No.842247

恋姫OROCHI(仮) 肆章・幕間弐日目 ~彩の章~

DTKさん

どうも、DTKです。
お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、70本目です。

また少し間が空いてしまいました。

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2016-04-13 23:00:43 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:3624   閲覧ユーザー数:3156

 

 

 

小夜叉はボヤいていた。

 

「ったく…なんでオレが買い物なんかに付き合わなきゃならねぇんだよ…」

 

小夜叉はひよやころと連れ立って、沙和・タンポポ・シャオの三人に街へと連れ出されていた。

 

「んまぁまぁ小夜叉ちゃん」

「剣丞さまも、みんなと仲良くね、って言ってたし…ね?」

 

そんな小夜叉を何とか宥めるひよところ。

 

「お~い!ひよちゃーん、ころちゃーん、小夜叉ちゃーん!」

「三人とも遅いわよー!」

「置いてっちゃうよ~!!」

 

通りの向こうで沙和たち三人が手を振っている。

 

「ほら…ね、小夜叉ちゃん…」

 

ひよが泣きそうな顔で小夜叉を覗き込む。

 

「んん…わぁったよ!行きゃいいんだろ、行きゃあ!」

「うん!えへっ」

 

こうして六人は再び合流した。

 

 

 

 

 

 

「それで、今日は何を買いに行くんですか?」

 

ころが三人に尋ねる。

 

「ん~、これといって別に決めてないのー」

「フラフラ~っとその辺のお店を見て周ろっかなーって思ってるのよ」

「乙女の嗜みだよね~」

「はぁ……乙女の…」

 

三人の勢いに気圧されるころ。

 

「堺の街をぶらぶらしたのと似てるね」

 

ひよはニコニコと笑いながら三人のノリについていく。

 

「…アホらし」

 

頭の後ろに腕を組んで、つまらなそうに最後方を歩く小夜叉。

不機嫌、とまではいかないが、あまり話しかけられる様子ではない。

 

「ねーねー小夜叉ちゃん~?」

 

が、そんな空気などどこ吹く風。

沙和がとととーと、小夜叉に寄っていく。

 

「小夜叉ちゃんのその飾り。前から思ってたんだけど、とっても可愛いの~!」

 

小夜叉の服についている笑顔印などの飾りに食いつく。

 

「ん……お、おう」

 

その圧に小夜叉と言えど、やや押される。

 

「これどこで買ったの~?」

「どこって…確かガキの頃、縁日か何かで母に買ってもらったんだよ…」

「ふ~ん。良いお母さんなの!それに、それを大事にして服つけてる小夜叉ちゃんも、とってもオシャレなの!」

「そ、そうかよ……ありがとな」

 

自分と言うよりは、母を誉められたのが嬉しかったのか、素直に礼の言葉が出てくる。

 

「そういえば、小夜叉の槍もすごい業物だよねー!チラッとしか見たことないけどさぁ」

 

今度はタンポポが会話に入ってくる。

 

「おぅ…お前、分かるのか?」

「そりゃま、これでも武人の端くれだからね~」

 

なんとなくヘラヘラしているタンポポが気に入らなかった小夜叉だが、人間無骨の、愛槍の魅力に気付いてもらい、機嫌が徐々に好転する。

 

「ひよところの髪飾りもなかなかオシャレよね~。やっぱり未来の方がオシャレは進んでるのかしら?」

 

シャオは改めてひよところの髪飾りをまじまじと見つめる。

 

「オシャレだなんてそんな…これは昔おっかあに買ってもらったのをずっと使ってるだけだし…」

「私も似たようなものかな?私たちより、シャオちゃんたちの方がよっぽどオシャレだと思うけどな」

「うんうん!服とかすっごく可愛いもん!」

 

ひよところの服は、それぞれ小間使いと野武士の時代からの着たきり雀だ。

オシャレに興味はあるものの、昔は貧乏故にそこまでは回らなかったし、剣丞隊結成以降は忙しくてそれどころではなかった。

 

「わっかるぅ~?シャオの今日の服はね~…」

「沙和だって……」

「タンポポは……」

 

ワイワイと女子話に華が咲く。

そうなると、また暇を持て余してしまうのが小夜叉だ。

オシャレそのものに興味が無いわけではないし、自分なりにはしているつもりだ。

だが、このように姦しくするのはどうにも苦手だった。

 

「そうだ!だったら今日は、みんなにこっちの服屋を案内してあげましょうよ!」

「それ名案!」

「沙和たちが三人に似合う服を見繕ってあげるの~」

「え…でも私たちに似合う服なんかあるのかなぁ?」

「大丈夫よ!ころもひよもスラッとしてるし、小夜叉も無駄なお肉なんて全然ないみたいだし、どんな服でも似合っちゃうわよ」

「えへへ~そうかなぁ~?」

 

満更でもなさそうなひよ。

 

「けっ…オレぁ行かねぇぞ」

「まぁまぁ」

「そんなこと言わずになの」

 

帰ろうとする小夜叉の両腕にタンポポと沙和が腕を絡ませ、スッと持ち上げる。

 

「あ、おいテメェら…」

 

そのまま連行されてしまった。

 

 

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

「ここなのーー!!」

 

沙和が喚声を上げる。

 

「「おぉ~~!」」「はぁ~~…」

 

ひよところ、そして小夜叉でさえ感嘆の息を禁じえない、その店構え。

広い間口は他店の三、四倍はあり、軒先には数体の等身大人形が置かれ、艶やかな服が着せられている。

堺でも見たことがない超大型店舗だ。

 

「『あなたに似合う一着を』が売り文句の『唯似代(ユニシロ)』ってお店で、安いけどオシャレな服が沢山売ってるお店なのよ!」

「まだ成都には無いんだよね~」

 

シャオもタンポポも興奮気味だ。

 

「それじゃ、早速中に入るの~」

 

六人揃って暖簾をくぐる。

中に入ると、これまた同じような反応のひよたち。

数多くの棚が並べられ、そこに多くの服が陳列してある。

店員と思しき人が十人以上見られ、またそれ以上に客もいるため、店内はかなりの賑わいだ。

 

「わぁ~、見て見てころちゃん!これ面白~い!」

 

ひよが早速なにかに食いつく。

 

「ホントだ、なんだか面白いね」

 

ひよが見ていた棚には、色や大きさが違うだけで同じ意匠の服がズラリと並べられていた。

 

「これが安さの秘密の一つらしいのー」

「同じ型紙の服を沢山作ることで、職人さんが縫う速度を上げてるんですって」

「はぁ~ん」

 

小夜叉も多少は興味があるようだ。

 

「唯似代の登場で、服そのもののオシャレに加えて、同じ意匠でも着合わせの感性が重要視される時代に突入したのっ!」

 

ジャーン!と銅鑼でも響きそうな熱い語り口の沙和。

 

「「おぉ~!!」」

 

ひよところは思わず拍手をしてしまった。

 

「もちろん、お洒落で可愛い一品ものも沢山あるわよ!」

 

と、シャオがみんなを店の奥へと促した。

 

 

 

 

 

 

…………

……

 

 

 

「「うわぁ~…」」

 

少し奥に入ると、今度は凝った意匠の服が、これまたズラリと並んでいた。

 

「すごいね~綺麗だね~!わぁ~!あれって月ちゃんと詠ちゃんが着てるやつだよね?」

 

ひよが指差す先には、めいど服があった。

 

「あれはめいど服っていって、ご主人様が意匠したんだよー」

「えっ!一刀さまが!?」

「へぇ~、やるじゃねぇか」

 

仰天するころに、感心する小夜叉。

 

「って言っても、一刀は天の国に元々あったものを持ち込んだだけらしいけどね」

「この辺の服は、隊長意匠のものばっかりなのー」

 

先のめいど服や、なーす、ちあ、せーらー服、その他その他。

ひよたちにとっては初めて目にする意匠ばかりだ。

 

「それじゃあ、剣丞さまもこの服知ってるのかな!?」

「一刀と同じ所から来てるんだから、当然知ってるでしょうね」

「わぁ~…」

 

ひよは目を輝かせてそれらの服を眺める。

ころも同じような目だ。

 

「ふふふ…良い目をしてるの~」

「そうね」

「これなら甲斐があるってもんだよね」

 

沙和たち三人は、そんな二人を見て微笑みあっている。

 

「ひよちゃん!ころちゃん!」

「はっ、はい!」

「な、なんですか!?」

「私たちからのお近付きの印に、好きな服を一着、買ってあげるの!」

「「えぇっ!?」」

 

突然の申し出に仰天する二人。

 

「い、いいですよ、そんな、悪いです!」

「そうですよ!こんな高そうなもの、頂くわけには…」

 

わちゃわちゃと両手を振って断ろうとする。

 

「いいのいいの!シャオたちも、オシャレ仲間が増えて嬉しいんだから」

「そうそう!そ・れ・に~、この天の服を着て剣丞に迫れば…」

「ご、ごくり…」

「せ、迫れば…?」

「これ以上はタンポポの口からは言えないよー!!」

「キャー!タンポポちゃん、大胆なのー!」

 

キャーキャーと姦しくしながら、ひとしきり盛り上がる。

しかし…

 

「う~ん…でもやっぱり…」

 

冷静になったひよが手近な服の値札を見る。

こちらの物価は詳しく分からないが、間違いなく、おいそれと買える額でないことは確かだ。

そんな躊躇するひよに、

 

「いいじゃねぇか、買ってもらえばよ」

 

小夜叉が口を出す。

 

「小夜叉ちゃん?」

「せっかくダチが奢るって言ってんだ。ありがたく受けとっときゃいいんだよ」

 

テメェも進歩がねぇな、と小夜叉が髪をかきながら吐き捨てる。

 

「そうそう、小夜叉の言うとおりよ」

「タンポポたちからの贈り物、受け取って欲しいな!」

「なのなの~」

「シャオちゃん、タンポポちゃん、沙和ちゃん…」

「ひよ…」

「うん、ころちゃん!」

 

ひよところが目を合わせる。

 

「みんなありがとう!服、ありがたくもらうね」

 

笑顔の花が五つ咲く。

 

「へっ…ったく、世話の焼ける奴らだぜ」

 

そんなひよたちを見て、小夜叉も僅かに口角をあげる。

と、

 

「それじゃ三人とも、好きな服を選ぶのー!」

「…ん?」

「お望みとあらば、シャオたちが見立ててあげるわよ!」

「私たちじゃよく分からないし、折角だから選んでもらおうか?」

「そうだね、ころちゃん。小夜叉ちゃんもそれでいい?」

「あ?」

「んじゃ三人分、ちゃっちゃと見立てちゃおっか!」

「「おー!!」」

 

タンポポの音頭に、沙和とシャオが力強く拳をあげる、

 

「おい、ちょい待て。三人分ってなどういうこった!?」

 

と同時に、小夜叉が待ったをかける。

 

「え?ひよちゃんとー…」

「ころと…」

 

沙和とシャオがそれぞれ、ひよところを指差す。そして、

 

「小夜叉でしょ?」

 

タンポポの人差し指が小夜叉を指す。

 

「はあぁぁあ~!?バカかテメェは!なんでオレが服なんか選ばれなきゃなんねぇんだよ!?」

「え?いや、だからお近付きの印だってば」

「シャオたちの話聞いてなかったの?」

「いや、それはひよところの…」

「小夜叉ちゃんもオシャレさんなんだから、仲間なのー」

「バ…別にオレはお洒落なんて…第一、俺に似合う服なんか…」

「たくさんあるわよ。さっきも言ったけど、体型も細いし、髪なんかとっても綺麗で可愛いんだから」

「こ、この髪は母譲りで…」

「それにさっき小夜叉自分で言ってたよね?ダチがくれるって言ってんだからもらっとけ、だっけ?」

「うぁ…う゛ぅ~~!」

 

恨めしそうに三人を睨みつける小夜叉。

が、暖簾に腕押し。

 

善意の沙和。

仲間意識が溢れるシャオ。

悪戯心満載なタンポポ。

戦国の鬼も、三国の業師三人相手では敵わなかった。

 

「ぅ…わ、わぁったよ!服でも何でも持ってこいってんだっ!!」

「「「おー!!」」」

 

いそいそと小夜叉の服選びに走る三人。

ひよところは、桐琴と剣丞以外で小夜叉をやり込める三人を空恐ろしく感じながらも、しっかりと買い物を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

この日、沙和たちの着せ替え人形となってしまった小夜叉は、のちに

 

「鬼の万匹狩りの方が万倍楽だった」

 

と、述懐したとかしないとか…

 

 

 


 
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