままフォートレスはシグマシスキャノンを発射。ゼロ距離で放たれたシグマシスキャノンにドムトルーパーはあっけなく爆散。

 

「アイ……やっぱ凄いよアンタ」

 

 Gポッドから出てきたナナが観戦モニターでアイの雄姿を見ていた。フォートレスは爆発で起こった水柱の雨に濡れながら、圧倒的な存在感を醸し出していた。コウセツ達『ゴーレム兵団』とのバトルはアイ達『I・B』の勝利で幕を閉じた。

 

「ジェットストリームアタックは三体集まってのフォーメーションでしたからね。攻撃が貫通したら別の機体に誘爆しやすい問題もあります。だから攻撃のタイミングは掴みやすいと考えたんですよ」

 

「それで真上からシグマシスキャノンを撃ったわけかよ。俺達がかわした事も計算して」

 

「水蒸気爆発は念の為って感じです。あそこまで動きのキレがいいとそりゃ慎重にもなります。ガンダムXでもあった戦法ですし」

 

 バトルが終わった後、アイ達はどうして自分があの作戦を遂行したかを説明する。

 

「実を言うとな、俺達があのゴスロリのチームに負けた時も三体で固まっていた所をトラップで襲われたんだ。プラズマ・リーダーって分かるだろ?」

 

「?ねぇアイ、プラズマリーダーって?」ナナが聞き慣れない武装名にアイに説明を求める。ナナのガンダム作品視聴は幼稚園時代にSEEDを見たっきりだ。

 

「解りやすく言うと高圧電流のトラップだよ」

 

 『プラズマ・リーダー』3基の発生器からなる電磁結界発生装置だ。ビームで機体を覆うスクリーミングニンバスも電撃系には意味を成さない。『ヴァル・ヴァロ』という『ガンダム0083』に登場した蟹の様なモビルアーマーのみが装備していた。

 

――ガンダム作品の知識も薄いのか?――

 

「あの、コウセツさん。てことは敵はヴァル・ヴァロ?」

 

 ナナの知識のなさに怪訝な表情を見せるコウセツ。以前アイ達と戦い、そしてナナに敗れた実力派ビルダー『サツマ・イモエ』彼女は実力が大きく劣るナナに対して執着を見せている。コウセツはそれが正直言って今理解出来ないでいた。が、アイの問いかけにコウセツは我に返る。

 

「ん?あ、いや、積んでいたのはクシャトリアだ。他の機体はギラ・ズールが二機だったな。プラズマ・リーダーを食らった後は散開したんだがそれぞれ一対一で戦ったんだがそれでも勝てなかった」

 

「トラップを駆使するタイプか。今までにないタイプの相手だけに、かつてない強敵になりそうだね。アイちゃん」

 

「そうですねヒロさん。それだけに対策やAGE-3の改造をしっかりやっておかないと」

 

「AGE-3フォートレスの改造機は確かソウイチ君との二人乗りだったな。実際に動かしてみて何か掴めたかい?」

 

「いやぁヒョウさん。一回じゃなんとも、でもパワーはあるけどビームサーベルもないし、シグマシスキャノンもあそこまで強力だと使いづらいっス。もう何回か戦ってみてビジョンを明確にしたいっスけど」

 

「うにゃぁ☆そういうことなら協力しますよぉ☆まだ時間はあるんですからぁ。でも今度こそウチらが勝つからな」悔しさからか、最後だけ口が悪くなるユキであった。

 

――それにしても……――

 

 一週間後の大会への意気込みが盛り上がる中、コウセツはナナを見る。彼女はアイ達の意気込みから一歩引いた様子だった。自分の実力にアイ程の自信がないのだろう。さっきの負けも影響した行為だった。

 

――なんでサツマがコイツにこだわってるのかわからん……――

遅くなってスイマセン。オルフェンズの写真コンテストや今後の話に使うガンプラ作ってたりで遅くなりました。ガンプラを減らせばもっと早くなるかもしれませんが、やはり自分が一番こだわりたいのはガンプラなんです。もっと早く投稿しなきゃという気持ちはちゃんとあるんですけどね。

 


 
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