No.822793

【サイバ】ちくわ大明神【交流】

2016-01-03 16:59:19 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:932   閲覧ユーザー数:898

 ジャメビュ、という言葉をご存知だろうか。日本語では「未視感」と訳される錯覚の一種だ。デジャビュ(既視感)とは正反対で、よく見慣れている物事に対して、初めて見たかのような違和感を覚えることである。

 

 元旦の天空稲荷神社は、時計が午前0時を回った瞬間から、初詣客でごった返していた。その対応に当たる巫女たちも、目の回るような忙しさだ。

「立ち止まらないでください!」

「おみくじはこちらです!」

「携帯拾ったんですね? こちらでお預かりしますね。ありがとうございます」

「坊や、迷子かい? こっちへおいで。愛、境内に迷子の放送入れておくれ!」

「分かりました、お天さま!」

「わたし、縁起物売り場の方手伝ってきますね」

「ありがとう、黄染(きぞめ)さま!」

「携帯落とした人が取りに来たみたい!」

「本人かどうか確認お願いね。携帯は個人情報の塊だから気をつけて!」

「迷子の子のお母さんが迎えに来たよ! よかった!」

――――――――

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――

「ふーっ、なんとか第一波はさばききれたわね……」

 缶コーヒーをすすりながら、愛が息をついた。

「夜が明けてからが本当の勝負だよ。ま、その間にちょっとでも休んでおくれ。ほら、肉まんだ」

 この神社の主、お天さまこと妖狐天洸(ようこてんこう)が、コンビニ袋を提げて戻ってきた。

「ありがとうございます、お天さま!」

「ちゃんと人数分あるから、ケンカするんじゃないよ」

「「「はーい」」」

 ちびっ子巫女トリオ、唯、和美、雪歩が返事をする。

「黄染さまもすみません。神様なのにアルバイトか何かみたいにこき使っちゃって」

 愛は少々申し訳なさそうだ。

「いいんですよ。わたしもこの神社の一員ですし。体動かすの好きだし」

 黄染は微笑んだ。

「あれ? 黄染さまってここの神様だったよね? なんか一瞬初めて会ったような気がしたんだけど……」

 首を傾げる唯。

「何言ってんだい。黄染は江戸に幕府があった時から、天空稲荷神社(ここ)境内社(けいだいしゃ)(※神社の境内の中にある小さな神社。主神に関係の深い神などが祀られていることが多い)に祀られて(すんで)るよ。……ん? 確かにちょいと変な感じだね……」

「古文書にもはっきり書かれてるわ。天保年間(西暦1830~1845年)、この神社に迷い込んだ一匹の狸が善行を積んで、ついにお稲荷様、つまりお天さまね。をお助けする神となった、って。……でも……何かしらこの不思議な違和感?」

 天洸や愛も、奇妙な感覚を覚えたようだ。当の黄染はにこにこと笑っているのみだ。

 と。

「明けましておめでとうございまーす!」

 明るい声とともに、華やかな晴れ着を着たタヌキの少女が現れた。後からホッキョクギツネの少年がついてくる。

「おれなさん! 光太郎さんも! あけましておめでとうございます!」

 唯たちはおれなたちを立って迎えた。

「今年もよろしくお願いします! 晴れ着きれいですね! すごく似合ってますよ!」

「えへへー!」

 和やかな空気が流れる。

「あ! もう一人のわたしだ! 久しぶりー!」

「久しぶりー!」

 おれなは、黄染に駆け寄ると抱き合った。

「え? おれなさんと黄染さまって知り合いなんですか?」

 唯が尋ねる。

「うん、友達っていうか、わたし本人なの」

 おれなが答える。おれなと黄染が並ぶと、二人はまるで双子のようにそっくりだった。

「は?」

「ちょっと前に江戸時代に迷い込んじゃったことがあって。わたしは帰ったんけど、帰らないでそこに住み着いたルートが黄染さまなの」

 ますます混乱しそうなことをさらっと明かすおれな。

「ルートって……」

 唯たちは困ったように光太郎の方を見た。光太郎はなんだか悟りを開いたような表情だ。

「うん。僕はもう諦めてる」

 砥部おれな。新春一発目から謎の多い女。

 


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