No.814856

九番目の熾天使・外伝 ~短編㉕~

竜神丸さん

闇のアーマードライダー その4

2015-11-21 18:29:01 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2399   閲覧ユーザー数:751

海鳴図書館前、とある喫茶店…

 

「お、ここにいたかお前等」

 

「あれ? okakaさんがどうしてここに…」

 

「お前等と同じ理由でここに来た、とでも言えば分かるか?」

 

喫茶店の屋外の席に座っていたディアーリーズ達の下に、同じく調査任務の為にやって来たokakaと桜花が合流を果たした。okakaと桜花の登場に驚くディアーリーズだったが、ディアーリーズが桜花と目線を合わせた途端、桜花はすかさずokakaの後ろに隠れる。

 

「…見るな変態」

 

「ちょお!? だからあの件についてはわざとじゃ…」

 

「はっは、どんまいディア」

 

「…?」

 

桜花に冷たい目で見られて落ち込むディアに、事情を知っているokakaが彼の背中をポンポン叩いて励ます。もちろん、事情を知らない竜神丸は頭にクエスチョンマークを浮かべる事しか出来ないのは言うまでもない。

 

「ところで、俺達も気になってたんだが……どうしたよ支配人」

 

「お、おぅ……ちょっと、な…グフッ…」

 

「…竜神丸、コイツに一体何があった?」

 

「ウォーターメロンでスカッシュ発動、とでも言えば分かりますか?」

 

「OK、把握した。お前も随分と無茶をするもんだな」

 

「自業自得ですね」

 

「ひ、酷ぇなお前等……いや、俺も悪いけどさ…!」

 

一方で、支配人は椅子に座ったままテーブルに突っ伏している状態だった。ただでさえ火力の高いウォーターメロンアームズで必殺技を発動したのだ。当然その反動も大きく、現在の支配人は最初にあった体力のほとんどを消費してしまい、完全にグロッキー状態なのである。そんな支配人の気持ちなど知った事ではない竜神丸は、呑気に注文したドリンクをストローで美味しそうに飲んでいる始末だ。

 

「まぁ、それは良いとして……今、どれだけ分かってる?」

 

一瞬で真剣な表情になるokakaを見て、竜神丸とディアーリーズも真剣な目付きに変わる(ただし、支配人は瀕死状態のままだが)。

 

「えぇ、色々分かっていますよ……場所を移動しましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黒の菩提樹……リーゼ・ガルバンディア……実験体No.13……目的は偽りの平穏の破壊、か…」

 

その後、とある建物の屋上まで移動した五人。okakaは他の三人から情報を提供され、その情報を自身の端末で一通り纏め上げていく。

 

「僕に襲い掛かって来た黒影トルーパー逹も洗脳されていましたが、撃破後に洗脳が解けたみたいでして、話を聞いてみました。本人達は、洗脳されてる間は何も記憶に残っていなかったようです。一応、彼等が使っていた戦極ドライバーはどちらも回収しました。それからコレ等も…」

 

ディアーリーズは洗脳された男性達が使っていた二つの戦極ドライバー、そして二つのザクロロックシードを床に置いて並べていく。それを見た竜神丸は「ほぉ」と興味深そうな反応を見せる。

 

「実物を回収したのですか。ディアーリーズさんにしては上出来ですね」

 

「ちょ、どういう意味ですかそれ!?」

 

「まぁまぁ……取り敢えず、戦極ドライバーは俺の調査部隊の方へと回す事にする。こっちのザクロロックシードについては…」

 

「私が預かりましょう。ちょうどサンプルが欲しかったところですし」

 

「あ、ちょ!? 下手に持ったら洗脳されちゃうんじゃ…」

 

「されませんよ。どうせ洗脳も、彼女のトランス系PSIによる能力でしょうから」

 

「…どういう事だ?」

 

okakaが問いかけ、竜神丸はザクロロックシードを放り投げてキャッチしながら告げる。

 

「彼女、リーゼ・ガルバンディアは実験体の中でも、トランス系のPSIに優れたサイキッカーでした。ちなみに私が言うトランスとは、テレパシーを送ったり、相手の心や記憶を覗き込んだり、他者を洗脳したりと、主に精神干渉が基本になるPSIになります。恐らく彼女は、そのトランスの能力をこれらザクロロックシードにも応用させたのでしょう。確実に相手を洗脳する為に」

 

「な、なるほど……あれ? じゃあ竜神丸さんが特に何ともないのは…」

 

過去視(サイコメトリー)を始め、記憶の消去や改竄など、トランス系PSIなら私も使えます。この程度のトランスで私を洗脳しようなど、十年早い」

 

「…改めて考えると、お前も大概ぶっ飛んでるよな」

 

「…チート」

 

「褒め言葉として受け取っておきましょう」

 

未だグロッキー状態の支配人と桜花、二人分の皮肉すらも軽くスルーした竜神丸は、一つのザクロロックシードを指でクルクル回してから懐に収める。そんな彼の説明を聞いてから、ディアーリーズはある疑問を抱いた。

 

「そのリーゼって人も、竜神丸さんと同じ機関の実験体だったんですよね? そうなると、その人が今回の自爆テロを引き起こしたのって…」

 

「…まぁ彼女ならば、そこらの一般人を恨んでも当然でしょうねぇ。彼女の場合、私達姉弟やNo.03とも、事情はまた色々と違っていますし」

 

「どういう事だ?」

 

「当時、彼女は私や姉さんのいた孤児院ではなく一般の家庭から引き取られたんですよ。何て事ない、普通の家庭からね」

 

「一般の家庭から……じゃあ、スノーズみたいに捨てられて…?」

 

「いえ、逆です。彼女はむしろ、両親から非常に愛されていました。曰く、両親はPSIに目覚めた娘を庇った事で周囲の人間達から蔑まれていましたが、それでも娘を捨てるようなマネだけは絶対にしなかったそうです」

 

「え、じゃあどうして…」

 

「暗殺されたんですよ。機関の人間によって」

 

「「「!?」」」

 

竜神丸から告げられた言葉に、桜花以外の三人は驚きの表情をみせる。

 

「機関にとって、リーゼ・ガルバンディアは滅多に発見出来る事の無い貴重なサイキッカー……そんな彼女を自分達の手中に収めたいが為に、機関は彼女の両親を暗殺した後、無理やり連行した彼女を実験体として扱うようにしたんです。本人の意志に関係なく」

 

「ッ…確かに、それは酷い話ですね……けど、だからって何で自爆テロなんか…」

 

「今の彼女は、自分と同じ実験体以外に心を開く事は無いでしょう。彼女にとって、かつて自分を迫害した人間達など敵でしかない」

 

竜神丸の言葉に、ディアーリーズはやり切れないといった表情で右手拳を握り締める。彼の場合は美空の件もある事から、リーゼの過去に対する同情心と、そのリーゼが行う自爆テロに対する嫌悪感が混ざり合い、何とも言えない複雑な気分になっていた。そんなディアーリーズの心境など知る由も無い竜神丸はタブレットを取り出し、ザクロロックシードのデータをタブレットに書き込んでいく。

 

「…とにかく、これらザクロロックシードから出る周波数を逆探知すれば、彼女の居場所は特定出来ます。皆さんは先に楽園(エデン)に戻って、団長に調査内容を報告して下さい」

 

「いや、俺達も行くぜ」

 

リーゼの捜索に向かおうとする竜神丸を、体力の回復した支配人が立ち上がって呼び止める。立ち止まった竜神丸が振り返ると、支配人だけでなくokakaやディアーリーズ、桜花も並び立った状態で竜神丸を見据えていた。

 

「…これは私達の問題です。関係の無い部外者にまで、いちいち首を突っ込まれたくはないんですが」

 

竜神丸が冷めた目で支配人達を睨みつける。それでも、彼等は怯まなかった。

 

「俺達、OTAKU旅団にとっての問題でもあるさ。他の仲間達まで危うく巻き込まれそうになったんだ。ナンバーズである俺達が、黙ってる訳にはいかないだろう?」

 

「止めましょう、そのリーゼさんって人を。よく知らない僕が言うのも何ですが……もうこれ以上、その人に間違った道を歩かせてはいけない。機関の連中と同じ外道に成り下がっては、彼女の両親が浮かばれませんから…」

 

「この海鳴市にも会社の契約先がいるからな。旅団の今後の為にも、これ以上自爆テロなんかで被害を出されると俺達も困る」

 

「…私はただ、一城様に従うだけ」

 

理由は違えど、四人全員が竜神丸を一人で行かせるつもりは無かった。四人のそれぞれの表情を見て、竜神丸は諦めた様子でフンと鼻を鳴らす。

 

「…勝手にしなさい」

 

あぁ、これはもう何を言っても無駄だろう。それを悟った竜神丸は、ただその一言しか言い放つ事は無かった。

 

それでも同行を許したのは、その方が捜索も楽で自分にとっても都合が良いからか。それとも、彼等に対するある意味での信頼による物なのか。

 

その真意を知る者は、竜神丸一人だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その日の夜…

 

 

 

 

 

 

 

 

「終焉の時は、来たれり…」

 

「これは、神から与えられた試練なり…」

 

「慈悲深き神よ…」

 

「迷える者達に、親愛なる救済を…」

 

ザクロロックシードで洗脳された民間人が複数、夜の大通りを彷徨い始めていた。妙な言動を繰り返しながらゾンビのようにフラフラ歩くその光景は、傍から見ればもはやホラーのようにしか見えないだろう。

 

 

 

 

 

 

もちろん、それも長くは続かない訳なのだが。

 

 

 

 

 

 

-ドガガガガンッ!!-

 

「うっ!?」

 

「ぐわっ!?」

 

「きゃあ…!?」

 

「げふ!?」

 

突如、フードを深く被ったアサシン姿のokakaが暗闇から姿を現し、目に見えない速さで民間人達を一人ずつ順番に気絶させていく。気絶した民間人達がザクロロックシードを落とし、陰で待機していた桜花がそれらを次々と回収する。

 

「あぐっ!?」

 

「…うし、これで最後か」

 

最後の一人が気絶したのを確認し、okakaは最後の一人が落としたザクロロックシードを回収。okakaと桜花の周囲には、気絶した民間人が何住人も倒れていた。

 

「これだけの数を一度に洗脳とは……厄介なもんだねぇ、PSIというのも」

 

「…! 一城様、あれを」

 

「お?」

 

桜花が指差した方向からは、黒スーツを身に纏った男女が六人ほど姿を現した。その全員が戦極ドライバーを装着しており、彼等は一斉にマツボックリロックシードを構える。

 

≪≪≪≪≪≪マツボックリ!≫≫≫≫≫≫

 

「…一城様」

 

「あぁ、少しばかり暴れようじゃないか」

 

≪≪≪≪≪≪マツボックリアームズ! 一撃・インザシャドウ!≫≫≫≫≫≫

 

六人の黒影トルーパーと対峙し、okakaと桜花はそれぞれ戦極ドライバー、ゲネシスドライバーを装着。okakaはオレンジロックシードを、桜花はマツボックリエナジーロックシードを手に持って構え出す。

 

「「変身!」」

 

≪オレンジ!≫

 

≪マツボックリエナジー!≫

 

頭上のクラックからオレンジアームズ、マツボックリエナジーアームズが出現する中、二人は手に持った錠前をドライバーに装填。okakaは戦極ドライバーのカッティングブレードを倒し、桜花はゲネシスドライバーのハンドルシーボルコンプレッサーを押し込む。

 

≪ソイヤッ! オレンジアームズ! 花道・オンステージ!≫

 

≪リキッド! マツボックリエナジーアームズ! ソイヤッ! ヨイショッ! ワッショイ!≫

 

okakaはオレンジアームズを被る事で“アーマードライダー鎧武”に、桜花はマツボックリエナジーアームズを被る事で“アーマードライダー黒影・真”に変身。鎧武は片刃剣のような武器―――大橙丸(だいだいまる)を、黒影・真は影松を強化した武器―――影松・真を構えて並び立つ。

 

「うし、特に異常は無しっと……行くぞ桜花」

 

「了解…」

 

鎧武と黒影・真を見た黒影トルーパー逹。その内の三人が前に立ち、あるロックシードを開錠する。

 

「「「……」」」

 

≪≪≪スイカ!≫≫≫

 

「「!?」」

 

≪≪≪スイカアームズ! 大玉・ビッグバン!≫≫≫

 

音声を聞いた鎧武と黒影・真が身構える中、頭上のクラックから三つの巨大なスイカアームズが出現。三人の黒影トルーパーがそれに乗り込み、巨大なスイカアームズとなって立ち塞がる。

 

「ッ…桜花、残りの三人を任せたっ!!」

 

「了解…!!」

 

≪ジャイロモード!≫

 

飛行形態ジャイロモードとなったスイカアームズが上空から弾丸を連射し、鎧武と黒影・真はそれを回避。そのまま黒影・真が残りの黒影トルーパー逹に突撃する一方で、鎧武はタンポポを模したホバーバイク型のロックビークル“ダンデライナー”を起動し、一気にスイカアームズ逹がいる上空へと飛び立つ。

 

「さぁ来いよ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、okakaと桜花が黒影トルーパー逹と戦っている一方…

 

 

 

 

 

 

 

「見つけましたよ、リーゼ・ガルバンディア」

 

とある工場内部。竜神丸、支配人、ディアーリーズの三人は最奥部にて、巨大なパイプの上に静かに座り込んでいるリーゼの姿を発見していた。リーゼは閉じていた目を開き、三人の立っている方へと振り返る。

 

「あら……どうして部外者まで一緒にいるのですか? リバインズさん」

 

「すみませんねぇ、どうしても一緒に来ると言って聞かないんですよ。後ろの子分Aと子分Bが」

 

「「誰が子分だよ(ですか)!?」」

 

勝手に子分扱いされた支配人とディアーリーズが文句を言う中、リーゼは相変わらず微笑みを浮かべたまま巨大パイプの上から立ち上がり、三人の前に立つ。

 

「リーゼさん、で良いんですよね……本当にこのまま、この海鳴市を破壊するつもりですか?」

 

「愚問ですね。私は絶対に許さない……私を化け物として迫害した人間達を……私から父と母を奪い去った、今ある偽りの平穏を…」

 

「…あなたは本当にそれで良いんですか? 今、あなたがやっている事はただのテロ行為だ……あなたの果たそうとしている事は、天国にいるあなたの両親が見て、本当に喜んでくれるような事なんですか!!」

 

「逆に聞きましょう。何故、私の人生は狂わせられなければならなかったのですか?」

 

「え…」

 

リーゼから逆に質問で返され、ディアーリーズは思わず言葉に詰まる。

 

「私はただ、父や母と一緒に生きられればそれで良かった……なのに奴等は、そんな私から父と母を、家族を奪い去った!! どうして私が家族を奪われなければならなかった……私達が一体、奴等に何をしたというんだ!! 答えろっ!!!」

 

「ッ…リーゼさ―――」

 

「やめろディア。恐らくもう、俺達が何を言っても無駄だ」

 

「…ッ!!」

 

支配人も察していた。声を荒げる彼女の目には、復讐の炎しか宿ってはいない。これはもう、誰に何を言われたところでまともに聞き入れはしないだろう。そう考えた支配人は説得しようとするディアを手で制し、ディアはやり切れないような表情になる。

 

「…さぁ、リバインズさん。私はあなたの答えが聞きたい。あなたはどうしますか?」

 

「……」

 

荒い口調を丁寧な口調に戻し、リーゼは再び竜神丸に問いかける。

 

「もちろん、受け入れてくれますよね? 何せ私達は同じ実験体……同じ境遇の仲間なのですから―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冗談じゃありませんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――え?」

 

リーゼが台詞を言い終わる直後、竜神丸の言い放った一言がそれだった。

 

「何故この私が、あなたの誘いなんかに乗らなきゃいけないんですか? 理解が出来ませんね」

 

「…な、何を言っているんです? あなただって分かってるんでしょう? 今ある世界には、腐りに腐り切った愚劣な人間が蔓延っている事を―――」

 

「えぇまぁ、それは充分過ぎるくらいに理解してますとも。私があなたの誘いを断る理由は至って単純……今の世界の現状を気に入っているからです」

 

「「…へ?」」

 

竜神丸が堂々と言い放った一言には、支配人とディアーリーズも思わず頭にクエスチョンマークを浮かべる。

 

「腐りに腐り切った人間は、放っておけばいずれ悪人となり、犯罪者となる……私にとっては、それは実に好都合な事なのですよ。そういった人間ならば、遠慮なく私の研究の実験台に使えますからね。これほど理想的な環境はそうそうありません」

 

「…!?」

 

「リーゼ・ガルバンディア……いや、No.13。あなたは自分が不幸である事を受け入れられないあまり、現実から目を背け、今ある世界を破壊しようとした……だが、私は違う。私はもう開き直ったのですよ。人間がそれだけ醜い生き物であるなら、いっそ私も腐りに腐り切ってしまおうとね……今ある現実を現実として受け止められないような馬鹿の考えに、私が共感する訳が無いでしょう?」

 

「「……」」

 

竜神丸の語る言葉を聞いている内に、支配人とディアーリーズはこう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

((あぁ、やっぱいつも通りだコイツ/この人…))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここまでゲスだと逆に清々しいなと、二人はそう思わずにはいられない。そんな二人を他所に、竜神丸は更に語り続ける。

 

「それに、現在私の所属している組織を裏切れば、相当な処罰が待っていますからねぇ。流石に私はそんなのは御免ですよ? まだまだ研究を続けたいので」

 

「ッ……リバインズさん、あなたは…」

 

「仲良しごっこでもしたかったんですか? 残念でしたね。そんな下らない茶番は一人でやってなさい。あなたみたいな馬鹿と一緒にいると、こっちまで馬鹿になっちゃいますから」

 

「…!!」

 

竜神丸の小馬鹿にしたような態度を前に、怒りの感情を抱かずにはいられなかったリーゼは歯軋りし、爪が食い込んで血が出るくらい拳を握り締める。しかし急に冷静になった彼女は、大きく息を吐いてから先程までのような微笑みを見せた。

 

誰が見ても分かるくらい、冷たい目をしながら。

 

「…分かりました。どうやらあなたには、口で言っても分からないようですね」

 

そう言って、リーゼは両手でそれぞれある物を取り出した。左手には戦極ドライバー、右手には真っ黒に染まったブラックオレンジロックシードが握られていた。

 

「!? 黒いオレンジか…!?」

 

支配人が驚く中、リーゼは戦極ドライバーを腰に装着。右手に持ったブラックオレンジロックシードを開錠する。

 

≪オレンジ!≫

 

「変身」

 

≪ロック・オン!≫

 

音声と共に、リーゼの頭上のクラックからは真っ黒なブラックオレンジアームズが出現。リーゼはブラックオレンジロックシードを戦極ドライバーに装填し、右手で柄部分を弾くようにカッティングブレードを倒した。

 

≪ソイヤッ! オレンジアームズ! 花道・オンステージ!≫

 

降下したブラックオレンジアームズがリーゼの頭に被さった瞬間、湧き上がった黒いオーラがリーゼの全身にライドウェアを纏わせ、ブラックオレンジアームズが展開して鎧として装着される。漆黒の果汁エネルギーが周囲に飛散する中、リーゼは変身を完了した。

 

「な…!?」

 

「その姿は…!!」

 

支配人とディアーリーズは驚愕した。何故ならば、目の前に立っているアーマードライダーの姿に、見覚えがあったからだ。

 

漆黒のライドウェア。パルプアイとクラッシャー、そして額部分に銀色の装飾が付いた頭部。上半身に装着されたブラックオレンジアームズ。下半身に纏う、灰色のボロボロなスカート。そして右手に構えた真っ黒なブラック大橙丸と、左腰の鞘に納められている無双セイバー。

 

「ハァァァァァァァァァ…!!」

 

リーゼが変身した戦士―――“アーマードライダー影武(エイム)・ブラックオレンジアームズ”は、右手に持ったブラック大橙丸を左手に持ち替え、右手で無双セイバーを抜刀して構えてみせた。

 

「ッ……ラピスの(カムロ)とそっくりってか。気に入らないな」

 

「支配人さん、竜神丸さん…!!」

 

「言われなくとも、最初からそのつもりですよ」

 

支配人、ディアーリーズ、竜神丸も戦極ドライバーを取り出し、腰に装着。それぞれのロックシードを構えて影武の前に立つ。

 

≪メロン!≫

 

≪スターフルーツ!≫

 

≪マスカット!≫

 

「「「変身!」」」

 

≪ソイヤッ! メロンアームズ! 天下・御免!≫

 

≪ソイヤッ! スターアームズ! セイバースター・オンステージ!≫

 

≪ハイィ~! マスカットアームズ! 風・刃・セイヤットウ!≫

 

支配人は斬月、ディアーリーズは龍星、竜神丸は龍刃への変身が完了。それぞれが武器を構える中、影武は右手でパキンと指を鳴らす。すると…

 

「シャアッ!!」

 

「ギギギギギギ…!!」

 

「!? ロックシードも無しにインベスを…!!」

 

影武の背後に二つのクラックが開き、それぞれシカインベス、カミキリインベスが出現。ロックシードを使っていないにも関わらず、二体の上級インベスは手下のように影武に付き従い、影武は三人に対して挑発するかのようにブラック大橙丸を向ける。

 

「さぁ、始めましょう…」

 

「「「…ハァアッ!!」」」

 

斬月、龍星、龍刃は一斉に駆け出し、影武や上級インベス逹と真正面から対峙。アーマードライダー達の戦いは始まりを告げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued…

 


 
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