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Dear My Friends! ルカの受難 第18話 砕けるココロ

enarinさん

☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第15作目の第18話です。
☆今回は1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。

☆当時は2期を意識してなかったのですが、本作は最新シリーズ“Dear My Friends!第2期”の第1期という作品になり、第2期のシナリオやカラクリに、第1期となる“本作”の話も出てきますので、これから長い長いお話になりますが、長編“Dear My Friends!”として、お楽しみくださいませ。

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2016-03-10 16:04:46 投稿 / 全23ページ    総閲覧数:1066   閲覧ユーザー数:1066

<第17話末文より抜粋>

 

テル「これまでの“力の付与”がされた後、つまりこれからソレをふまえて、ミク、君にアドバイスしていこうと思う。いいね?」

ミク「はい!」

<Dear My Friends! ルカの受難 第18話 砕けるココロ>

 

(アフス城内・開発武器試験場・テル側待機スペース)

 

テル「まず最終確認事項から入る。いいね?」

ミク「はい、戦略的に大事だと思います」

テル「では、私がこれから列挙していくから、ミクさんも一応確認の返事をしていってください」

ミク「はい」

 

テル「この戦いは全ての最後になっていて、これ以降の対戦カードはない」

ミク「はい、これがファイナルです」

テル「相手は、ルカさんの遺伝子と、フォーリナーの屈強な兵士の遺伝子から作った、ルカさんそっくりの剣士である」

ミク「はい…、残念ですが、認めざるを獲ません」

テル「このカードには、引き分けは存在しない。必ず勝敗が付く。君とルカコピーの関係から考えて、引き分けはあり得ないとの判断も含まれているだろう」

ミク「は、はい!」

テル「ルカコピーは見た目の武装は剣士、つまり剣術の達人だろう。そして君は銃士」

アペンド「ミクさんは模擬戦では経験を積んでいるそうですよ」

テル「しかし、実戦では素人に近い」

ミク「はい、本物の弾丸を撃つのは、ソニカさんの時から数えれば2回目です」

 

テル「戦闘中は、両名共に、仲間などから物理的な助け船やエネルギー補給ができない。そしてこのカードのみ、決着を付ける意味で、双方共に仲間が白旗等を使って負けを認める行動もできない。言い方は悪いが、『デスマッチ』だ」

ミク「は、はい」

 

テル「最後に大事なことなので、もう一度言っておく。対戦相手である“あのルカコピー”は、ルカさんではない。私が持っている情報から言うと、ルカさんは別の安全な場所でちゃんと待っている。その事は戦う上での心の支えにして欲しい」

ミク「はい!」

 

テル「ふむ、基本事項は、コレくらいだな。では、『戦略』に移るか」

ミク「わかりました」

テル「いずれにしてもこれまでで最も酷な対戦だ。君の場合、体力消耗より“精神消耗”の方が心配だ。相手がルカさんの姿をしているだけでも削がれるのに、剣術や場合により魔法攻撃の事も考えないといけない」

アペンド「ユキ達が作ったから、魔法能力もある、と?」

テル「そう、剣術だけと断言できない。だが、こちらもそれについては、アペンドの4属魔弾銃による打ち消しや、学歩の防御剣術で対応できる。出来るだけ、これらで応戦して欲しい」

ミク「わかりました。使い分けですね」

テル「そうだ。慣れないうちは逃げ回って回避してもいいと思う。こちらは装備は銃だけで、鎧などを追加装着していない分、身軽でちょこまか動けるからな。逆に相手は部分的なアーマーを付けている。少なくても君よりは鈍足だと考えられる」

アペンド「ただ、それは相手も承知の上だろうがな」

テル「ああ、あくまで“そうできる”範疇だ。ソレをふまえた攻撃をしてくるのは明白だろう」

ミク「相手をよく見て判断します」

テル「とにかく、序盤は相手を観察するためと、偽ルカさんの姿に慣れるため、逃げ回るのもいいと思う。ダメだと思ったら“三十六計逃げるに如かず”だ」

ミク「はい、慎重に行きます」

テル「だが、それだけでは勝てない。中盤、慣れてきて、本当の意味で覚悟が出来たら、相手に攻撃を当てなければ行けない。序盤、分析したデータを元に、相手に一発でも当てられるようなシチュエーションで、積極的に攻撃して欲しい。武器ダメージはリンの能力でかなり軽減されるはずだ。かなり抽象的な戦略で申し訳ないが、こちらもルカコピーのデータは、“見た目”、しかないのだ。許して欲しい」

ミク「いえ、戦うのは私ですから」

テル「ありがとう。そして、終盤、双方体力が落ちてきて、相手が接近戦を仕掛けてくる事が多くなったら、レンや学歩などの力が宿っている銃剣の剣で、“ガード”と“盾や鎧への斬撃や突撃による牽制”に徹して欲しい」

ミク「…さすがに剣であの姿の生身に“斬りつける”事は・・・・・・出来ないからですね

テル「ああ、多分、その時点でも、刃物で斬りつける、突き刺す、殴り合う、のは無理だろうからな。切れない盾や鎧へ剣先を向けるのは大丈夫だろう。これらは牽制に等しい故、君の攻撃は銃撃だけと割り切って欲しい」

ミク「はい」

テル「そして、覚悟と勇気が自分で十分に高まったと思ったら、アペンドが加えた必殺弾の“ブレイヴバレット”で勝負を決めて欲しい。おそらくこの弾は、君の精神力と銃の残りエネルギーから、撃てて2~3発程度だろう」

ミク「は、はい!」

テル「あまり“必勝の策”という戦略では無くなってしまったが、私が考える上で、それに限りなく近い策だと思っている。だが、最後に物を言うのは、戦う君自身だ。実戦2回目、実質初戦という厳しい条件だが、君のためにも、ルカさんのためにも、魔法陣のためにも、絶対に勝って欲しい。いいね?」

ミク「わ、わかりました!」

 

アペンド「そろそろ闘技スペースに行く頃だが、私が付き添わなくて良いか?」

ミク「はい、気持ちを落ち着かせるためにも、自分で行きます」

アペンド「わかった」

 ようやく準備と戦略会議が終わったので、テルはユキの方に向かって、終わったことを告げたのだった。すると、ユキもルカコピーに闘技スペースに向かうように指示を出した。

 

ルカコピー「ふぅ、ようやっとですか。長かったなぁ。さーて、ミクと遊びましょうかね」

 

 ガシャン ガシャン

 

 ルカコピーは部分的なアーマーを付けていたので、ミクがテクテク歩いていくのに対して、少しゆっくり目で重そうに近づいていったのでした。

 

ミク(相手はやっぱり鈍足。覚えたよ)

(アフス城内・開発武器試験場・闘技スペース)

 

 ミクとルカコピーは中央で対峙していた。ルカコピーの方が少し身長があったし、アーマー類の関係から、ミクを少し見下ろす感じだった。対してミクは、魔弾銃を持つ手が震えていた。足取りはなんとかしっかりしていたのだが、“攻撃する部分”である手が落ち着いてくれなかったのだ。

 

 そこへユキのアナウンスが入った。

 

ユキ「前置きは既にテルから聞いているだろうから、もういいな。これで最後だ」

 

 そしてユキは、おもむろにゴングを鳴らした。

 

 カーン!

 

 様々な前置きが入り込み、様々な思惑が交錯する中、遂にファイナルバトルが始まったのだった。

 ザザッ!

 

 ミクはテルの言ったとおり、そして反射的に、バックステップして、とにかくルカコピーとの距離を取った。銃撃は、近すぎても当たらないものである。勿論、牽制攻撃も効果がない。

 

 そしてミク自身、逃げ続ける作戦を採るか、迷った結果、今の自分の精神状態なら、4属弾一発くらい、“牽制”程度なら撃てると判断し、とにかく撃ってみる事に決めたのだった。明後日の方向ではエネルギーの無駄になるが、要はギリギリで当たらなければいいのである。まだ自分には当てるだけの覚悟はない。

 

 なので、威力だけはありそうな“火炎弾”にセットして、銃口をルカコピーに向けたのだった。まだ魔弾銃はカチャカチャ音を立てて震えていたが、銃口の向きは、極端に明後日の方向には向いておらず、ルカコピーの足下の“向かって”右横30cmはずれたところでウロウロしていた。

 

テル「牽制攻撃を選んだか・・・・・なら“もっと大きくはずれる位置”を狙ってくれよ・・・・そうでないと・・・・」

ミク「はぁ・・・・はぁ・・・・あ、あとは、トリガーを引くだけ・・・・・」

 

 ミクは両手で魔弾銃を構えて、とにかくカチャカチャ振動を抑えた。“何故か”ルカコピーは動かなかったので、さっき決めた大体の位置で固定し、心を落ち着かせ、目をつむってしまった。

 『見ていなければ、ルカの姿に惑わされない!』

 

 ミクはそう判断して、どうせ牽制だから、狙いは二の次にして、とにかく“撃つこと”を第一に考えた。

 

ミク(いけぇ!)

 

 カチャ

 

 ミクは自分の体重より重く感じたトリガーを、必死の思いで引いたのだった。

 

 ギューーーーーーン!

 

 火炎弾は、銃口から飛び出て、そのままならミクの最初の狙い通り、“ルカコピーの足下、向かって右横30cm付近”に着弾する・・・・・はずだった。

 しかし、軌跡はそうならなかった。ソニカの力“ホーミング”が働いたからだ。火炎弾は動かないルカコピーの左足に着弾するように左に“ねじ曲がり”、そして、それでも動かないルカコピーの左足に、キッチリ着弾して、着弾地点に大きな火炎を作ってしまった!

 

ルカコピー「・・・・・・」

 

 ミクは着弾音で目を開け、そして、“火炎が作られた位置”を視認して、そして、両手で銃を構えたまま、ガタガタ震えて狼狽した。

 

ミク「な、なんで、当たっているの? 目をつむったから位置がずれた? いえ、感覚的に、ずれたならもっと向かって右側に反れているはず。なんで、“左側”にずれているの、ルカコピーは動いていないのに・・・・・・・・!!! まさか!」

 

 ミクは構えた姿勢を崩さず、テルの方を睨み付けた!

 

ミク「テル! まさか、ソニカの力って!」

ソニカ「ご、ごめんなさい!!!!」

テル「ああ、『ホーミング』の力を与えた。素人同然の君が、相手に銃弾を当てるためには、力による補正が必要だ。これ以降、“牽制”するなら、大きく反れた位置に標準を合わせなさい」

ミク「な、なんで黙っていたの!」

テル「酷だ、という理由と、言ったら君は、弾を発射できないと判断したからだ。ホーミング補正がかかって着弾しやすい弾なんて、怖くて撃てない、と。一発で理由がばれてしまうとは思ってなかったがな」

ミク「もう遅い! とても・・・・とても・・・・当たるような所に照準を向けられないよ・・・・」

テル「もう遅いのは君だ。一発着弾しているのだ。当ててしまったんだよ、君は。どのみち引き返せないのだ、私の戦略より遥かに早い段階だが、覚悟を決めるんだ」

ミク「みんな・・・・・みんな大っ嫌いだ!」

 テルの思惑は裏目に出てしまった。ミクは準備段階では、強い言葉で言い張っていた物の、実のところ、心はまだ準備すら出来てなかったのだ。その段階での“着弾”。ミクのココロは崩れかけていた。

 

 更にこのあと、ミクのココロの崩壊に追い打ちをかけるほどの、恐怖の片鱗を味わうことになるのだった。

ミク「あ、あの、ルカコピーさん? 何で避けなかったんですか?」

 

ルカコピー「・・・・・ここでのミクとの思い出、作りたかったからよ」

ミク「!?!?」

ルカコピー「『ミクから火炎弾のプレゼント。熱かった』。ふふ、最初の1ページ、作れちゃった♪」

 

 ミクが流す冷や汗は滝のようだった。腕は銃を構えたまま激しく震えている。

 「自分は、とんでもなく恐ろしい相手と戦っているのでは?」

 

 いらぬ恐怖が精神を蝕んでいく。ルカはこんな人間ではなかったはず、そう、絶対違う、ならばこのルカコピーとはルカ関係なしで戦えるはず・・・・・・でも・・・・・・ルカは・・・・もしかしたら・・・・自室ではこうだったのかも・・・・・

 

 余計な疑念が頭を巡る。ミクがルカを信じるココロは強い、絆も強かったはず。こんな雑念、抱くのは失礼だ。でも、目の前のこいつはルカの遺伝子から作られている・・・・もしかしたら・・・・・

 

 そして、トドメが入る。

ルカコピー「ミク? 思い出すわね、こんな殺伐とした所じゃなかったけど、そういう形のペイント銃で、サバイバルゲーム、やったよね?」

ミク「!」

テル「何!?」

 

 カチャカチャカチャカチャ・・・・・

 

 ミクの魔弾銃の銃口の揺れは、もう止めることが出来ないほど激しくなっていた。目がかすんでくる・・・・

 

ルカコピー「たまに雨が降り出しちゃって、簡単に切り上げて、ハウスでシャワー浴びたよね~♪ 気持ちよかったよね」

 ガクガクガクガク・・・・・・

 

 既に戦いになってなかった。魔弾銃に添えていた左手は離れ、右手はガクンと降ろされた。当然ミクの銃口は、ミクの真下の地面を捉えていた。

 

ルカコピー「あの時は、こんな実戦じゃなかったけど、懐かしいよね♪」

 ガクッ

 

 ミクは膝を地面に落としてしまった。テルの魔法の効力で、銃は手から放れる事はなかったが、ミクの戦意そのものが砕けてしまった。

 

テル「アルとユキィィィ!!!!!! 貴様! ルカコピーに何を仕込んだぁぁぁぁ!!!!!!!」

アル「装備以外何も?」

ユキ「強いて言うなら遺伝子操作で“細かい記憶”を入れて置いた。だが、それだけだぞ?」

テル「違う!!!! “どんな戦術”を仕込んだんだ!!!!」

ユキ「・・・・・この戦いは『心理戦』なのだよ。相手の戦意を落とした方が勝つ。だからルカの姿と記憶を十二分に使える“舌戦”をメイン戦法にしろ、そう言う風に指示して置いただけだ」

テル「お前、それでも人間か!!!!!!」

 

アル「…武器を銃剣にしたり、自動発動の達人技を仕込んだり、自動武器修復付けたり、ホーミング性能を付けたり、新しい弾丸付けたり…」

ユキ「あげくに、武器飛ばしを封じる魔法をかけたり…、反則スレスレの事をやっていたお前らに、単に舌戦をすることだけ指示した我々を、攻める権利があると思っているのか?」

テル「ル・・・・ルカさんのコピーを・・・・・作って戦わせるだけで・・・犯罪級だ!」

ユキ「私もルカコピーも、ちゃんと“偽物だ”と言っていたはずだ。騙してはいないぞ? 敵の姿や話に惑わされたり、心が砕けたりするのは、お前らの心の問題だ」

テル「ぐっ・・・・・・・・・・・」

アル「偽物だという事実をしっかり受け止めているのなら、この程度の事、突破できるのではないか?」

ユキ「それとも何か? “本物が出てこない限り”、目の前の偽物を偽物と自覚できないとでもいうのか?」

???「そう、人間って弱い生き物なのよ。そこを狙った策を立てて置いて、偉そうには言えないんじゃないの?」

 

ユキ、アル「何!?」

 

 今度は、ユキやアルが想像をしてなかった事態が発生したのだった。声の出所は、皇帝が専用で使うことになっている“特別観覧席”に常設しているスピーカーだった。

 

ミク「・・・・・・・・・・・え?」

テル、アペンド「この声は!」

ルカ「待たせたわね。イロハ皇帝とミキさんの協力で、ミクを応援に来た、正真正銘、本物のルカです! ミク! 本物が来たんだから、いい加減、起きなさい!!!!」

ミク「え!?!?!?????」

 

 ミクは正直、頭が混乱していた。ココロが砕けかけている事もあるが、今起こっている事態の整理が、頭で出来てなかったのである。

 

ルカ「さぁ~、これからは、ミクのターンです!!!!!」

 

 この瞬間から、テル、ミク、ルカ側の反撃が始まったのだった。

 

(続く)

 

CAST

 

ルカ姫、巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ

初音ミク(ミク):初音ミク

 

<クリプトン(Cripton)王国サイド>

魔導師アペンド:初音ミクAppend

 

僧侶リン(リン):鏡音リン

勇者レン(レン):鏡音レン

 

<インタネ(Interne)共和国サイド>

異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ

 

<アフス(A-Hu-Su)帝国サイド>

魔導師テル:氷山キヨテル

 

皇帝イロハ:猫村いろは

神官ユキ:歌愛ユキ

クグツロボット(コードネーム)“ミキ”の外観:miki

(ミキの中身=ミリアム:Miliam)

 

ルカコピー:巡音ルカ

 

<フォーリナー(Foriner)軍政国家サイド>

変身兵士 ソニカ:SONiKA

 

皇帝アル:Big-AL

重機動兵器アン:Sweet Ann

剣士レオン:Leon

圧殺兵士ローラ:Lola

導士オリバー:Oliver

拳闘士シユ:SeeU

 

その他:エキストラの皆さん

 

***

 

<残りのバトルアリーナの対戦カード>

 

EX最終戦: ミク    vs  ルカコピー


 
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