No.840512

閃次元ゲイムネプテューヌFight 16の戦争

ヒノさん

この話には多大なアンチヘイトが含まれております。
そのことをご理解の上で読んでください。

2016-04-03 07:35:00 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:502   閲覧ユーザー数:493

「・・・・ごめん」

少年はユウザに謝った。ユウザは「なんで?」と首を傾げた。

「君がこれからやる事に、いや、これまでも大変だったのに・・・・・僕はいつも力になれない」

少年はそう答えて、自分の無力さを噛み締めるように歯を食いしばり、身を震える。

少年には戦う力はあったが、命の危機に瀕したときに、怯えて体が固まってしまっていた。

少年にとってはそれが重責になっており、少年はそんな自分に腹を立てるも、何も変えられないでいた。

生きるか死ぬかとなれば、普通の人でも怯えるだろう、怖がるだろう、けれど少年のそれは尋常なものではない。

かつて少年は災害によって、大切なものを全て失った。

家族、居場所、友人、恩師、片思いの相手等・・・・幼いころに、それらを目の前で失った少年は、心に深い傷を負ってしまった。

刻み込まれた無力さと恐怖はある時を境によみがえり、それから数年間それに苦しんでいた。

「僕は君に助けられたよ?」

ユウザは少年にそう言った。

「けどそれは偶然・・・・」と言いかけた時、ユウザは「偶然じゃない」と言い切った。

「『もうこれ以上失いたくない』って想い・・・・心の声が君を動かしたんだよ。その気持ちを覚えていれば・・・・大丈夫だよ」

そういって震えていた手を握られた少年は、もう何も言えなくなっていた・・・・事実、ある出来事以来、少年レスは怯えなくなっていた。

<約1年前>

ユウザがラステイションの教祖にして契約者の神宮寺ケイを倒してからしばらく経った後、四大国を偵察していたスパイからの報告が届いた。

【四大国の連合軍がこちらに戦争をしかけようとしている・・・その時には女神が総出で来る模様】という最悪の報告(バッドニュース)だった。

居場所も行き方も特定されているようで、逃げ場もなければやり過ごす手も無い。どうやらインターセンターに流れ付いて雇用されたニセ女神系アイドルユニット【パチ☆メガ】が情報を売ったとの事。

スパイの中にファンがいたのか「汚いやはりパチ☆メガ汚い、だがそれが良い」と追伸に書かれていた・・・・真面目な報告にそんな追伸を書いた彼の将来は危うい。

そんなわけで、インターセンターは戦争の準備の真っ最中、共存しているモンスターら各種族の長だけでなく、主力である危険種モンスター討伐Sランク群も作戦会議に加わった・・・・ユウザもその一人である。

避難場所もない、加護付きの軍勢や契約者ならともかく肝心の女神をどうするかでもめている中、技術局のおやっさんが乱入してきて「儂にいい考えがある」というフラグ発言で周囲を凍らせた

おやっさんによると、国に雇われてた時、退屈凌ぎに作ったあるものを使うとの事「別に倒してしまってかまわんのじゃろ?」とフラグ発言を更に言い出し、そこから更なるフラグ発言をしようとして弟子たちが担いで退場した。

フラグ発言はともかく腕は確かなので、取りあえず信じてみることにした・・・・というのも皆がみんなもう予想がついているらしい。

それは普通ではあり得ない事だが「あの人ならやりかねん」と、その場にいる全員が思っていた・・・・故に【本拠点防衛及び中央街奪還作戦】は決行された。

<そして・・・・・>

バーチャフォレストの深部に位置する、陸路にて拠点にたどり着く唯一の一本道にて罠を張り巡らせ、インターセンターの軍は待ち構えていた。

拠点には決められた道以外で行くと必ず目的地から逸れる幻覚装置が設置されており、それによってこれまで国には気づかれずにいた・・・・・ただし相手は陸からだけではない、空からも来る。

女神は空を飛ぶことが出来る為、ホログラムでわかり辛くなってるものの、ちょっと目を凝らせば簡単にたどり着ける脆いものだった。

「じゃからこそ儂はこいつを目覚めさせる・・・・儂の夢!儂の浪漫の原点にして頂点!をスイイイイイイイイイイイッチオオオオオオオオオオオンッッッ!」

おやっさんは高らかに叫びながら、ラジコンのコントローラーの電源スイッチを押した。すると地響きとともに何かが拠点から上空に飛び上がった・・・・・・ホログラムの意味はここで死んだ。

一方そのころ四大国では、地響きとともにビルが、城が、屋敷が、ドームが、工場が、屋台が、ロケットの如く上空に飛び立っていった。

更に上空に浮かんでいた人工衛星が落ちてきて、飛び上がった建物とぶつかる軌道をとり、ぶつかる寸前に衛星と建物が変形し、合体して、一つの巨大ロボとなってゲイムギョウ界の中央に降り立った。

その光景を見たゲイムギョウ界中の生物達が驚きを隠せないでいた。

「これが儂の作った最高傑作!つまらん雇い主の要望を聞く片手間に作った銀河級(ギャラクシー)巨人ロボ(ジャイアント)・・・・・ギャラクシアントじゃあああああああああああああああああ!!!」

『・・・・・・(ひ・・・・・捻りがねええええええええええええええええええええええええええ)』

おやっさんの隣で傍観していた弟子たちはあまりの大きさに驚いたものの、その残念なネーミングセンスで一気に冷めた。

大砲、ミサイル、バズーカ、機関砲、それらの兵器で固められた無駄に四角い巨大ロボがそびえたつ光景は圧巻の一言だった・・・・・勿論付属している兵器はちゃんと機能しており自爆機能も搭載済み。

・・・・・その為一度暴れだせば敵味方共に甚大な被害を被る・・・・どころでは済まない、寧ろゲイムギョウ界を滅ぼしかねない。

一人の人間の娯楽と退屈の境地によって生み出された破壊兵器(ソレ)は、浪漫(リソウ)夢想(ユメ)の果てが終わりである事を体現しているかのようにただそこに在った。

・・・・・因みに操作すればちゃんと動く仕組みになってはいるが、距離が離れすぎて操作は出来ない、自爆も出来ない・・・・・ラジコン式では足元までが電波の限界だったが、その足元は海底に付いていた。

だとしても、この大量破壊兵器をどうにかするには、【人の手には有り余っていた】おやっさんも合体が出来て満足しているし、張りぼてだろうとでくの坊だろうと【それだけで十分だった】。

なぜならば、【人類の夢想(ユメ)にして天敵(シハイシャ)の相手たりえる事こそが重要なのだから】

「正気なの!?あんなものが暴れ出したらひとたまりもないじゃない!」

「向こうは追い込まれたネズミ、何を出ようとも不思議じゃないわ」

「そうですわね・・・・わたくし達は、彼らの長に封印されましたし」

「けどあれさえ破壊すれば・・・・奴らも諦める筈!」

「あんなでっかいだけの、すぐにバラバラにしちゃうもんね!」

「・・・・(こくこく)」

「もう後には退けない・・・・・私たちには、護るべき大切なものがあるのだから!」

「よぉーっし!あれをとっちめて、こんなつまらない争い、さっさと終わらせちゃうよー!」

まばゆい光を発して女神たちは飛び立つ、それが動くこともできない只の囮であることも知らずに・・・・・

<そして陸では・・・・>

女神が巨大ロボ(見せかけ)を相手にしている間、それぞれがそれぞれの思いを胸に殺しあっていた。

それは(ファンタジー)溢れるようなものではなく、銃の撃ち合い、魔法の撃ち合い、剣の打ち合い、槍の打ち合い、斧の打ち合い騙し合い化かし合い謀り合い・・・・・まさに血みどろ、綺麗なんてものは欠片もなかった。

仇は仇を呼び、友は友を奪い、そして双方は憎み、怒り、悲しみ、妬み、恨んだ。

傷ついた兵士達を医療班が治療し、時に看取り、時に励まし、時に敵を憎み、そして時にこの状況を見て「早く終わってほしい」嘆いた。

そしてその戦場の中で、風のように駆け抜ける二人が火花を散らしていた。

一方は包帯で刀身を巻いた剣を携えて投剣を放ち、もう一方はカタールで投剣を弾きながら拳銃で牽制した。

二人はその道中、幾多の敵を殺しながら戦い合った。全ては自陣の勝利のために、其れを以ってしての終戦の為に。

「貴方はわかってるの?自分のしている事で、世界を滅ぼしているってことに!」

「アンタこそわかってるのか?これはアンタらが始めたことだって!」

両者平行線、分かり合える筈もない。価値観が違う、育ちが違う、そして何より護りたいものが違う。

飛び道具を失った両者はぶつかり合う、それはもう互いの意見をぶつけ合うように。

一度でも遅れを取れば死ぬという極限状態の中、思考の一点化によって一方の動きがかわり、もう一方が押され始めた。

このまま行けば決着が付く所で、有利になった方が目にしたのは・・・・・拠点にいるはずの友人だった。意識を集中させすぎて、拠点に誘われた事に気が付かなかった。

「・・・・レス!?」

「隙ありっ!」

「がっ!?」

正気に戻った隙を突かれ、ユウザは敵側諜報員のアイエフに蹴飛ばされた。

ユウザは民家の壁にぶつかり、立ち上がろうとしたとき銃を向けられて身動きが取れなくなった。

「・・・・・これで私の、私たちの勝ちよ。まんまと侵入を許してしまうなんて、とんだおバカさんね」

「・・・・・っ」

銃を撃たれても避けられるが、避けてしまったら民家の住民が巻き込まれるかもしれなかった。

近くにいるのは、「今動いたら殺される」という恐怖で身動きが取れなくなっていたレスだけだった。

アイエフは勝利を確信して侵入成功の報告を入れようとした。ユウザは頭の中でこの状況をどう切り抜けるかを練っていた。

その時レスはその先の事を考えていた。

「このままだとユウザは刺し違えてでも敵を殺そうとするだろう、そうすればまだ勝機があり、少なくとも拠点の人たちが再教育や実験台にされずに済むだろう」と。

そう思っていつの間にか握っていたのは、護身用の拳銃だった。

例え契約者といえど、護身用の銃といえど、頭を撃てば即死の筈だが、肝心のレスには充てる自信どころか撃つ勇気がなかった。

かつて兄貴分が殺された事を引き金に思い出した過去のトラウマで、何もできなかった無力感と目の当たりにした死の恐怖が脳裏を駆け巡っていたからだ。

そんな中、ユウザがレスの方に目をやると、ユウザはにっこりと微笑んだ・・・・・・やる気だ、報告する前に、味方の戦意を削がれる前に。

アイエフが携帯端末の画面に目をやった瞬間、ユウザはアイエフに向かって走り出した。

それに気づくやアイエフがユウザの眉間に銃口を向け、そして拠点内で銃声が響いた。

「・・・・・・・え」

倒れたのはユウザではなく、アイエフだった。撃ったのは・・・・・・レスだった。

倒れたアイエフはぴくりと動かず、側頭部に出来た穴から血が流れ出た。

その直後に腰が抜け、息を荒くしたレスに、ユウザは「ありがとう」と言った。レスは泣き出した「やっと護れた」「失わずに済んだ」と言って泣き出した。

その時、ユウザに通信が入る・・・・どうやら中央街を占拠して取り戻し、四大国の住民を人質に取ることで、一時休戦ということになったそうだ。

インターセンターは勝利した、女神に勝った、二人は喜んだ・・・・・その束の間、緊急で通信が入る。

謎の鎧骨男がたった一人で味方を殺しまわっており、現在龍人族の長にしてワーカーの補佐をしていた源が交戦中との事。

ユウザはそれを聞くや否や、源のいる所に飛んで行った・・・・・それからしばらくの間、ユウザは謎の骸骨男にさらわれて行方不明となる。

<そして現在・・・・>

「それにレス、言ってたろ?国主として皆の営みを守りたいって」

「うん・・・でも今は・・・・・」

「それに比べたら俺は楽な方さ、大変なのはこれからだよ?個性豊かな皆をまとめ上げたり率いたりするのってさ」

そう・・・・レスには夢があった。インターセンターという国の首領となって治めるという夢が。

【これから】の基盤を作っていきたいという夢は、中学卒業の時から言ってた言葉だった。災厄で全てを失ったレスだからこそ、1どころか0から立て直そうと思ったのかもしれない。

「それじゃあ後はぶんなげたっ」

「・・・・・・受け止めた。」

ユウザとレスは笑いながら拳を合わせ、それぞれの役目を全うすることを誓い合った。


 
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