No.814175

九番目の熾天使・外伝 ~短編その㉕~

竜神丸さん

闇のアーマードライダー その1

2015-11-17 14:48:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1880   閲覧ユーザー数:768

これは、異能に目覚めてしまったが故に、同じ人間に蔑まれて続けてきた者達のお話…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海鳴市、とある建物…

 

 

 

 

「……」

 

スカートの短いメイド服。膝まである茶色のブーツ。首輪のような形をした銀色の首飾り。頭の後ろに束ねられた長い青髪。それらの特徴を持った一人の女性は、屋上から街全体を見渡していた。彼女が立っている後ろには、謎のスーツケースに収められている複数の赤いロックシード。

 

道路を走る多くの車。

 

仲良く横断歩道を渡る親子。

 

友達同士で楽しそうに会話をしている女子高生達。

 

忙しそうに走るサラリーマン。

 

自転車に乗ってパトロール中のお巡りさん。

 

そこに広がっていたのは、当たり前とも言えるような日常だった。

 

「…全ては偽りに過ぎない」

 

それらの光景を一通り眺めた後、女性はその場で大きく両腕を上げてスッと目を閉じる。するとスーツケースに収められていた赤いロックシードが次々と宙に浮かび、一斉に街のあちこちに飛び去っていく。

 

「終焉は来たれり……迷える者達に、親愛なる救済を…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その赤いロックシードは、街のあちこちに広まっていく。そんな中、二つの赤いロックシードが路地裏にまで飛んで行き…

 

「それがよぉ、あの大間抜けが馬鹿をやらかしてさぁ~」

 

「マジで? ウケるんですけど……って、あん?」

 

路地裏で面白おかしく笑い合っていた、二人のチンピラの手元に収まった。いきなりの事に驚くチンピラ達だったが、それぞれの手に収まった赤いロックシードが赤く光り、その瞬間に異変が起こる。

 

「おいおい、何だこ、りゃ―――」

 

「う、が―――」

 

直後、チンピラ二人はその場で俯き、そしてゆっくりと顔を上げる。その目は赤く染まり、先程までとはまるで雰囲気が変わってしまっていた。

 

「終焉の時は来たれり…」

 

「迷える者達に、親愛なる救済を…」

 

彼等もまた、あの女性と同じ言葉をボソボソ呟き始めた。その後、二人は赤いロックシードを手に持ったまま路地裏から飛び出し、ある場所に向かって走り出す。そんな二人の走っていく先では…

 

「んむ…?」

 

たまたまこの海鳴市にやって来ていたフレイアが、買った中華まんを食べながら公園で休憩していた。そんなフレイアの後ろに跳躍したチンピラ二人が着地し、フレイアも口の中に含んでいた中華まんを飲み込んでから彼等を睨みつける。

 

「…お主等、儂に何の用じゃ? 食事の邪魔をするでないわ」

 

「…慈悲深き神よ…」

 

「この者に、親愛なる試練を…」

 

「? 何を言って…」

 

≪≪ザクロ!≫≫

 

「!? ロックシードじゃと…ッ!!」

 

チンピラ二人は手に持っていた赤いロックシード―――ザクロロックシードを同時に開錠。するとザクロロックシードから小さく『ピッ…ピッ…』と時計音が鳴り始め、悪い予感を察知したフレイアは掴み掛かって来たチンピラの腕を掴んで噴水に投げ落とし、もう一人も同じように投げ落とす。するとザックロックシードの時計音がどんどん早くなっていき…

 

『ピピピピピピピピ…』

 

 

 

 

-ドガァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!-

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!?」

 

チンピラ二人を巻き添えに、ザクロロックシードが爆発。爆発で壊れた噴水から水飛沫が舞い、公園にいた一般人達は慌てて逃げ惑う。フレイアは壊れた噴水の近くまで歩み寄ってから、足元に落ちているザクロロックシードの破片を拾い上げる。

 

「爆発するロックシードとは……おかしなロックシードがあるもんじゃのう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海鳴市で自爆テロだと?」

 

「えぇ。フレイアさんでしたっけ? あなたのお仲間さんが一人、それに鉢合わせしたそうです。なかなか興味深い物を拾ってきたようで」

 

その後、フレイアが拾ったザクロロックシードの破片はすぐさま楽園(エデン)まで回収され、竜神丸の研究室で早速それの解析が始められていた。彼の研究室を訪れた支配人は、台の上で解析用のビーム照射を受けているザクロロックシードの破片を見て眉を顰める。

 

「ロックシードの破片か? 見たところ、赤いスイカロックシードみたいな形のようだが」

 

「今、そのロックシードの詳細が分かりました。解体される前のユグドラシルタワーに残されていたデータ……その中にそれらしき物が」

 

竜神丸はパソコンの画像を支配人に見せる。そこには爆発する前のザクロロックシードの情報がデータとして載せられていた。ザクロロックシードのナンバー部分には『LS-MESSIAH』と描かれている。

 

MESSIAH(メサイア)……救世主か?」

 

「このザクロロックシードは、所有者の精神を一時的なトランス状態にする効果があります、云わば一種の洗脳のような物ですね。そしてこれを開錠すると同時にカウントダウンが始まり、最後は所有者ごとドッカーン……フレイアさんから聞いた話の通りです」

 

「自爆用のロックシードか……自爆テロなんか引き起こして、何が救世主だよ…」

 

「そしてこのザクロロックシードを取り扱っていた、ちょっとばかり厄介そうな組織のデータもこちらに」

 

竜神丸がキーボードのエンターキーを指で叩く。するとザクロロックシードの画像が切り替わり、画面には黒いコブラのような紋章が映し出される。

 

「これは…」

 

「黒の菩提樹」

 

竜神丸は更にキーボードを操作し、画面に謎の組織―――“黒の菩提樹(ぼだいじゅ)”の詳しい情報を順番に映し出していく。

 

「一時期、沢芽市で勢力を拡大していたカルト集団です。民間人にザクロロックシードを配って洗脳し、自爆テロを引き起こさせていたそうです。この組織のリーダーの名前は……狗道供界(くどうくがい)。戦極凌馬の前任者にして、ロックシードの開発実験の失敗で死亡した筈の男」

 

「あの戦極凌馬の前任者、か……そいつが今も生きていると?」

 

「いいえ。この男は確かに死んでいます。彼の場合は、死んだ後もこの世に存在し続けていた(・・・・・・・・・・・・・・・・・)……と言うべきですかね」

 

「…人間じゃなくなったと?」

 

「簡単に言うなら、まぁそうなりますね。どのような原理で人ならざる存在となったのかは不明ですが……この男は確かにあの戦極凌馬や呉島貴虎の前に姿を現し、彼等と戦ったそうです。最も、戦極凌馬に倒されて以降、この男の姿は一度も見られなくなったそうですが。問題は…」

 

「…黒の菩提樹が、今もまだ残っているという事か」

 

「ユグドラシルコーポレーションの残党は、黒の菩提樹として今も活動を続けており、様々な組織にザクロロックシードを売り渡しているようです。今回の自爆したチンピラ共も、例外とは言えないでしょう。ひとまずはこちらで調査をする必要があります」

 

「となると、okakaも呼んだ方が良いか?」

 

「いえ」

 

竜神丸は椅子から立ち上がり、ハンガーにかけていた白衣を手に取って身に纏う。

 

「今回は私も調査に出ます」

 

「お? 珍しいな。お前が調査任務を引き受けるなんて」

 

「黒の菩提樹の目的に興味はありません……が、せっかくザクロロックシードなんて物を見つけたんです。少しくらいサンプルが欲しいと思いましてね」

 

「OK、いつものお前だって事がよく分かった……んじゃま、俺もその調査に付き合おう。俺の仲間が危うく巻き込まれそうになったんだ、何もしない訳にはいかない」

 

「…お好きにどうぞ」

 

支配人も戦極ドライバーとメロンロックシードを懐に収め、調査任務の準備に取り掛かり始めた。竜神丸は彼の見せる仲間意識に対して呆れたような表情を見せた後、同じく戦極ドライバーと自分が使うロックシードの準備に取り掛かるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、海鳴市。

 

「崇高なる計画は、まだ始まったばかり…」

 

路地裏に少しだけ侵食していたヘルヘイムの植物、そこに成っていた果実をメイド服の女性が捥ぎ取る。するとその手に取った果実がオレンジロックシードへと変化したが、メイド服の女性が強く握った瞬間、そのオレンジロックシードが黒い霧に侵食され、ブラックオレンジロックシードとなる。

 

「待っていて下さい、我が愛しき同士達よ…」

 

女性の腹部には、戦極ドライバーが装着されていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued…

 


 
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