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Dear My Friends!ルカの受難 16話 ルカのナミダ

enarinさん

☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第15作目の第16話です。
☆今回は1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。

☆当時は2期を意識してなかったのですが、本作は最新シリーズ“Dear My Friends!第2期”の第1期という作品になり、第2期のシナリオやカラクリに、第1期となる“本作”の話も出てきますので、これから長い長いお話になりますが、長編“Dear My Friends!”として、お楽しみくださいませ。

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2016-01-14 15:06:45 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:1012   閲覧ユーザー数:1012

<第15話末文より>

 

ミキ「ど、どういうことですか!? 私にはさっぱり…」

ルカ「これからお話しします」

<Dear My Friends! ルカの受難 第16話 ルカのナミダ>

 

(アフス城内・魔導研究棟 新規兵士造成室)

 

イロハ「ルカさんの話の前に言っておくが、私が“ルカさんに試合を見て欲しい“と言ったのは、悪意があったからではない。来賓扱いにしていたにも関わらず、こんな生臭い所に兵士付きで幽閉されているのを気の毒に思ったからだ。同時に、来賓扱いに戻して、特別室に戻って貰うと、自分のご友人であるミクさんの試合を、一度も見ずに、結果だけ突き付けられて、あーしろこーしろと言われるのも、ナンだと思ったので、特別観覧席に来て貰って、自分の目で確認してもらおうと思ったからだ」

ミキ「普通の人だったら、それは、“余計なお世話だ、特別室で待たせてもらう”、と断ってしまう事も、ちゃんと考えての事だな?」

イロハ「無論だ。せめてこの部屋からは出そうと思った。しかし、ルカさんの返答は、“ミクさんに言葉を伝えられる設備のある場所で、見ていたい”、だったので、こっちがびっくりしたのだ」

 

ミキ「そこから、ルカさんのお話が始まるわけだ」

ルカ「はい。追加説明、ありがとうございます」

イロハ「うむ」

ルカ「まず、ミキさんが言っているように、“ミクを更なる受難に突き落とすような行動”、だと考える事もできます。ミクにとって目の前に自分の友人の姿をした敵がいて、更に、届かない所で本物が見ている等と言うことは」

ミキ「いや、それが普通なんです。物語なんかでもよくあるでしょ? 主人公は悪い王のたくらみで戦う事を強いられてしまう。更に王は主人公を精神的に追いつめるために、よく見える所に、友人を連れてきて、「ほら、よく見ろ! お前の友人だぞ! ガッハッハッ!」ってなセリフを吐く。そんなシーンが」

イロハ「私はそんな悪い王ではないぞ?」

ルカ「そうですね、“その条件”、なら友人も来たくないというだろうから、“王が無理矢理連れてくる”、という選択1つになりますね」

ミキ「!?!? それがわかっていて、なんで!?」

ルカ「答えは1つ。ミクの相手が『私の姿をしたコピー品』だからです」

ミキ「え!? だって、それは私が話した内容より、更に“友人が来たくなくなる”動機になりませんか!?」

ルカ「あなたは優しいんですね」

ミキ「!?」

ルカ「情に脆く、義理人情が行動理念を支配している、そんな戦士」

ミキ「こんな“非人道的カード”を見せつけられたら、情に脆くなくても、危険を冒してまで行動に移します!」

ルカ「…私はミクやその仲間に冷たいですか?」

ミキ「今の段階の説明では、そう思わざるをえないです。ミクさんが見える所に自分が行く理由が“友人が自分のコピー品と戦うから”なんて…」

ルカ「…“他の屈強な戦士”が相手だったら、私は行かなかったと思います。ミクを信じて、特別室で待ってます。強引に連れてこられたら、諦めますが」

ミキ「それは普通でしょう」

 

ルカ「でも、ミクの相手は、『私ではない、私の姿をしたコピー品であり、偽物』、なんです。そしてユキ達は、それを隠さず、コピー品も自分で正体を明かしてます」

 

ミキ「おそらく、ユキ達は、“ルカさん本人を改造する事はもったいないと判断したんでしょう。それに、コピー品を”本物だぞ“なんて言い張ったって、貴方を良く知るミクさんは、絶対信じないでしょう」

ルカ「私の真意に近づいてきましたね」

ミキ「!?」

ルカ「そう、相手は“姿は同じでもルカではない『ナニカ』”なんです。そしてそれは隠されずに“カミングアウト”されました。私の理由があったとしても、その時点で、ユキ達は“失策”しているんです」

ミキ「な…」

 

ルカ「そして、“本物の私”が、ミクに言葉をかけられミクからも見ることが出来る場所に、皇帝さんによって守られながら現れたら、ミクはどう思います?」

ミキ「そ、そりゃ、『困惑』するでしょう。どっちが本物なのか・・・・・・・あ!」

ルカ「そう、偽物であり敵意を示している事をカミングアウトしている相手と、的確な助言を与える明らかに本物である私を、混同することはないでしょ? 私を見ることが出来なかったら、『その差』、は結局ミクの心中でも曖昧になってしまって、どうやっても相手への一撃をためらうでしょう。「カミングアウトは嘘で、こいつは実は洗脳された本当なのでは?」などのいらぬ雑念が沸いてきて、戦闘にならないはずです」

 

ミキ「それが、『ミクさんへの追い風』、ってわけですね。確かに、私ではとても思いつかない策だと思います。更にユキ達の策を“失策”と斬り捨ててしまう、その思い切り、さすがと言わざるをえないです」

イロハ「私も感心してしまったよ。だから、コピー品を作る事を許してしまった事への罪滅ぼしに、私専用でロックがかけられる、マイク常設の特別観覧室に招くことにしたのだ。滅多に使うことはないのだが、用意して置いて本当に良かった」

 

ミキ「ですが、ルカさん、その“策”には1つ、“大前提”、があるのは知ってますよね?」

ルカ「ええ、“はっきり違いが解っていても、ミクが私の姿をした相手への攻撃をためらわない”事ですよね?」

ミキ「ユキ達の策は、その“大きな利点”を利用した物だ。人間より動物の方が、狩りの時“姿形を見て攻撃を判断する”、という性質がある。勿論、臭いや他の要因で確認する動物もいるが、おおかたは“姿”で決める。“あなたの姿をした相手”に、ミクさんは、致命傷の一撃を与えることが出来ると思いますか? 人間の“情に流される”事を抜きにしても、『本能的』に攻撃の手を止めてしまうのでは?」

 ぽろ・・・・・・ぽろ・・・・・・

 

 それは信じられない光景だった。あの冷静沈着で淡々と喋っていたルカの頬を、『涙』、がこぼれたのだった。そして、下唇をギュッと噛んだ後、少し、“人間らしい口調”、で、鼻声気味で“喋り”だしたのだった。

 

ルカ「・・・・私だって・・・・人間なのよ・・・・」

ミキ「ルカさん・・・・・」

 

ルカ「必勝の策のために、大親友に“冷徹になれ”、“感情に流されるな、”私の姿に騙されるな“、なんて『一方的なこと』を期待するなんて、受難続きのミクに上から目線で、『本心』から言っていると思う?」

 

 ルカの話し方が明らかに変わった。『淡々と策を伝える話し方』から『感情を持った人間』の話し方になったのだ。

ルカ「これまでの私の話から、私が“受難を受けている“事を自覚してないって思った? あんなの”本当の本心“であるはずないでしょ!? ”策の真意”かも知れないけど、私の心からの声じゃないのよ。策のために精一杯強がっているだけ。私だって“人間の女の子”なの。生き残るために“冷徹無比な軍師”を演じているだけ…」

ミキ「ルカさん・・・・我慢していたんだ・・・・」

ルカ「私の世界に、『泣いて馬謖(ばしょく)を斬る』って言葉があるの。馬謖って兵が軍師の命令を無視して、独断行動をして、その策が失敗しちゃったの。軍師はその兵を大切に思っていたから許したかったけど、それでは他の兵に示しが付かない、だから、泣きながら馬謖を斬ることを命じたの」

イロハ「その気持ち、何となくわかるぞ」

ルカ「その意味合いからはちょっとずれるけど、今の私が策のためにミクに期待している事って、そんな感じなのよ。本当にあなた達の前でワンワン泣き出したいの。今もちょっと泣いてるけど、ソレくらい、私だって辛いのよ。簡単にはできっこない事、出来なかったらミクが殺されること、私の策でミクがコピーに攻撃出来たとしても、とても倒すなんて出来ないこと。全てユキ達が“突破できないだろ?”ってドヤ顔で言ってきそうな“ミクに対する策”」

ミキ「・・・・・・」

ルカ「だからこそ、私は“自分にもミクにも、とんでもない受難が降りかかる事”を知りつつ、我慢して必至に策を講じたのよ。この策が成功しなかったら、全員、No Future、なのよ」

 

 ルカの涙は止まっていた。とりあえず一呼吸おき、涙を拭いて、ニコッと笑顔を見せた。

ルカ「…うん! スッキリしちゃった! これまで溜まっていたからね。大丈夫! ミクの前ではあんな顔見せないから。だから、今のこの事、みんなには黙っていてね。ユキ達に知られると舐められるから♪」

ミキ「ふ・・ふふふ、OK! 貴方のナミダは、この時限り! これからは、元の“天才軍師”に戻って、ビシバシ、ミクさん達を勝利に導いて行ってね!」

イロハ「ミキ、ルカさん、君たちとは良いお酒が飲めそうだな。時間がとれたら、一杯、つき合って欲しいところだ」

ルカ「時間と機会があったら、ご一緒させて下さい」

ミキ「私もつき合いたいですよ」

 ミク達の勝利の鍵を握る人物に入るであろう“この3人”も、テル達と同様に意気投合したのでした。ミクにルカ、この二人には、何か、人を引きつけまとめる力が備わっているようだった。

 

(続く)

 

CAST

 

ルカ姫、巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ

初音ミク(ミク):初音ミク

 

<クリプトン(Cripton)王国サイド>

魔導師アペンド:初音ミクAppend

 

僧侶リン(リン):鏡音リン

勇者レン(レン):鏡音レン

 

<インタネ(Interne)共和国サイド>

異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ

 

<アフス(A-Hu-Su)帝国サイド>

魔導師テル:氷山キヨテル

 

皇帝イロハ:猫村いろは

神官ユキ:歌愛ユキ

クグツロボット(コードネーム)“ミキ”の外観:miki

(ミキの中身=ミリアム:Miliam)

 

ルカコピー:巡音ルカ

 

<フォーリナー(Foriner)軍政国家サイド>

変身兵士 ソニカ:SONiKA

 

皇帝アル:Big-AL

重機動兵器アン:Sweet Ann

剣士レオン:Leon

圧殺兵士ローラ:Lola

導士オリバー:Oliver

拳闘士シユ:SeeU

 

その他:エキストラの皆さん

 

***

 

<バトルアリーナの対戦カードまとめ>

 

第1回戦 : ×ソニカ  vs  ○拳闘士シユ

第2回戦 : ×レン   vs  ○圧殺兵士ローラ

第3回戦 : ○学歩   vs  ×剣士レオン

第4回戦 : △アペンド vs  △重機動兵器アン

最終戦  : ○テル   vs  ×ミキ(ミリアム)

 

EX最終戦 : ミク    vs  ルカコピー

 

回復担当 : リン   &   導士オリバー (非戦闘員)


 
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