No.841869

ストライクウィッチーズ~未来から現れし戦乙女~ 第3話

知っている方はお久しぶりです
知らない方ははじめまして
かなり久しぶりの投稿ですので、1話から改めてご覧頂くことをおすすめします。

2016-04-11 10:14:12 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1617   閲覧ユーザー数:1575

 

突如現れた所属不明の艦隊を守るべく、初めての戦闘に身を投じた朱里達。

何とか敵ネウロイを撃破することに成功した彼女達だが、眼下に居並ぶ艨艟たちの姿。そして現れた二人の元ウィッチ達。

朱里達自衛隊員たちの先にあるものは…

 

 

????年??月

 

敵出現の報を受けて緊張に包まれていた【ずいほう】のCDCであったが、「目標撃墜」の報告が入ったことで、漸く安堵の空気が流れたところであった。

「なんとか、無事に敵を撃墜できようだな。」

CDCの中央部に位置する、海図台の前に備え付けられている司令官席。今そこにその身を降ろしているのは、第1機動護衛隊司令であり、アフリカ派遣艦隊の総司令官を兼任する滝川大介(タキガワダイスケ)海将補である。軍事的に見れば少将に位置する。

「はい。藤田3佐と奄宮2尉は今回が初戦果ですから。なにとぞ司令の方から、激励の言葉でも頂戴いただければと。」

CDCに備え付けられた司令席に座り、状況を見守っていた滝川将補の横では、艦の航空運用を一手に取り仕切るAir Boss―――飛行長が誇らしげにしている。

「はっはっはっ。それくらいなら構わんよ。それよりも、通信障害の方はどうなっている。」

自慢げな飛行長を軽くあしらうと、滝川の顔はすぐさま険しい表情に戻る。

「現在、横須賀並びに国連軍の司令部へと通信を試みておりますが、現在までに復旧の兆しはありません。衛生を介したデータリンクも同様です。」

「本当にシステム自体に異常は見られないのか?」

「はい…。機械的欠陥や電気的な故障、どれもくまなく検査しましたが、異常につながるようなものは確認されません。これはもはや、軌道上の人口衛星そのものに異常があるとしか考えられません。」

「宇宙工学は専門外だから何も言えないが、しかしどうした物か…」

各種の通信手段が封じられて早半日が経過するも、一向に回復の兆しは見られない。

最初は新手のネウロイによるECM―――電子戦攻撃を受けたのかと考えられたが、肝心の妨害電波を受信するESM―――電波探知装置は一向に反応を示さないのだ。

もっとも電子攻撃を受けているのなら、今頃近くを併走する護衛艦はともかく、作戦行動中のE-2Cやウィッチ達とは連絡が取れないでいただろうが、その様子はない。

技術立国である日本の最先端技術の粋を集めたのが護衛艦であり、日本製の優秀な衛星やデジタル通信装置を搭載しているにも関わらず、大海原の迷子になってしまうとは、ここにいるだれもが予想だにもしていなかった。

そこへ…

「司令。国籍不明艦隊と接触した藤田3佐からの連絡です!」

「ほんとか!何か分かったか?」

「はい。艦隊は大型空母1と小型空母2隻を中核とするストライクグループで、所属は、それが…」

「どうした?はっきり言いたまえ。」

「はい。まず艦隊の所属ですが、国名は『フソウコウコク』であるとの事。そして、日本を…我が国を知らないとのことです…」

 

 

―――――――――――――――――

 

時間は少し遡る…

「藤田3佐!」

初めての戦闘に、初めての撃墜。ネウロイの最後の姿である白い光の破片を、どこか他人事のように眺めていると、僚機である美園が心配そうに飛び寄ってきた。

「大丈夫ですか?どこか怪我でも…」

「私は大丈夫。美園の方こそ、大丈夫なの?」

「はい!何ともありません。はい…」

そう言うと、美園の視線もまた白く輝く破片へと向いてしまう。よく見ると、ガンを握っていない美園の左腕が、小刻みに震えている。その姿を見て、漸く自身の体も又、恐怖に打たれていた事に気が付いた。

戦っている最中は、殆ど訓練の時のように機械的に動いていた体であったが、心が現実に追いついてくると、さっきまでの体が自分の物ではなかったかのように血の気が引いて行く。アドレナリンによって押さえつけられていた恐怖感が、冷静さを取り戻したことで噴き出してきたのだ。

しかしそれと同時に、初めて敵を撃墜できたという勝利の高揚感も感じられた。

2つの異なった感情が二人の心の中を駆け巡っていたその時…

一際巨大な爆発音が響き、眼下の駆逐艦から炎と黒煙が立ち昇る。どうやら艦内の弾薬庫が誘爆したようで、炎は瞬く間に艦全体を覆い尽くし、命からがら水兵たちが海へと飛び込んでいく。

「美園、燃料は!?」

「はい!まだいけます!」

「シアラー03よりホークアイ02!3(スリー)と7(セブン)は、これより溺者の救助に当たる!」

ホークアイからの返信を待たずに、すぐさま海面すれすれまで降下すると、波間に浮かぶ水兵を一人抱きかかえる。しかし右手は機関銃で塞がれているため、左手一本で大の大人…それも自分より二回り以上大きい男性を支え続けなければならない。

何度も手が滑りそうになるのを必死に抑えながら、近くにいた軽空母へと運び込む。

「この人をお願い!まだ息があるけど、急がないと手遅れになる!」

「あなたはいったい…」

「自己紹介は後!それよりもこれ、しばらく預かってください。」

そう言うや否や、右腕に取り付けられた機関銃のロックを外し、甲板上へ無造作にそれを放ると、また海上へと向かう。

沈みかけた巡洋艦や、船体がへし折れた駆逐艦の周りには、多数の救命ボートや内火艇が浮かんでいるが、そのどれもが人で埋め尽くされており、中には応急修理用に積んでいたであろう角材に掴まっている者もいる。

朱里達はボートに乗りきらなかったものを中心に次々と海面から救い上げると、近くの軽空母へとピストン輸送していく。

どれだけそれを続けただろうか。救助した水兵を甲板へ降ろし終え、朱里は周囲へ視線を向けてみた。

そこはまさに地獄絵図だ…

全身ずぶ濡れか血だらけの水兵たちが甲板上に無数に横たわる風景に、朱里の胃は見えない手に握りつぶされたかのように、その中身をのど奥まで押し上げてきた。

激しい嘔吐感を何とかこらえ、他に救助を要する人はいないか見渡すも、どうやらもうその必要はないようだ。

先ほどから艦隊周辺に集まり出した幾つもの機影。それは護衛艦隊から発進した多数のSH-60K哨戒ヘリの姿だ。遅れながら来た彼らも、朱里達と共に救助活動へ参加していたのだ。

と、そこへ、艦隊の中央に位置する母艦から1機の機体が発艦しこちらへと近づいてくる。深緑の機体はカラーリングこそ先ほどまで周辺を飛んでいたゼロ戦と同じだが、よく見るとゼロ戦の単座ではなく一回り大きい複座機で、中には二人の少女が乗っている。

『シアラー03、ホークアイ02。至急応答せよ!』

「こちら、シアラー03。」

『シアラー03、こちらホークアイ02。そちらの艦隊上空にアンノウンが出現したが、ネウロイか?!』

「ホークアイ02、シアラー03。目標はネウロイではなく、艦隊の母艦より発艦した艦載機である。」

『ホークアイ02ラジャー。なお、司令部より、艦隊の所属国家を報告せよと連絡が入った。識別は可能か?』

「国籍は、それは…」

ホークアイの管制官からの質問に、朱里は言葉を詰まらせてしまう。

甲板から再び空中へと飛び上がり、遠巻きではあるが相手の飛行機を見つめる。

よくよく見ると今目の前をとんでいるのは、航空学生時代に教官が見せた資料映像に映っていた、第二次大戦期の日本海軍機によく似ているが、それ以上の事は解らない。とりあえず骨董品と言えるレベルの航空機であることはこの際どうでもよく、今必要な情報は目の前をとぶ機体と眼下の艦隊の所属国家の事だ。

戦闘機らしき機体の翼や、艦隊を構成する艨艟たちが掲げる旗には、黒い円に赤い三日月模様が重なった国章らしき物が描かれている。しかし朱里の記憶には、そのような国章を持つ国家は存在しない。

「ねぇ、美園。あの国旗の国って、知ってる?」

「すみません…。私にはさっぱりです…」

「そうよね…」と頭を抱える朱里。もしかしたらただ自分が知らないだけかと隣の美園にも尋ねてみたものの、帰って来た反応はこちらと同じだ。

すると、それまでこちらを遠巻きに見ていた例の艦載機が、朱里達の元へと近づいてきた。

『飛行中のウィッチへ。こちらは扶桑皇国海軍遣欧艦隊である。援護に感謝する。そちらの所属を教えてもらいたい!』

「こちらはPKF(国連平和維持軍)、日本皇国海上自衛隊(ジャパンネイビー)所属、3等海佐藤田朱里であります。今一度問いたい。そちらの所属は、フソウコウコクであるか?」

扶桑皇国…

目の前をとぶ機体を操る歳の近い少女が言った国名。会話自体は英語であるが、国名だけは日本語として聞き取ることができた。漢字にすると、おそらくこうなるだろう。

「コウコクって、日本以外にはないはずなのに…」そう呟いたとき、思いもよらない言葉が帰って来た。

『なんだ?!扶桑語が話せるのか。』

「フソウ語?いえ!こちらは日本語ですが…。それに、フソウコウコクとはいったい…」

『日本語だと。そちらこそ何を言っているんだ?見たところ同じ東洋人のようだが、もしかして大陸か南方当たりの出身か?』

「大陸とはどう言う事ですか?日本はれっきとした島国ですが、南方と言われるほど南の国でもありません。」

『それはすまない…。しかし、聞けば聞くほど、まるで私の生まれ故郷の話をしているようだな。』

フソウ語…、大陸…、南方…。次々と飛び込んでくる言葉の数々に加え、話す内容がどこかかみ合わない。

人生初の戦闘から国籍不明の艦隊との遭遇。そして目の前に現れた謎の少女と、もはや一航空ウィッチが考える範囲を超えている。するとそこへ、思わぬ助けが舞い込んできた。

『Be―…Be―…Be―…』

(フューエルコーション!)

突然の警報音に慌ててHMDに燃料計を表示させると、その残量は帰投までぎりぎりの数値を示している。

ストライカーユニットの源である魔導エンジンは、その駆動にウィッチから供給される魔法力だけでなく、航空用燃料も合わせて併用している。こうすることで飛行に必要な魔法力の消費を抑え、戦闘や防御にそのリソースを割くことができるのだ。

もっとも、今回はドロップタンクを装備しないクリーン形態での出撃であったため、行動半径は1000㎞ほどでしかなく、加えて先ほどの救助活動で大量に消費しているから、こうなるとあまりうかうかしてられない。

『シアラー03、ホークアイ02。ホームより残燃料の確認が来ている。戦闘が終了しているのならば、帰投せよ。』

「シアラー03、ラジャー。RTB。」

『帰るのか。ならば最後に一つ!私の名は扶桑海軍少佐、坂本美緒。もう一度、そちらの名前を聞かせてほしい。』

「日本皇国海上自衛隊3等海佐、藤田朱里です。坂本少佐、それでは。」

 

 

―――――――――――――――――

 

夜の帳が降りた頃、艦隊はその針路を扶桑からブリタニアへと向けていた。

扶桑海軍遣欧艦隊旗艦【天城】を始め、各艦の医務室は今なお昼間の戦闘で発生した負傷兵の処置にあたっており、乗艦していた軍医や衛生兵たちは、文字通り不眠不休で働いている。

それでもやはりと言うべきか、少なくない兵が命を落としており、明日の水葬までの間、彼らは臨時の安置所となった艦内の浴場にその身を置いている。

明かりも付けず、ただ通路から漏れる光の下、坂本少佐はかつての戦友だった亡骸に目を落していた。

「坂本少佐。ここにおられたのですか…」

「土方か。いや…、なんとなく、な。」

現れたのは彼女の従兵であり、本土での教官時代には連絡係を務めていた土方圭介であった。

ロマーニャに駐留していた時は、扶桑間の連絡や補給業務を担当していたが、501航空団の解散に伴い共にお役御免となった身だ。

「少佐。差し出がましいようですが、少佐が責任を感じるようなことではありません。」

「解っている。もう10年近く軍にいるのだ、今更乙女のように泣く女に見えるか?」

「私の胸でしたら、いつでもお貸しできますよ。」

「ばっ//////!馬鹿を言うなら休み休み言え//////!それより、宮藤はまだ医務室か?」

土方の突拍子もない言葉に赤面しつつ、宮藤の居場所を尋ねるとやはりと言うべきか、彼女はいまだ医務室で負傷者の手当てに当たっていると言う。

「今更休めと言ったところで聞く奴じゃないからな、好きにさせておこう。それよりも、例のニホンについてだが…」

「それにつきましては司令部が本土に確認するも、そのような国は認められておらず、以前正体は不明のままです。」

(見たことない灰色の角張ったユニットに、ウィッチ用とは思えない巨大なガトリング砲…。見た目は正規軍らしいが、所属国家は不明。)

「どこかの傭兵とでも名乗ってもらった方がしっくり来るな」と、内心考えた坂本であったが、この出会いが、のちにこの世界の歴史を大きく変えることになるとは、この時はまだ予想だにしていなかった。

 

 

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