No.822793 【サイバ】ちくわ大明神【交流】2016-01-03 16:59:19 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:1051 閲覧ユーザー数:1018 |
ジャメビュ、という言葉をご存知だろうか。日本語では「未視感」と訳される錯覚の一種だ。デジャビュ(既視感)とは正反対で、よく見慣れている物事に対して、初めて見たかのような違和感を覚えることである。
元旦の天空稲荷神社は、時計が午前0時を回った瞬間から、初詣客でごった返していた。その対応に当たる巫女たちも、目の回るような忙しさだ。
「立ち止まらないでください!」
「おみくじはこちらです!」
「携帯拾ったんですね? こちらでお預かりしますね。ありがとうございます」
「坊や、迷子かい? こっちへおいで。愛、境内に迷子の放送入れておくれ!」
「分かりました、お天さま!」
「わたし、縁起物売り場の方手伝ってきますね」
「ありがとう、
「携帯落とした人が取りに来たみたい!」
「本人かどうか確認お願いね。携帯は個人情報の塊だから気をつけて!」
「迷子の子のお母さんが迎えに来たよ! よかった!」
――――――――
――――――
――――
――
「ふーっ、なんとか第一波はさばききれたわね……」
缶コーヒーをすすりながら、愛が息をついた。
「夜が明けてからが本当の勝負だよ。ま、その間にちょっとでも休んでおくれ。ほら、肉まんだ」
この神社の主、お天さまこと
「ありがとうございます、お天さま!」
「ちゃんと人数分あるから、ケンカするんじゃないよ」
「「「はーい」」」
ちびっ子巫女トリオ、唯、和美、雪歩が返事をする。
「黄染さまもすみません。神様なのにアルバイトか何かみたいにこき使っちゃって」
愛は少々申し訳なさそうだ。
「いいんですよ。わたしもこの神社の一員ですし。体動かすの好きだし」
黄染は微笑んだ。
「あれ? 黄染さまってここの神様だったよね? なんか一瞬初めて会ったような気がしたんだけど……」
首を傾げる唯。
「何言ってんだい。黄染は江戸に幕府があった時から、
「古文書にもはっきり書かれてるわ。天保年間(西暦1830~1845年)、この神社に迷い込んだ一匹の狸が善行を積んで、ついにお稲荷様、つまりお天さまね。をお助けする神となった、って。……でも……何かしらこの不思議な違和感?」
天洸や愛も、奇妙な感覚を覚えたようだ。当の黄染はにこにこと笑っているのみだ。
と。
「明けましておめでとうございまーす!」
明るい声とともに、華やかな晴れ着を着たタヌキの少女が現れた。後からホッキョクギツネの少年がついてくる。
「おれなさん! 光太郎さんも! あけましておめでとうございます!」
唯たちはおれなたちを立って迎えた。
「今年もよろしくお願いします! 晴れ着きれいですね! すごく似合ってますよ!」
「えへへー!」
和やかな空気が流れる。
「あ! もう一人のわたしだ! 久しぶりー!」
「久しぶりー!」
おれなは、黄染に駆け寄ると抱き合った。
「え? おれなさんと黄染さまって知り合いなんですか?」
唯が尋ねる。
「うん、友達っていうか、わたし本人なの」
おれなが答える。おれなと黄染が並ぶと、二人はまるで双子のようにそっくりだった。
「は?」
「ちょっと前に江戸時代に迷い込んじゃったことがあって。わたしは帰ったんけど、帰らないでそこに住み着いたルートが黄染さまなの」
ますます混乱しそうなことをさらっと明かすおれな。
「ルートって……」
唯たちは困ったように光太郎の方を見た。光太郎はなんだか悟りを開いたような表情だ。
「うん。僕はもう諦めてる」
砥部おれな。新春一発目から謎の多い女。
Tweet |
|
|
2
|
2
|
追加するフォルダを選択
唯ちゃん http://www.tinami.com/view/742179
和美 http://www.tinami.com/view/743015
雪歩ちゃん http://www.tinami.com/view/754577
愛さん http://www.tinami.com/view/744298
お天さま http://www.tinami.com/view/742459
続きを表示