No.842003

英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク 改訂版

soranoさん

外伝~祝賀会の夜~中篇(前半)

2016-04-12 08:44:39 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1069   閲覧ユーザー数:1017

 

 

~グランセル城・空中庭園~

 

「モグモグ………世界が違ってもカニタマがあって本当によかった………一日にこんなにもたくさんのカニタマを食べれるなんて、幸せ……」

「フン、馬鹿の一つ覚えのようにそんな高カロリーの物ばかり食べていたら太るぞ。」

テーブル一杯に広げたカニタマが乗った皿に呆れたリオンは幸せそうな表情でひたすらカニタマを食べ続けているソフィに忠告したが

(あの~、メイン料理を二皿だけ食べて、後はプリンやデザートばかり食べてる坊ちゃんも他人の事は言えないと思うのですが……)

「お前は黙ってろ、シャル!」

「私、人間じゃなくて”プロトス1(ヘイト)”だからどれだけ食べても太らないよ?―――あ、ヨシュア。」

シャルティエの指摘を聞くとシャルティエを睨みつけ、ソフィは首を傾げてリオンの忠告に答えた後ヨシュアに気づくとリオンと共にヨシュアに視線を向けた。

 

「ソフィ、リオンさん。異変解決に加えて復興作業にも力を貸していただき、本当にありがとうございました。」

「フフ、エステルやリベールの人達にはお世話になったから、私は当然の事をしただけだよ。」

「フン、奴等から受けた”借り”を借り続けるというのは気持ち悪いからな。僕はさっさと”借り”を返したかっただけだ。」

ヨシュアに感謝されたソフィは微笑み、リオンは鼻を鳴らして答えた。

「そう言えば父さんから聞きました。リオンさんは王国の客員剣士として、リベールに根を下ろすとの事ですね?」

「……その話を出すな。今思い出しただけでも腹が立つ……!あの男、僕が目を離している隙にマリアンに余計な事を吹き込んだのだからな……!能天気娘(エステル)といい、親娘そろって僕を振り回すとは、どこまでも面倒な奴等だ!」

(またそんな事を言って……カシウス准将はこの世界では根無し草の坊ちゃんに就職先を用意して頂いた所か、リベール王国を後ろ盾にしてくださった上バルバトスが発見された場合はバルバトス討伐の為に坊ちゃんが自由に行動していいように取り計らってくださったのですから、感謝するべきですよ?)

ヨシュアの話を聞いて忌々しそうに語るリオンにシャルティエは呆れた表情で指摘した。

 

「フン、非常時の際の戦力として僕とお前の力目当てで僕をこの国に根を下ろさせた奴に何故感謝しなければならない。」

「ハハ……(話には聞いていたけど、本当に剣と会話をしているんだな……)……ソフィは確かイオンさん達と一緒に行動するんだったよね?」

シャルティエと会話をしているリオンを冷や汗をかいて苦笑しながら見守っていたヨシュアは気を取り直してソフィに視線を向けた。

「うん。元の世界――――”エフィネア”に帰る方法を探す為にも古代遺物(アーティファクト)に関わっているイオン達と一緒に行動をしたら、もしかしたら元の世界に戻る古代遺物(アーティファクト)や方法が見つかるかもしれないし。何年―――何十年、何百年かかっても元の世界に帰る方法を探すつもりだよ。」

「そうか……ソフィが故郷に戻れるように、僕も女神(エイドス)に祈っているよ。」

「ありがとう、ヨシュア。」

「フン、僕の経験からすれば神や神に関係する奴等に頼るのは大間違いだと思うがな。」

(幾らなんでもエルレイン達とこの世界の宗教と比べるのは色々な意味で間違っていると思うのですが……)

鼻を鳴らしてソフィに指摘するリオンにシャルティエは苦笑しながら指摘した。

「あ、ここにいたのね、リオン。」

その時様々な料理が乗った皿を乗せたグルメカートと共にマリアンが近づいてきた。

 

「もう……やっぱり思った通り、メインの料理を少し食べて、後はデザートばかり食べているじゃない。ちゃんと栄養を考えて食べないと、大きくなれないわよ?」

リオンの前にある料理がプリンを始めとしたデザートばかりである事を確認したマリアンは溜息を吐いた後リオンに指摘した。

「子供扱いはよしてくれといつも言っているだろう。それよりもボース市長の世話をしなくていいのか?」

「メイベル様にはリラさんがついていらっしゃるし、メイベル様からもせっかくの祝賀会なのだから、将来の伴侶の貴方と過ごすべきだって言われたから大丈夫よ。」

「チッ、あの女市長、余計な気遣いを……」

(アハハ……相変わらず素直じゃありませんねぇ。)

マリアンの話を聞いて相変わらず素直に感謝しないリオンをシャルティエは苦笑しながら見守っていた。

「―――と言う訳で私が貴方の栄養を考えて他のお料理も貰って来たわ。デザートは一旦中断して、こっちの料理を先に食べて。」

「………マリアン。野菜の料理が多いのは僕の気のせいか?しかもニンジンがある料理ばかりの気がするのだが。」

マリアンがグルメカートで持ってきた料理を見て、肉や魚より野菜の料理の比率が僅かに高い事に加えて自分にとって最も嫌いな食べ物であるニンジンが使われた料理ばかりである事に気づいたリオンは大量の冷や汗をかいて表情を僅かに引き攣らせてマリアンに訊ねた。

 

「フフ、貴方の気のせいよ。はい、口をあけて。嫌いな物は私が食べさせてあげるわ。」

「マ、マリアン!そういう事はせめて二人っきりの時にしてくれ……!人が見ている前でそんな恥ずかしい事ができるか!」

自分に料理を食べさせようとするマリアンの行動に焦ったリオンはマリアンに指摘したが

「あら、私は全然恥ずかしくないわよ?ここにいる私達のお知り合いの方々は私と貴方が将来結婚する関係であることをご存知だし、それに貴方がまだ子供だった頃はこうやって食べさせていたじゃない。」

「それと私の事は別に気にする必要はないよ。結婚したアスベルとシェリアも今のリオンとマリアンみたいなことを頻繁にしているのを見ていたから、私は慣れているし。それよりも私はこの祝賀会に出されているカニタマを残さず食べる事が大切だもの。モグモグ………」

「グッ………!」

(アハハ、無駄な抵抗をせずに観念するべきですよ、坊ちゃん。)

マリアンは聞く耳を持たず、ソフィはリオンとマリアンの様子を気にせずカニタマを食べ続けていた。

「ハハ……(お邪魔のようだし、今のうちに失礼するか……)」

一方その様子を見守っていたヨシュアは静かにリオン達から離れた後、バダックと話をしているルークを見つけ、ルークとバダックという珍しい組み合わせが気になり、二人に近づいた。

 

「ってな事で結局ナタリアの料理だけは上達しなかったぜ。ガイのお陰で今まで料理をしたことがなかった俺ですらみんなが食えるレベルにはなったのに、ナタリアの料理はティアが匙を投げて諦める程マシにすらならなかったぜ。」

「ぬう………シルヴィアは料理上手な妻であったのだがな………」

「ルーク兄さん、バダックさん。」

ルークの話にバダックが頭を抱えて唸り声を上げているとヨシュアが声をかけてきた。

「お、ヨシュア。」

「久しぶりだな、ヨシュア。」

「……お久しぶりです。本当なら結社がリベールから撤退した後バダックさんのような優秀な遊撃士はすぐにカルバードに戻るべきでしたのに、復興作業にも力を貸していただきありがとうございました。」

「フッ、気にするな。俺は遊撃士としての義務を果たしただけだ。………それにしても改めて思ったがお前の家族とはとても思えないくらい、ヨシュアは礼儀正しいな?お前も少しは見習ってはどうだ?」

「ぐっ………俺だって時と場合によっては、最低限の礼儀は弁えるように気を付けているっつーの!」

ヨシュアに感謝の言葉を述べられたバダックに視線を向けられたルークは唸り声を上げた後答えた。

 

「……それにしても珍しい組み合わせですね。前から疑問に思っていましたがお二人は古い知り合いなのですか?」

「あ~……まあ、古い知り合いである事は間違っていないんだが………」

「……昔、ルークと俺は色々とあってな。時には剣を交えて争う事もあったな。」

「お、おい!」

ヨシュアの質問を誤魔化して答えたルークだったがバダックの答えを聞くと焦った表情をした。

「え………お二人がですか?」

「うむ。まあお互いに和解して、今はこのように落ち着いた関係になっているがな。」

「(二人の間に一体何があったのか少し気になるな……)……そう言えば先程ルーク兄さんの口から出た人物―――ナタリアさんでしたか?その人の事について話が盛り上がっていましたけど……」

「げっ!き、聞いていたのかよ……」

ヨシュアの指摘を聞いたルークは表情を引き攣らせた。

 

「……ナタリアとは俺の娘だ。」

「え……バダックさん、結婚されていたんですか!?」

バダックの口から出た驚愕の事実に驚いたヨシュアは驚きの表情でバダックを見つめた。

「うむ……様々な複雑な事情によって俺は妻と娘を失ってしまったのだが………どうやら娘は奇蹟的に生きていたようでな。それでルークはナタリアと親しい関係であってな。お互い忙しい身でゆっくり話すような機会は今までなかったが、こうしてゆっくり生き別れた娘の事を教えてもらえる機会ができたから、娘の事を色々と教えてもらっていたのだ。」

「そんな事情があったんですか………その、バダックさん。生き別れた娘さんに会いに行こうとは思わなかったのですか?」

バダックの説明を聞いたヨシュアは複雑そうな表情でバダックに訊ねた。

「……ナタリア―――いや、メリルは育ての両親に愛情を注がれて立派に成長し、既に結婚もしているとの事だ。今更本当の父親が姿を現せばメリルやメリルの周りの者達を混乱させて、下手をすればメリルが築いた幸せな家庭を崩壊させてしまうかもしれん。娘が生きて幸せになっている……それがわかっただけでも、俺は十分満足している。」

「バダックさん………」

「……………」

バダックの答えを聞いたヨシュアは辛そうな表情をし、ルークは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「……ヨシュア、”家族”は大切にするのだぞ。”家族”を顧みないものは決して幸せになれん。」

「……ご忠告ありがとうございます、バダックさん。その言葉、ずっと覚えておきます。」

その後二人から離れたヨシュアはイオンとアリエッタを見つけ、二人に近づいた。

 

「イオンさん、アリエッタさん。お二人もまだリベールにいらしていたんですね。」

「ええ。まだやり残していた事がありましたので。まあ、今日の昼にようやく終わりましたから、明日にはアルテリアに戻る事になるのですけどね。」

「そしてその後は、すぐに次の任務、です。総長、人使いが荒い、ですから。」

「まあまあ……」

自分の後にジト目になって答えたアリエッタをイオンは苦笑しながら諫めていた。

「………イオンさん、姉さんの事、本当にありがとうございました。僕達と何の関係もないのに、姉さんの為に古代遺物(アーティファクト)まで使って蘇生してくれた事、今でも感謝しています。」

「フフ、気にしないでください。僕は聖職者……いえ、人として当然の事をしただけですし、貴方達と縁がある彼女を味方にする事ができれば貴方と”剣帝”を”結社”から抜けさせて、あわよくばこちらの味方にする事もできるという打算もありましたから、僕に感謝する必要はありませんよ。僕はある意味、彼女を利用していたんですからむしろ貴方に謝罪すべきです。」

「イオン様………」

申し訳なさそうな表情でヨシュアを見つめるイオンをアリエッタは心配そうな表情で見つめた。

「……それでも僕は貴方に感謝しています。貴方が姉さんをこの世に呼び戻してくれたのは事実なのですから。もし僕の協力が必要な事態があったら、いつでも言ってください。いつでも力になります。」

「……心強い言葉、ありがとうございます。もしその時が来ればお願いします。」

そしてイオンとアリエッタから離れたヨシュアはアーシアとフレンに話しかけた。

 

 


 
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